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腰が痛い! [ひとこと養生記]

 年をとるにつれて起こってくる体の故障でいちばん多いのが、腰痛です。

厚生労働省の国民生活基礎調査の有訴率(自覚症状を訴える人の割合)を見ても、男性では1位、女性では肩こりに次ぐ2位が、腰痛です。

 腰痛の背後には、骨に転移したがん、化膿性脊椎炎などの感染症、圧迫骨折などが隠れていることがあります。

 しかし、そうした原因を特定できる「特異的腰痛」は、腰痛全体の15%以下です。

 整形外科医が日常的に診ている(つまり多くの人が訴える)腰痛の85%以上は、原因がよくわからない「非特異的腰痛」です。

 ぎっくり腰のような「急性腰痛症」に対して、いつからともなく始まって長く続く腰痛を「慢性腰痛症」といいますが、非特異的腰痛とほぼ同じです。

 非特異的腰痛の治療は、手術をしない「保存療法」が原則で、薬物療法と理学療法に分かれます。

 薬物療法には、消炎鎮痛薬、筋弛緩薬、抗うつ薬などが用いられます。

 物理療法には、腰を温めるホットパック、弱い電流の刺激、超音波の温熱、レーザー光の照射などで、痛みや炎症をやわらげる方法などがあります。

 これまでの保存療法は、そうした受け身の治療=受動的治療法でしたが、近年注目されているのは、患者さん自身が行う能動的治療法の「腰みがき」です。

 それについては、明日―。
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授乳と糖尿病の関係 [健康短信]

長期間の授乳が糖尿病に保護的作用

 累積授乳期間が長いほど糖尿病の発症リスクが低下することがわかった。

 米国のグループがJAMA (米国医師会雑誌)に発表した。

 高齢女性を対象にした研究で、1年間の授乳歴で糖尿病発症リスクが3~15%低下することが示唆されている。

 しかし、これらの研究では患者の自己報告に基づく糖尿病を対象にしていた。

 同グループは、出産可能年齢の女性を長期間追跡。

 妊娠糖尿病(GDM)や糖尿病家族歴を含む種々の交絡因子を補正し、出産後の累積授乳期間と診断が確定した糖尿病発症との関係を検討した。

 対象は18~30歳の米国人女性のうち、1985~86年の登録時に糖尿病がなく、登録後に1回以上の出産経験があり、2016年までの30年間に糖尿病の検査を最高で7回受けた1,238例(平均年齢24.2歳、黒人615例)。

 累積授乳期間により授乳歴なし(対照群)、6カ月未満群、6カ月以上12カ月未満群、12カ月以上群に分類。

 主要評価項目は、1,000人・年当たりの糖尿病発症率。

 2万7,598人・年の追跡期間中に182例が糖尿病を発症し、1,000人・年当たりの発症率は全体で6.6例、妊娠糖尿病歴がある群では18.0例、妊娠糖尿病歴歴がない群では5.1例だった。

 解析の結果、授乳期間は糖尿病発症と強い段階的な逆相関を示した。

 対照群に対する糖尿病発症率は6カ月未満群が0.75(95%CI 0.51~1.09)、6カ月以上12カ月未満群が0.52(同0.31~0.87)、12カ月以上群が0.53(同0.29~0.98)であった。

 赤ちゃんがママの糖尿病予防に加勢している─は、言い過ぎか?
タグ:授乳 糖尿病
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「三大疾病」と遺伝との関係 [ひとこと養生記]

遺伝なのか環境なのか?

日本人の死因として特に多い、がん、急性心筋梗塞、脳卒中は三大疾病と呼ばれます。

医療保険でも「三大疾病保障プラン」があるほどです。

どのような人がかかりやすいのでしょうか。また、遺伝は影響するのでしょうか。

親子で顔や性格が似ているように、遺伝子レベルである部分に同じ情報を持った血縁者は、他人と比べて似通った性質を持つことは事実です。

一方で生活環境をともにする家族は、食事の好みや運動、睡眠といったライフスタイルも近いものになりがちです。

がん、心筋梗塞、脳卒中は「生活習慣病」ともいわれ、食生活や運動習慣といった毎日の生活も影響することが多い病気です。

つまり、がん家系、家系的に高血圧が多いといった傾向は、遺伝の関係も否定できませんが、家族で似やすい生活習慣がかかわっているといえるでしょう。

遺伝性のがんは1%以下?

