SSブログ

中高年女性の人に言えない悩み解消! [医学・医療短信]

 中高年女性の尿失禁にヨガが効果的

 中高年女性の尿失禁の軽減にヨガが有効な可能性があることが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)クリニカル・アンド・トランスレーショナル・サイエンス研究所のAlison Huang氏らによる研究から明らかになった。

 この研究結果は米国泌尿器学会(AUA )で発表された。

 現在、尿失禁を伴う女性外来患者の行動療法は、泌尿器科医または他の専門医療従事者が、集中的に1対1のセッションで行っている。

 AUAのプレスリリースによると、米国には尿失禁で日常的に苦労している女性が2000万人以上いるが、全ての女性がこうした行動療法を受けることは難しいため、より利用しやすく、かつ有効な尿失禁の管理法が必要とされている。

 そこでHuang氏らは、特別なヨガ・プログラムを開発し、ヨガを経験したことがない55~83歳の女性56人(平均年齢66歳)を対象として、その有効性を検証するために、試験を実施した。

 対象者の女性は毎日、数回の尿失禁を経験していたという。

 この試験では、対象者を3カ月間にわたってアイアンガー・スタイルのヨガをベースとしたヨガ・プログラムを実施する群(ヨガ群)と、筋肉ストレッチや筋力強化を行うプログラムを実施する群(対照群)のいずれかにランダムに割り付けた。

 このヨガ・プログラムは、15の標準的なヨガのポーズと、姿勢および呼吸のコントロールに主眼を置いたテクニックで構成されたもので、ヨガ群の女性たちの「骨盤底の構造」への意識を高めることを狙いとしていた。

 一方、対照群では、骨盤底には関係なく全身のストレッチと筋力の強化が行われた。

 いずれの群も、集団クラスを週2回、自宅でのクラスを週1回のペースで受けてもらった。

 また、排尿日誌を付けてもらい、それに基づきベースライン時と3カ月後の尿失禁の頻度を評価した。

 結果、ベースライン時と比べて、3カ月後には尿失禁の頻度がヨガ群で74%、対照群で51%低下した。

 有害事象はいずれの群においても認められなかった。

 今回の結果について、Huang氏は「対象者は比較的高齢で、失禁の頻度も高く、ヨガの未経験者だったが、プログラム終了時にはヨガ群で74%も尿失禁の頻度が低下していた。

 これは、かなり大きな変化だ」とHuang氏。

 同氏はヨガで尿失禁が改善した要因について、

「定期的なヨガは全身の健康状態の向上にもつながる。このことは、フレイル(虚弱)の高齢女性において、尿失禁に対して保護的に働く」と説明。

 さらに、ヨガで深呼吸や意識のリラクゼーションを行うことで、不安やストレスが軽減され、神経系のバランスが改善することも、過活動ぼうこうや尿意切迫感に良い影響を与えている可能性があるとの見解を示している。

 今回の試験では、対照群でも尿失禁の減少がみられたことから、Huang氏は「ヨガ以外の運動でも高齢女性の尿失禁に対して有効な可能性はある」としている。

 今回の報告を受け、米アルバートアインシュタイン医科大学モンテフィオーレ病院のMeena Davuluri氏は、

「ヨガには尿失禁の標準治療を上回るベネフィットがある」と話す。

 ヨガでは失禁の改善だけでなく、健康的なライフスタイルへの変化にもつながる点がメリットとして挙げられるという。

 さらに、同氏は「薬物療法を避けたい患者にも、ヨガが選択肢になり得る」との見方を示している。

 なお、学会発表された研究は通常、査読を受けて医学雑誌に掲載されるまでは予備的なものと見なされる。

(HealthDay News 2018年5月22日)=『毎日新聞 医療プレミア』より転載
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

夜型の子、成績悪い。なぜ? [医学・医療短信]

夜型の子はなぜ成績が悪くなるのか?
柴田重信 / 早稲田大学教授
田原優 / カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

 遺伝子検査で分かる朝型・夜型
 
 遺伝子解析技術が向上し、ヒトの遺伝子検査が安価で行える時代が到来しているのはご存じでしょうか? 

 米国のベンチャー企業「23andMe」では、1人99ドルから解析が頼めます。

 より詳細なプランでも199ドルという価格設定になっています。

 日本でもいくつかのベンチャー企業が、1人1万円程度から解析してくれるサービスを提供しています。

 また、ヨーロッパのUK Biobankではさまざまな疾患患者を含む50万人分もの遺伝子情報を解析、蓄積し、研究者向けに公開しています。

 現在、一般向けに行われている遺伝子検査で分かることは、それぞれ個人の持つ遺伝子の特性(変異、SNPと呼ぶ)です。

 遺伝子はA、T、G、Cという四つの記号で表される物質(ヌクレオチド)がつながって配列を作り、暗号化されていますが、その配列=暗号の一部が個々人で変化していることがよくあります。

