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乳酸=疲労物質説は大マチガイ? [医学・医療短信]

「乳酸=疲労物質」は前時代的誤解

◎運動後の筋肉痛

運動などで激しく体を動かしていると、血液のなかに乳酸がふえてくる。

その現象が実験的に確かめられてわかったのは、100年も前のことである。

以来、乳酸の血中濃度が高まるのが疲労の原因―とされてきた。

「運動がある強度に達すると、乳酸がふえ始める。

エネルギーとして使う糖質が不完全燃焼するためである。

糖質の燃えカス・老廃物の乳酸が血液中に増加することが、肉体疲労の原因であり、運動後に起こる筋肉痛も乳酸蓄積が原因である」

─というのが、一昔前までの生理学の学説で、高校の保健体育の教科書にも載っていた。

乳酸=疲労物質説はよく知られた健康常識だったから、いまでもそう信じている人が少なくない。

そう言ったり、書いたりしているコメントに接することも、ままある。

だが、近年の運動生理・生化学的研究によって、乳酸=疲労物質説は完全に否定された。

◎乳酸はエネルギー源

乳酸は老廃物どころか、体の有効なエネルギー源なのだという。

エネルギーは、細胞のミトコンドリアで糖や脂肪から合成される。

このとき糖の分解によって乳酸ができる。

急激な運動をすると、糖の分解が活発化してさらに多くの乳酸ができる(乳酸の血中濃度が高まる)。

運動に用いる筋肉には、無酸素で瞬発力を生み出すが、持久力のない「速筋」と、瞬発力はないが、酸素を消費して持久力を生み出す「遅筋」がある。

乳酸をエネルギー源として利用するしくみをもつのは遅筋のほうで、乳酸の生成と酸素の供給のバランスがとれていれば、運動は楽に続けられる。

ウォーキングなどの有酸素運動がそれだ。

だが、酸素の供給が間に合わないと、使われない乳酸が血液中にふえてくる。

持久力が失われる。

一方、速筋は、糖質からエネルギーを取り出して乳酸を作りだすのに、酸素を必要としないしくみになっている。

いつでもすぐ発動できる(瞬発力を作り出す)が持久力はない。

激しい筋肉運動が長続きしないのは、そのためだ。

◎ニコニコペースのメカニズム

高血圧の運動療法は、運動強度を最大酸素摂取量の50%に保ちながら行うと、最も効果的であることが実証されている。

WHO(世界保健機関)も推奨するその「アラカワ・メソッド」について、提唱者の荒川規矩男・福岡大学医学部名誉教授はこう話している。

「体内に必要なだけ酸素があれば、運動で使われる糖分は完全燃焼し、乳酸はできません。

つまり軽い運動をやっている間は血液中の乳酸はふえないのです。

ところが、運動がある強度を超えると、急に乳酸がふえ始めます。

それが最大酸素摂取量の50%を超えたあたりなのです。

裏返せば、最大酸素摂取量の50%以下であれば、〈疲労物質〉といわれる乳酸が血液中に蓄積されず、楽に運動を続けられるわけです。私たちは、それを〈ニコニコペース〉と呼んでいます。」(『名医が治す』マキノ出版刊)

「運動が最大酸素摂取量の50%を超えると乳酸がふえ始める」のも、

「最大酸素摂取量の50%以下の運動であれば楽に運動を続けられる」のも事実だが、

それは、「疲労物質といわれる乳酸が血液中に蓄積されない」からではなく、血液中の乳酸の生成と消費がスムーズに行われているからなのである。

話はまったく逆だったのだ。

言い換えると、乳酸がたまるから疲労するのではなくて、疲労した体には乳酸がたまっている。

乳酸は疲労の原因ではなく、結果なのである。

「乳酸が疲労物質なら運動後もずっと残っているはず。

でも実際は運動から1時間もすれば元のレベルに戻ってしまう。

疲労物質ではない何よりの証拠。疲労はもっと複合的な要素で起こる」

と、「乳酸代謝・運動と疲労」を研究テーマとする、八田秀雄・東京大大学院教授。

◎乳酸と乳酸菌

ちなみに、「乳酸」という名称は、牛乳などの糖質を発酵させてチーズやヨーグルトを作るさいに生じ、「酸味」をもつ物質であることに由来する。

人の体のなかでできる乳酸は、乳酸菌とは関係なく、前に記したように、細胞でエネルギーが生成されるとき、糖質が分解されて生じる。

人の体内の乳酸菌は、ご存じのとおり腸内の善玉菌の最も代表的な一つで、免疫力を高めるなどさまざまに有用なはたらきをしてくれる。
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ニコニコ歩き [健康短信]

