連休、糖尿病のコントロール [医学・医療短信]
連休は糖尿病のコントロールを乱しやすい
乗り切るための8つの対策
連休はふだんの生活スタイルを維持するのが難しく、食べ過ぎと運動不足が重なり、余分なストレスをためこみやすい。
血糖コントロールを乱したり、体重を増やす人が多い。
この時期を快適に乗り切るための8つの対策法をご紹介する。
わずか5日間、食べ過ぎただけで、血糖値に異変が
高脂肪の食事がわずか5日間続いただけで、ブドウ糖をエネルギーに変える体のメカニズムに異変が起こる。
わずか5日間、高脂肪の食事を摂っただけで、筋肉がブドウ糖や脂肪酸を代謝してエネルギーに変えるメカニズムに異変が起こることが、米ヴァージニア工科大学の研究で判明した。
「通常の食事では、脂肪のエネルギー比率は25~30%程度です。
これを超える量の脂肪をとり続けると、5日間で筋肉でのエネルギー代謝は悪くなることが判明しました」と研究者は述べている。
糖尿病は血液中のブドウ糖の濃度が慢性的に高くなる病気だ。
ブドウ糖は細胞や筋肉でエネルギー源として使われるが、インスリンの仕組みがうまく働かないと、ブドウ糖は肝臓などに十分とりこまれず、血液中にあふれてしまう。
脂肪細胞が増え過ぎると、インスリンの働きが悪くなる
肥満になると、血糖を下げるホルモンであるインスリンが細胞の効きが悪くなり、血糖値が高くなる「インスリン抵抗性」が起こりやすくなる。
これは、糖尿病予備群でも起こる現象だ。
肥満によって脂肪細胞が増加すると、インスリンの働きを悪くする生理活性物質である「アディポサイトカイン」が放出され、筋肉や脂肪などの組織、肝臓へブドウ糖が取り込まれにくくなる。
「高脂肪の食事をわずか5日間とり続けただけで、体のエネルギーの代謝に悪影響があらわれます。
高脂肪の食事をとり続けると、インスリンの働きが悪くなります」と、研究者は述べている。
連休中に体重を増やすと、別の時期に減らすのが難しくなる
米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)などが19~82歳の米国人を対象に行った調査によると、多く人は休日が続くと体重を増やす。
60%以上が1kg以下の体重増を、20%近くが1~2.27kg未満の体重増を経験するという。
過体重や肥満の人ほど、連休中に体重を増やす割合が高いという。
「少し体重を減らした方が良い」と指摘された人は、休日にはとりわけ注意が必要だ。
さらに悪いニュースがある。
連休中に体重を増やすと、1年の別の時期でダイエットに成功するのが難しくなることが示された。
連休中は、体重を増やしても1kg以下に抑えるために、対策をすることが必要だ。
食べ過ぎが1週間続いても、ウォーキングで打ち消すことができる
休日が続くと食べ過ぎになりがちだ。
食事で摂取するカロリーが、体が消費するカロリーを上回ると、体重が増えやすくなり、体に有害な影響があらわれる。
英国のバース大学の研究によると、食べ過ぎが2~3日続いただけで、体のエネルギー代謝は悪くなるという。
しかし、ウォーキングなどの運動を続けていれば、食べ過ぎによる弊害をある程度打ち消すことができる。
この研究は国際生理学会で発表された。
英国のバース大学の研究チームは、26人の健常者を対象に、ふだんよりカロリーの多い食事を1週間続けてもらう実験を行った。
被験者を2つのグループに分け、片方にはなるべく体を動かさないようにしてもらい、もう片方には1日45分の活発なウォーキングをしてもらった。
その結果、運動をしなかったグループの脂肪組織を調べたところ、過剰なエネルギーが中性脂肪となって増え、ブドウ糖や脂質が血中に過剰にたまっていた。
一方で、運動をしたグループでは、エネルギー代謝と関連のある遺伝子があらわれ、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促され、血糖値も改善していた。
「食べ過ぎと運動不足が重なりやすい休日には、体重が増えやすくなります。
しかし、ウォーキングなどの運動をしていれば、たとえ体重が増えたとしても、体には好ましい変化が起こります。
休日が続く時期こそ、ふだん以上に運動をするべきです」と、研究者は述べている。
血糖コントロールを乱しやすい時期 8つの対策で乗り切る
連休は家族や親戚、仲間が集まり、リラックスして過ごせる機会が増えるが、ふだんの生活スタイルを維持するのが難しくなる。
そのため食事や運動などに偏りが出たり、余分なストレスをためこむおそれがある。
