認知症と高齢者の運転の問題 [日記・雑感]
認知症と高齢者の運転、問題が浮き彫りに
道路交通法改正から1年
高齢者の運転事故が頻発している。
背景にMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)がひそんでいる例が少なくないといわれる。
高齢者の認知機能検査の強化が盛り込まれた改正道路交通法が2017年3月に施行され、1年が経過した。
改正前から認知症関連学会などが指摘していた問題点をはじめ、施行後に新たな問題も浮き彫りになってきたという。
日本精神神経学会が東京都で開催したセミナーで大阪大学大学院・池田学教授(精神医学)が解説した。
高齢運転者による事故の割合が増加
わが国では高齢化の進展に伴い認知症の有病率が上昇しており、2011年の推計認知症有病者は65歳人口3,079万人に対して約462万人とされている。
また、認知症予備群とされる軽度認知機能障害(MCI)は約400万人に上る。
近年、高齢運転者による交通事故が多数報道されているが、わが国における交通死亡事故の発生件数は右肩下がりに減少している。
それに対し、75歳以上の高齢運転者による交通死亡事故件数は横ばいで、全体に占める割合が増加しているため多く感じられると池田教授は指摘した。
道路交通法では、75歳以上の高齢運転者について「運転免許証の更新時に認知機能検査を受検し、その結果、
第1分類(認知症のおそれがある者)、
第2分類(認知機能が低下しているおそれがある者:MCI)、
第3分類(認知機能が低下しているおそれがない者)に分類し、
認知機能に応じた高齢者講習を受講する」としている。
検査の結果、旧制度では、「第1分類であった者が一定の期間内に信号無視等の一定の違反行為をした場合には、専門医の診断(臨時適正検査)を受検」とされていたのが、
改正に伴い「第1分類であった者は、運転免許の更新を望む場合、専門医または主治医の診断(臨時適正検査)を求められる」と変更された。
第1分類と判定される高齢者は約5万人に上るため、計算上は同数の診断書が必要になる。
「原則6カ月後の診断書提出」が増え続ける?
診断書では、①4大認知症〔アルツハイマー型認知症(AD)、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)〕、②その他の認知症、③MCI、④認知症ではない−を選択するとされ、①の場合はほぼ運転不可となる。
診断書には重症度や日常生活自立度なども記入することとしており、MMSE(mini-mental state examination)や新長谷川式などの認知機能検査が必須で、画像診断を含めた臨床検査も必要としているため、特にかかりつけ医には大きな負担となる。
認知症の原因疾患には早期発見で治療可能なもの(正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、炎症性疾患など)もあるが、診断で②を選択した場合、回復の見込みについて記入する必要がある。
また③の場合は、原則として6カ月後に臨時適正検査などを行うこととしている。
認知機能検査の実施結果(改正法施行から6カ月間の暫定値)では、更新時認知機能検査、臨時認知機能検査のいずれにおいても「原則6カ月後の診断書提出」の割合が50%を超えている。
教授は、「この先も再提出が6カ月ごとに再提出が増加する状態が続けば、大きな問題となることが予想される」と指摘。
現在、関連学会と警察庁において討議されているという。
もう1つの問題点として、教授はFTD患者による交通事故を挙げた。
認知症の中でFTDは罹患率は低いものの、AD患者と比べて "車間距離の維持困難""信号・道路標識の無視""脇見運転" などの重大な交通事故を起こす率が非常に高い。
しかし、FTD患者は若年で発症することが多く75歳以上に当てはまらない場合も多いため、現行法では対処できていないという。
運転免許証を返納した高齢者の生活支援が必要
最近では自治体などによる高齢者の運転免許証自主返納が促進されており、自主返納者は増加傾向にある。
その数は2002年には8,073件だったが、2012年には11万7,613件、2016年には34万5,313件へと増加した。
一方、わが国における65歳以上の独居高齢者数は年々増加しており、1980年の88万1,000人から2010年には479万1,000人まで増えている。
大都市部以外の高齢者にとって自動車は重要な生活手段であり、運転免許証を自主返納し運転できなくなると社会的孤立につながることが問題となる。
運転免許証を自主返納した高齢者に対しては、公共交通機関による支援などが必要となるが、支援の状況は自治体ごとに異なる。
教授は、運転免許証の自主返納率が最も高い大阪府のケースを紹介。
同府では企業などに幅広く協力を募り、自主返納者は公共交通機関やタクシーだけでなく、サポート企業・店舗で割引などの特典を受けることができるという。
今回の道路交通法改正に当たっては、運転免許証が更新できないまたは自主返納した高齢者のサポートに加え、診断する医師の確保、高齢者の尊厳、運転能力の適正な判断基準の構築が必要などの問題点が挙げられていた。
関連学会は警察庁に対して問題への対策の検討を求めており、MCIや初期認知症患者の運転能力の評価についてはさらなる研究を進めていく必要があるとしている。
