安倍さん、大丈夫ですか? [健康小文]
安倍晋三・首相の苦闘がつづいている。
体調は大丈夫なんだろうか。
2007年、第一次安倍内閣の首相を辞任したときの理由の大きな一つは「体調不良」。
発表された病名は「機能性胃腸障害」だった。
内視鏡検査では何ら異常は見つからないのに、胃もたれ、胃の痛み、胸やけ、下痢などの胃腸症状が続く病態を示す病名だ。
以前はそうした病態はたいてい大抵「慢性胃炎」と診断された。
内視鏡で見て、炎症があれば、もちろんのこと、なくても「慢性胃炎」といわれた。
1998年、ローマで開かれた欧州消化器病学会で、「内視鏡検査では異常は認められないが、長期間にわたって胃腸症状が出没し、原因不明のものは、<ファンクショナル・ディスペプシア>と呼ぼう」と決められた。
日本の消化器関連の学会もそれを受けて、「機能性ディスペプシア」という病名をつくった。
ディスペプシアは、英和辞典には「消化不良」とあるが、医学的には「上腹部消化管症状」を意味する。
わかりにくい病名だと、「機能性胃腸症」を推す意見もあったが、「機能性ディスペプシア」に決まったそうだ。
だが、安倍さんの主治医も、そのカタカナ病名は使わなかった。
その後、安倍さんは、本当の病名は「潰瘍性大腸炎」と公表された。
大腸の粘膜に炎症が生じ、潰瘍や糜爛(びらん)ができ、激しい腹痛や下痢、粘血便(血液や粘液、ウミなどが混じった便)が出る、原因不明の難病だ。
同じように腸管に炎症が生じ、下痢などの症状が起こる病気の、クローン病と合わせて「炎症性腸疾患」と呼ばれる。
潰瘍性大腸炎の炎症は、大腸だけに限られるが、クローン病では口から肛門までの消化管のすべてに炎症が起こる可能性がある(一般的には小腸から大腸にかけてが多い)。
「潰瘍性大腸炎は、焼夷弾で焼け野原。クローン病はテロリストが仕掛けた爆弾。一点集中したところに深い穴があく」と、専門医はたとえる。
どちらも活動期(再燃期)と緩解期を繰り返すタイプが最も多い。
活動期の程度は軽症、中等症、重症、劇症に分類される。
軽症は下痢の回数が1日4回以下で、血便などの程度も軽く、全身症状はない。
重症になると、1日10回以上もトイレに行き、食事もできなくなる。
栄養がとれないからげっそりやせる。
潰瘍性大腸炎は、1859年、イギリスで初めて報告された。
わが日本は幕末、安政の大獄や桜田門外の変が起こったころだ。
クローン病は、1932年、ニューヨークのマウントサイナイ病院の内科医、バーナード・クローンが報告した。
日本人には少ない病気だったが、近年急増している。
現在の患者数は、潰瘍性大腸炎約16万人、毎年5000人程度増加している。
クローン病の患者数は約4万人以上。
どちらも自己免疫疾患といわれている。
自己免疫疾患とは、病気に対抗し体を守る免疫反応のしくみが乱れ、自分自身の体を攻撃してしまう病気。
自己抗体が関節を攻撃すると関節リウマチになるように、炎症性腸疾患では、大腸などの腸管を攻撃する。
もう一つ、重要なのは食事で、食生活の欧米化(動物性脂肪の摂取量の増加)につれて、潰瘍性大腸炎もクローン病も増えている。
特にクローン病には食生活の影響が大きいことが、厚労省研究班の食事調査で明らかにされた。
一方、潰瘍性大腸炎で特徴的なのはストレスで、病気になる前、あるいは病気が再燃する前に、非常に苦悩した症例が多いという。
そう聞くと、つい、あの首相辞任時の憔悴しきった感じの安倍さんを思い出す。
昨今、テレビで見る安倍さんにはあの面影は、ほとんどうかがえない。
いま、いくつかよく効く新薬ができて、そのなかの一つが安倍さんにも著効を呈し、寛解同然の状態であるという。
