またまた変わった! 高血圧の定義 [医学・医療短信]
世界最新の高血圧診療
いささか旧聞。
2017年6月、英国医師会雑誌に「高血圧の初期治療」の総説が記載された。
世界最新の高血圧の総説である。
またまた高血圧の定義が大きく変わってしまった。
数年來、広く用いられていたのは、米国合同委員会の第8次報告として新たに発表された高血圧ガイドラインだった。
覚える数字は150、140、90の三つ。
60歳以上の血圧目標値を従来の140/90mmHg未満から150/90mmHg未満へと引き上げる。
糖尿病あるいは慢性腎臓病(CKD)を有する患者は130/80mmHg未満から140/90mmHgへ。
これらの変更の影響について研究グループは、全米健康栄養調査のデータを使って検討した。
60歳未満では140/90mmHg以下に、糖尿病と慢性腎不全患者も同じ。
60歳以上では150/90mmH以下に。
繰り返す。
覚える数字は150、140、90の三つでよかった。
ところが、今回、なんと150/90mmHg未満が130/80mmHg以下になった。
60歳以上では収縮期血圧(最大血圧)が20も下げられてしまった。
総説「高血圧の初期診療」最重要点九つは以下の通り!
1.年齢、糖尿病、慢性腎不全にかかわらず130/80mmHg未満にせよ!
2.130/80~140/90mmHgはStage 1。心血管リスク10%未満は生活改善
130/80~140/90mmHgをStage 1高血圧。
140/90以上をStage 2高血圧とする。
Stage 1 高血圧で心血管疾患リスクが10%未満なら3~6カ月生活習慣改善を試みよ。
ただし計算に総コレステロール、HDL-C(善玉コレステロール)、LDL-C(悪玉コレステロール)の検査値が必要。
3.運動、減塩、減量、アルコールを制限し地中海式食事を。NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)は切れ
高血圧につながる生活習慣因子は、食塩摂取過剰、体重増加、肥満、アルコール摂取、NSAIDやdecongestants(鼻粘膜充血解除薬、商品名:プリビナ、コールタイジン、トラマゾリン)使用など。
遺伝因子もある。
地中海式食事のポイントは次の3点。
果物、野菜、低脂肪乳製品、玄米、全粒粉(茶色のパン)、鶏肉、魚、豆類、ナッツ、オリーブ油を取れ
赤い肉(red meat:牛肉、豚肉)、バター、ラード、菓子、砂糖入り飲料を減らせ!
赤ワインを1、2杯(白ワインではない)
薬では、NSAID、decongestants、アンフェタミンを減らす。
4.140/90mmHg以上、心血管疾患、DM、CKD、心血管リスク10%以上は降圧薬開始
5.血圧測定は、坐位、背をもたれ下肢は交叉せず足底を床に、5分安静後に
血圧の測定方法は意外にうるさく、ガイドラインでは2回以上の場で2回以上の血圧測定を推奨。
カフ(マンシェット)は正しいサイズでなければならない。
6.検査はNa、K、Ca、UA、Cr、eGFR、Hb、thyrotropin、脂質、検尿、尿alb/Cr比(尿アルブミン/クレアチニン比)、EKG(心電図)
糖尿病や腎不全がありはっきりした蛋白尿がないときは、尿alb/Cr比をチェックする。
つまり随時尿で尿中アルブミン濃度と尿中クレアチニン濃度を同時測定しその比を取る。
糖尿病腎症では、アルブミンは分子量が小さいので大きな蛋白より早く尿中に出るため、早期に腎症を検出できる。
この正常値は30.0mg/g・Cr未満で、糖尿病腎症の早期診断基準は30~299mg/g・Crのとき。
7.降圧薬はサイアザイド、Ca拮抗薬、ACE拮抗薬、ARB拮抗薬の四つから選べ
8.塩分摂取の多い者はサイアザイド、少ない者はACE、ARB【推奨サイアザイド系利尿薬】
クロルタリドン(国内販売中止)、ヒドロクロロチアジド、インダパミド
塩分摂取の多い者はサイアザイド系利尿薬の方が効果は大きい。
ということは普通の日本人ならサイアザイドから始めた方が良いということか。
塩分摂取の少ない者はレニン・アンジオテンシン系(ACE、ARB)の方が効果があるそう。
なお65歳以上、特に女性または最初から低Naがあるような患者は、サイアザイド系利尿薬開始後1~2週でNa濃度をチェックせよ、と。
9.Ca拮抗薬は追加薬として使用せよ
Ca拮抗薬はジヒドロピリジン系(商品名:ニフェジピン、アムロジピン)では浮腫、非ジヒドロピリジン系〔ベラパミル(商品名:ワソラン)、ジルチアゼム(商品名:ヘルベッサー)〕では便秘を起こすので、これらは追加薬として使用するのがよい。
日本ではけっこう多くの専門医が推奨するCa拮抗薬は追加薬なのだ。
以上、仲田 和正・西伊豆健育会病院病院長が医学専門紙に寄稿した委曲をつくした専門的論考を私的・勝手要約。文責丸山。
いささか旧聞。
2017年6月、英国医師会雑誌に「高血圧の初期治療」の総説が記載された。
世界最新の高血圧の総説である。
またまた高血圧の定義が大きく変わってしまった。
数年來、広く用いられていたのは、米国合同委員会の第8次報告として新たに発表された高血圧ガイドラインだった。
覚える数字は150、140、90の三つ。
60歳以上の血圧目標値を従来の140/90mmHg未満から150/90mmHg未満へと引き上げる。
糖尿病あるいは慢性腎臓病(CKD)を有する患者は130/80mmHg未満から140/90mmHgへ。
これらの変更の影響について研究グループは、全米健康栄養調査のデータを使って検討した。
60歳未満では140/90mmHg以下に、糖尿病と慢性腎不全患者も同じ。
60歳以上では150/90mmH以下に。
繰り返す。
覚える数字は150、140、90の三つでよかった。
ところが、今回、なんと150/90mmHg未満が130/80mmHg以下になった。
60歳以上では収縮期血圧(最大血圧)が20も下げられてしまった。
総説「高血圧の初期診療」最重要点九つは以下の通り!