実際にがんになったとき、その原因を正しく特定するのは難しいこともあり、がん学会の発表では「遺伝性のがん」と認められるものは1%以下とされています。

でも、がんの種類によって遺伝する可能性が高いものもあります。

子どもの目の奥にできる「網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)」と呼ばれる病気は、遺伝性のがんとして有名です。

その他、統計的に遺伝性が見られる場合もあると考えられているものに、大腸がんや乳がん、卵巣がんなどがあります。

ただし、これらも生活習慣が関わる可能性の方が大きく、家族にがんになった人がいるからといって、必要以上に怖がるよりも毎日の生活を見直す方が大切です。

国立がん研究センターでは、日本人のがん予防にとって重要な、次の5つの生活習慣を掲げています。

食生活を見直す
適正体重を維持する
身体を動かす
禁煙する
節酒する

この5つを意識して生活習慣を見直すことが、がんになる確率を低くする第一歩です。

血管は大丈夫?

心筋梗塞と脳卒中は、どちらも血管の状態が深く関わる病気です。

心筋梗塞は血管が硬くなったり、血の塊が詰まったりして必要な血液が心臓に届かなくなった状態です。

脳卒中は、脳の血管が詰まったり、破けたりするなどして脳に障害をきたす病気の総称です。

心筋梗塞や脳卒中は、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった病気と深いかかわりがあります。

これらは、たとえ「血圧が高い」「血糖値が高い」といった状態が続いていても、進行しなければ自覚症状はほとんどありません。

しかし長年放っておくと徐々に血管にダメージを与え、心筋梗塞や脳梗塞を起こす引き金となるのです。

高血圧や糖尿病、脂質異常症は、それぞれ遺伝が原因で発症する確率もゼロではありません。

一方で家系的に同じ病気が多い場合は、「濃い味つけが好き」「甘い物や脂っこいものが好き」といった幼いころ親しんだ家庭の味や食習慣が影響している可能性の方が大きいといえます。

脳卒中の中でも、「くも膜下出血」と呼ばれるタイプは、遺伝のリスクが高いという報告もあります。

遺伝の影響が心配な場合は、健康診断で血管や脳・心臓の状態を定期的にチェックしておく必要もありますが、なにより気をつけるべきは、当たり前になっている普段の生活習慣といえるでしょう。

心筋梗塞や脳卒中は、生活習慣の改善で、ある程度予防することができます。

食生活の乱れや運動不足、睡眠不足、ストレスが多いといった生活が血管をはじめとする身体の負担となっていないか、この機会に振り返ってみましょう。

執筆:井上 愛子(保健師)
医療監修:株式会社とらうべ

老いはいや 死ぬこともいや 年忘れ   富安風生
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認知症予備群は血液7ccでわかる! [健康]