休日が続くと、食べ過ぎと運動不足が重なり、血糖コントロールを乱したり、体重を増やす人が多い。
下記の8つの対策でこの時期を快適に乗り切ろう。
1 休日をどう過ごすか、計画を練る
休日は生活が不規則になりがちになり、ふだん通りの食生活を続けるのが難しくなり、運動不足になりやすい。
仕事の片付けや予定外の用事が入ったり、子供の相手を過ごす時間が増えるなど、ストレスがたまりやすい時期だ。
また、体重コントロールが難しい時期でもある。
「少なくとも、今よりも体重を増やさないようにしよう」という気持ちを強くもつことが大切だ。
事前に「いつ・どこで・何をするか」という予定を、カレンダーに書き留めておくと、健康的な食事や運動のための時間を確保できるようになる。
2 快眠はまずは規則正しい生活から
規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。
この準備は自分の意志ではコントロールできない。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻にベッドに入ることが必要だ。
3 夜遅い時間に食事しない
体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。
夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として食べ過ぎや睡眠不足につながる。
4 朝食を抜かない
朝食をしっかりとることで、その日の3食の食欲をコントロールできるようになる。逆に朝食を抜いて空腹でいると、反動で食べ過ぎてしまうおそれがある。
なるべく1日に摂取するカロリーの3分の1は朝食でとるようにしたい。
5 食事はシンプルに健康的に
休日にいろいろな予定が入ると、食事が単調になりがちになり、外食や調理済み食品を利用する頻度も増える。
健康的な食事のためには、自宅で食事の支度をするのがベストだが、それが難しい場合は、台所に健康的な食品を置いておこう。
カット野菜や低脂肪の乳製品、精白されていない米や全粒粉のパンなどであれば、手軽に準備できる。
6 ストレスをためない
ストレスは不安や睡眠障害、血圧の上昇など、好ましくない影響をもたらす。
糖尿病や高血圧症のある人にとっては、血糖や血圧のコントロールに悪影響が出てくるおそれがある。
ふだん通りの食事を続けられなくなったり、アルコールを飲みすぎたり、運動不足が続くことも、ストレスの原因になる。
休暇には、想定外の用事が入り忙しくなり、さらに生活が乱れやすくなる。
この時期に外せない予定を作りすぎないようにし、余裕をもって計画をたてよう。
7 運動を続ける
日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。
30分のウォーキングなどの運動を毎日続けよう。
運動や身体活動は自然なストレス解消法になる。血糖コントロールや血圧コントロールにもつながり、健康上の利便はたくさんある。
30分の適度な運動を週に5日行うのが理想だが、それが難しい場合は、1日に10~15分のウォーキングなどの運動を1日に2回取り入れるようにしよう。
不規則な生活が続く場合でも、運動のための時間を確保するために、カレンダーに運動する予定を書きとめとくと効果的だ。
8 アルコールに注意
アルコール類にもカロリーがあり、アルコールには食欲を増進する作用があるため、飲み過ぎは肥満につながる。
この時期は高カロリーの食事が多いため、相乗的に悪影響があらわれる。
糖尿病の治療を受けている人は、アルコールにより低血糖の危険性が高まるおそれもある。
アルコールを飲む場合は、上限を決めて飲み過ぎないようにしよう。
「節度ある適度な飲酒」の上限は、純アルコール換算で「1日平均20g程度」。
これは、ビールは中瓶1本(500mL)、清酒は1合(180mL)に相当する。
インスリンやGLP-1受容体作動薬の保管に注意
もしもインスリンやGLP-1受容体作動薬といった注射製剤で治療を行っているのなら、これらは高熱により変性し効果が失われやすいので注意が必要だ。
旅行中は推奨されている気温で保管する必要がある。製剤の保管に適した温度は外箱に記載されてある。
これらの製剤を車で移動する場合は、直射日光があたる場所には置かないようにしよう。
熱を遮断し高熱になりにくい容器や袋に入れておくと安心できる。
飛行機で移動する場合は、航空機の貨物室は高温になることがあるので、手荷物として持ち込んだ方が良い。
糖尿病ネットワーク┃メールマガジン●2018年5月号No.1
