果物、食べよう! 食べよう! [健康短信]
果物は肥満、高血糖、動脈硬化を改善する
果物は「体にいい」といわれるものの、ちまたでは「甘いから太る」「血糖値を上げる」というイメージもあります。
ところが最新の研究で、むしろ果物を食べたほうが肥満や高血糖を改善するということがわかってきました。
果物についての間違った認識を改め、積極的に食生活に取り入れてみませんか?
果物にまつわる「誤解」
日本は、世界的に見ても果物の消費量が少ない国です。
とくに20~40代の若い世代、働き盛りの世代は、果物をあまり食べない傾向にあります。
なぜ食べないのか。
それは、果物に対して「血糖値を上げる」「太る」「中性脂肪を増やす」というイメージがあることも大きいようです。
ダイエットに関心のある若者、メタボリックシンドロームや動脈硬化など生活習慣病が気になる世代は、果物を敬遠しがちになります。
しかし、果物を食べると「血糖値が急上昇する」「太る」「中性脂肪が増える」というのは、全くの誤解です。
<誤解1> 果物は血糖値を上げる?
食後血糖値を上昇させる作用を数値にしたものをGI(グリセミック・インデックス)値といいます。
GI値は100に近いほど血糖値が上がりやすい食品といえます。
穀類、イモ類などの食品はGI値が高い傾向にあり、たとえばフランスパンは95。
それに比べ、果物はGI値が低いものがほとんどで、イチゴは40、リンゴは38、グレープフルーツは25です。
穀類やイモ類に多く含まれるデンプンは、食後すみやかにブドウ糖に分解されて血液中に送られるため、血糖値が上がりやすくなります。
一方で、果物に含まれる果糖のGI値は低く、血液中の血糖値を急に上げないだけでなく、果物に豊富に含まれている水溶性食物繊維は、糖質の消化や吸収のスピードを緩やかにする効果があります。
糖尿病学会の作成した『糖尿病食事療法のための食品交換表』では、果物は「1日80kcal程度とること」が推奨されています。
血糖値をコントロールするうえでも、果物をバランスよくとることは重要なのです。
<誤解2> 果物は甘いから太る?
果物と野菜を区別する基準はさまざまですが、国際連合食糧農業機関(FAO)などの世界的な機関ではイチゴ、スイカなどは「果物」としています。
一般的にも「果物は甘くておいしい、甘いものはカロリーが高く、太りやすい」と思われがちです。
そのため、「果物は体に悪く、野菜は体にいい」、そのように考える人は少なくありません。
しかし、甘みの強さとカロリーは、必ずしも比例するわけではありません。
また、「野菜は果物よりカロリーが低い」と考える人もいます。
しかしたとえば、ゴボウは100g当たり65kcalで、リンゴの57kcal、キウイフルーツの53kcalなどよりもややカロリーが高くなります。
さらに、野菜は調理してから食べることが多いため、口に入るときのカロリーは高くなりがちです。
果物は調理せず食べることが多いので、カロリーを低く抑えることができます。
こうしてみると、果物はむしろダイエットの助けになるといえます。
一般的なスナック菓子やケーキ類などと比べると、1回分の果物のカロリーは3分の1以下です。
そのうえ果物は食物繊維が豊富なため、少量で満腹感を得やすくなります。
間食に甘味が欲しくなったときに、菓子を果物に置き換えるだけで、一日の摂取カロリーを抑えられるでしょう。
実際に欧米では、肥満体型の人は標準体型の人より果物の摂取量が少ないという研究もあり、日本でも同じような結果になると考えられています。
<誤解3> 果物は中性脂肪が増える?
果物に含まれている果糖は、長年、中性脂肪を増やすといわれてきました。
血中の中性脂肪が濃い状態が続くと、動脈硬化が進行し、脳卒中や心不全を引き起こす危険があります。
しかし、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版』では、むしろ適量の果物を食べることで動脈硬化のリスクを減らせる可能性があるとしています。
ガイドラインによると、果物の摂取量が多いほど、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが下がり、とくにリンゴ、ナシ、かんきつ類を食べたときにその傾向が強いとのこと。
また、グレープフルーツ、キウイフルーツ、ベリー類を食べている人は、LDLコレステロールや血中の中性脂肪が減少したという研究も紹介されています。
さらに、一日に1.5~2個のリンゴを3週間食べ続けると、血中の中性脂肪が下がった、または正常範囲の中間値に近づいた、という調査もあります。
食事全体のバランスが大事
野菜などもそうですが、体にいいからといって果物ばかり食べ過ぎると、かえって健康を損ねます。
大事なのは、さまざまな食品からバランスよく食べることです。
厚生労働省と農林水産省が提案している「食事バランスガイド」では、一日に食べる食品を主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5グループに分け、それぞれを食べる量の目安を示しています。
これによると、果物は一日に200gとることが推奨されています。リンゴなら1個、ミカンなら2個、イチゴなら15~20粒、グレープフルーツなら1個の量です。
外食が多く、果物を食べる機会があまりない人は、コンビニやスーパーマーケットで売られているカットフルーツでもよいでしょう。
果物ジュースだと食物繊維などの効果が期待できなくなるので、できるだけ生で、固形の果物を食べましょう。
「果物は高い」も誤解?
果物がいくら健康にいいからといって、毎日食べるのは結構出費になる……、そのように思った人もいるかもしれません。
総務省が行った2012~14年の「家計調査」によると、100g当たりの小売価格の平均は、野菜が37.8円、果物は42.1円です。
確かに果物のほうが高いですが、差は5円弱。家計の大きな負担になるほどではありません。
また、旬のものを選べば、価格が抑えられることもあります。
果物が体にいいことは、もはや世界の常識
ここまでみてきたとおり、果物を食べると「血糖値をコントロールできる」「ダイエットできる」「中性脂肪が減る可能性がある」など、体にとってはむしろいいことずくめです。
2004年に世界保健機構(WHO)が採択した『食事、運動、健康に関する世界戦略』では、慢性疾患を予防するための栄養摂取の目標として、果物の摂取を増やすことを勧告しています。
果物が体にいいことは、すでに世界の常識となっているのです。
あなたも、今日から食生活に果物を積極的に取り入れてみませんか?
「みんなの健康ライブラリー」2018年5月掲載より(C)保健同人社
果物は「体にいい」といわれるものの、ちまたでは「甘いから太る」「血糖値を上げる」というイメージもあります。
ところが最新の研究で、むしろ果物を食べたほうが肥満や高血糖を改善するということがわかってきました。
果物についての間違った認識を改め、積極的に食生活に取り入れてみませんか?
果物にまつわる「誤解」
日本は、世界的に見ても果物の消費量が少ない国です。
とくに20~40代の若い世代、働き盛りの世代は、果物をあまり食べない傾向にあります。
なぜ食べないのか。
それは、果物に対して「血糖値を上げる」「太る」「中性脂肪を増やす」というイメージがあることも大きいようです。
ダイエットに関心のある若者、メタボリックシンドロームや動脈硬化など生活習慣病が気になる世代は、果物を敬遠しがちになります。
しかし、果物を食べると「血糖値が急上昇する」「太る」「中性脂肪が増える」というのは、全くの誤解です。
<誤解1> 果物は血糖値を上げる?