 厚生労働省によれば、2025年には認知症患者が700万人を突破する見込みだという。

 加えて危惧されているのが、“認知症予備群”といわれ、認知機能に障害が出ているものの、自立した生活が送れている軽度認知障害(MCI)の存在だ。

 予備群は認知症患者と同数程度いるといわれ、将来的に認知症へ移行する可能性もあるという。

 認知症研究に長年携わる『メモリークリニックお茶の水』理事長の朝田隆医師はこう話す。

「軽度認知障害の半数は、4年後には認知症に進行するといわれています」

 だが状態が改善する可能性もある。

 朝田医師のクリニックでは、MCIと診断された人の2割に改善がみられた。

 7ccの血液で調べられる検査

「軽度認知障害は予備軍であって病気ではないため、薬による治療は行いません。

 当院では運動、音楽芸術、脳トレ、食事療法を指導しています。

 私は20年以上、認知症の追跡調査を行っており、その経験から生み出した脳トレをおすすめしています」

 おすすめは、引き算をしながらウォーキングをするなど2つの課題をこなす「デュアルタスク」といわれる方法。

「たとえば、100から7ずつ引いていく引き算をしながら歩きます。

 慣れてきたら、100から2を引いて行い、次は2を足して行うなど変化をつけて行います」

 今までに経験したことのないものを行うのもいい。

「長年、囲碁をやってきたという人であれば、将棋をすすめます」

 このように、MCIから認知症へ移行するのを防ぐには、早期発見が重要となる。

 そのための検査が『MCIスクリーニング検査』。

 わずか7ccの血液で調べることができる。

 認知症のなかで最も多く、全体の3分の2を占めるのがアルツハイマー型認知症だが、

「はっきりとした原因はいまだにわかっていません。

 ただ、アミロイドβというタンパク質が脳内に蓄積して起こるという説が有力視されています」

 このアミロイドβが脳に蓄積するのを防いで守ろうとする物質、脳の外へ排出する物質などの血中濃度を調べて、MCIの可能性が判定される。

 朝田医師の調査によれば、約80%の確率で判定できる。

 MCIスクリーニング検査は、自由診療のため医療機関によって料金は異なるが、2万円程度のところが多い。

 受検者の平均年齢は66歳だが、50代でMCIと判定された人もいる。

 もしMCIからアルツハイマー型認知症に移行すれば、進行性のため、根本治療は難しい。

「症状を抑える薬を処方することしか今のところ治療方法はありません。

 長年、治療薬は研究されていますが、これといった薬が出てこないのが現状です」

 アミロイドβの蓄積はアルツハイマー型認知症の症状が出る20~25年前から始まっている。

 認知機能の改善が期待できるMCIの段階で早期発見し、前述した脳トレなどの対策にいち早く取り組むこと。

 それが、ひいては認知症予防にもつながるといえるようだ。

アルツハイマー型認知症を血液で判定!国立長寿研究所などの研究グループが発表 

 ことし1月、国立長寿研究所と島津製作所などの研究グループが、世界で初めて血液からアミロイドβが脳に蓄積しているかどうか判定する方法を、科学ジャーナル『ネイチャー』オンラインに発表した。

 0・5ccの血液で診断でき、結果を画像診断で確認すると、9割以上の精度でとらえていた。
 
 ノーベル化学賞受賞者で島津製作所シニアフェローの田中耕一さんは、記者会見で、

 「今回の発見は、根本治療薬を含めたさまざまな進展に貢献する基礎となる、非常に大きな成果だと考えています」と期待を込めて語っている。 

 今回発表された方法とMCIスクリーニング検査との違いを、開発元の株式会社MCBIに聞いた。

 「今回発表された方法は、脳内にアミロイドβがたまっているかどうかを調べる検査です。

 一方、MCIスクリーニング検査は、アミロイドβが蓄積しないよう、脳内から排出する仕組みが正常に働いているかどうかを調べる検査という違いがあります」

 「週刊女性」3/24(土) 5:00配信

 朝田隆医師◎精神科医。東京医科歯科大学特任教授、筑波大学名誉教授、メモリークリニックお茶の水理事長。
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警告、エナジードリンク [健康短信]