記事提供=日本医療・健康情報研究所
乗り切るための8つの対策
連休はふだんの生活スタイルを維持するのが難しく、食べ過ぎと運動不足が重なり、余分なストレスをためこみやすい。
血糖コントロールを乱したり、体重を増やす人が多い。
この時期を快適に乗り切るための8つの対策法をご紹介する。
わずか5日間、食べ過ぎただけで、血糖値に異変が
高脂肪の食事がわずか5日間続いただけで、ブドウ糖をエネルギーに変える体のメカニズムに異変が起こる。
わずか5日間、高脂肪の食事を摂っただけで、筋肉がブドウ糖や脂肪酸を代謝してエネルギーに変えるメカニズムに異変が起こることが、米ヴァージニア工科大学の研究で判明した。
「通常の食事では、脂肪のエネルギー比率は25~30%程度です。
これを超える量の脂肪をとり続けると、5日間で筋肉でのエネルギー代謝は悪くなることが判明しました」と研究者は述べている。
糖尿病は血液中のブドウ糖の濃度が慢性的に高くなる病気だ。
ブドウ糖は細胞や筋肉でエネルギー源として使われるが、インスリンの仕組みがうまく働かないと、ブドウ糖は肝臓などに十分とりこまれず、血液中にあふれてしまう。
脂肪細胞が増え過ぎると、インスリンの働きが悪くなる
肥満になると、血糖を下げるホルモンであるインスリンが細胞の効きが悪くなり、血糖値が高くなる「インスリン抵抗性」が起こりやすくなる。
これは、糖尿病予備群でも起こる現象だ。
肥満によって脂肪細胞が増加すると、インスリンの働きを悪くする生理活性物質である「アディポサイトカイン」が放出され、筋肉や脂肪などの組織、肝臓へブドウ糖が取り込まれにくくなる。
「高脂肪の食事をわずか5日間とり続けただけで、体のエネルギーの代謝に悪影響があらわれます。
高脂肪の食事をとり続けると、インスリンの働きが悪くなります」と、研究者は述べている。
連休中に体重を増やすと、別の時期に減らすのが難しくなる
米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)などが19~82歳の米国人を対象に行った調査によると、多く人は休日が続くと体重を増やす。
60%以上が1kg以下の体重増を、20%近くが1~2.27kg未満の体重増を経験するという。
過体重や肥満の人ほど、連休中に体重を増やす割合が高いという。
「少し体重を減らした方が良い」と指摘された人は、休日にはとりわけ注意が必要だ。
さらに悪いニュースがある。
連休中に体重を増やすと、1年の別の時期でダイエットに成功するのが難しくなることが示された。
連休中は、体重を増やしても1kg以下に抑えるために、対策をすることが必要だ。
食べ過ぎが1週間続いても、ウォーキングで打ち消すことができる
休日が続くと食べ過ぎになりがちだ。
食事で摂取するカロリーが、体が消費するカロリーを上回ると、体重が増えやすくなり、体に有害な影響があらわれる。
英国のバース大学の研究によると、食べ過ぎが2~3日続いただけで、体のエネルギー代謝は悪くなるという。
しかし、ウォーキングなどの運動を続けていれば、食べ過ぎによる弊害をある程度打ち消すことができる。
この研究は国際生理学会で発表された。
英国のバース大学の研究チームは、26人の健常者を対象に、ふだんよりカロリーの多い食事を1週間続けてもらう実験を行った。
被験者を2つのグループに分け、片方にはなるべく体を動かさないようにしてもらい、もう片方には1日45分の活発なウォーキングをしてもらった。
その結果、運動をしなかったグループの脂肪組織を調べたところ、過剰なエネルギーが中性脂肪となって増え、ブドウ糖や脂質が血中に過剰にたまっていた。
一方で、運動をしたグループでは、エネルギー代謝と関連のある遺伝子があらわれ、ブドウ糖や脂肪酸の利用が促され、血糖値も改善していた。
「食べ過ぎと運動不足が重なりやすい休日には、体重が増えやすくなります。
しかし、ウォーキングなどの運動をしていれば、たとえ体重が増えたとしても、体には好ましい変化が起こります。
休日が続く時期こそ、ふだん以上に運動をするべきです」と、研究者は述べている。
血糖コントロールを乱しやすい時期 8つの対策で乗り切る
連休は家族や親戚、仲間が集まり、リラックスして過ごせる機会が増えるが、ふだんの生活スタイルを維持するのが難しくなる。
そのため食事や運動などに偏りが出たり、余分なストレスをためこむおそれがある。
休日が続くと、食べ過ぎと運動不足が重なり、血糖コントロールを乱したり、体重を増やす人が多い。
下記の8つの対策でこの時期を快適に乗り切ろう。
1 休日をどう過ごすか、計画を練る