食後血糖値を上昇させる作用を数値にしたものをGI(グリセミック・インデックス)値といいます。
GI値は100に近いほど血糖値が上がりやすい食品といえます。
穀類、イモ類などの食品はGI値が高い傾向にあり、たとえばフランスパンは95。
それに比べ、果物はGI値が低いものがほとんどで、イチゴは40、リンゴは38、グレープフルーツは25です。
穀類やイモ類に多く含まれるデンプンは、食後すみやかにブドウ糖に分解されて血液中に送られるため、血糖値が上がりやすくなります。
一方で、果物に含まれる果糖のGI値は低く、血液中の血糖値を急に上げないだけでなく、果物に豊富に含まれている水溶性食物繊維は、糖質の消化や吸収のスピードを緩やかにする効果があります。
糖尿病学会の作成した『糖尿病食事療法のための食品交換表』では、果物は「1日80kcal程度とること」が推奨されています。
血糖値をコントロールするうえでも、果物をバランスよくとることは重要なのです。
<誤解2> 果物は甘いから太る?
果物と野菜を区別する基準はさまざまですが、国際連合食糧農業機関(FAO)などの世界的な機関ではイチゴ、スイカなどは「果物」としています。
一般的にも「果物は甘くておいしい、甘いものはカロリーが高く、太りやすい」と思われがちです。
そのため、「果物は体に悪く、野菜は体にいい」、そのように考える人は少なくありません。
しかし、甘みの強さとカロリーは、必ずしも比例するわけではありません。
また、「野菜は果物よりカロリーが低い」と考える人もいます。
しかしたとえば、ゴボウは100g当たり65kcalで、リンゴの57kcal、キウイフルーツの53kcalなどよりもややカロリーが高くなります。
さらに、野菜は調理してから食べることが多いため、口に入るときのカロリーは高くなりがちです。
果物は調理せず食べることが多いので、カロリーを低く抑えることができます。
こうしてみると、果物はむしろダイエットの助けになるといえます。
一般的なスナック菓子やケーキ類などと比べると、1回分の果物のカロリーは3分の1以下です。
そのうえ果物は食物繊維が豊富なため、少量で満腹感を得やすくなります。
間食に甘味が欲しくなったときに、菓子を果物に置き換えるだけで、一日の摂取カロリーを抑えられるでしょう。
実際に欧米では、肥満体型の人は標準体型の人より果物の摂取量が少ないという研究もあり、日本でも同じような結果になると考えられています。
<誤解3> 果物は中性脂肪が増える?
果物に含まれている果糖は、長年、中性脂肪を増やすといわれてきました。
血中の中性脂肪が濃い状態が続くと、動脈硬化が進行し、脳卒中や心不全を引き起こす危険があります。
しかし、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版』では、むしろ適量の果物を食べることで動脈硬化のリスクを減らせる可能性があるとしています。
ガイドラインによると、果物の摂取量が多いほど、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが下がり、とくにリンゴ、ナシ、かんきつ類を食べたときにその傾向が強いとのこと。
また、グレープフルーツ、キウイフルーツ、ベリー類を食べている人は、LDLコレステロールや血中の中性脂肪が減少したという研究も紹介されています。
さらに、一日に1.5~2個のリンゴを3週間食べ続けると、血中の中性脂肪が下がった、または正常範囲の中間値に近づいた、という調査もあります。
食事全体のバランスが大事
野菜などもそうですが、体にいいからといって果物ばかり食べ過ぎると、かえって健康を損ねます。
大事なのは、さまざまな食品からバランスよく食べることです。
厚生労働省と農林水産省が提案している「食事バランスガイド」では、一日に食べる食品を主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5グループに分け、それぞれを食べる量の目安を示しています。
これによると、果物は一日に200gとることが推奨されています。リンゴなら1個、ミカンなら2個、イチゴなら15~20粒、グレープフルーツなら1個の量です。
外食が多く、果物を食べる機会があまりない人は、コンビニやスーパーマーケットで売られているカットフルーツでもよいでしょう。
果物ジュースだと食物繊維などの効果が期待できなくなるので、できるだけ生で、固形の果物を食べましょう。
「果物は高い」も誤解?
果物がいくら健康にいいからといって、毎日食べるのは結構出費になる……、そのように思った人もいるかもしれません。
総務省が行った2012~14年の「家計調査」によると、100g当たりの小売価格の平均は、野菜が37.8円、果物は42.1円です。
確かに果物のほうが高いですが、差は5円弱。家計の大きな負担になるほどではありません。
また、旬のものを選べば、価格が抑えられることもあります。
果物が体にいいことは、もはや世界の常識
ここまでみてきたとおり、果物を食べると「血糖値をコントロールできる」「ダイエットできる」「中性脂肪が減る可能性がある」など、体にとってはむしろいいことずくめです。
2004年に世界保健機構(WHO)が採択した『食事、運動、健康に関する世界戦略』では、慢性疾患を予防するための栄養摂取の目標として、果物の摂取を増やすことを勧告しています。
果物が体にいいことは、すでに世界の常識となっているのです。
あなたも、今日から食生活に果物を積極的に取り入れてみませんか?
「みんなの健康ライブラリー」2018年5月掲載より(C)保健同人社
座りすぎの重大リスク [医学・医療短信]
座りすぎで死亡リスクが上昇する14の疾患
普段の生活の中で、座って過ごす時間が1日当たり6時間以上の人では、3時間未満の人と比べて、早期死亡リスクが19%高いことを示した研究結果が「American Journal of Epidemiology」6月26日オンライン版に発表された。
米国がん協会(ACS)のAlpa Patel氏らが実施した今回の研究では、このような死亡リスクの上昇をもたらす14の疾患も明らかになった。
近年、座って過ごす時間が長いと死亡リスクが高まるとする報告が相次いでいる。
しかし、死因別では、がんや心血管疾患以外の死因を幅広く検討した研究はほとんど行われていなかった。
そこで、Patel氏らは今回、がん予防研究-II(Cancer Prevention Study-II)栄養コホートのデータを用いて、余暇を座って過ごす時間の長さと全死亡リスク、さらにさまざまな死因別の死亡リスクとの関連について検討した。
対象は、同コホートの参加者のうち研究登録時に主要な慢性疾患がなかった男女12万7554人。このうち4万8784人が21年間(中央値20.3年)の追跡期間中に死亡した。
年齢や性、学歴、喫煙の有無、食生活、運動習慣などを考慮して解析した結果、余暇を座って過ごす時間が1日に6時間以上の人では、3時間未満の人と比べて全死亡リスクが19%高いことが分かった。
また、死因別では、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病、腎疾患、自殺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺疾患、肝疾患、消化性潰瘍などの消化器疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格系障害の14の死因による死亡リスクが上昇することが明らかになった。
さらに、死亡リスクの上昇の程度は死因によってばらつきがみられ、がんでは約10%の上昇だったが、筋骨格系障害では約60%の上昇が認められた。
以上の結果を踏まえ、Patel氏は、
「この研究結果のメッセージは“もっと動くべき”といういたってシンプルなものだ。
座位時間は短いほど身体に良い。1時間座って過ごしたら2分間立つだけでも脂質や血糖、血圧の値は改善する」と話している。
Patel氏によれば、座位時間が長いと健康に悪影響を与える原因は明らかではないが、ソファで長時間過ごす人は間食が多いといった他の不健康な習慣がある可能性が考えられるという。
また、以前の研究では、座位時間が長いと中性脂肪や血糖、血圧、インスリンの値が上昇することが示されており、
「これらによって座っている時間の長さと心疾患や肝疾患、腎疾患、がん、糖尿病、COPDなどによる死亡との関連を説明できるかもしれない」と同氏は付け加えている。
ただ、自殺やパーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格系障害による死亡リスクが上昇した理由は明確には分からないとしている。
今回の報告を受け、専門家の一人で米イェール・グリフィン予防研究センターのDavid Katz氏は、
「この研究から、長時間座り続けることによる早期死亡リスクの上昇には、心疾患から自殺までさまざまな要因が関与している可能性が示された。
これらの関連はさらに研究を進める必要があるが、その対処法は明確で、今すぐにでも取り組める簡単なことだ。
つまり、1日に何度も立ち上がって歩き回ることだ」とコメントしている。
(HealthDay News 2018年7月2日)Copyright 2018 HealthDay. All rights reserved.
