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骨折予防にサプリは効くか? [医学・医療短信]

米・骨折予防でサプリの非推奨を継続
USPSTFが2013年の勧告を改訂

 米国予防医学専門委員会(USPSTF)は、2013年に発表した「成人の骨折予防を目的としたビタミンDおよびカルシウム(Ca)のサプリメント摂取」についての勧告を改訂した。

 2013年以降に発表された報告を合わせて解析した結果「地域在住の成人に対し、骨折の予防(初発予防、以下同)を目的にビタミンDおよびCaサプリの単独あるいは併用摂取を推奨するためのエビデンスは十分でない」との結論に達し、従来通り「骨折予防目的でのビタミンD、Ca摂取を推奨しない」こととした。

 全文はJAMA(2018; 319: 1592-1599)に掲載された。

低用量摂取では有意な予防効果なし

 高齢化に伴い、疾患や死亡の主な原因として骨粗鬆症性骨折が注目されている。

 米国内の骨粗鬆症性骨折件数は、2005年の200万件から2025年には300万件超に増加するとみられている。

 加えて、大腿骨近位部骨折から1年以内に患者の約40%は自立歩行が困難となり、約60%は日常生活での介助が必要となる。

 1年以内の死亡率は20~30%で、女性より男性で有意に高いと報告されている。

 そこで、USPSTFは2013年以降に発表されたビタミンDまたはCa日の摂取と骨折の関連を検討した論文に関してシステマチックレビューを行った。

 システマティック・レビュー(systematic review)=文献をくまなく調査し、ランダム化 比較試験(RCT)のような質の高い研究のデータを、出版バイアスのようなデータの偏り を限りなく除き、分析を行うこと。根拠に基づく医療(EBM)で用いるための情報の 収集と吟味の部分を担う調査である。

 システマチックレビューの結果を見ると、ビタミンD 400IU/日以下の単独摂取試験(2件)では骨折アウトカムに有意差は生じなかったのに対し、高用量摂取試験(①初回20万IU、その後10万IU/月摂取②4カ月間隔で10万IU摂取)では一部の骨折アウトカム(結果、成果)でのみ有意な低下が示された。

 Ca単独摂取の2試験(①1,200mg/日②1,600mg/日)ではCa摂取による骨折アウトカムの有意差は示されなかったが、両試験とも検出力が不十分であった。

 ビタミンDとCaのサプリを併用した2試験のうち、3万6,282例を対象としたWomen's Health Initiative(WHI)試験(ビタミンD3 400IU/日+Ca 1,000mg/日)では、いずれの骨折アウトカムについてもプラセボ群とサプリ群で有意差が認められなかった。

 もう1件の試験(ビタミンD 700IU/日+Ca 500mg/日)では、大腿骨近位部骨折に関する有意差は見られなかったが、非椎体骨折についてはサプリ群で有意に低下していた。

 サプリ摂取による害の検討では、全死亡および心血管疾患発症率への影響は見られなかった。

 腎結石に発症率ついては、2~4年間のCaサプリ単独摂取では上昇が見られなかったのに対し、4~7年間に及ぶビタミンDとCaの併用摂取では有意に上昇していた。

 勧告骨子は2013年版から変化なし

 USPSTF(米国予防医学専門委員会)は前記の方法で得られた最新のエビデンスに基づき、2013年に発表した勧告の改訂を行った。

 今回の勧告内容は前回とほぼ同じで、下記の3項目となった。

①地域在住の男性および閉経前女性における骨折予防を目的としたビタミンDおよびCaの単独あるいは併用摂取のベネフィットと害のバランスを評価するには、現行のエビデンスでは不十分

②地域在住の閉経後女性における骨折予防を目的としたビタミンD 400IU/日超およびCa 1,000 mg/日超の摂取のベネフィットと害のバランスを評価するには、現行のエビデンスでは不十分

③地域在住の閉経後女性における骨折予防を目的としたビタミンD 400IU/日以下およびCa 1,000mg/日以下の摂取は推奨されない(推奨度D)

 ただし、この勧告は地域在住の無症候の成人を対象としており、骨粗鬆症性骨折の既往を有する者、転倒リスクの上昇が認められる者、骨粗鬆症またはビタミンD欠乏症と診断されている者には適用されないと明記している。(古川忠広)

Medical Tribune 2018年04月25日
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