「東京に行ったとき、浜松町でモノレールを降りたら帝国ホテルとか、パレスホテル、ホテルオークラぐらいまでは歩くことにしています。

帝国ホテルまで30分、オークラまで40分、パレスまででも50分かかりません。

東京駅からだとニューオータニが50分、オークラもやはり50分ぐらいです」と、荒川規矩男・福岡大学名誉教授。
 
循環器学の権威で、先生が開発した生活習慣病の運動療法は「アラカワ・メソッド(荒川方式)」と呼ばれ、WHO(世界保健機関)も推奨している。

荒川方式とは、その人が最高に頑張って出せる力の、半分程度の力で、早足歩きなどの運動をすること。

運動量がその人のもつ能力の50%を超えると、エネルギーとして使われる糖質が不完全燃焼するため、血液の中に「疲労物質」の乳酸がたまってくる。

これを裏返すと、その人がもつ能力の50%以下に抑えた運動であれば、疲労物質は血液中にたまらず、らくに運動を続けることができるわけだ。

この自分の持てる力の半分を出す運動を荒川先生は「ニコニコペース」(ニコニコ話し合いながら歩ける速さ)と名づけて、軽症の高血圧や心臓病の患者たちに勧めた。
 
軽症高血圧(最大血圧160ミリHg前後または最小血圧90~104四ミリHg)の患者の約半数が、10週後には最大血圧が20ミリHg、最小血圧が10ミリHg下がり、20週後には約8割の人が正常血圧になった。

血圧が下がれば、心臓の負担が減る。

また、運動によって心臓の血管にバイパスができ、狭心症の発作がぐんと少なくなる。

心臓の血管(冠動脈)が、動脈硬化のため狭くなり、血液の流れが悪くなるのが狭心症、血管が詰まって血流がストップするのが心筋梗塞だ。

冠動脈は、3本の大きな幹から何本もの枝が分かれているが、枝の側に普段は血液の流れてない別の血管(側副血行路)がある。

心臓に適度の負荷(わずかにきつめの運動)を加えると、心臓は軽い低酸素状態になり、ふだんより多くの酸素を取り入れる必要が生じ、そのため血管が拡張する。

そして、側副血行路が開いて血液が流れるようになり、血管のバイパスができる。

これは、すでに狭心症をもっている人には効果的なリハビリになるし、健康な人にとってはあらゆる生活習慣病の最良の予防法の一つである。

歩く時間は1日30分でOK。

「雨の日も風の日も歩けとは言いません。
1日や2日、休んでもどうってことはない。
そこが薬と違うところです。
薬を1日のみ忘れると具合の悪いこともありますが、運動にはそんな心配はいりません」
と、荒川先生はそう請合ってくださった。

追記・上記の「乳酸=疲労物質」説は、近年の生理・生化学的研究で否定された。

だが、運動強度が50%を超えると、乳酸の血中濃度が上昇し、疲労が生じるという現象じたいは事実である。

詳しくは明日━。
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色白の人へ [健康短信]

  白人に皮膚がんが多いのは、皮膚にメラノサイト(メラニン色素をつくる細胞)の量が少なく、紫外線の影響を受けやすいためだ。

 日本人の皮膚型には、色白型、地黒型、中間型とあるが、問題は色白型の人だ。

 このタイプの皮膚はサンバーン(赤くなる日焼け)を起こしやすいが、それを繰り返していると将来、皮膚がんが発生する確率が高くなる。

 アメリカの調査では、20代のころ、水ぶくれができるような日焼けを4、5回以上した人は、メラノーマ(悪性黒色腫)という皮膚がんの罹患率が高いことが明らかにされている。

 色白の人は、いきなり強い日光で肌を焼くようなことをやってはいけない。

 どうしても日焼けした肌をつくりたいのなら、毎日、短時間の日光浴を続け、徐々にメラニン色素の量をふやしながら焼いていくようにすべきだ。

 夏の正午前後の2時間は、特に紫外線量が多いから、この時間帯はできれば戸外には出ない。

 海水浴なども避けたほうがいい。

 海やプールなどではサンスクリーン剤を使うとよい。

 お勧めはSPF(太陽光線防御指数)値、15以上の製品だ。

 日盛りの道などでは日傘をさすのが一番いいが、でなければ帽子をかぶろう。

 警告・注意!