「エナジードリンク」と「栄養ドリンク」。

どちらも疲れたとき、もう一踏ん張りしたいときに飲むイメージだが、海外ではエナジードリンクを飲み過ぎた人が死亡するという事故も起こっている。

エナジードリンクにはどんな成分が入っているのか。

栄養ドリンクとはどう違うのか。

「医療部外品」に分類されている「リポビタンD」などの栄養ドリンクには、肝細胞に作用する働きを持つ「タウリン」が含まれている。

「炭酸飲料(清涼飲料水)」として販売されているエナジードリンクには「合成タウリン」を使うことができない。

代用成分として「アルギニン」が入っている。

アミノ酸の一種であるアルギニンには、血流改善・成長ホルモンの分泌といった作用があるといわれている。

カフェインや糖分を多く含むため、これまでに過度な摂取による健康への影響が問題視されており、欧米では規制を求める声が上がっていた。

イギリスの大手スーパーマーケットが、16歳未満へのエナジードリンクの販売を禁止することを決めた。

1リットルあたり150ミリグラム以上のカフェインを含むエナジードリンクを対象に、購入する客に身分証明証の提示を求める。

米国スポーツ医学会(ACSM)は、エナジードリンクの摂取に関する公式声明を発表した。

警告とともに、販売や摂取に関する推奨を提供している。

安全性や効果のエビデンスが不足

米・テキサス州保健科学センターは、

「科学的調査により、エナジードリンクに含まれる過剰なカフェインは精神症状だけでなく、心血管、神経、胃腸、腎臓、内分泌系などにも悪影響を及ぼすことが示された。

心血管系や他の症状を有する成人だけでなく、小児や思春期の若年者を保護する必要がある」と警告している。

エナジードリンクは小児や思春期の若者にも販売されている。

エナジードリンクの世界的な市場規模は、2013年に390億ドルだったものが2021年には610億ドルに達すると見込まれている。

需要が高い市場であるにもかかわらず、現時点では安全性、効果、パフォーマンス向上に関するエビデンスが不足している。

カフェイン含有量に制限がない

エナジードリンクに対する最大の懸念は、高濃度のカフェインを含有していることである。

米食品医薬品局(FDA)によると、1日当たり400mg(コーヒー4〜5杯に相当)のカフェイン摂取は健康な成人にとっては問題ない量である。

しかし、小児や若年者では潜在的に重大な問題を引き起こすかもしれない。

一般的な飲料(コーヒー、紅茶、スポーツドリンク、ソーダ水など)のカフェイン含有量は1本当たり200mg以内に制限されているが、エナジードリンクでは制限がない。

FDAの分類では、エナジードリンクは食品・飲料ではなく、栄養補助食品である。

カフェイン含有量に関して抜け道があるといえる。

エナジードリンクと一般的な飲料は異なると認識することが重要である。

エナジードリンクには通常、ハーブのブレンド、タウリン、グルクロノラクトン、高濃度ビタミンなどが含まれるが、一般的な飲料には含まれない。

科学団体、メディア、政府、大学体育局、市民などは、睡眠障害、不安、心血管イベントや死亡を含む有害事象の原因となりうるとして、エナジードリンクの安全性に対する懸念を示している。

ACSMによる主な勧告は以下の4点である。

①小児をリスクから守る

小児や思春期の若者は体格も小さく、エナジードリンクによる悪影響が特に強い。

カフェインを摂取したことがない場合は、頻繁な大量摂取と同等の潜在的なリスクになると考えられる。

これらのドリンクは小児向けではないことをあらためて広く周知する必要がある。

②高リスクグループ(特に小児)に対する販売の停止

影響を受けやすい集団に販売すべきではない。

現在、エナジードリンクの製造会社はウェブサイト、ソーシャルメディア、テレビなど、小児や思春期の若者が多く目にするメディアを通じて広告宣伝している。

小児や若者の興味を引くスポーツやイベントなどを標的としたマーケティングは行うべきではない。

③激しい運動中とその前後ではエナジードリンクを摂取すべきではない

健康や運動のレベルに関係なく、適切な安全性と有効性のデータが得られるまでは、激しい運動中とその前後のエナジードリンク摂取は避けるべきである。

激しい運動の前後にエナジードリンクを摂取した人が死亡したとの報告もある。


④さらなる教育とデータ収集が必要

エナジードリンクの潜在的な悪影響と安全な摂取を強調した上で、自覚ある出資と教育資源が必要とされる。

ソーダ水、コーヒー、スポーツドリンクなどとエナジードリンクは明確に異なることについて、消費者を教育するために大きな努力がなされるべき。

また、エナジードリンクに関する教育は栄養、体調、健康などと関連した学校ベースのカリキュラムの優先事項でもあるはずだ。
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リキッドバイオプシー [健康短信]

リキッドバイオプシーは薬効予測に有用か?

リキッドバイオプシーは、主にがんの領域で、内視鏡や針を使って腫瘍組織を採取する従来の生検(biopsy)に代えて、血液などの体液サンプル(liquid)を使って診断や治療効果予測を行う技術。

患者の負担が小さく、しかも腫瘍の遺伝子(ゲノム)情報を踏まえた適切な治療につながる手法として近年、世界中で研究開発が進められている。

たった1滴の血液から遺伝子などを解析し、がんを早期発見して治療する。

2016年末、固形腫瘍の遺伝子変異検査としては国内初のリキッドバイオプシーによる遺伝子変異検出キットが承認された。

佐賀大学の荒金尚子教授(血液・呼吸器・腫瘍内科)らは、再生検とリキッドバイオプシーの同等性、および薬効相関について検証する国内多施設共同臨床試験を開始すると、日本肺癌学会で報告した。

簡易検査系のMBP-QP法を開発

高齢者が多い肺がん症例では再生検が困難な場合が多いことなどから、比較的低侵襲な検査であるリキッドバイオプシー、特に血漿遊離DNAの臨床応用が期待されている。

荒金教授らは、肺がん患者の変異検出系としてMBP-QP法を開発した。

同法は高感度であるとともに、ボタン1つの全自動で1時間半、かつインハウスで検査が可能な簡易検査系というのが特徴。

結果、耐性化例の40%(58例中23例)でT790Mの検出が可能であった。

さらに臨床的に病勢増悪(PD)が認められ、次の治療へ移行しなければならない時に同法でT790Mが同定できることも示唆された。

こうした研究成果を踏まえ、荒金教授は現在のリキッドバイオプシーの課題について、「再生検との一致率」「検査法とカットオフ値」「承認方法」の三つを挙げた。

現在、世界各国で用いられている血漿EGFR変異検出法は、MBP-QP法の他に、ASP法、前述のコバスなどのddPCR法、BEAMing法があり、感度、必要血漿量、簡便性、定量性がそれぞれ異なる。