 その暗号の変化=配列の違いを読み取ることで、あなたは肥満になりやすい、またはある病気になるリスクが高い、といった情報が得られます。

 これは、実際に病気にかかった人の遺伝子を調べ、どこに変化があるかを調べた膨大なデータベースが既に蓄積されているからです。

 そして昨年(2016年)、23andMeやUK Biobankにより蓄積された膨大な個人の遺伝子情報を解析することで、朝型の人と夜型の人の遺伝子の違いについて調べた研究結果が報告されました。

 米欧それぞれのデータベースから得られた結果は多少異なるものの、朝型の人に特有の遺伝子変化として、二つの遺伝子(Per2、Rgs16)が両方のデータベースから検出されました。

 この二つの遺伝子は体内時計にかかわる非常に重要な遺伝子として知られていたものです。

 つまり、これらの時計遺伝子に、特徴的な暗号の変化が見られた場合、その人は朝型になりやすいと考えられるわけです。

 また、朝型の人は肥満やうつ病のリスクが低いことも同時に示されました。

 ただし、この二つの研究での朝型・夜型の判定方法は、遺伝子検査と共に行ったアンケートで、「あなたは朝型ですか?夜型ですか?」と聞いたのみであり、朝型-夜型質問紙を使ってきっちりと判定したものではありません。

 それでも、二つのデータベースから同様の結果が導き出されたわけですから、信頼できる結果だと思います。

 体内時計の進みの速さが朝型・夜型を決める?

 一方で、中間型と夜型の人を集めて、その人たちの体内時計の進み具合、遅れ具合を調べた研究があります(国立精神神経医療研究センターの肥田晶子先生、三島和夫先生による研究)。

 中間型と夜型の被検者17人の皮膚から、線維芽細胞という細胞を取り出し、培養しながら細胞の中で働く時計遺伝子の様子を観察しました。

 その結果、皮膚細胞の体内時計の進み具合、遅れ具合と、前回紹介した質問紙(MCTQ)で調べた中間型・夜型の結果が相関しました。

 つまり、夜型の人の細胞は、中間型の人に比べ、体内時計の進み方が遅れていることが分かったのです。

 人の体内時計は24時間より少し長く、毎日その分を早めて24時間に合わせる必要があることは以前、この連載の第1回でお伝えした通りです。

 この研究の結果から、夜型の人は、他の人よりもさらに遅れやすい体内時計を持っており、油断するとすぐに夜型になってしまう体質だということが分かりました。

 また、朝型・夜型は休日の睡眠時刻によって決まるのですが、休日に夜更かし・朝寝坊しがちな方は、夜型かつ遅い体内時計の持ち主なのだろうと言うことができます。

 夜型より朝型の方が、学校の成績が良い?

 夜食ばかりだと記憶力悪くなり、朝食を食べない子供は、成績が悪いという研究あります。

 朝型、夜型のタイプ別に、学校の成績(小学生~大学生)との相関を調べた研究も多数報告されています。

 それらの研究計31報の文献をまとめて解析(メタ解析)した結果が公開されています。

 まず全体的な結論として、夜型の子供は、小・中学生、高校生、大学生のどの年代でも成績が悪い、という結果が出ました。

 その差は大学よりも小学生~高校生においてより顕著でした。

 大学生は小中高生に比べ、自立しており、時間割も自分で決めることができ、さらに授業への出席も厳しくないので、夜型の学生も適応しやすいからではないかと考えられます。

 それに対し、小中高生は授業開始も早く、夜型の子供がより社会的時差ボケを経験しやすく、それに伴う睡眠不足や睡眠の質の低下、午前中の授業の不適応などが、成績低下につながっているのではないかと推測できます。

 朝活は良いのか?個人に合った生活リズムとは

 夜型の人は遅れやすい体内時計を持っているにもかかわらず、社会生活に適応するために、平日は朝型生活を強制し、休日にたまった睡眠不足を解消すべく寝だめする傾向にあります。

 その結果、肥満、過食、うつ、成績低下、などなどさまざまなネガティブなものと結びついてしまうようです。

 一方で近年、早起きして「朝活」をする方や、仕事の開始時刻を早め仕事終わりに自由な時間を作る「ゆう活」といった生活スタイルが注目されています。

 夜型の人がもし朝活をするのであれば、必ず平日だけではなく休日も朝活をしてください。

 平日に早寝・早起きをし、休日に普段通りの夜型生活するのでは、社会的時差ボケを悪化させるので要注意です。

 また、その際に夜の光を暗めの暖色系にする、朝食をしっかり食べるなどの工夫も、「体内時計の朝活」状態を維持するために効果的でしょう。

 いかに時差ボケをしないか、そして質の良い睡眠をしっかり取れるか、これは生活全般、多くの疾患にかかわる健康維持の重要なカギなのです。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

朝型と夜型の健康格差 [健康小文]

朝型と夜型の健康格差なぜ?
柴田重信 / 早稲田大学教授
田原優 / カリフォルニア大学ロサンゼルス校助教

 皆さんの生活スタイル、つまり朝型なのか夜型なのか、さらに朝型、夜型の特徴、健康へのリスクについて考えてみましょう。

 自分は朝型?夜型?それとも中間型?