 カンキツ系の香料の入った香水やオーデコロンを肌にじかにつけたり、レモンパックをしたり、イチジクやセロリをたくさん食べたあとで日光に当たると、日光皮膚炎を起こしやすく、しみもできやすい。

 それらに含まれるソラーレンという成分のせいだ。
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紫外線対策 [ひとこと養生記]

 今日は立夏。

 紫外線の季節が始まる。

 紫外線は、肌を日焼けさせ、しみやしわをつくり、皮膚の老化を進めるだけでなく、白内障や皮膚がんの原因にもなる。

 紫外線障害には、強い直射日光に当たってすぐ現れる「急性反応」と、繰り返し紫外線に当たることによって現れる「慢性反応」とがある。

 以前は、紫外線の急性反応は「日焼け」だけだと考えられていたが、いまはそれに「免疫抑制」が加えられている。

 皮膚にはランゲルハンス細胞という免疫を担当する細胞があるが、これが紫外線に非常に弱い。

 紫外線に当たると、全身の免疫力が低下する。

 水着で何時間も日に当たって真っ赤になるとそのときから免疫が落ちて、その状態が何日間か続く。で、いろんな病気にもかかりやすくなる。

  海水浴のあと、よく子どもが熱を出すのはそのせいだ。

 健康な人でもそうなのだから、ましてご病人は強過ぎる陽射しは避けるべきだ。

 紫外線の慢性反応は「光老化」とも呼ばれる。

 若い人が日焼けすると、こんがりと色がついて健康そうに見えるが、その代償としてやがてしみ・しわなど皮膚の老化現象が現れてくる。

 この皮膚の光老化は浴びた光の量に比例する。

 紫外線は、さらに良性・悪性の腫瘍もつくる。

 良性の腫瘍は、脂漏性角化症といい、顔や手の甲などにできる老人性のイボのことだ。

 悪性腫瘍(皮膚がん)は、日本人は白人に比べると50分の1以下と少ないが、これから増えるがんの一つといわれている。

 まさに紫外線は「死害線」なのだ。

 紫外線は目にもよくない。

 目のレンズに当たる水晶体が白く濁る白内障の要因の一つと考えられている。

 若いうちから紫外線カットの眼鏡をかけるようにすれば、白内障予防に役立つだろう。

 サングラスもかなり紫外線はカットする。

 だが、あまり色の濃いサングラスだと、視界が暗くなるから瞳孔が開き、散乱性の光が入りやすくなり、かえって目が浴びる紫外線量が増えてしまう。

 まぶしさを防ぐためにかける場合も、色の薄いサングラスのほうがよい。

 特に車を運転する時は、濃い色や調光レンズのサングラスは避けたほうがいい。

 濃い色のまま暗いトンネルに突入すると、一瞬、見えない状態になり、危険だ。

 とにかく、人間の皮膚にとっては、ほとんど悪いコトしかしないのが、太陽光線だが、モグラじゃあるまいし、全く日に当たらないというのも、どうかしている。

 ま、光老化の主犯のUVB(中波長紫外線)が最も多い夏の正午前後の2時間ぐらいは、なるべく戸外に出ないようにする、といった注意をしたらいいだろう。

 おすすめは、サンスクリーン剤の使用。

 近年、サンスクリーン剤の性能も飛躍的に改善した。

 日焼け止めの性能を表すSPFとPAはそれぞれUVBとUVAを防ぐ数値を表す。

 SPFは、サンプロテクションファクター(Sun Protection Factor)の略で、主にUV-B(紫外線B波)の防止効果を表す目安の数値。

 選び方のポイントは、通勤やおつかいなど1時間以内のお出かけにはSPF 35程度、1時間以上のレジャーやスポーツには50以上がをおすすめ。

 PAは、プロテクショングレイドオブUVA(Protection Grade of UVA)の略。

 主にUV-A(紫外線A波)の防止効果を表す目安の数値。

 +の多さがUV-Aに対する効果の高さを示し、++++、+++、++、+の4段階があり下記のように設定されている。

 PA++++ 極めて高い効果がある
 PA+++ 非常に効果がある
 PA++ かなり効果がある
 PA+ 効果がある
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オピオイドが感染を増やす [医学・医療短信]