「いずれの方法を用いたらよいのかが、臨床応用する上で重要な課題となる」と教授は指摘した。

 同氏は「参加を希望する施設は、ぜひ連絡してほしい」と呼びかけた。

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「老衰」という逝きかた [健康小文]

現代の5大死因

国際連合の定義によると、総人口に占める65歳以上の老年人口が7%を超えると「高齢化社会(1970年達成)」、14%を超えると「高齢社会(1995年達成)」、21%を超えると「超高齢社会(2007年達成)」と呼ばれます。

日本は世界に先がけて「超高齢社会」に到達しました。

2016年の高齢化率は27.3%で、2036年には33.3%に達し、なおも増加し続けると推計されています。

「超超高齢社会」がもうそこまで来ています。

平成27年の死因別死亡率をみると、1位は「がん」、2位は「心臓病」、3位は「肺炎」、4位は「脳卒中」、そして5位は「老衰」です。

6位「事故」、7位「腎不全」、8位「自殺」と続いています。

病気で亡くなる人が上位4位をしめていますが、6位の事故を上回って5位に「老衰」がランキングされているのは、やはり、超高齢社会の特徴と言えるでしょう。

ちなみに、戦後、減り続けていた老衰死は、2000年頃を境に増加に転じて、2010年頃から急増しています。

79歳までは男性の老衰死が多く、80歳以降になると女性の老衰死が多くなるという分析もあります。

あいまいな「老衰死」

「死因としての「老衰」は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用いる」(死亡診断書記入マニュアル、厚生労働省)というのが公式な「老衰死」の定義です。

老化による自然死が「老衰死」ということです。

この定義では病気や事故といった「他に記載すべき死亡の原因」がないことを“自然死”と定義しています。

しかし70歳を超えて「どこも悪いところがない」という人は、一体どれほどいるのでしょうか?

昨今の研究では、老化の生理・生物学が解明されてきています。

「老いる」ことは細胞や組織のレベルでも起こっています。

むしろ、免疫が弱って感染症にかかったとか、動脈硬化で脳卒中が起こったなどは、老化の“自然”とは言えないのでしょうか?

現実には「病気の治療などを受けていなかった」高齢者が死亡したとき、事故や事件性がなければ“自然死”、つまり「老衰死」と判断されるのでしょうか?

死亡の確認をし診断をするのは医師の役割です。

『NHKスペシャル「老衰死~穏やかな最期を迎えるには~」』(2015年9月放送)では、老年医学会が行った全国の高齢者医療に従事する医師を対象としたアンケート結果を紹介し、「老衰死として診断することに対して、難しさや不安・葛藤を感じたことはあるか」という質問に対して、46%が「ある」と回答しています。

その理由は次のようなものでした。

・老衰死の定義が不明確

・高齢者の場合、複数の疾患が複雑に絡み合っている症例が多く、老衰死と診断するのが難しい

・老衰死とすることを認めるための社会的合意が必要だから

(参考:NHKスペシャル取材班『老衰死』講談社、2016.より)

このように、専門医でさえ診断が難しいのが「老衰死」と言えるでしょう。

介護現場にみられる「老衰死」の現実

同番組では一方で医師や研究者(国外も含めて)へのインタビューを行いながら、もう一方で、現場で「老衰死」の経験に密着するという、二本立てのスタイルで番組が構成されています。

とくに、東京都世田谷区特別養護老人ホーム「芦花ホーム」での取材が大きく取り上げられています。

その中で、石飛幸三医師が中心となって「平穏死としての老衰死」を看取っていると番組は紹介しています。

緊急に搬送された病院では、医師も患者と接触できる時間は限られ、とくに「老衰死」と判断するのは至難のことでしょう。

その点、介護施設などではかなりの時間を、本人と接しながら診ていくことが可能です。

それが、「老衰死」という判断を可能なものとしているように思えます。

そして、老衰死していく人たちが共通して見せるサインが、次の3つだと言います。

・亡くなる1週間ほど前から食べなくなる

・多くの時間を眠り続ける

・大量の尿が出て、枯れるように亡くなる

(参考:同上書より)