なお、潰瘍性大腸炎もクローン病も、平均寿命は普通の人と変わらない。
体調は大丈夫なんだろうか。
2007年、第一次安倍内閣の首相を辞任したときの理由の大きな一つは「体調不良」。
発表された病名は「機能性胃腸障害」だった。
内視鏡検査では何ら異常は見つからないのに、胃もたれ、胃の痛み、胸やけ、下痢などの胃腸症状が続く病態を示す病名だ。
以前はそうした病態はたいてい大抵「慢性胃炎」と診断された。
内視鏡で見て、炎症があれば、もちろんのこと、なくても「慢性胃炎」といわれた。
1998年、ローマで開かれた欧州消化器病学会で、「内視鏡検査では異常は認められないが、長期間にわたって胃腸症状が出没し、原因不明のものは、<ファンクショナル・ディスペプシア>と呼ぼう」と決められた。
日本の消化器関連の学会もそれを受けて、「機能性ディスペプシア」という病名をつくった。
ディスペプシアは、英和辞典には「消化不良」とあるが、医学的には「上腹部消化管症状」を意味する。
わかりにくい病名だと、「機能性胃腸症」を推す意見もあったが、「機能性ディスペプシア」に決まったそうだ。
だが、安倍さんの主治医も、そのカタカナ病名は使わなかった。
その後、安倍さんは、本当の病名は「潰瘍性大腸炎」と公表された。
大腸の粘膜に炎症が生じ、潰瘍や糜爛(びらん)ができ、激しい腹痛や下痢、粘血便(血液や粘液、ウミなどが混じった便)が出る、原因不明の難病だ。
同じように腸管に炎症が生じ、下痢などの症状が起こる病気の、クローン病と合わせて「炎症性腸疾患」と呼ばれる。
潰瘍性大腸炎の炎症は、大腸だけに限られるが、クローン病では口から肛門までの消化管のすべてに炎症が起こる可能性がある(一般的には小腸から大腸にかけてが多い)。
「潰瘍性大腸炎は、焼夷弾で焼け野原。クローン病はテロリストが仕掛けた爆弾。一点集中したところに深い穴があく」と、専門医はたとえる。
どちらも活動期(再燃期)と緩解期を繰り返すタイプが最も多い。
活動期の程度は軽症、中等症、重症、劇症に分類される。
軽症は下痢の回数が1日4回以下で、血便などの程度も軽く、全身症状はない。
重症になると、1日10回以上もトイレに行き、食事もできなくなる。
栄養がとれないからげっそりやせる。
潰瘍性大腸炎は、1859年、イギリスで初めて報告された。
わが日本は幕末、安政の大獄や桜田門外の変が起こったころだ。
クローン病は、1932年、ニューヨークのマウントサイナイ病院の内科医、バーナード・クローンが報告した。
日本人には少ない病気だったが、近年急増している。
現在の患者数は、潰瘍性大腸炎約16万人、毎年5000人程度増加している。
クローン病の患者数は約4万人以上。
どちらも自己免疫疾患といわれている。
自己免疫疾患とは、病気に対抗し体を守る免疫反応のしくみが乱れ、自分自身の体を攻撃してしまう病気。
自己抗体が関節を攻撃すると関節リウマチになるように、炎症性腸疾患では、大腸などの腸管を攻撃する。
もう一つ、重要なのは食事で、食生活の欧米化(動物性脂肪の摂取量の増加)につれて、潰瘍性大腸炎もクローン病も増えている。
特にクローン病には食生活の影響が大きいことが、厚労省研究班の食事調査で明らかにされた。
一方、潰瘍性大腸炎で特徴的なのはストレスで、病気になる前、あるいは病気が再燃する前に、非常に苦悩した症例が多いという。
そう聞くと、つい、あの首相辞任時の憔悴しきった感じの安倍さんを思い出す。
昨今、テレビで見る安倍さんにはあの面影は、ほとんどうかがえない。
いま、いくつかよく効く新薬ができて、そのなかの一つが安倍さんにも著効を呈し、寛解同然の状態であるという。
なお、潰瘍性大腸炎もクローン病も、平均寿命は普通の人と変わらない。