高齢者の運転事故が頻発している。
背景にMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)がひそんでいる例が少なくないといわれる。
高齢者の認知機能検査の強化が盛り込まれた改正道路交通法が2017年3月に施行され、1年が経過した。
改正前から認知症関連学会などが指摘していた問題点をはじめ、施行後に新たな問題も浮き彫りになってきたという。
日本精神神経学会が東京都で開催したセミナーで大阪大学大学院・池田学教授(精神医学)が解説した。
高齢運転者による事故の割合が増加
わが国では高齢化の進展に伴い認知症の有病率が上昇しており、2011年の推計認知症有病者は65歳人口3,079万人に対して約462万人とされている。
また、認知症予備群とされる軽度認知機能障害(MCI)は約400万人に上る。
近年、高齢運転者による交通事故が多数報道されているが、わが国における交通死亡事故の発生件数は右肩下がりに減少している。
それに対し、75歳以上の高齢運転者による交通死亡事故件数は横ばいで、全体に占める割合が増加しているため多く感じられると池田教授は指摘した。
道路交通法では、75歳以上の高齢運転者について「運転免許証の更新時に認知機能検査を受検し、その結果、
第1分類(認知症のおそれがある者)、
第2分類(認知機能が低下しているおそれがある者:MCI)、
第3分類(認知機能が低下しているおそれがない者)に分類し、
認知機能に応じた高齢者講習を受講する」としている。
検査の結果、旧制度では、「第1分類であった者が一定の期間内に信号無視等の一定の違反行為をした場合には、専門医の診断(臨時適正検査)を受検」とされていたのが、
改正に伴い「第1分類であった者は、運転免許の更新を望む場合、専門医または主治医の診断(臨時適正検査)を求められる」と変更された。
第1分類と判定される高齢者は約5万人に上るため、計算上は同数の診断書が必要になる。
「原則6カ月後の診断書提出」が増え続ける?
診断書では、①4大認知症〔アルツハイマー型認知症(AD)、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)〕、②その他の認知症、③MCI、④認知症ではない−を選択するとされ、①の場合はほぼ運転不可となる。
診断書には重症度や日常生活自立度なども記入することとしており、MMSE(mini-mental state examination)や新長谷川式などの認知機能検査が必須で、画像診断を含めた臨床検査も必要としているため、特にかかりつけ医には大きな負担となる。
認知症の原因疾患には早期発見で治療可能なもの(正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、甲状腺機能低下症、炎症性疾患など)もあるが、診断で②を選択した場合、回復の見込みについて記入する必要がある。
また③の場合は、原則として6カ月後に臨時適正検査などを行うこととしている。
認知機能検査の実施結果(改正法施行から6カ月間の暫定値)では、更新時認知機能検査、臨時認知機能検査のいずれにおいても「原則6カ月後の診断書提出」の割合が50%を超えている。
教授は、「この先も再提出が6カ月ごとに再提出が増加する状態が続けば、大きな問題となることが予想される」と指摘。
現在、関連学会と警察庁において討議されているという。
もう1つの問題点として、教授はFTD患者による交通事故を挙げた。
認知症の中でFTDは罹患率は低いものの、AD患者と比べて "車間距離の維持困難""信号・道路標識の無視""脇見運転" などの重大な交通事故を起こす率が非常に高い。
しかし、FTD患者は若年で発症することが多く75歳以上に当てはまらない場合も多いため、現行法では対処できていないという。
運転免許証を返納した高齢者の生活支援が必要
最近では自治体などによる高齢者の運転免許証自主返納が促進されており、自主返納者は増加傾向にある。
その数は2002年には8,073件だったが、2012年には11万7,613件、2016年には34万5,313件へと増加した。
一方、わが国における65歳以上の独居高齢者数は年々増加しており、1980年の88万1,000人から2010年には479万1,000人まで増えている。
大都市部以外の高齢者にとって自動車は重要な生活手段であり、運転免許証を自主返納し運転できなくなると社会的孤立につながることが問題となる。
運転免許証を自主返納した高齢者に対しては、公共交通機関による支援などが必要となるが、支援の状況は自治体ごとに異なる。
教授は、運転免許証の自主返納率が最も高い大阪府のケースを紹介。
同府では企業などに幅広く協力を募り、自主返納者は公共交通機関やタクシーだけでなく、サポート企業・店舗で割引などの特典を受けることができるという。
今回の道路交通法改正に当たっては、運転免許証が更新できないまたは自主返納した高齢者のサポートに加え、診断する医師の確保、高齢者の尊厳、運転能力の適正な判断基準の構築が必要などの問題点が挙げられていた。
関連学会は警察庁に対して問題への対策の検討を求めており、MCIや初期認知症患者の運転能力の評価についてはさらなる研究を進めていく必要があるとしている。
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