 朝型、夜型などの生活スタイルを、私たちの研究分野では「クロノタイプ」と呼びます。

 まずは自分の生活スタイルがどのクロノタイプに当てはまるのか考えてみましょう。

 クロノタイプを調べる方法はいくつかありますが、ここではドイツのティル・ロネンバーグ教授が考案したMCTQという質問紙を用いた方法を紹介します。

 その質問紙では、「何時何分に寝床に入りますか?」「眠りにつくのに何分かかりますか?」「何時何分に目覚めますか?」といった質問を平日、休日それぞれ聞きます。

 実際には、仕事の時刻や食事調査なども含まれ、最終的に少し複雑な計算をしますが、今回は簡易的に説明させてください。

 自分の「休日」の睡眠時刻を思い出して、その中間時刻(寝ている時間のちょうど真ん中の時刻)を計算してみてください。

 例えば私は、24時に寝て7時に起きるので、3時半が中間時刻となります。

 何時から何時が朝型ですといった決まりはありませんが、中間時刻が3時半の私は、ほぼ「中間型」と考えていいと思います。

 皆さんはどうでしょうか? 

 大体の人は中間型になります。

 後述の病気リスク等の話は、極度な朝型、または極度な夜型の人における調査結果なので、少し夜型だから大問題だというわけではないことにご注意ください。

 若者は夜型、高齢者は朝型が多い

 10~80代の男女5万5000人を対象に調べた睡眠中間時刻の結果、20~30代で最も夜型化し、その後、朝型化し、さらに女性よりも男性で夜型化しやすい傾向がみられます。

 ティル・ロネンバーグ教授は、10代から80代までの男女5万5000人にこの質問紙を用いてアンケート調査を行っています。

 その結果から分かったことは、年齢によって朝型、夜型が変化しているということでした。

 10代では中間時刻が3.5時だったのが、20~30代では約5時にまで後退しています。

 つまり青年期は成長と共に夜型化していく、ということです。

 しかし、その年代をピークに、その後段々早まっていき、60~80代では約3時と朝型化しています。

 この結果から明らかなように、高齢者は早寝、早起きであり、やはり朝型が多いのです。

 また、男性の方がより20~30代の夜型化が顕著で、この男女差が生まれた理由はまだよく分かっていませんが、男性は社会的な影響(仕事など)も大きいのかもしれません。

 夜型の方が病気のリスクが高い

 では、クロノタイプの違いによる健康への影響はあるのでしょうか?

 いくつかの報告から、夜型はBMIが高い傾向にあり、さらに摂食障害、アルコール依存症への罹患(りかん)リスクが高いことが分かっています。

 特に食に関して言えば、夜型の人は朝食を食べない傾向があり、さらに“むちゃ食い障害”になるリスクも高いことが報告されています。

 むちゃ食い障害は一種の過食性障害であるので、夜型の人は過食傾向になりやすいのでしょう。

 また、食パターンが夜型化することは、体内時計の夜型を促進し、肥満も促進します。

 よって、一度夜型生活を始めてしまうと、そこから抜け出すのは困難になるでしょう。

 また夜型の人は、躁うつ病になりやすいことも報告されており、逆に躁うつ病患者を調べてみても夜型の割合が高く、メラトニンやコルチゾールといったホルモンの日内変動にも遅れが見られます。

 夜型は社会的時差ボケになりやすい

 夜型の方が健康への影響が大きいのは、睡眠不足が大きな要因になっていると考えられています。

 どうして夜型の人が睡眠不足になりやすいかというと、「社会的時差ボケ」が関連してきます。

 休日の睡眠時刻を元に皆さんのクロノタイプを判断する方法をご紹介したのは、休日の睡眠時間の方が個人の体内時計をより反映した結果であるためです。

 実際、ほとんどの人は、平日は会社や学校といった社会的な理由により、早起きを強いられています。

 ティル・ロネンバーグ教授の調査結果でも、図3のように夜型の人ほど、平日と休日の睡眠時間に差が生まれているのが分かります。

 よって、夜型の人ほど平日に無理に早起きし、だけれども夜は遅くまで起きてしまう傾向にあり、結果的に睡眠不足になるわけです。

 これを平日の睡眠負債の蓄積と表現します。

 夜型の方は休日にたくさん寝ることで睡眠負債を解消するのです。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

意外! 問題! 緑内障! [健康小文]