延命か老衰か:私たちの選択が可能

「いかに生きながらえるか」という難問にチャレンジして医学・医療は発展し、超高齢社会が達成されてきました。

延命の技術としての医学はなおも進歩を続けています。

その一方で、延命治療をしないで穏やかな老衰によって死んでいく人も増えています。

戦争や大災害、犯罪に巻き込まれるといった事故・事件がなければ、今、日本人の私たちは「延命か老衰か」を選択できる時代を生きています。

ですから「どう死にたいのか」を考えたり、話し合ったりする時間をもっと大切にする必要があるでしょう。

老化を予防する概念として「フレイル」ということが言われています。

運動不足や栄養不足などが老化と合わさって、病気にかかりやすくなったり寝たきりになりやすい「脆弱性」のことを指しています。

健康日本21(第2次)ではフレイル対策がキーワードともなっています。

「健康寿命を伸ばすべく、よく食べ、しっかり運動し、よく眠ろう!」というわけです。

【参考】
・政府統計「平成29年我が国の人口動態」(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf
・NHKスペシャル取材班『老衰死』講談社、2016.
・社会福祉法人 世田谷区社会福祉事業団『世田谷区立特別養護老人ホーム 芦花ホーム』(http://www.setagayaj.or.jp/service/nursinghome/roka/
http://ikiiki-laboratory.com/ppk/

執筆 藤尾 薫子(保健師・看護師)。監修 とらうべ
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「健康寿命」延びる [健康雑談]

 健康上の問題がなく日常生活を送れる「健康寿命」について、厚生労働省は3月9日、2016年は男性が72.14歳、女性は74.79歳だったと発表した。

 前回調査(2013年)と比べ男性が0.95歳、女性は0.58歳延びた。

 最も長かったのは男性が山梨の73.21歳、女性は愛知の76.32歳。

ベスト5は、男性は山梨、埼玉、愛知、岐阜、石川の順。女性は愛知、三重、山梨、富山、島根だった。

 分析に当たった辻一郎・東北大学教授(公衆衛生学)は「食塩摂取量や喫煙率の低下といった医学的要因に加え、高齢者の体力の向上も影響している。

 働いたり社会参加したりできるから心身とも健康になっているのではないか」と話している。

 ところで、いまは誰でも知っている「PPK」(ピンピンコロリ)。

 発祥の地は、長野県らしい。

 当時、長野県は、日本一の長寿県であり(厚生労働省「都道府県別生命表=2013年」によれば、平均寿命のトップは男女とも長野県)、高齢者の就業率(つまり、ピンピン働く人の割合)も、自宅で亡くなる人の割合も全国一だった。

 昔の人も「食うときタップリ、死ぬときポックリ」などといい、お参りをすると楽に往生できる「ポックリ寺」もあったらしいが、長野のお年寄りの合い言葉「PPK」はもっと前向きの健康観に支えられていたようだ。

 PPKと同じで、いっそう明るいニュアンスをただよわせる語が「GNP」(元気でニコニコ、ポックリ)。

 生と死のあり方の理想といえる。
 
 あいなるべくなら長期の寝たきりで亡くなる「NNK」(ネンネンコロリ)は願い下げにしたい。

 東大病院放射線科准教授で、緩和ケア診療部長の中川恵一先生はこう話している。

「がんで死ぬのが、まさに"ピンピンコロリ"です。私は、できればがんで亡くなりたいと思っています。ただし、それには十全な緩和ケアが必要です」

 緩和ケアでは、放射線治療や医療用麻薬を用いて、体の痛みを除去する。

「がんの痛みは不要な痛みです。モルヒネで中毒になる、早く死ぬというのはウソで、かえって痛みを取ったほうが長生きします」

「がんの緩和ケアがうまくいくと、臨終の間際でも話ができます。そんな病気は他にありません。いわば人生の最期まで有効に活用できるわけです」

 拙者ことマルヤマは、がん二つ(前立腺がん、尿管がん)の現役患者である。

 そのように生きて、去ることのできる──つまりPPK&GNPの条件を、すでに手に入れているわけである。

 ありがたいことである。

 とはいえ━━。

 ポックリを願って今日の無事祈り(新聞で見た投稿川柳)

 ホント、ホント。そうだよなあ......。

 人はみな不思議の国から生まれきて 不思議の国へおさらばさらば  工藤直太郎
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認知症と高齢者の運転の問題 [日記・雑感]