オピオイド鎮痛薬が感染を増やす

神戸大学微生物感染症学講座感染治療学分野教授 岩田健太郎

 研究の背景:注目される免疫抑制作用と感染リスク

 米国では現在、オピオイド鎮痛薬の乱用が深刻な問題になっている。

 オピオイド(opioid)=麻薬性鎮痛薬やその関連合成鎮痛薬などのアルカロイドおよびモルヒネ様活性を有する内因性または合成ペプチド類の総称。

 大量摂取(overdose)と依存(dependency)は日本ではともに「中毒」と呼ばれるが、いずれも深刻な問題だ。

 僕が研修医になった1990年代は、「日本は遅れている。

 患者が痛がっていても麻薬鎮痛薬を全然使わない。制限が厳し過ぎる。

 米国を見ろ。患者にどんどんオピオイドを使って、ペインマネジメントがしっかりしている」と言われたものだ。

 ところが、現在ではそのオピオイドが米国での深刻な病の原因となっているわけで。

 日本はたいてい、米国の医療を良くも悪くも周回遅れで追いかけているので、早晩この問題は、対岸の火事から自らの問題に転じる可能性が高い。

 それはともかく、近年オピオイドの免疫抑制作用が注目されるようになってきた。

 免疫抑制が起きれば、当然次に考えるべきは感染リスクである。それを吟味したのが、今回紹介する研究だ。

 研究のポイント:オピオイドのIPDへの影響を症例対照研究で検討

 本研究は、TennCareと呼ばれるテネシー州のメディケイド(米国の公的医療保険の1つ)プログラムのデータを用いた、後ろ向きnested case-control studyである。

 Nested、字義通りには巣の中に入れた、という意味だろうが、特定の集団を決定し、そこでのケースとコントロールを設定するため、あたかも一般的なコホート研究のように患者を追跡できるタイプのケース・コントロール・スタディー(症例対照研究)だ。

 テネシー州にはABCシステム(active bacterial core surveillance system)というデータベースがあり、清潔部位から肺炎球菌が検出される侵襲性肺炎球菌疾患(invasive pneumococcal diseases;IPD、つまり肺炎球菌菌血症や髄膜炎など)感染例の抽出を行った。

 侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)は、2歳未満の小児で罹患リスクが高い。

 IPDケース1例に対して、診断日・年齢・居住地をマッチさせた最大20例のコントロール例を抽出した。薬局のデータをこれに突き合わせてオピオイドの曝露を吟味した。

 1995年から2014年までのデータを用い、1,233例のIPD患者(ケース群)と、これに対する24,399例のコントロールが見つかった。ケース群では311例が、コントロール群では3,521例がその時点でオピオイド使用者だった。

 オピオイド使用者の比率はケース群で高く、調整オッズ比は1.62(95%CI 1.36~1.92)であった。

 新規使用例で2.44(1.49~4.00)、長時間作用型オピオイド1.87(1.24~2.82)、強力なオピオイドで1.72(1.32~2.25)、高用量で1.75 (1.33~2.29)と、この傾向は顕著になった(それぞれのカテゴリーの詳細は文献参照)。

 一方、過去や最近のオピオイド使用は、IPDとの関連が見られなかった。

 私の考察と臨床現場での考え方:オピオイドのリスクを意識せよ!

 ケース・コントロール・スタディーなので未知の交絡因子の存在は絶対には否定できないが、オピオイド使用の量や強さ、時間的近接性でも一貫した結果が出ている。

 オピオイド使用が免疫抑制をもたらし、これがIPD(侵襲性肺炎球菌感染症)リスクを増していることはほぼ確実だ、というのが本研究の示しているところだと思う。

 がん患者など、疼痛に苦しむ患者は多い。この研究をもって疼痛治療を割り引け、と主張するものではない(もちろん)。

 大切なのは、こうした感染などのリスクがあることを、医療者も患者も認識しておくべきだ、ということだ。その認識が、早期診断、早期治療の一助にはなろう。

 こうした患者に対して、23価あるいは13価の肺炎球菌ワクチン、もしくは両者の組み合わせが、どのくらいリスクを減らしてくれるかも、次の興味深いリサーチクエスチョンである。

 リサーチクエスチョンであるということは、「本当のことはまだ誰にも分からない」という意味なのだが、臨床家として現段階では、オピオイド使用者には両者のワクチンを勧めるのが理にかなっていると僕は思う。