 先年、6月7日の「緑内障を考える日」を前に、眼科医療製品メーカーの日本アルコン株式会社が実施した意識調査で。意外な(+憂慮すべき)実態が明らかになった。

 調査は、全国の40歳以上の男女360人を対象に、「一般層」「緑内障の疑いがある層」「緑内障患者層」の三つのグループに対しておこなわれた。

 緑内障は、現在、日本の中途失明原因の第1位、40歳以上の20人に1人の割合で発症している。

 ところが、一般層の約8割(79.2%)は、その事実を知らなかった。

 それどころか、そもそも「緑内障」という病気について、「まったく知らなかった」と「名前のみ知っていた」を合わせると、約4割(39.2%)にも達した。

 健康情報に最も深い関心をもっているはずの世代にして、この数字。ちょっと(どころか、大いに)意外であり、問題だと思う。

 そうした状況の反映なのだろう。

 現在、治療中の緑内障の患者のうち、自覚症状に気づき、自分から眼科を受診した人はわずか2割弱(18.3%)にすぎない。

 ほかの人たちが、緑内障と診断された主なきっかけは、「定期健診」が50.8%で、別の「眼の病気で通院、指摘された」が17.5%である。

 このことは、緑内障が自分では気づきにくい病気であることと、健診の有用性を強く示唆している。

 緑内障の専門医、桑山泰明・福島アイクリニック院長の解説。

「緑内障は、視神経が傷み、視野が狭くなっていく病気です。

 視神経はおよそ100万本の細い神経線維でできていて、その数が減るにつれて見えない部分が広がっていきます。

 初期は自覚症状に乏しく、なかなか気づかないことが多いため、受診が遅れ、症状が進んでしまうことがよくあります。

 実際、緑内障患者さんのうち、治療を受けている人は1割程度といわれ、残りの9割の人は未発見のまま放置されている潜在患者さんです。

 緑内障には、眼圧が高い緑内障も、眼圧は高くない緑内障もあります。

 日本人の緑内障の約75%は「正常眼圧緑内障」とよばれる、眼圧は正常範囲内の緑内障で、視神経に原因があると考えられています。

 したがって、眼圧だけで緑内障の判断はできません。

 緑内障の診断には、眼底検査で視神経の状態を直接確認し、確定のために視野検査(鮮明に見える範囲)を行います。

 緑内障の初期段階では、鮮明に見えない範囲は狭い(視野は広い)ので、日常生活での支障はほとんどありません。

 その初期段階から治療を開始し、継続すれば、病気の進行を抑えることができます。

 ですから早期発見・治療がとても大切なのです。

 40歳以降は定期的に眼の検査を受け、緑内障と診断されたら、毎日欠かさぬ点眼治療を続けてください。

 それがあなたを失明から守る唯一絶対の方法です」

 緑内障のシグナル

 緑内障には、いくつかの種類があるが、最も多いのが原発緑内障で、急性タイプ(閉塞型)と慢性タイプ(開放型)がある。

 急性タイプの発作は、激しい頭痛と吐き気で始まる。

 このとき目の異常に気づかず、眼科の治療を受けるのが遅れると失明することさえある。

 慢性タイプの緑内障は、じわじわ進行するので、なかなか気づきにくい。

 ■本などを読むとき目がぼやける。

 ■夜、ふと目覚めたときに目がぼやけているが、朝になると正常に戻っている。

 ■電灯のまわりに虹が見える。

 ■目が疲れやすく、頭が重い。

 こんな症状があったら眼科で精密検査を受けるべきだ。

 遠視の人、近親者に緑内障患者のいる人、ひどい近視の人、糖尿病の人などはとくに要注意だ。

 なお、クモ膜下出血の前ぶれとして、眼球の位置がずれて斜視になり、ものが二重に見えて、どちらか片方のまぶたが下がるといった症状がみられることがある。

 脳内の動脈瘤(りゅう)のため、眼筋まひが起こったのだ。

 ただちに脳神経外科へ!
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

日本的緑内障とは [健康短信]