普段の生活の中で、座って過ごす時間が1日当たり6時間以上の人では、3時間未満の人と比べて、早期死亡リスクが19%高いことを示した研究結果が「American Journal of Epidemiology」6月26日オンライン版に発表された。
米国がん協会(ACS)のAlpa Patel氏らが実施した今回の研究では、このような死亡リスクの上昇をもたらす14の疾患も明らかになった。
近年、座って過ごす時間が長いと死亡リスクが高まるとする報告が相次いでいる。
しかし、死因別では、がんや心血管疾患以外の死因を幅広く検討した研究はほとんど行われていなかった。
そこで、Patel氏らは今回、がん予防研究-II(Cancer Prevention Study-II)栄養コホートのデータを用いて、余暇を座って過ごす時間の長さと全死亡リスク、さらにさまざまな死因別の死亡リスクとの関連について検討した。
対象は、同コホートの参加者のうち研究登録時に主要な慢性疾患がなかった男女12万7554人。このうち4万8784人が21年間(中央値20.3年)の追跡期間中に死亡した。
年齢や性、学歴、喫煙の有無、食生活、運動習慣などを考慮して解析した結果、余暇を座って過ごす時間が1日に6時間以上の人では、3時間未満の人と比べて全死亡リスクが19%高いことが分かった。
また、死因別では、がん、心疾患、脳卒中、糖尿病、腎疾患、自殺、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺疾患、肝疾患、消化性潰瘍などの消化器疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格系障害の14の死因による死亡リスクが上昇することが明らかになった。
さらに、死亡リスクの上昇の程度は死因によってばらつきがみられ、がんでは約10%の上昇だったが、筋骨格系障害では約60%の上昇が認められた。
以上の結果を踏まえ、Patel氏は、
「この研究結果のメッセージは“もっと動くべき”といういたってシンプルなものだ。
座位時間は短いほど身体に良い。1時間座って過ごしたら2分間立つだけでも脂質や血糖、血圧の値は改善する」と話している。
Patel氏によれば、座位時間が長いと健康に悪影響を与える原因は明らかではないが、ソファで長時間過ごす人は間食が多いといった他の不健康な習慣がある可能性が考えられるという。
また、以前の研究では、座位時間が長いと中性脂肪や血糖、血圧、インスリンの値が上昇することが示されており、
「これらによって座っている時間の長さと心疾患や肝疾患、腎疾患、がん、糖尿病、COPDなどによる死亡との関連を説明できるかもしれない」と同氏は付け加えている。
ただ、自殺やパーキンソン病、アルツハイマー病、神経障害、筋骨格系障害による死亡リスクが上昇した理由は明確には分からないとしている。
今回の報告を受け、専門家の一人で米イェール・グリフィン予防研究センターのDavid Katz氏は、
「この研究から、長時間座り続けることによる早期死亡リスクの上昇には、心疾患から自殺までさまざまな要因が関与している可能性が示された。
これらの関連はさらに研究を進める必要があるが、その対処法は明確で、今すぐにでも取り組める簡単なことだ。
つまり、1日に何度も立ち上がって歩き回ることだ」とコメントしている。
(HealthDay News 2018年7月2日)Copyright 2018 HealthDay. All rights reserved.
性格で異なる「ストレス耐性」 [医学・医療短信]
性格で異なる「ストレス耐性」あなたはどのタイプ?
米井嘉一 / 同志社大学教授(アンチエイジングリサーチセンター)
老化を促進する危険因子
職場にも家庭にも、精神的なストレスを抱える人がたくさんいます。
ストレスは心の状態にさまざまな影響を与えるばかりか、体の健康にも影響します。
現代社会では、心と精神の問題は以前にも増して大切なテーマになっています。
医学的に見ると、心の問題を扱うのは決して簡単ではありません。
ストレスの大きさや、ストレスによるダメージを評価したいと思っても、どんな状態が正常で、どこから病気なのかを判断するのが難しいからです。
男女差があり、子供と大人でも異なり、高齢者にはまた別の事情があります。
まず、正常な心の状態について考えます。
感情に乏しく、個性のないロボットのような人たちばかりでは、人間が営む社会は面白くありません。
個性豊かな人たちが集まるからこそ、この世は楽しい。
人間であるからには、喜怒哀楽の感情が豊かで、夢と希望にあふれている状態が正常と言えるでしょう。
この考え方は「陰陽五行学説」に基づいています。
科学的な法則というよりは、四季があるアジア地域(中国、朝鮮半島、日本)で数千年にわたって育まれた経験則です。
人の心「五情」のバランスとは
人には「五情(あるいは五志)」と呼ばれる五つの感情があります。
「怒り、喜び、憂い、悲しみ、恐れ」です。
お互いに影響し合っています。
一つの感情が強すぎたり、あるいは極端に抑えられたりすると、心のバランスに乱れが生じます。
感情が乱れたら調和を図り、うまくバランスを保つことが重要です。
感情には陰と陽があります。
例えば、感情が自分に向かう(陰)状態では、「悲」は悲しみですが、他人に向かう(陽)と「哀れみ」になります。
「憂」は内側にしぼめば抑うつ状態(陰)になりますが、外に広がれば夢や希望、想像力(陽)になります。
「恐」には不安や恐ろしさという要素がありますが、「畏れ」という文字を用いれば神々への畏れ、自然賛歌、敬いの心に通じます。
心のバランスに乱れを生じさせる大きな要因が心身のストレスです。
広辞苑によると、「ストレス(stress)」とは種々の外部刺激が負担として働くとき心身に生ずる機能変化、とされています。
原因となる要素(ストレッサー)には寒暑、騒音、化学物質などの物理化学的なもの▽飢餓、感染、過労、睡眠不足など生物学的なもの▽精神的緊張、不安、恐怖、興奮など心理的社会的なもの--があります。
人が営むひとつひとつの行動がストレスになり得ます。
朝起きて食事の支度、通勤、通学、仕事、勉強、試験や会議、家族関係、職場の人間関係、友人関係、部活動、サークル活動など、良いことも嫌なこともすべてがストレスです。
一日にこれだけ活動すれば夜には疲れます。疲れはストレスによるダメージの一種ですから、夜の休養と睡眠でダメージから回復することが大切です。
そして翌日、再び新たなストレスに向き合うのです。
人によって大きく違うストレス耐性
ストレスのない生活は望ましくありません。
ストレスは刺激の一種です。
外的刺激がないと、特に高齢者は認知障害が進みます。
これまでピンピン元気に自立生活を送っていた高齢者が肺炎で入院し、病気は治ったものの3日目にボケてしまうことは、しばしばあります。
また子供に負担や刺激を与えず、ストレスのない状態で育てると、大人になってストレス対処に苦しむことになります。
ストレスに対する強さ(ストレス耐性)は個人の性格によって異なります。
英国の心理学者Eysenck (アイゼンク)は、人間の性格(パーソナリティー)を四つに分類しています。
タイプAはいわゆる完璧主義者。
もっともストレスの影響を受けやすく、免疫機能が低下しやすいと言われています。
タイプBはストレスを怒りによって発散するタイプです。
結構、周りに迷惑をかけます。
タイプCはAとBの混合型。