 いずれにしてもIPDのリスクが高いのは、小児と高齢者だけではない。

 悪評高い「机上の空論」、肺炎球菌ワクチン ニューモバックスの高齢者への「5年置き定期接種」は今年度で終了するという。

 注=ニューモバックスNP(一般名:肺炎球菌ワクチン)

臨床現場は、「5年置きに」接種というエクセルファイルで計算したようには動かない。

こんな煩瑣なシステムでは接種率が下がり、予防接種事業のアウトカムに寄与しないのは明らかである。

 オピオイド使用のみならず、いろいろな理由でIPDのリスクは増す。

こうしたさまざまなIPDリスクがあることを認識し、臨床現場の声を聞いて、もう少しマシな制度に仕立て直してほしいぞ、厚労省。

『Medical Tribune』2018年5月1日 配信
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寝だめ、ダメ! [健康短信]

GWは寝だめ…専門家ダメ出し「負債解消、1日で無理」

 連休も後半。

 今日はいいあんばいに雨。寝てすごそうと思ったが、それはダメなんだそう。

 新聞がこう言っている。

 平日は睡眠不足で、土日に寝だめ――。

 ため込んでしまった「睡眠負債」を少しでも返済するため、ゴールデンウィーク(GW)をどう過ごせばいいのか。

 国立精神・神経医療研究センターで睡眠を研究する三島和夫さんに聞いた。

 長期休暇では、日頃のうっぷんを晴らすように、好きなだけ長く寝る。

 起床時間が遅くなるので就寝時間も遅くなり、終盤には完全な夜型生活に――。

 これが、ゴールデンウィークで一番避けてほしいパターンです。

 特に注意が必要なのが、「夜型の人」です。

 人には「夜型」「朝型」「中間型」の3タイプいます。

(自分がどの「型」かは、国立精神・神経医療研究センターが医療機関などと共同で作った「睡眠医療プラットフォーム」のサイトhttp://www.sleepmed.jp/q/meq/meq_form.phpで簡易診断ができます)

 日本では、「早寝早起きは本人の努力次第」という「神話」が根強いですが、全人口の2割程度とされる「夜型」傾向が強い人の多くは、体質的に早起きが苦手。

 普段は努力して早起きして学校や仕事に行っていても、長期休暇に入ると一気に夜型生活に逆戻りしがちです。

 体質的に「夜型の人」がいったん夜型生活になってしまうと、早寝早起きに戻すのは大変です。

 このため、長期休暇中も睡眠のスタイルは大幅に変えないことが大切です。

 就寝時間は普段と同じに、寝不足ならいつもより2時間程度遅めに目覚ましをかける程度で。
二度寝はしないこと。

 午前中の太陽光は体内時計を早める効果が高いため、できれば昼前に30分程度は外出することをお勧めします。

 自宅にいる場合も窓辺に座ってみたり、カーテンを開けたりしましょう。

 日中に眠かったら、夜の就寝時間に影響がでないように1時間程度の昼寝をしてみてください。

 「睡眠負債」を一日で完済するのは無理です。

 ほどほどの寝坊を続けて何日間かかけて、解消することが大切です。

 根本的な解決には、仕事や学校がある普段の日の睡眠改善が欠かせません。

 ただ寝不足が慢性化すると、本人では自覚ができないことがあります。

 どこかの部屋に入って臭いを感じても、しばらくするとわからなくなりますね。

 同じように寝不足状態に体が慣れてしまい、日中の眠気も感じなくなってしまうのです。

 寝不足の自覚を持たないまま、病気のリスクを日々上げている人が多いのが日本の現状です。(聞き手・長富由希子)=朝日新聞 5月2日
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連休、糖尿病のコントロール [医学・医療短信]

連休は糖尿病のコントロールを乱しやすい
 乗り切るための8つの対策


 連休はふだんの生活スタイルを維持するのが難しく、食べ過ぎと運動不足が重なり、余分なストレスをためこみやすい。

血糖コントロールを乱したり、体重を増やす人が多い。

 この時期を快適に乗り切るための8つの対策法をご紹介する。

 わずか5日間、食べ過ぎただけで、血糖値に異変が

 高脂肪の食事がわずか5日間続いただけで、ブドウ糖をエネルギーに変える体のメカニズムに異変が起こる。

 わずか5日間、高脂肪の食事を摂っただけで、筋肉がブドウ糖や脂肪酸を代謝してエネルギーに変えるメカニズムに異変が起こることが、米ヴァージニア工科大学の研究で判明した。