休日は生活が不規則になりがちになり、ふだん通りの食生活を続けるのが難しくなり、運動不足になりやすい。
仕事の片付けや予定外の用事が入ったり、子供の相手を過ごす時間が増えるなど、ストレスがたまりやすい時期だ。
また、体重コントロールが難しい時期でもある。
「少なくとも、今よりも体重を増やさないようにしよう」という気持ちを強くもつことが大切だ。
事前に「いつ・どこで・何をするか」という予定を、カレンダーに書き留めておくと、健康的な食事や運動のための時間を確保できるようになる。
2 快眠はまずは規則正しい生活から
規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。
この準備は自分の意志ではコントロールできない。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻にベッドに入ることが必要だ。
3 夜遅い時間に食事しない
体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。
夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として食べ過ぎや睡眠不足につながる。
4 朝食を抜かない
朝食をしっかりとることで、その日の3食の食欲をコントロールできるようになる。逆に朝食を抜いて空腹でいると、反動で食べ過ぎてしまうおそれがある。
なるべく1日に摂取するカロリーの3分の1は朝食でとるようにしたい。
5 食事はシンプルに健康的に
休日にいろいろな予定が入ると、食事が単調になりがちになり、外食や調理済み食品を利用する頻度も増える。
健康的な食事のためには、自宅で食事の支度をするのがベストだが、それが難しい場合は、台所に健康的な食品を置いておこう。
カット野菜や低脂肪の乳製品、精白されていない米や全粒粉のパンなどであれば、手軽に準備できる。
6 ストレスをためない
ストレスは不安や睡眠障害、血圧の上昇など、好ましくない影響をもたらす。
糖尿病や高血圧症のある人にとっては、血糖や血圧のコントロールに悪影響が出てくるおそれがある。
ふだん通りの食事を続けられなくなったり、アルコールを飲みすぎたり、運動不足が続くことも、ストレスの原因になる。
休暇には、想定外の用事が入り忙しくなり、さらに生活が乱れやすくなる。
この時期に外せない予定を作りすぎないようにし、余裕をもって計画をたてよう。
7 運動を続ける
日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。
30分のウォーキングなどの運動を毎日続けよう。
運動や身体活動は自然なストレス解消法になる。血糖コントロールや血圧コントロールにもつながり、健康上の利便はたくさんある。
30分の適度な運動を週に5日行うのが理想だが、それが難しい場合は、1日に10~15分のウォーキングなどの運動を1日に2回取り入れるようにしよう。
不規則な生活が続く場合でも、運動のための時間を確保するために、カレンダーに運動する予定を書きとめとくと効果的だ。
8 アルコールに注意
アルコール類にもカロリーがあり、アルコールには食欲を増進する作用があるため、飲み過ぎは肥満につながる。
この時期は高カロリーの食事が多いため、相乗的に悪影響があらわれる。
糖尿病の治療を受けている人は、アルコールにより低血糖の危険性が高まるおそれもある。
アルコールを飲む場合は、上限を決めて飲み過ぎないようにしよう。
「節度ある適度な飲酒」の上限は、純アルコール換算で「1日平均20g程度」。
これは、ビールは中瓶1本(500mL)、清酒は1合(180mL)に相当する。
インスリンやGLP-1受容体作動薬の保管に注意
もしもインスリンやGLP-1受容体作動薬といった注射製剤で治療を行っているのなら、これらは高熱により変性し効果が失われやすいので注意が必要だ。
旅行中は推奨されている気温で保管する必要がある。製剤の保管に適した温度は外箱に記載されてある。
これらの製剤を車で移動する場合は、直射日光があたる場所には置かないようにしよう。
熱を遮断し高熱になりにくい容器や袋に入れておくと安心できる。
飛行機で移動する場合は、航空機の貨物室は高温になることがあるので、手荷物として持ち込んだ方が良い。
糖尿病ネットワーク┃メールマガジン●2018年5月号No.1
記事提供=日本医療・健康情報研究所
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