このタイプが一番多いのではないでしょうか。
タイプDは精神的な柔軟性に富み、ストレスに対する適応力が一番強いタイプと言えます。
自分がどのタイプなのかを知ることは、社会の中でどう生きるかを考える時に、大いに参考になるでしょう。
「毎日新聞 医療プレミア」による
米井嘉一(よねい・よしかず) 慶応義塾大学医学部卒業、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。
米井嘉一 / 同志社大学教授(アンチエイジングリサーチセンター)
老化を促進する危険因子
職場にも家庭にも、精神的なストレスを抱える人がたくさんいます。
ストレスは心の状態にさまざまな影響を与えるばかりか、体の健康にも影響します。
現代社会では、心と精神の問題は以前にも増して大切なテーマになっています。
医学的に見ると、心の問題を扱うのは決して簡単ではありません。
ストレスの大きさや、ストレスによるダメージを評価したいと思っても、どんな状態が正常で、どこから病気なのかを判断するのが難しいからです。
男女差があり、子供と大人でも異なり、高齢者にはまた別の事情があります。
まず、正常な心の状態について考えます。
感情に乏しく、個性のないロボットのような人たちばかりでは、人間が営む社会は面白くありません。
個性豊かな人たちが集まるからこそ、この世は楽しい。
人間であるからには、喜怒哀楽の感情が豊かで、夢と希望にあふれている状態が正常と言えるでしょう。
この考え方は「陰陽五行学説」に基づいています。
科学的な法則というよりは、四季があるアジア地域(中国、朝鮮半島、日本)で数千年にわたって育まれた経験則です。
人の心「五情」のバランスとは
人には「五情(あるいは五志)」と呼ばれる五つの感情があります。
「怒り、喜び、憂い、悲しみ、恐れ」です。
お互いに影響し合っています。
一つの感情が強すぎたり、あるいは極端に抑えられたりすると、心のバランスに乱れが生じます。
感情が乱れたら調和を図り、うまくバランスを保つことが重要です。
感情には陰と陽があります。
例えば、感情が自分に向かう(陰)状態では、「悲」は悲しみですが、他人に向かう(陽)と「哀れみ」になります。
「憂」は内側にしぼめば抑うつ状態(陰)になりますが、外に広がれば夢や希望、想像力(陽)になります。
「恐」には不安や恐ろしさという要素がありますが、「畏れ」という文字を用いれば神々への畏れ、自然賛歌、敬いの心に通じます。
心のバランスに乱れを生じさせる大きな要因が心身のストレスです。
広辞苑によると、「ストレス(stress)」とは種々の外部刺激が負担として働くとき心身に生ずる機能変化、とされています。
原因となる要素(ストレッサー)には寒暑、騒音、化学物質などの物理化学的なもの▽飢餓、感染、過労、睡眠不足など生物学的なもの▽精神的緊張、不安、恐怖、興奮など心理的社会的なもの--があります。
人が営むひとつひとつの行動がストレスになり得ます。
朝起きて食事の支度、通勤、通学、仕事、勉強、試験や会議、家族関係、職場の人間関係、友人関係、部活動、サークル活動など、良いことも嫌なこともすべてがストレスです。
一日にこれだけ活動すれば夜には疲れます。疲れはストレスによるダメージの一種ですから、夜の休養と睡眠でダメージから回復することが大切です。
そして翌日、再び新たなストレスに向き合うのです。
人によって大きく違うストレス耐性
ストレスのない生活は望ましくありません。
ストレスは刺激の一種です。
外的刺激がないと、特に高齢者は認知障害が進みます。
これまでピンピン元気に自立生活を送っていた高齢者が肺炎で入院し、病気は治ったものの3日目にボケてしまうことは、しばしばあります。
また子供に負担や刺激を与えず、ストレスのない状態で育てると、大人になってストレス対処に苦しむことになります。
ストレスに対する強さ(ストレス耐性)は個人の性格によって異なります。
英国の心理学者Eysenck (アイゼンク)は、人間の性格(パーソナリティー)を四つに分類しています。
タイプAはいわゆる完璧主義者。
もっともストレスの影響を受けやすく、免疫機能が低下しやすいと言われています。
タイプBはストレスを怒りによって発散するタイプです。
結構、周りに迷惑をかけます。
タイプCはAとBの混合型。
このタイプが一番多いのではないでしょうか。
タイプDは精神的な柔軟性に富み、ストレスに対する適応力が一番強いタイプと言えます。
自分がどのタイプなのかを知ることは、社会の中でどう生きるかを考える時に、大いに参考になるでしょう。
「毎日新聞 医療プレミア」による
米井嘉一(よねい・よしかず) 慶応義塾大学医学部卒業、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。
虫刺されの対応と予防 [医学・医療短信]
アウトドアシーズンは要注意! 虫刺されの対応と予防
志賀隆 / 国際医療福祉大学准教授/同大学三田病院救急部長
虫刺されかな…と思ったら?
結論からいいますと、確率的にほとんどの虫刺されは軽症で、命に関わるような場合は極めてまれです。
虫刺されそのものは非常によくあることなので、症状が激しくなければ自宅で手当てをして医療機関を受診する必要がないことがほとんどです。
しかし、虫刺されによる症状が激しいため受診した場合に、医療機関ではどのようにアプローチをしているのでしょうか?
まずは患者さんに「虫に刺された可能性」についてうかがいます。
大抵の患者さんは虫に刺されたことを自覚していることが多いからです。
次に、生じることが最も多い皮膚の症状についてうかがいます。
刺されたときに麻酔薬の成分をもった虫の唾液が入ったり、刺された人が眠っていたりすることがあるため、症状に気付くのに時間がかかることもあります。
そして、旅行などで衛生のよくない環境で過ごしたりした場合にはトコジラミ(南京虫)や寄生虫に暴露される可能性があるため旅行や環境面の質問をします。
次に診察で、皮膚を観察します。
刺された周囲の症状としては、かゆみ、痛み、赤み、圧痛(押したときの痛み)、熱感や腫れが起こることが多いです。
そして症状は悪化することは少なく、次第に良くなっていくことがほとんどです。
血液検査や顕微鏡検査などが有用である場合はほとんどなく、大抵の場合には患者さんのお話などの情報と症状などの時間経過と診察にて診断します。
ただ、まれなのですが、虫刺されの中には皮膚だけの症状にとどまらず、全身の症状にいたることがあるため、皮膚の症状が強く、腫れ、皮疹などの範囲が広い、もしくは全身に広がっていくような場合には注意が必要です。
特に、刺された場所以外にかゆみが出た、おなかが痛い、息が苦しいなどの症状が出た場合には要注意です。
重症のアレルギー症状である「アナフィラキシー」に進んでいる可能性があるからです。
その場合は、皮膚の症状だけにはとどまりません。皮膚の症状に加えて以下の症状のうち一つでも該当する場合にはアナフィラキシーを考えます。
・消化器の症状(腹痛、下痢、など)
・呼吸器症状(喉が腫れる、息が苦しくなる、ヒューヒューと音がする「喘鳴(ぜいめい)」など)
・低血圧(ふらつき、ふだんの血圧から30%以上低下、年齢の下限値を下回る場合など)
・終末臓器障害を示す症状(失神、失禁、虚脱など)
アナフィラキシーの場合、一般的な虫刺されの治療では対応は困難です。
すぐに救急車を呼んで医療機関で迅速な対応をすることが望まれます。
単純な虫刺されではないかも?