 
「通常の食事では、脂肪のエネルギー比率は25~30%程度です。

これを超える量の脂肪をとり続けると、5日間で筋肉でのエネルギー代謝は悪くなることが判明しました」と研究者は述べている。

 糖尿病は血液中のブドウ糖の濃度が慢性的に高くなる病気だ。

 ブドウ糖は細胞や筋肉でエネルギー源として使われるが、インスリンの仕組みがうまく働かないと、ブドウ糖は肝臓などに十分とりこまれず、血液中にあふれてしまう。

 脂肪細胞が増え過ぎると、インスリンの働きが悪くなる

 肥満になると、血糖を下げるホルモンであるインスリンが細胞の効きが悪くなり、血糖値が高くなる「インスリン抵抗性」が起こりやすくなる。

 これは、糖尿病予備群でも起こる現象だ。

 肥満によって脂肪細胞が増加すると、インスリンの働きを悪くする生理活性物質である「アディポサイトカイン」が放出され、筋肉や脂肪などの組織、肝臓へブドウ糖が取り込まれにくくなる。

「高脂肪の食事をわずか5日間とり続けただけで、体のエネルギーの代謝に悪影響があらわれます。

高脂肪の食事をとり続けると、インスリンの働きが悪くなります」と、研究者は述べている。

 連休中に体重を増やすと、別の時期に減らすのが難しくなる

 米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)などが19~82歳の米国人を対象に行った調査によると、多く人は休日が続くと体重を増やす。

 60%以上が1kg以下の体重増を、20%近くが1~2.27kg未満の体重増を経験するという。

 過体重や肥満の人ほど、連休中に体重を増やす割合が高いという。

「少し体重を減らした方が良い」と指摘された人は、休日にはとりわけ注意が必要だ。

 さらに悪いニュースがある。

 連休中に体重を増やすと、1年の別の時期でダイエットに成功するのが難しくなることが示された。

 連休中は、体重を増やしても1kg以下に抑えるために、対策をすることが必要だ。

 食べ過ぎが1週間続いても、ウォーキングで打ち消すことができる

 休日が続くと食べ過ぎになりがちだ。

 食事で摂取するカロリーが、体が消費するカロリーを上回ると、体重が増えやすくなり、体に有害な影響があらわれる。

 英国のバース大学の研究によると、食べ過ぎが2~3日続いただけで、体のエネルギー代謝は悪くなるという。

 しかし、ウォーキングなどの運動を続けていれば、食べ過ぎによる弊害をある程度打ち消すことができる。

 この研究は国際生理学会で発表された。

 英国のバース大学の研究チームは、26人の健常者を対象に、ふだんよりカロリーの多い食事を1週間続けてもらう実験を行った。

 被験者を2つのグループに分け、片方にはなるべく体を動かさないようにしてもらい、もう片方には1日45分の活発なウォーキングをしてもらった。

 その結果、運動をしなかったグループの脂肪組織を調べたところ、過剰なエネルギーが中性脂肪となって増え、ブドウ糖や脂質が血中に過剰にたまっていた。

 一方で、運動をしたグループでは、エネルギー代謝と関連のある遺伝子があらわれ、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促され、血糖値も改善していた。

「食べ過ぎと運動不足が重なりやすい休日には、体重が増えやすくなります。

 しかし、ウォーキングなどの運動をしていれば、たとえ体重が増えたとしても、体には好ましい変化が起こります。

 休日が続く時期こそ、ふだん以上に運動をするべきです」と、研究者は述べている。

 血糖コントロールを乱しやすい時期 8つの対策で乗り切る

 連休は家族や親戚、仲間が集まり、リラックスして過ごせる機会が増えるが、ふだんの生活スタイルを維持するのが難しくなる。

 そのため食事や運動などに偏りが出たり、余分なストレスをためこむおそれがある。

 休日が続くと、食べ過ぎと運動不足が重なり、血糖コントロールを乱したり、体重を増やす人が多い。

 下記の8つの対策でこの時期を快適に乗り切ろう。

 1 休日をどう過ごすか、計画を練る

 休日は生活が不規則になりがちになり、ふだん通りの食生活を続けるのが難しくなり、運動不足になりやすい。

仕事の片付けや予定外の用事が入ったり、子供の相手を過ごす時間が増えるなど、ストレスがたまりやすい時期だ。

 また、体重コントロールが難しい時期でもある。

「少なくとも、今よりも体重を増やさないようにしよう」という気持ちを強くもつことが大切だ。

 事前に「いつ・どこで・何をするか」という予定を、カレンダーに書き留めておくと、健康的な食事や運動のための時間を確保できるようになる。

 2 快眠はまずは規則正しい生活から

 規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。

 この準備は自分の意志ではコントロールできない。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻にベッドに入ることが必要だ。