1.年齢、糖尿病、慢性腎不全にかかわらず130/80mmHg未満にせよ!
2.130/80~140/90mmHgはStage 1。心血管リスク10%未満は生活改善
130/80~140/90mmHgをStage 1高血圧。
140/90以上をStage 2高血圧とする。
Stage 1 高血圧で心血管疾患リスクが10%未満なら3~6カ月生活習慣改善を試みよ。
ただし計算に総コレステロール、HDL-C(善玉コレステロール)、LDL-C(悪玉コレステロール)の検査値が必要。
3.運動、減塩、減量、アルコールを制限し地中海式食事を。NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)は切れ
高血圧につながる生活習慣因子は、食塩摂取過剰、体重増加、肥満、アルコール摂取、NSAIDやdecongestants(鼻粘膜充血解除薬、商品名:プリビナ、コールタイジン、トラマゾリン)使用など。
遺伝因子もある。
地中海式食事のポイントは次の3点。
果物、野菜、低脂肪乳製品、玄米、全粒粉(茶色のパン)、鶏肉、魚、豆類、ナッツ、オリーブ油を取れ
赤い肉(red meat:牛肉、豚肉)、バター、ラード、菓子、砂糖入り飲料を減らせ!
赤ワインを1、2杯(白ワインではない)
薬では、NSAID、decongestants、アンフェタミンを減らす。
4.140/90mmHg以上、心血管疾患、DM、CKD、心血管リスク10%以上は降圧薬開始
5.血圧測定は、坐位、背をもたれ下肢は交叉せず足底を床に、5分安静後に
血圧の測定方法は意外にうるさく、ガイドラインでは2回以上の場で2回以上の血圧測定を推奨。
カフ(マンシェット)は正しいサイズでなければならない。
6.検査はNa、K、Ca、UA、Cr、eGFR、Hb、thyrotropin、脂質、検尿、尿alb/Cr比(尿アルブミン/クレアチニン比)、EKG(心電図)
糖尿病や腎不全がありはっきりした蛋白尿がないときは、尿alb/Cr比をチェックする。
つまり随時尿で尿中アルブミン濃度と尿中クレアチニン濃度を同時測定しその比を取る。
糖尿病腎症では、アルブミンは分子量が小さいので大きな蛋白より早く尿中に出るため、早期に腎症を検出できる。
この正常値は30.0mg/g・Cr未満で、糖尿病腎症の早期診断基準は30~299mg/g・Crのとき。
7.降圧薬はサイアザイド、Ca拮抗薬、ACE拮抗薬、ARB拮抗薬の四つから選べ
8.塩分摂取の多い者はサイアザイド、少ない者はACE、ARB【推奨サイアザイド系利尿薬】
クロルタリドン(国内販売中止)、ヒドロクロロチアジド、インダパミド
塩分摂取の多い者はサイアザイド系利尿薬の方が効果は大きい。
ということは普通の日本人ならサイアザイドから始めた方が良いということか。
塩分摂取の少ない者はレニン・アンジオテンシン系(ACE、ARB)の方が効果があるそう。
なお65歳以上、特に女性または最初から低Naがあるような患者は、サイアザイド系利尿薬開始後1~2週でNa濃度をチェックせよ、と。
9.Ca拮抗薬は追加薬として使用せよ
Ca拮抗薬はジヒドロピリジン系(商品名:ニフェジピン、アムロジピン)では浮腫、非ジヒドロピリジン系〔ベラパミル(商品名:ワソラン)、ジルチアゼム(商品名:ヘルベッサー)〕では便秘を起こすので、これらは追加薬として使用するのがよい。
日本ではけっこう多くの専門医が推奨するCa拮抗薬は追加薬なのだ。
以上、仲田 和正・西伊豆健育会病院病院長が医学専門紙に寄稿した委曲をつくした専門的論考を私的・勝手要約。文責丸山。