頻度は高くないのですが、虫刺されの部位から細菌が侵入して皮膚の感染症である蜂窩織炎(ほうかしきえん)になることがあります。
刺された周囲の皮膚に
・赤みがひかない/広がる
・腫れがひかない/広がる
・熱感が出てきた
・熱が出てきた
--などの症状がある場合には医療機関の受診を考えてください。
ダニにかまれたら要注意
他に注意すべきなのは、「ダニにかまれた可能性」です。
数週間程度は症状に注意し、特に発熱や皮疹が出現した際には医療機関を受診するようにしてください。
以下にダニによる特有の感染症を簡単にご紹介します。
△ツツガムシ病、日本紅斑熱
かまれた周囲が赤くなり、中心部がかさぶたになっていることがあります。
かまれた後数日から10日程度経過して、高い熱とともに赤い発疹が全身に広がっていきます。
抗菌薬による治療が可能ですが、遅れると命の危険が出ることがあります。
△ライム病
刺された周囲に特徴的な「ダーツの的」のような皮疹が出ます。
また、倦怠(けんたい)感、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒--など、風邪・インフルエンザのような症状も出ます。
こちらも抗菌薬で治療可能ですが、進行すると神経、心臓、関節などさまざまな部位に広がるので早めの医療機関受診が必要です。
△重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
6日~2週間の潜伏期を経て、発熱や消化器症状(食欲低下、吐き気、嘔吐<おうと>、下痢、腹痛)が多くの症例で認められます。
また、頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹(しゅちょう)、皮下出血や下血などの出血症状などを起こします。
重症化や死亡の報告のある病気です。
ダニは吸血を始めてから1~2週間も皮膚にとりついたままになることもあります。
吸血中のダニを取る際には専用の器具が必要です。
自分で取ると「口器」という部分が皮膚に刺さったまま残ってしまいますから、医療機関を受診して取ってもらいましょう。
予防にはどうしたらいい?
虫刺されによる被害はどの地域でも起こりうることです。ただ予防法もありますので以下に解説いたします。
△定期的な殺虫剤散布
自宅や職場の周辺に虫の巣や発生しやすい場所(水たまりや河川など)がある場合には定期的な殺虫剤の散布が虫刺され予防に有効な可能性があります。
△衣服の種類
夏の暑いときには大変なのですが、やはり野外で活動をする際には長袖・長ズボンがおすすめです。
ほとんどの虫が衣服を通して刺したりかんだりすることが難しいからです。
また、蚊を含め多くの虫にとって、白やベージュ系統の色の薄い衣服の方が魅力が低くなると考えられています。
反対に避けるべきなのは、黒などの暗い系統の色や赤などの鮮明な色で、花柄は控えた方がいいでしょう。
また、サンダルなど露出の多い履物は避けて、足首まで保護されている靴をはくことがおすすめです。
△香水など
虫をひき付ける可能性があるので、香水やにおいの強いせっけん、ヘアスプレー、化粧水などは避けたほうがいいでしょう。
避けるべき環境としては植物が密生している場所がありますね。
また、ノミやダニを持つ動物(野良犬や野良猫などの哺乳類、鳥類)との接触は避けたほうがいいですね。
清涼飲料水などのフタが開いたままになっているとハチなどが入ってしまうことがあるので注意が必要です。
△虫よけ
使用上の注意を守って使用しましょう。
塗る際にムラがあるとその部分を刺されてしまう可能性があります。
塗るタイプのものは、塗ってから3時間程度たってしまうと効果が弱まることも多いので、再度塗るようにしましょう。
日焼け止めなどと併用する際には一番最後に虫よけを塗るようにして、効果が減らないようにしましょう。
志賀隆 / 国際医療福祉大学准教授/同大学三田病院救急部長
虫刺されかな…と思ったら?
結論からいいますと、確率的にほとんどの虫刺されは軽症で、命に関わるような場合は極めてまれです。
虫刺されそのものは非常によくあることなので、症状が激しくなければ自宅で手当てをして医療機関を受診する必要がないことがほとんどです。
しかし、虫刺されによる症状が激しいため受診した場合に、医療機関ではどのようにアプローチをしているのでしょうか?
まずは患者さんに「虫に刺された可能性」についてうかがいます。
大抵の患者さんは虫に刺されたことを自覚していることが多いからです。
次に、生じることが最も多い皮膚の症状についてうかがいます。
刺されたときに麻酔薬の成分をもった虫の唾液が入ったり、刺された人が眠っていたりすることがあるため、症状に気付くのに時間がかかることもあります。
そして、旅行などで衛生のよくない環境で過ごしたりした場合にはトコジラミ(南京虫)や寄生虫に暴露される可能性があるため旅行や環境面の質問をします。
次に診察で、皮膚を観察します。
刺された周囲の症状としては、かゆみ、痛み、赤み、圧痛(押したときの痛み)、熱感や腫れが起こることが多いです。
そして症状は悪化することは少なく、次第に良くなっていくことがほとんどです。
血液検査や顕微鏡検査などが有用である場合はほとんどなく、大抵の場合には患者さんのお話などの情報と症状などの時間経過と診察にて診断します。
ただ、まれなのですが、虫刺されの中には皮膚だけの症状にとどまらず、全身の症状にいたることがあるため、皮膚の症状が強く、腫れ、皮疹などの範囲が広い、もしくは全身に広がっていくような場合には注意が必要です。
特に、刺された場所以外にかゆみが出た、おなかが痛い、息が苦しいなどの症状が出た場合には要注意です。
重症のアレルギー症状である「アナフィラキシー」に進んでいる可能性があるからです。
その場合は、皮膚の症状だけにはとどまりません。皮膚の症状に加えて以下の症状のうち一つでも該当する場合にはアナフィラキシーを考えます。
・消化器の症状(腹痛、下痢、など)
・呼吸器症状(喉が腫れる、息が苦しくなる、ヒューヒューと音がする「喘鳴(ぜいめい)」など)
・低血圧(ふらつき、ふだんの血圧から30%以上低下、年齢の下限値を下回る場合など)
・終末臓器障害を示す症状(失神、失禁、虚脱など)
アナフィラキシーの場合、一般的な虫刺されの治療では対応は困難です。
すぐに救急車を呼んで医療機関で迅速な対応をすることが望まれます。
単純な虫刺されではないかも?
頻度は高くないのですが、虫刺されの部位から細菌が侵入して皮膚の感染症である蜂窩織炎(ほうかしきえん)になることがあります。
刺された周囲の皮膚に
・赤みがひかない/広がる
・腫れがひかない/広がる
・熱感が出てきた
・熱が出てきた
--などの症状がある場合には医療機関の受診を考えてください。
ダニにかまれたら要注意
他に注意すべきなのは、「ダニにかまれた可能性」です。
数週間程度は症状に注意し、特に発熱や皮疹が出現した際には医療機関を受診するようにしてください。
以下にダニによる特有の感染症を簡単にご紹介します。
△ツツガムシ病、日本紅斑熱
かまれた周囲が赤くなり、中心部がかさぶたになっていることがあります。
かまれた後数日から10日程度経過して、高い熱とともに赤い発疹が全身に広がっていきます。
抗菌薬による治療が可能ですが、遅れると命の危険が出ることがあります。
△ライム病
刺された周囲に特徴的な「ダーツの的」のような皮疹が出ます。
また、倦怠(けんたい)感、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒--など、風邪・インフルエンザのような症状も出ます。
こちらも抗菌薬で治療可能ですが、進行すると神経、心臓、関節などさまざまな部位に広がるので早めの医療機関受診が必要です。
△重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
6日~2週間の潜伏期を経て、発熱や消化器症状(食欲低下、吐き気、嘔吐<おうと>、下痢、腹痛)が多くの症例で認められます。
また、頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹(しゅちょう)、皮下出血や下血などの出血症状などを起こします。
重症化や死亡の報告のある病気です。
ダニは吸血を始めてから1~2週間も皮膚にとりついたままになることもあります。
吸血中のダニを取る際には専用の器具が必要です。
自分で取ると「口器」という部分が皮膚に刺さったまま残ってしまいますから、医療機関を受診して取ってもらいましょう。
予防にはどうしたらいい?