 3 夜遅い時間に食事しない

 体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。

 夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として食べ過ぎや睡眠不足につながる。

 4 朝食を抜かない

 朝食をしっかりとることで、その日の3食の食欲をコントロールできるようになる。逆に朝食を抜いて空腹でいると、反動で食べ過ぎてしまうおそれがある。

 なるべく1日に摂取するカロリーの3分の1は朝食でとるようにしたい。

 5 食事はシンプルに健康的に

 休日にいろいろな予定が入ると、食事が単調になりがちになり、外食や調理済み食品を利用する頻度も増える。

 健康的な食事のためには、自宅で食事の支度をするのがベストだが、それが難しい場合は、台所に健康的な食品を置いておこう。

 カット野菜や低脂肪の乳製品、精白されていない米や全粒粉のパンなどであれば、手軽に準備できる。

 6 ストレスをためない

 ストレスは不安や睡眠障害、血圧の上昇など、好ましくない影響をもたらす。

 糖尿病や高血圧症のある人にとっては、血糖や血圧のコントロールに悪影響が出てくるおそれがある。

 ふだん通りの食事を続けられなくなったり、アルコールを飲みすぎたり、運動不足が続くことも、ストレスの原因になる。

 休暇には、想定外の用事が入り忙しくなり、さらに生活が乱れやすくなる。

 この時期に外せない予定を作りすぎないようにし、余裕をもって計画をたてよう。

 7 運動を続ける

 日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。

 30分のウォーキングなどの運動を毎日続けよう。

 運動や身体活動は自然なストレス解消法になる。血糖コントロールや血圧コントロールにもつながり、健康上の利便はたくさんある。

 30分の適度な運動を週に5日行うのが理想だが、それが難しい場合は、1日に10~15分のウォーキングなどの運動を1日に2回取り入れるようにしよう。

 不規則な生活が続く場合でも、運動のための時間を確保するために、カレンダーに運動する予定を書きとめとくと効果的だ。

 8 アルコールに注意

 アルコール類にもカロリーがあり、アルコールには食欲を増進する作用があるため、飲み過ぎは肥満につながる。

 この時期は高カロリーの食事が多いため、相乗的に悪影響があらわれる。

 糖尿病の治療を受けている人は、アルコールにより低血糖の危険性が高まるおそれもある。

 アルコールを飲む場合は、上限を決めて飲み過ぎないようにしよう。
 「節度ある適度な飲酒」の上限は、純アルコール換算で「1日平均20g程度」。

 これは、ビールは中瓶1本(500mL)、清酒は1合(180mL)に相当する。

 インスリンやGLP-1受容体作動薬の保管に注意

 もしもインスリンやGLP-1受容体作動薬といった注射製剤で治療を行っているのなら、これらは高熱により変性し効果が失われやすいので注意が必要だ。

 旅行中は推奨されている気温で保管する必要がある。製剤の保管に適した温度は外箱に記載されてある。

 これらの製剤を車で移動する場合は、直射日光があたる場所には置かないようにしよう。

 熱を遮断し高熱になりにくい容器や袋に入れておくと安心できる。

 飛行機で移動する場合は、航空機の貨物室は高温になることがあるので、手荷物として持ち込んだ方が良い。

糖尿病ネットワーク┃メールマガジン●2018年5月号No.1

記事提供=日本医療・健康情報研究所
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長く続く痛み、実態調査 [医学・医療短信]

≪47都道府県 長く続く痛みに関する実態 2012年vs 2017年比較調査≫

ファイザー株式会社は、全国47都道府県の慢性疼痛を抱える20代以上の男女合計8,924人を対象にインターネット調査を実施した。

調査では、慢性疼痛患者の痛みを我慢する意識と実態の変化を、2012年に実施した調査との経年比較を通して分析し、依然として多くの人に我慢の意識が根付いている実態や、痛みを早期解決できず長期化させている背景について検証した。

調査期間: 2017年6月2日~6月19日 (※2012年の調査は、2012年6月12日~6月15日に実施)