 日本的緑内障

 きょう6月7日は「緑内障を考える日」。

 日本人の中途失明原因の第1位は、ずっと糖尿病網膜症だったが、2004年からそれが緑内障に代わった。

 同年、厚生労働省が発表した「視覚障害の原因」は、

 緑内障25%、糖尿病網膜症20%、黄斑変性症11%、網膜変性症11%の順。

 緑内障は、眼球内の圧力(眼圧)が高くなって視神経が損傷され、視野が狭くなる病気。

 近年、眼圧は正常範囲でも視神経が侵される「正常眼圧緑内障(NTG)」が非常に多いことがわかった。

 日本では40歳以上の20人に1人が緑内障で、その70%がNTGと推定される。

「NTGは日本人に特徴的な緑内障のタイプといえる」と専門家は指摘している。

 5年、10年単位でじわじわ視野が欠けていくが、かなり進行するまで自覚症状はほとんどない。

 気づいたときは手遅れという例も少なくない。

 早期発見のためには、眼圧検査だけでなく眼底検査、視野検査が必要。

 とくに、

 ▽家族に緑内障の人がいる。

 ▽強い近視。

 ▽頭痛もち。

 ▽冷え性などの人はぜひ早めに眼科へ──。

 眼圧と緑内障

 眼圧は正常範囲内なのだが、目の神経が侵されて視野が狭くなる「正常眼圧緑内障(NTG)」は、日本人に特徴的に多い緑内障といわれる。  かなり進行するまで自覚症状がないために治療が手遅れになる例も少なくない。  しかし、早期に発見し治療を始めると、病気の進行を抑えることができる。  眼圧は正常なのに、なぜ視神経障害が起こるのか?  視神経がもともと弱く、眼圧がその眼の許容範囲を超えて高くなる(言い換えると、「正常」な眼圧が、その人にとっては「異常」に高い)ことで発症すると考えられている。  だからNTGの治療も、やはり眼圧を下げる点眼薬から始まる。  そして、視野障害の進行がみられない(薬が効いている)場合は、同じ薬による治療を続ける。  進行が認められたら点眼薬を替えたり、追加したりして薬物治療を続け、それでもなお進行していく場合は、房水の排出を促進する(ひらたく言えば眼球内の水はけをよくする)レーザー治療や外科手術を行う。  ともあれ、40過ぎたら一度は目の検診を──。
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

血圧を下げる外来 [医学・医療短信]

血圧を下げる「減塩外来」

 簡単そうで難しい「減塩」を無理なく続けることはできないだろうか。

 千葉県内の病院に日本で初めて「減塩外来」を開設した渡辺尚彦(よしひこ)医師は独自の方法で指導している。

 ●徐々に慣れる食事

 高血圧を中心とした循環器病が専門の渡辺先生は、普段の生活を少し工夫するだけで血圧を下げるさまざまな方法を提唱し「ミスター血圧」と呼ばれる。

 1987年8月から携帯型の血圧計を装着し、血圧の動きを記録し続けている。

「減塩は患者側はもちろん、医師や管理栄養士といった指導者側にも『難しい』という意識の人が多い。まずその先入観を変えなければいけません」

 減塩の指導歴は30年以上。患者の食や生活習慣を把握し、丸1日(24時間)に排出された尿を全て集めて尿中成分を調べる「蓄尿」を実施しながら生み出したのが「反復1週間減塩法」だ。

 最初の1週間はしっかりと減塩し、次の1週間は以前に摂取していたのと同じ塩分量(=いつもと同じ食事)に戻す。これを繰り返すことで、徐々に減塩食に慣れていく。

 減塩期間中は塩やしょうゆ、ソースといった類いを一切取らない。

 例えば刺し身はワサビを付けるだけ。料理は素材そのものをしっかり味わう。

 減塩外来はこれを軸に、患者に合った指導を心掛けている。

 厳しくもみえるが、塩分を控え続けるほうがハードルが高いという。

 例えるなら中学や高校の試験勉強と同じだ。

「入学から卒業までずっと試験勉強を続けるのはエリートしかできない。テスト前にだけドンと勉強するのを繰り返すことで、学力が少しずつ上がるようになるのと一緒です」と渡辺先生。
 
 減塩生活からいつもの食事に戻った時に、しょっぱいと感じることで味覚の変化が自分で分かり、減塩への意識が高まっていく。

「要は外食になじんだ舌の味覚のリセットです」。

 塩分摂取量は徐々に減り、1桁台になるという。蓄尿検査では、1日の塩分排出量からほぼ同等の塩分摂取量が把握できる。

 これまでの経験から、治療中に外食をおいしく感じている人は1日あたり14グラム、おいしくないと感じる人は7グラムほどの塩分摂取量になっている。

 ●動脈硬化の予防に

 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、1日あたりの塩分摂取量の目標値を18歳以上の男性で8・0グラム、女性で7・0グラムとしている。

 一方、国民健康・栄養調査(16年)によると、摂取量の平均は20歳以上の男性は10・8グラム、女性9・2グラムと高いままだ。

 世界保健機関(WHO)が5グラム未満を推奨し、減塩先進国のイギリスが25年までに3グラムに引き下げる予定の中、日本の取り組みは遅れている。

 日本人は人口の3分の1近い約4000万人が高血圧と推計されている。

 高血圧は動脈硬化を進行させ、脳梗塞(こうそく)や心筋梗塞などの原因になる。

 交感神経は緊張状態となり、ちょっとしたことで血圧はさらに上昇する。

 血圧を下げるには減塩以外に運動などさまざまな方法があるが、どれも継続するには強い意志が必要だ。
 
 渡辺先生は「手っ取り早く下げられるのが減塩です」と力を込める。

 ●置き換え法も一手

 反復1週間減塩法に加え、渡辺さんが指導するのは、朝食をシリアルの一種「グラノーラ」に置き換えること。

 みそ汁1杯や梅干し1個にはそれぞれ約2グラムの塩分量がある。

 6枚切りのトースト1枚も0・8グラムある。

 一方、グラノーラは1食分(50グラム)にヨーグルト(200グラム)を加えてもわずか0・5グラム。

 1日の摂取量を大幅に減らせる。

 朝に摂取した塩分はアルドステロンというホルモンが体内にため込んでしまう。

 だからこそ3食のうち、朝食が最も効果が高いと指摘する。

 渡辺先生は聖光ケ丘病院(千葉県柏市)に開設した減塩外来に加え、東京女子医科大東医療センター(東京都荒川区)や日本歯科大付属病院(千代田区)など計7カ所で減塩指導をしている。