虫刺されによる被害はどの地域でも起こりうることです。ただ予防法もありますので以下に解説いたします。
△定期的な殺虫剤散布
自宅や職場の周辺に虫の巣や発生しやすい場所(水たまりや河川など)がある場合には定期的な殺虫剤の散布が虫刺され予防に有効な可能性があります。
△衣服の種類
夏の暑いときには大変なのですが、やはり野外で活動をする際には長袖・長ズボンがおすすめです。
ほとんどの虫が衣服を通して刺したりかんだりすることが難しいからです。
また、蚊を含め多くの虫にとって、白やベージュ系統の色の薄い衣服の方が魅力が低くなると考えられています。
反対に避けるべきなのは、黒などの暗い系統の色や赤などの鮮明な色で、花柄は控えた方がいいでしょう。
また、サンダルなど露出の多い履物は避けて、足首まで保護されている靴をはくことがおすすめです。
△香水など
虫をひき付ける可能性があるので、香水やにおいの強いせっけん、ヘアスプレー、化粧水などは避けたほうがいいでしょう。
避けるべき環境としては植物が密生している場所がありますね。
また、ノミやダニを持つ動物(野良犬や野良猫などの哺乳類、鳥類)との接触は避けたほうがいいですね。
清涼飲料水などのフタが開いたままになっているとハチなどが入ってしまうことがあるので注意が必要です。
△虫よけ
使用上の注意を守って使用しましょう。
塗る際にムラがあるとその部分を刺されてしまう可能性があります。
塗るタイプのものは、塗ってから3時間程度たってしまうと効果が弱まることも多いので、再度塗るようにしましょう。
日焼け止めなどと併用する際には一番最後に虫よけを塗るようにして、効果が減らないようにしましょう。
肝臓の炎を消そう [医学・医療短信]
肝臓の炎症、それはあなたが思うよりも近い
すこし気が早いが、この週末、7月28日は「日本肝炎デー」である。
WHO(世界保健機構)が、世界的レベルでのウイルス肝炎のまん延防止と、感染予防の推進などを目的に、B型肝炎ウイルスの発見者、バルーク・ブラムバーグの誕生日のこの日を、「World Hepatitis Day(世界肝炎デー)」と定めたのは、2010年。
テーマは、「This is hepatitis(これは肝炎である)」、スローガンは、「Its closer than you think(それはあなたが思うよりも近い)」だった。
肝炎のABC
肝炎の原因になる5種類のウイルス──A、B、C、D、E──のうち、日本人に特に縁の深いのはA型とB型とC型だ。
A型は口からうつる消化器伝染病の一種。
一度かかれば免疫ができて二度とかからない。
昔は数年おきに流行し、流行性肝炎と呼ばれたが、今は激減した。
発展途上国への旅行で感染する例がままみられる。
抗体を持ってない人は、旅行前に予防ワクチンの接種を受けるとよい。
B型肝炎ウイルスは、血液、体液を介して感染する。
ウイルスが体に居ついてしまう持続感染(キャリア)と、急性肝炎で治ってしまうものとがある。
出生時や乳幼児期にうつるとキャリアになりやすいが、免疫機構が正常な成人では、A型と同じように一過性の感染で済む。
ワクチンと免疫グロブリンによる予防が、1986年から始まり、今はもうキャリアになる子どもはほとんどいない。
数十年後にはB型の慢性肝炎、B型の肝硬変、B型の肝がんは消滅するだろう。
残るはC型肝炎だが、これの多くは大人になってからの感染で、60~70%がキャリアになり、肝硬変、肝がんに進む人がいる。
国民的肝炎
毎年約3万4000人が肝臓がんで亡くなっている。
その原因の8割がC型肝炎、一割がB型肝炎だ。どちらも血液を介して感染する。
B型は、出生時や乳幼児期の母子感染と、昔の集団予防接種での注射針の使い回しなど、医療行為による感染が多かった。
C型は、血液から作った薬や輸血などによって広がった。
俳優の渡辺謙さんも、1989年に発症した白血病の治療で輸血を受けたさい、C型肝炎に感染したと、自著『誰? WHO AM I?』(ブックマン社)の中に書いている。
大人になってから感染したB型は慢性化しないが、C型は慢性肝炎になる。
患者・持続感染者は、B型100万人以上、C型150万人以上とみられる。
国民病といってもいいだろう。
慢性肝炎は自覚症状がほとんどなく、感染に気づいてない人も多い。
治療法は劇的に進歩。
インターフェロンを改良したペグイントロンと抗ウイルス薬リバビリンの併用による完治例が増えている。
渡辺さんもこの治療法によって「非常にいい状態をキープしている」そうだ。
お知らせ。
幼少期に受けた集団予防接種等の際に注射器が連続使用されたことによってB型肝炎ウイルスに持続感染した人への給付金制度。
具体的には…
①昭和16年7月2日から昭和63年1月27日
までに生まれた方
②B型肝炎ウイルスに持続感染している方
その他、基本合意書に定められた要件を充たすと国に認められた方。
上記の条件にあたる方には、病態に応じて50〜3,600万円の給付金が国から支給される可能性があります。
国を相手とする「国家賠償請求訴訟」という訴訟を提起することが必要。
一定の証拠を提出して、基本合意書に定める要件を充たすと認めると国が和解をし、その和解調書を国の窓口に提出することによって給付金を受け取ることができます。
すこし気が早いが、この週末、7月28日は「日本肝炎デー」である。
WHO(世界保健機構)が、世界的レベルでのウイルス肝炎のまん延防止と、感染予防の推進などを目的に、B型肝炎ウイルスの発見者、バルーク・ブラムバーグの誕生日のこの日を、「World Hepatitis Day(世界肝炎デー)」と定めたのは、2010年。
テーマは、「This is hepatitis(これは肝炎である)」、スローガンは、「Its closer than you think(それはあなたが思うよりも近い)」だった。
肝炎のABC
肝炎の原因になる5種類のウイルス──A、B、C、D、E──のうち、日本人に特に縁の深いのはA型とB型とC型だ。
A型は口からうつる消化器伝染病の一種。
一度かかれば免疫ができて二度とかからない。
昔は数年おきに流行し、流行性肝炎と呼ばれたが、今は激減した。
発展途上国への旅行で感染する例がままみられる。
抗体を持ってない人は、旅行前に予防ワクチンの接種を受けるとよい。
B型肝炎ウイルスは、血液、体液を介して感染する。
ウイルスが体に居ついてしまう持続感染(キャリア)と、急性肝炎で治ってしまうものとがある。
出生時や乳幼児期にうつるとキャリアになりやすいが、免疫機構が正常な成人では、A型と同じように一過性の感染で済む。
ワクチンと免疫グロブリンによる予防が、1986年から始まり、今はもうキャリアになる子どもはほとんどいない。
数十年後にはB型の慢性肝炎、B型の肝硬変、B型の肝がんは消滅するだろう。
残るはC型肝炎だが、これの多くは大人になってからの感染で、60~70%がキャリアになり、肝硬変、肝がんに進む人がいる。
国民的肝炎
毎年約3万4000人が肝臓がんで亡くなっている。
その原因の8割がC型肝炎、一割がB型肝炎だ。どちらも血液を介して感染する。
B型は、出生時や乳幼児期の母子感染と、昔の集団予防接種での注射針の使い回しなど、医療行為による感染が多かった。
C型は、血液から作った薬や輸血などによって広がった。
俳優の渡辺謙さんも、1989年に発症した白血病の治療で輸血を受けたさい、C型肝炎に感染したと、自著『誰? WHO AM I?』(ブックマン社)の中に書いている。
大人になってから感染したB型は慢性化しないが、C型は慢性肝炎になる。
患者・持続感染者は、B型100万人以上、C型150万人以上とみられる。
国民病といってもいいだろう。
慢性肝炎は自覚症状がほとんどなく、感染に気づいてない人も多い。
治療法は劇的に進歩。
インターフェロンを改良したペグイントロンと抗ウイルス薬リバビリンの併用による完治例が増えている。
渡辺さんもこの治療法によって「非常にいい状態をキープしている」そうだ。
お知らせ。
幼少期に受けた集団予防接種等の際に注射器が連続使用されたことによってB型肝炎ウイルスに持続感染した人への給付金制度。
具体的には…
①昭和16年7月2日から昭和63年1月27日
までに生まれた方
②B型肝炎ウイルスに持続感染している方
その他、基本合意書に定められた要件を充たすと国に認められた方。
上記の条件にあたる方には、病態に応じて50〜3,600万円の給付金が国から支給される可能性があります。
国を相手とする「国家賠償請求訴訟」という訴訟を提起することが必要。
一定の証拠を提出して、基本合意書に定める要件を充たすと認めると国が和解をし、その和解調書を国の窓口に提出することによって給付金を受け取ることができます。
夜の失敗、賢い対処法 [医学・医療短信]
夏休み!