以下はその要旨。

依然として「我慢は美徳?」 痛みに耐える慢性疼痛患者

慢性疼痛を抱える人の7割近くが「痛みは我慢するべき」と回答

長期に痛みを抱えていながらも、3人に1人は医療機関に通院していない

受診するきっかけは、「日常生活に大きな支障が出たとき」が6割以上で最多

「痛みがあっても我慢するべき」と回答した慢性疼痛を抱える人は7割近く(66.6%)にのぼった。

2012年の74.3%より減少したが、依然として多くの人に我慢の意識が根付いている。

「痛い」と簡単に他人に言うべきではないと半数以上(54.1%)が回答し、2012年と同程度(55.7%)。

長く続く痛みに対して「痛みが治ることを諦めている」と回答した人は約7割(69.1%)と、多くの人が痛みが治ることを諦めている実態が明らかに。

約3割(27.4%)に「神経障害性疼痛」の疑いがあることが判明。 

神経障害性疼痛の疑いがある慢性疼痛患者の約3割(27.0%)が、医療機関を未受診。

「痛いの痛いの飛んでいかない」 痛くても通院を思いとどまる

通院していない慢性疼痛を抱える人は3人に1人(32.8%)。

受診していない理由は「通院するほどでもないと思う(36.6%)」が最多

続いて、「通院しても治らない気がする(33.8%)」、「通院する費用がかかる(31.9%)」。

痛みを感じたときの対処法の最多は「病院・医院で処方された薬」(52.0%)で、続いて「自己対処している(柔軟体操、マッサージ、冷やす・温めるなど)」(32.6%)。

医療機関を受診するきっかけは、「日常生活に大きな支障が出たとき(62.2%)」、「あまりにも症状が辛いと感じたとき(56.3%)」、「具体的な疾患の可能性があると分かったとき(27.7%)」。

47都道府県で差がある痛みに対する意識と対処

「長く続く痛み」を感じた際に我慢する人は7割以上(74.1%)。

痛みを我慢していると回答した割合が最も高かったのは、栃木県(81.6%)、最も低かったのは神奈川県(68.3%)。

「痛みがあっても我慢するべき」と回答した割合が最も多かったのは栃木県(74.7%)。

最も少なかった秋田県(60.2%)と14.5ptの開き。

長く続く痛みに対して「痛みが治ることを諦めている」と回答した割合が最も高かったのは愛知県(75.7%)。

最も少なかったのは沖縄県(60.6%)と15.1ptの開き。


調査結果についてのコメント

慶應義塾大学医学部整形外科 教授 中村 雅也先生

痛みは原因によって、大きく「炎症や刺激による痛み(侵害受容性痛)」と「神経の痛み(神経障害性痛)」に分けられ、どちらの原因も関与している「混合性の痛み」もあります。

このように痛みには種類があり、運動器の痛みが長期化することでQOL(生命・生活の質)にも大きな影響を及ぼすことがすでに報告されており、種類に応じた早期の診断と適切な治療を行う必要があります。

今回、ファイザーが実施した調査は、慢性疼痛を抱えている方を対象として「痛みを我慢しているか」といった意識や痛みを感じたときの対処の実態に着目したもので、2012年に実施した同様の調査結果との経年比較も行っています。

5年前の調査結果にからは微減したものの、依然として「痛みがあっても我慢すべき」と回答した慢性疼痛を抱える患者さんは7割近くおり、長く続く痛みに対して「痛みが治ることを諦めている」と回答した人も7割にのぼりました。

また、慢性的な痛みが原因で、仕事や家事などの日常生活にストレスを感じていると回答した人は8割近く(76.9%、Q3_3)いるにもかかわらず、慢性疼痛を抱える人の3人に1人は医療機関に通院していません。

受診しない理由は、「通院するほどでもないと思う」が最も多く、痛みを軽くみている人が多いことが浮き彫りになりました。

痛みを感じたときの対処法として「自己 対処する(柔軟体操、マッサージ、冷やす・温めるなど)」に留まっている方も3割以上みられました。

実際に医療機関を受診するきっかけは「日常生活に大きな支障が出たとき」が最も多く、次いで「あまりに症状が辛いと感じたとき」となっており、日常生活に大きな影響が出るまで、放置してしまう傾向がうかがえます。

「痛みが治ることを諦めている」という方もいるかもしれませんが、自身の痛みを正確に把握して適切な治療を行うためには、医療機関を受診することが重要です。

痛みを我慢して放置するのではなく、痛みと向き合って早期治療に取り組みましょう。
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