 ●栄養バランスのよい「グラノーラ」

 グラノーラは、オーツ麦やライ麦、玄米などの穀物に蜂蜜などを混ぜて焼いたもの。

 ドライフルーツやナッツ類などが入ったものも多く、ザクザクとした食感が楽しめる。

 2016年のシリアルの国内市場規模(生産額)は約600億円。

 シリアルといえばコーンフレークをイメージしやすいが、約7割をグラノーラが占める。

 カルビー、日本ケロッグ、日清シスコの大手3社を中心にさまざまな商品が販売されている。

 もともと米国で一般家庭に浸透しており、1991年にカルビーが「フルーツグラノーラ」(現在の「フルグラ」)として商品化。

 当時は認知度も低く売り上げは伸びなかったが、12年ごろから若い女性の朝食向けにPR戦略を展開。

 30億円規模で推移していた売り上げは16年度は292億円にまで増加した。

 現在はファミリー層を中心に定着したうえ、「減塩」を前面に出し、中高年層にもアプローチしている。

 フルグラ事業本部は「食物繊維が豊富で栄養バランスに優れている。忙しい朝にもササッと食べられるので、朝食として受け入れられた」と分析。

 健康志向の高まりを受け、市場の更なる拡大を目指している。

________________________________________
簡易塩分摂取量テスト

 次の1~5に答えてください。各回答の点数を合計した数値が、1日の大体の塩分摂取量(グラム)と同じになります。

Q1 料理の味付けは?

 (1)薄い味付けを好む 6点
 (2)どちらともいえない 8点
 (3)濃い味付けを好む 14点

Q2 1日にみそ汁、すまし汁、スープを飲む量は?

 (1)ほとんど飲まない 0点
 (2)1杯程度 2点
 (3)2杯程度 4点
 (4)3杯程度 6点

Q3 麺類をよく食べますか?

 (1)ほとんど食べない 0点
 (2)ときどき食べる 2点
 (3)よく食べる 3点

Q4 しょっぱいもの(塩ザケ、塩辛、つくだ煮など)を食べますか? 

 (1)ほとんど食べない 0点
 (2)ときどき食べる 1点
 (3)よく食べる 2点

Q5 漬物類をよく食べますか?
 (1日にキュウリ1/2本程度として)

 (1)ほとんど食べない 0点
 (2)ときどき食べる 1点
 (3)よく食べる 2点

 (渡辺尚彦医師への取材に基づき作成)

 「毎日新聞 医療プレミア」より転載
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

関係ある? 糖尿病と「睡眠障害」 [医学・医療短信]

糖尿病と「睡眠障害」は関連している 日本で最大規模の研究

 京都大学と長浜市が共同で行っている「ながはまコホート」の、世界最大規模の7,000人超を対象とした研究で、睡眠時間や睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)が肥満と相互に関連していることや、高血圧・2型糖尿病とも関連していることが明らかになった。

 研究では、一般の健診受診者の集団において、治療が望ましいと考えられる睡眠呼吸障害が成人男性では約4人に1人、閉経後女性では約10人に1人の割合でみられることが判明した。

 睡眠障害が高血圧や糖尿病のリスクに

 24時間休みなく活動している現代社会で、短時間睡眠は増加しており、日中の眠気だけでなく2型糖尿病や高血圧などとの関連が注目されている。

 また、睡眠呼吸障害の大部分を占める睡眠時無呼吸は、日中の過度の眠気などで社会生活に重要な影響を与えるだけでなく、高血圧、2型糖尿病、心血管障害発生とも関連することが知られている。

 短時間睡眠や睡眠呼吸障害は高血圧や糖尿病のリスクになると考えられている。

 睡眠に関する研究は多いが、アンケートを用いた自己申告の睡眠時間による報告がほとんどで、客観的な睡眠時間によるものは少ない。

 そこで京都大学の研究グループは、ながはまコホート事業に参加した7,000人以上を対象に、睡眠障害の程度と客観的な睡眠時間を測定した。

「ながはまコホート事業」は、市民の健康づくりと最先端の医学研究を目的に、京都大学と滋賀県長浜市が共同して行っている研究。

 5年ごとに一般の特定健診項目に加えて、遺伝子解析を含む血液検査や睡眠検査などのさまざまな検査を行っている。

 今回対象となったのは、2013~2016年にながはまコホート事業に参加した9,109人(92.5%)のうち、機器の持ち帰りに承諾し、そのうち活動度計で週末1日を含む5日以上の測定とパルスオキシメーターで2日以上の測定のデータが取得可能であった7,051人(全体の71.6%)。