臨海学校や合宿に出かける子どもも多いだろう。
そこで心配になるのが、おねしょ。
小学生になってもまだおねしょをしている子はけっこう多く、旅行の前になると、
「夜中に一度、起こしてください」と、担任の先生に頼みに来る母親が何人もいるそうだ。
で、旅行から帰って来た子が、
「僕だけじゃなかったよ。夜中にトイレに行ったら、みんないたよ」と明るい声で報告、それをきっかけにおねしょが治ったという例もある。
夜尿には、①多尿型、②膀胱型、③混合型、④正常型という四つのタイプがある。
①は、睡眠中に作られる尿の量が多いタイプ。
人間は普通、昼間より夜間のほうが尿の量が減る。
夜、寝ている間は、尿の産生を抑える抗利尿ホルモンが多く分泌されるためだ。
その分、尿は濃くなる。
赤ちゃんのときは昼も夜も同じように排尿するが、3~4歳ごろになると、抗利尿ホルモンの分泌や、排尿にかかわる自律神経のバランスがうまくとれるようになり、夜、寝ているときには排尿をしなくなる。
多尿型の子どもは、抗利尿ホルモンの分泌が不十分なために、夜間にもたくさんうすい尿ができ、尿を貯める膀胱の容量を超えて、漏らしてしまう。
②は、作られる尿の量は通常だが、膀胱の発達が未熟なために貯められる尿の容量が少なく、尿があふれて夜尿をしてしまうタイプだ。
③は、①と②の両方がみられるタイプ。
④は、尿の量も多くはなく、膀胱の容量もほぼ正常で、データ的には異常はないが、夜尿をするというもの。
大部分は①、②、③が改善し、もうすぐ治るという状態になっているもので、夜尿の程度や頻度も少なく、ある日突然、治ってしまうものがほとんどだ。
「夜尿症は、一つの病気ではありますが、そのほとんどが自然に治っていくものです。
だからといって、いつまでも放っておいてよいということではありませんが、あまり早くから心配しすぎるのも考えものです」と、新都心こどもクリニック(さいたま市)の赤司俊二院長。
治療は、体には何の異常もないことをはっきりさせて、本人を安心させる。
自信をつけさせる。薬物療法、アラーム療法(パンツに小さなセンサーをつけ、尿がちょっと漏れると水分に反応してブザーが鳴って、目が覚める)などいろいろあるが、中心は生活習慣の改善だ。
夜尿のタイプに合った食事や水分の摂取コントロール、排尿訓練、そして家族の協力だ。
夕方からの水分摂取はなるべく減らし、夕食は就寝の3時間前までに─。
料理は塩分を少なめに─(尿は塩分を排泄するために作られるので、塩分の多い食事は尿の量を多くする)。
昼間に排尿を我慢する排尿訓練は、膀胱の容量を大きくしていく効果がある。
こうした夜尿を治すための食生活や排尿訓練は、最低でも数カ月以上かかる。
必須条件は「根気」である。
「だからこそ家族で話し合い、夜尿を治すために全員で協力していくことが、とても大切なのです。
焦っても夜尿は治らない、怒っても良いことはなにもない、夜は起こさずよく寝かせる─焦らず、怒らず、起こさない─が三原則です」と、赤司先生。
先生の本『夜尿症―その正しい理解のために』(悠飛社=1470円)のご一読を、子どものおねしょに悩むお母さんにお勧めしたい。
なお、ときには、大人でもおねしょをすることがある。精神的なストレスが原因となることが多い。
以前に見たテレビドラマで、大口の得意先を失ったデパートの外商部の課長が睡眠中に失禁するシーンがあったが、そうした強い精神的過労による夜尿も珍しくないようだ。
むろん、このような夜尿自体は心配無用である。
臨海学校や合宿に出かける子どもも多いだろう。
そこで心配になるのが、おねしょ。
小学生になってもまだおねしょをしている子はけっこう多く、旅行の前になると、
「夜中に一度、起こしてください」と、担任の先生に頼みに来る母親が何人もいるそうだ。
で、旅行から帰って来た子が、
「僕だけじゃなかったよ。夜中にトイレに行ったら、みんないたよ」と明るい声で報告、それをきっかけにおねしょが治ったという例もある。
夜尿には、①多尿型、②膀胱型、③混合型、④正常型という四つのタイプがある。
①は、睡眠中に作られる尿の量が多いタイプ。
人間は普通、昼間より夜間のほうが尿の量が減る。
夜、寝ている間は、尿の産生を抑える抗利尿ホルモンが多く分泌されるためだ。
その分、尿は濃くなる。
赤ちゃんのときは昼も夜も同じように排尿するが、3~4歳ごろになると、抗利尿ホルモンの分泌や、排尿にかかわる自律神経のバランスがうまくとれるようになり、夜、寝ているときには排尿をしなくなる。
多尿型の子どもは、抗利尿ホルモンの分泌が不十分なために、夜間にもたくさんうすい尿ができ、尿を貯める膀胱の容量を超えて、漏らしてしまう。
②は、作られる尿の量は通常だが、膀胱の発達が未熟なために貯められる尿の容量が少なく、尿があふれて夜尿をしてしまうタイプだ。
③は、①と②の両方がみられるタイプ。
④は、尿の量も多くはなく、膀胱の容量もほぼ正常で、データ的には異常はないが、夜尿をするというもの。
大部分は①、②、③が改善し、もうすぐ治るという状態になっているもので、夜尿の程度や頻度も少なく、ある日突然、治ってしまうものがほとんどだ。
「夜尿症は、一つの病気ではありますが、そのほとんどが自然に治っていくものです。
だからといって、いつまでも放っておいてよいということではありませんが、あまり早くから心配しすぎるのも考えものです」と、新都心こどもクリニック(さいたま市)の赤司俊二院長。
治療は、体には何の異常もないことをはっきりさせて、本人を安心させる。
自信をつけさせる。薬物療法、アラーム療法(パンツに小さなセンサーをつけ、尿がちょっと漏れると水分に反応してブザーが鳴って、目が覚める)などいろいろあるが、中心は生活習慣の改善だ。
夜尿のタイプに合った食事や水分の摂取コントロール、排尿訓練、そして家族の協力だ。
夕方からの水分摂取はなるべく減らし、夕食は就寝の3時間前までに─。
料理は塩分を少なめに─(尿は塩分を排泄するために作られるので、塩分の多い食事は尿の量を多くする)。
昼間に排尿を我慢する排尿訓練は、膀胱の容量を大きくしていく効果がある。
こうした夜尿を治すための食生活や排尿訓練は、最低でも数カ月以上かかる。
必須条件は「根気」である。
「だからこそ家族で話し合い、夜尿を治すために全員で協力していくことが、とても大切なのです。
焦っても夜尿は治らない、怒っても良いことはなにもない、夜は起こさずよく寝かせる─焦らず、怒らず、起こさない─が三原則です」と、赤司先生。
先生の本『夜尿症―その正しい理解のために』(悠飛社=1470円)のご一読を、子どものおねしょに悩むお母さんにお勧めしたい。
なお、ときには、大人でもおねしょをすることがある。精神的なストレスが原因となることが多い。
以前に見たテレビドラマで、大口の得意先を失ったデパートの外商部の課長が睡眠中に失禁するシーンがあったが、そうした強い精神的過労による夜尿も珍しくないようだ。
むろん、このような夜尿自体は心配無用である。
少年の夏・老年の夏 [健康短信]
暑い! 暑い! 暑い!