認知症と高齢者の運転、問題が浮き彫りに   道路交通法改正から1年

高齢者の運転事故が頻発している。

背景にMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)がひそんでいる例が少なくないといわれる。

高齢者の認知機能検査の強化が盛り込まれた改正道路交通法が2017年3月に施行され、1年が経過した。

改正前から認知症関連学会などが指摘していた問題点をはじめ、施行後に新たな問題も浮き彫りになってきたという。

日本精神神経学会が東京都で開催したセミナーで大阪大学大学院・池田学教授(精神医学)が解説した。

高齢運転者による事故の割合が増加

わが国では高齢化の進展に伴い認知症の有病率が上昇しており、2011年の推計認知症有病者は65歳人口3,079万人に対して約462万人とされている。

また、認知症予備群とされる軽度認知機能障害(MCI)は約400万人に上る。

近年、高齢運転者による交通事故が多数報道されているが、わが国における交通死亡事故の発生件数は右肩下がりに減少している。

それに対し、75歳以上の高齢運転者による交通死亡事故件数は横ばいで、全体に占める割合が増加しているため多く感じられると池田教授は指摘した。

道路交通法では、75歳以上の高齢運転者について「運転免許証の更新時に認知機能検査を受検し、その結果、

第1分類(認知症のおそれがある者)、

第2分類(認知機能が低下しているおそれがある者:MCI)、

第3分類(認知機能が低下しているおそれがない者)に分類し、

認知機能に応じた高齢者講習を受講する」としている。

検査の結果、旧制度では、「第1分類であった者が一定の期間内に信号無視等の一定の違反行為をした場合には、専門医の診断(臨時適正検査)を受検」とされていたのが、

改正に伴い「第1分類であった者は、運転免許の更新を望む場合、専門医または主治医の診断(臨時適正検査)を求められる」と変更された。

第1分類と判定される高齢者は約5万人に上るため、計算上は同数の診断書が必要になる。

「原則6カ月後の診断書提出」が増え続ける?

診断書では、①4大認知症〔アルツハイマー型認知症(AD)、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)〕、②その他の認知症、③MCI、④認知症ではない−を選択するとされ、①の場合はほぼ運転不可となる。

診断書には重症度や日常生活自立度なども記入することとしており、MMSE(mini-mental state examination)や新長谷川式などの認知機能検査が必須で、画像診断を含めた臨床検査も必要としているため、特にかかりつけ医には大きな負担となる。

認知症の原因疾患には早期発見で治療可能なもの(正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、炎症性疾患など)もあるが、診断で②を選択した場合、回復の見込みについて記入する必要がある。

また③の場合は、原則として6カ月後に臨時適正検査などを行うこととしている。

認知機能検査の実施結果(改正法施行から6カ月間の暫定値)では、更新時認知機能検査、臨時認知機能検査のいずれにおいても「原則6カ月後の診断書提出」の割合が50%を超えている。

教授は、「この先も再提出が6カ月ごとに再提出が増加する状態が続けば、大きな問題となることが予想される」と指摘。

現在、関連学会と警察庁において討議されているという。

もう1つの問題点として、教授はFTD患者による交通事故を挙げた。

認知症の中でFTDは罹患率は低いものの、AD患者と比べて "車間距離の維持困難""信号・道路標識の無視""脇見運転" などの重大な交通事故を起こす率が非常に高い。

しかし、FTD患者は若年で発症することが多く75歳以上に当てはまらない場合も多いため、現行法では対処できていないという。

運転免許証を返納した高齢者の生活支援が必要

最近では自治体などによる高齢者の運転免許証自主返納が促進されており、自主返納者は増加傾向にある。

その数は2002年には8,073件だったが、2012年には11万7,613件、2016年には34万5,313件へと増加した。

一方、わが国における65歳以上の独居高齢者数は年々増加しており、1980年の88万1,000人から2010年には479万1,000人まで増えている。

大都市部以外の高齢者にとって自動車は重要な生活手段であり、運転免許証を自主返納し運転できなくなると社会的孤立につながることが問題となる。

運転免許証を自主返納した高齢者に対しては、公共交通機関による支援などが必要となるが、支援の状況は自治体ごとに異なる。

教授は、運転免許証の自主返納率が最も高い大阪府のケースを紹介。

同府では企業などに幅広く協力を募り、自主返納者は公共交通機関やタクシーだけでなく、サポート企業・店舗で割引などの特典を受けることができるという。

今回の道路交通法改正に当たっては、運転免許証が更新できないまたは自主返納した高齢者のサポートに加え、診断する医師の確保、高齢者の尊厳、運転能力の適正な判断基準の構築が必要などの問題点が挙げられていた。

