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認知症VS多様性スコア [健康短信]

認知症に備える 偏食せず何でも食べる

「認知症予防に効果的」と言われる食材はたくさんあるが、何をどのように食べればいいのだろうか。

 最新の研究では、「偏食せず何でも食べる人」ほど認知機能が下がるリスクが低いという結果が出た。

 愛知県大府市に住む佐々木直子さん(89)は、90代目前の今も、毎日のように新聞記事を切り抜いたり体操教室に通ったりして元気に過ごしている。

 5月のある日の朝食は、茶わん1杯のご飯に卵焼き、焼きニンニク、大根や菜っ葉の漬物、焼きのり……と盛りだくさん。

 実家が魚屋だったことから、今もサバのみそ煮などの魚料理が大好きだ。

 毎日200ミリリットルの牛乳を飲むことも欠かさない。

「元気の源はよくかんで何でも食べること。戦時中に育ったから、食べ物のありがたみがよくわかる」と笑う。

 大府市にある国立長寿医療研究センターでは、地域の高齢者約2300人を対象に、1997年から大規模な追跡調査を実施。

 認知症予防に関する研究を幅広く続けている。

 食事に関する研究もその一つで、魚や乳製品を食べることは、認知症につながる認知機能低下を抑える効果があるという研究結果が出た。

 中でも2016年にセンターが発表した研究成果では、佐々木さんのように偏食せず何でも食べると、認知機能低下を抑えることが示された。

 何でも食べることがなぜ認知症予防に効果的なのか。

 同センターに、調査を担当する「NILS-LSA活用研究室」の大塚礼室長(42)を訪ねた。

 ●抗酸化・炎症、鍵に
 「『認知症予防に効果的』とされている食材はいろいろありますが、前提として、食事だけでは認知症は防げません。

 遺伝のほか運動や生活環境など複数要因の一つとして食生活も関わってくるという考え方をしてほしい」。

 大塚さんはそう話す。その上で、

「これまでのさまざまな研究データから、抗酸化作用や抗炎症作用のある栄養素が効果的ということが言えます」と解説する。

 認知症には複数のタイプがあり、たとえば、国内の認知症患者の6割以上を占めると言われる「アルツハイマー型認知症」は、脳細胞の酸化ストレス(体がさびることによる悪影響)が発症に関係すると考えられている。

 抗酸化・抗炎症作用のある栄養素を含む食材は、こうした酸化ストレスや炎症から脳を守る効果があるという。

 また、「脳血管性認知症」は、脳梗塞(こうそく)や脳出血によって引き起こされることもある。

 そのため、動脈硬化予防や血圧低下に効果のある食事が発症リスクを抑えると見られる。

 とはいえ、たとえば魚が効果的だとしても、毎日魚だけを食べるわけにはいかない。

 栄養素同士の組み合わせもある。

 だからこそ「何をどう食べるか」という食生活のスタイルが重要となる。

 ●「地中海食」を推奨

 海外の研究結果を基に国際的に推奨されているのは、イタリア料理に代表される「地中海食」だ。

 魚や野菜、果物、オリーブ油、ワインといった抗酸化・抗炎症作用のある食品が多い。

「オリーブ油を使った料理やワインなんて日常的に食べたり飲んだりしていない」という人は、和食にするよう意識するといいという。

 魚や野菜、豆類をバランスよく取れて、地中海食と同様に認知症の発症リスクを下げるとする国内研究がある。

 ただし、和食はみそやしょうゆなどで塩分を多く取りがちで、脳血管性認知症の要因となる高血圧や動脈硬化のリスクが高まるため、減塩を心がけることが必要という。

 ●品数多いほど効果

 さらにわかりやすいのが、冒頭で紹介した「何でもいいからとにかく多品目を食べる」という食生活スタイル。

 国立長寿医療研究センターが16年に発表した研究結果では、一度の食事でより多い品目を食べている「多様性の高い食事」の人ほど、認知機能低下のリスクが下がることが分かった。

 研究では、60~81歳の570人について、連続3日間の食事の献立を記録。

 穀類や野菜類、肉類などそれぞれの食品群の品目の多さで1回の食事の「多様性スコア」を計算した。

 たとえば、朝食をパンとコーヒーだけで済ませる人ほどスコアが低く、みそ汁やご飯、漬物、卵焼きなど、品数や使われた食材の種類が多い人ほどスコアが高くなる。

 スコアが最も低いグループに比べて、最も高いグループは、認知機能低下のリスクが44%低くなるという結果が出た。

 一つ一つの栄養素の摂取量やバランスを常に意識することは難しくても、幅広い食材をいつも取ることを心がける。

 毎日少しずつ違う食べ物を取り入れていくことから食生活上の予防を始めたい。

 研究によると、多様性スコアが高い人ほど果物や乳製品、豆類、肉、魚などをより多く食べていたという。

 加齢に伴い、男女共通して果物や乳製品の摂取量は下がる傾向にあり、女性に限っては豆類も食べる量が減っていた。

 果物や乳製品などを意識してメニューに加えることで、より効果的に多様性のある食事が取れることになる。

 食事の多様性を保つためには、献立を考えたり複数の食材を購入して準備したりと、複雑な工程をこなす必要もある。

 大塚さんは「手のかかったものをきちんと食べることは、栄養素とはまた違った面から認知機能への好影響があるとも考えられる」と話した。【塩田彩】

毎日新聞2018年5月20日 東京朝刊
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