 睡眠時間の客観的な評価のために腕時計型の加速度計と睡眠日誌を、睡眠呼吸障害の評価のためにパルスオキシメーターを用いて、前者は7日間、後者は4日間の測定を依頼した。

 研究グループは、同意が得られた参加者に対して機器の操作方法を説明し、参加者の測定意欲を高めかつ測定ミスを防ぐために、一人ずつ意義や測定方法を説明した。

 閉経前女性では糖尿病リスクが28倍に上昇

 研究は、短時間睡眠と睡眠呼吸障害、肥満の3つの条件が、高血圧や2型糖尿病にどのように影響するかを解明するかを目的とした。

 また、睡眠呼吸障害のリスクは男女差、さらには閉経前後でも差があると考えられるため、女性の閉経を含めた性差についても検討した。

 その結果、客観的な睡眠時間に関しては性別や閉経前後であまり違いはみられなかったが、睡眠呼吸障害は明確な違いが認められ、特に治療対象となる中等症以上の睡眠呼吸障害の頻度は男性では23.7%と多いことが分かった。

 女性では閉経前は1.5%と少ないものの、閉経後では9.5%と頻度が高くなることが判明した。

 また、睡眠呼吸障害は男女とも高血圧に関連しており、その重症度が高くなるにつれて関連度が高くなりった。

 糖尿病に関しては、女性においてのみ関連していた。

 特に、閉経前女性においては、中等症以上の睡眠呼吸障害があると糖尿病が28倍と著明に多くなった。

 糖尿病の治療に加えて睡眠障害の治療も必要

 研究では次のことが明らかになった――

(1)短時間睡眠が睡眠呼吸障害と関連している
 睡眠時間が短い人は睡眠呼吸障害がないか検査するのが有用である可能性がある。

(2)睡眠呼吸障害は高血圧、糖尿病の頻度の上昇と関連しており、さらに、性差が認められる
 治療すべき睡眠呼吸障害のある人は高血圧、糖尿病がないか検査するのが望ましい。特に閉経前女性の睡眠呼吸障害では糖尿病に注意する必要がある。

(3)肥満と高血圧、糖尿病との関連は睡眠呼吸障害が間接的に媒介している
 高血圧、糖尿病の基礎病態である肥満の治療としての減量以外に、睡眠呼吸障害の治療も加えて有用である可能性がある。

 なお、睡眠呼吸障害のほとんどが大きな鼾がみられる閉塞性睡眠時無呼吸とみられる。

 今回の研究は、客観的な睡眠時間、睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)同時測定データを用いた世界で最大規模の研究結果だ。

 現在第3期のながはまコホート事業として、今回の研究の対象者の5年後の睡眠時間や睡眠呼吸障害の程度、高血圧や糖尿病の状態などを調査中だという。

 研究グループはこのデータを用いて、睡眠時間や睡眠呼吸障害のもともとの程度、あるいはそれらの変化が高血圧や糖尿病にもたらす影響を縦断的に解析し、因果関係について検討する予定としている。

 また、高血圧や糖尿病の参加者ではさらに頻度は高くなっているので、高血圧や糖尿病患者でいびきの大きい人や治療効果が乏しい人では、睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸)の検査も考慮する必要性が示された。

 肥満があれば肥満の克服が極めて重要だとしている。

 研究は、松本健・京都大学医学研究科客員研究員(大阪府済生会野江病院医長)、陳和夫・同特定教授、松田文彦・同教授らの研究グループによるもので、医学誌「SLEEP」オンライン版に発表された。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

「ナポレオンの3時間」、ホント? [健康短信]

偉人の“ショートスリーパー伝説”は本当か?
内村直尚 / 久留米大学教授

 睡眠時間が短くて済む人をショートスリーパー(短眠者)と呼びます。

 健常成人の適切な睡眠時間は6~8時間ですが、5時間未満の睡眠でも日中に耐えがたい眠気や倦怠(けんたい)感を訴えない人がショートスリーパーです。

 著名人の中にはショートスリーパー伝説が語り継がれている人が多くいます。

 代表例が、1日3時間しか睡眠を取らなかったというフランス皇帝ナポレオン・ボナパルトです。

 発明王と呼ばれたトーマス・エジソンは1日4時間睡眠だったといわれています。

 こうした人は、なぜショートスリーパーでいられたのでしょうか?