関連学会は警察庁に対して問題への対策の検討を求めており、MCIや初期認知症患者の運転能力の評価についてはさらなる研究を進めていく必要があるとしている。
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HbA1cの目標値が変わった! [健康短信]

HbA1c管理目標に関する衝撃の声明
7%以上8%未満に!―米国内科学会

声明の背景:米国では糖尿病ガイドラインが乱立、内容に齟齬

米国では、米国糖尿病学会(ADA)や米国臨床内分泌学会・米国内分泌学会(AACE/ACE)などさまざまな学術団体から、糖尿病についてのガイドラインが出ている。

それらの内容には齟齬があり、実際に臨床の現場でどのガイドラインに従うかによって、診療内容が異なってくるという問題が生じているらしい。

そこで、米国内科学会(ACP)の臨床ガイドライン委員会が、複数のガイドラインを独自に評価した上で、ACP独自のHbA1c管理目標についての声明を発表した。

ACPは権威ある学会で、その日本支部設立には日本内科学会の専門医部会が国際交流事業として積極的にかかわっており、多くの日本の内科医にとってもなじみのある学会である。

今回の声明の内容は、ADAやAACE/ACEのガイドラインと全く異なり、薬物療法中の2型糖尿病患者の管理目標をHbA1c7%以上8%未満とする、きわめて衝撃的なものである。

声明を出すに当たって、ACPの臨床ガイドライン委員会では既存の六つの学術団体のHbA1c管理目標に関するガイドラインを検討した。

6人の委員が独立して当該ガイドラインの目的や記載の明確さなどを評価し、受容できる記載については採用するようにした。

日本の糖尿病専門医に最もなじみのある、ADAの臨床実践ガイドラインに対する評点は7点満点で3.7、

その次になじみのあるAACE/ACEのガイドラインに対する評点は2.8と非常に低いものだった。

各ガイドラインについて、このままで臨床医が使用することを推奨できるとした委員は、
ADAガイドライン=6人中1人、AACE/ACEガイドライン=0人。

ほとんどの委員がそのままでは使い物にならないとの評価を下した。


薬物療法中の2型糖尿病患者のHbA1c管理目標は7%以上8%未満!

最終的に以下の四つの声明を発表している。

声明1:臨床医は2型糖尿病患者の血糖管理目標を個別化すべきである。

個別化においては、以下の項目についての議論を基にすべきである。

①薬物療法の利益と害、②患者の嗜好、③患者の全身状態や生命予後、④治療の負担、⑤療養にかかる費用

声明2:臨床医はほとんどの(薬物療法中の)2型糖尿病患者のHbA1cの管理目標を7%以上8%未満とすべきである。

声明3:臨床医はHbA1c 6.5%未満の2型糖尿病患者では薬物療法の減量を検討すべきである。

声明4:臨床医は生命予後が10年未満と思われる以下のような2型糖尿病患者については、治療による利益よりも害が上回るため、HbA1cの目標を設定することを避け、高血糖に関連する自覚症状が最小限になるように治療すべきである。

① 80歳以上の高齢者、②介護施設入所者、③慢性疾病の合併者(認知症、がん、末期腎不全、重症慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全)。

日本糖尿病学会は、第56回日本糖尿病学会年次学術集会にて「熊本宣言2013」を発表した。

それは血糖管理目標値を【HbA1c 7%】未満とし、糖尿病の合併症で悩む人を減らすための努力を惜しまないことを宣言するものだった。

HbA1cを7%以上にすべきだと主張している日本の糖尿病専門医は見たことがない。

反面、今回のACPの声明に対して明確な反論をすることのできる専門医が少ないことも確かである。

薬物療法中の糖尿病患者すべてに対してHbA1cに下限が設定され、それが7%であることに対して明確に拒絶することはできないからである。

ADAの勧告の大きな変化に照応すると、今後は血糖値の正常化よりも緩めのHbA1c(平均血糖)管理でもよい、

どんな(薬物)治療を適応とするのか、

その結果、低血糖頻度・血糖変動も含めて、どのような血糖プロファイル(情報の集約)を生み出すのか、

といったことが重要になるのかもしれない。
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