 本物のショートスリーパーは皆無

 短時間睡眠が実現できるならば、時間をより有効に使えるので、「その秘訣(ひけつ)は何ですか?」と身を乗り出してくる人もいるでしょう。

 まず、残念な結論を申し上げると、ショートスリーパーはこの世にほとんどいません。

 私の30年以上に及ぶ臨床経験でも、真正のショートスリーパーにお会いしたことはただの一度もありません。

 このように言うと、「自身の経験の範囲内のみで語っている」と反論されがちです。

 でも、真正のショートスリーパーに関する症例報告や実態調査に関する医学論文は、ごくわずかしかありません。

 つまり、それほどショートスリーパーはまれなのです。

 最近、体内時計を制御する「時計遺伝子」の研究が盛んになり、特定の遺伝子を持つ人がショートスリーパーであるとの報告はあります。

 しかし、睡眠状態は脳波を常時測定しない限り正確には分かりません。

 ですから、医学的にショートスリーパーと確定診断された人は極めて珍しいケースでしょう。

 きわめて難しい睡眠欲の制御

 私が真正のショートスリーパーはほぼいないと言う理由は他にもあります。

 人間の三大欲求である「食欲」「性欲」「睡眠欲」の中で、最も制御しにくいのが「睡眠欲」だからです。

 ごく特定の期間を1日3~4時間睡眠で過ごす人は珍しくありませんが、そうした人は休日などにかなり長時間の睡眠を取っているものです。

 また、徹夜の経験がある人ならばお分かりでしょうが、睡眠を極限まで抑え込むと、ある瞬間に突然眠りに落ちてしまいます。

 このようにして、どこかで必ず眠っているのです。

 ショートスリーパー伝説には「昼寝伝説」が付き物

 では、ナポレオンのショートスリーパー伝説はうそだったのでしょうか? 

 うそだと言えます。

 ナポレオンの秘書官ブーリエンヌの回顧録には、実際のナポレオンは夜から朝にかけておおむね7時間は睡眠を取り、昼寝もしていたと記述されています。

 もちろん戦争と内政に明け暮れ、多忙だったナポレオンですから1日3時間睡眠という日もしばしばあったでしょう。

 しかし、そのような睡眠不足の時には居眠りぐらいはしていたはずです。

 ここからは想像ですが、出征が多かったナポレオンならば移動中に騎乗で居眠りをしていたと思います。

 エジソンも昼寝をしていたことが知られています。

 他には、午前3時に寝て午前8時に起きていたというイギリスの元首相ウィンストン・チャーチルも国会議事堂の中に専用ベッドを設けて、昼寝をしていたといわれています。

 余談ですが、ショートスリーパー伝説のある人は往々にして地位の高い人です。

 もし、そうした人が時々居眠りをしていたとしても、周囲は叱られることへの恐れや、対外的なメンツなどから、口外しないものです。

 実際は寝ている自称ショートスリーパー

 真正のショートスリーパーにはお目にかかったことがない私ですが、「自称ショートスリーパー」には数多くお会いしています。

 会社員でも常に1日2~3時間しか寝ていないとおっしゃる方はいます。

 しかし、そういう方の場合、ほとんどがマイクロスリープと呼ばれる超短時間睡眠を取っています。

 通勤電車の中で立ったまま寝ている人などがその例です。

 そうした細切れ睡眠を合計すれば、ほとんどの人は1日6時間程度寝ているのです。

 不眠症を訴えるショートスリーパー

 一方、不眠症で「私は1日2~3時間しか寝られない」と訴える方々がいます。

 こうした人は、一気に熟睡する時間は2~3時間でも、昼寝などを合計すると6時間以上寝ていることが少なくありません。

 過去に私の元を受診した患者さんの中に、「3年間一睡もしていない」と言う方がおられました。

 でも、決してそのようなことはありません。

 このような患者さんの夜間の脳波を測定すれば、実際には寝ていることがすぐに分かります。

 しかし、その事実を突きつけたところで何も解決しません。

 私も「あなたは実際には6時間寝ていますよ」などとは言いません。

 そもそも、自分自身が眠った瞬間について確証を持って知ることはできません。

 こうした患者さんは眠れないと思い込む心理的な不安を抱えていることがほとんどです。

 実際には悩みを共有できる相手を求めているのです。

 私は「寝られなくて苦しいのですね」と声をかけながら話を聞くことにしています。

 それだけで、その晩からぐっすりまとまった時間眠れるようになる人もしばしばいるのです。

 みなさんも不眠症によるショートスリーパーを訴える人には日常的に出会っていると思います。

 そのような人に「気のせいだ」というのは避けるべきです。

 時間が許せば、本人の悩みなどを聞いてあげてください。

 ショートスリーパーを目指すな

 最後に改めて強調しておきますが、むやみにショートスリーパーを目指そうなどとは思わないでください。

 ナポレオンやエジソンやチャーチルの睡眠実態からは、昼寝できちんと睡眠を補うことが切り替えの良さにつながり、日中の激務にも耐えられたということが推察されます。

「1日3時間睡眠にする方法」などという書籍やセミナーなども見かけます。

 しかし、そのような努力よりも、睡眠時間を確保する努力、起きている時間の生産性を高める努力をすることの方が合理的かつ前向きな努力です。

 短時間睡眠による昼間の眠気や注意力の散漫は大事故の元なのですから。

【聞き手=ジャーナリスト・村上和巳】=毎日新聞医療プレミア」より転載

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:健康

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。