1年中で平均して最も気温が高いのは7月20日から8月10日ごろだというが、気分的に暑さを最もつらく感じるのは7月のうちだ。
体がまだ暑熱に慣れきっていないからだ。
汗腺の働きが十分発達するためにも、血液中の水分が増えて汗を出やすくするためにも、あるいはホルモンのバランスを夏型に替えるためにも、また体のリズムを夏型に切り替えるのにも、少なくとも2週間はかかる。
青年は体力があるからこの環境の変化に十分対応できるし、回復も早い。
高齢者はそうはいかない。
体力、免疫力、体をいつも同じ健康な状態に保っておくためのホメオスタシス(恒常性維持)の機能など、みな低下しているからだ。
同じ暑さでも、若者と老人では体の受けるダメージの大きさが違うのだから無理をしてはいけない。
ゲートボールなど日中の運動はほどほどに......。
といっても、あまり体を動かさないのも考えもの。
体力が落ちるし、夜の寝つきも悪くなる。早朝や夕方に庭仕事をしたり、軽い運動をしよう。
日中の外出には日傘や帽子をお忘れなく。水分摂取も大切だ。
児童待望の夏休みが始まった。
夢のようにおぼろな遠い記憶だが、自分の子どものころを振り返ってみても、1年中で最も楽しい季節が夏休みだった。
夏休みは、子どもの心と体を鍛える絶好の季節だが、思いがけぬけがをしたり、体調を崩してしまうことも少なくない。
危険な遊びをしない、危険な場所に入らない、小さい子どもたちだけで川や海へ行かない―といったことをよく言い聞かせよう。
暑い日に外で遊ぶときは必ず帽子をかぶる。
カンカン照りの下で走り回っていて、頭痛、めまい、脱力感などを訴える子がいたら、軽い熱中症(日射病)にかかったのだ。
日陰の涼しいところに2時間くらい寝かせると、じきに治る。
水分の補給が大切だが、うすい塩水かトマトジュース、スポーツドリンクなど食塩の入った飲み物を飲ませるといい。
汗をたくさんかくと、体内の塩分が失われるからだ。
ほどよく冷えていたほうが、体への吸収率がいい。
昼間は運動して体を十分動かし、夜はぐっすり眠って体を十分に休める。
その釣り合いが丈夫な体をつくる必要条件だ。
なつやすみ・五つの注意
夏休みの子どもが、食中毒や下痢を起こさないようにと、学校食事研究会がまとめたのが、「なつやすみ・五つの注意」だ。
な=生ものに注意。7~9月は一年中で最も食中毒が多い季節。
原因食品別にみると、1位が調理済みの複合調理食品で、2位が魚介類。
この二つで半分以上を占める。
調理済み食品と魚の生ものにはくれぐれもご注意。
あやしいと思ったら食べるのをやめるか、火を通すなどする。
つ=冷たい飲みものの飲み過ぎに注意。
暑い日にはとかく冷たいジュース類を飲み過ぎて、食事の量が少なくなり、栄養のバランスを崩す恐れがある。
や=夜食に気をつけよう。
夏休みは花火、ぼん踊り、映画会など夜の行事も多く、つい遅い時間に夜食を取りがち。
夜ふかし、夜食は害のみあって益なし。
す=好き嫌いをなくそう。親子の接触が多い夏休みは偏食をなおす絶好の機会だ。
み=三日坊主をなくそう。
夏休みは、子どもが自分で計画を立て、実践し、よい習慣を身につけたい時期。
例えば、ふだん朝食抜きの子は「朝ご飯しっかり」の目標を立て毎日実行することで習慣化する。
1年中で平均して最も気温が高いのは7月20日から8月10日ごろだというが、気分的に暑さを最もつらく感じるのは7月のうちだ。
体がまだ暑熱に慣れきっていないからだ。
汗腺の働きが十分発達するためにも、血液中の水分が増えて汗を出やすくするためにも、あるいはホルモンのバランスを夏型に替えるためにも、また体のリズムを夏型に切り替えるのにも、少なくとも2週間はかかる。
青年は体力があるからこの環境の変化に十分対応できるし、回復も早い。
高齢者はそうはいかない。
体力、免疫力、体をいつも同じ健康な状態に保っておくためのホメオスタシス(恒常性維持)の機能など、みな低下しているからだ。
同じ暑さでも、若者と老人では体の受けるダメージの大きさが違うのだから無理をしてはいけない。
ゲートボールなど日中の運動はほどほどに......。
といっても、あまり体を動かさないのも考えもの。
体力が落ちるし、夜の寝つきも悪くなる。早朝や夕方に庭仕事をしたり、軽い運動をしよう。
日中の外出には日傘や帽子をお忘れなく。水分摂取も大切だ。
児童待望の夏休みが始まった。
夢のようにおぼろな遠い記憶だが、自分の子どものころを振り返ってみても、1年中で最も楽しい季節が夏休みだった。
夏休みは、子どもの心と体を鍛える絶好の季節だが、思いがけぬけがをしたり、体調を崩してしまうことも少なくない。
危険な遊びをしない、危険な場所に入らない、小さい子どもたちだけで川や海へ行かない―といったことをよく言い聞かせよう。
暑い日に外で遊ぶときは必ず帽子をかぶる。
カンカン照りの下で走り回っていて、頭痛、めまい、脱力感などを訴える子がいたら、軽い熱中症(日射病)にかかったのだ。
日陰の涼しいところに2時間くらい寝かせると、じきに治る。
水分の補給が大切だが、うすい塩水かトマトジュース、スポーツドリンクなど食塩の入った飲み物を飲ませるといい。
汗をたくさんかくと、体内の塩分が失われるからだ。
ほどよく冷えていたほうが、体への吸収率がいい。
昼間は運動して体を十分動かし、夜はぐっすり眠って体を十分に休める。
その釣り合いが丈夫な体をつくる必要条件だ。
なつやすみ・五つの注意
夏休みの子どもが、食中毒や下痢を起こさないようにと、学校食事研究会がまとめたのが、「なつやすみ・五つの注意」だ。
な=生ものに注意。7~9月は一年中で最も食中毒が多い季節。
原因食品別にみると、1位が調理済みの複合調理食品で、2位が魚介類。
この二つで半分以上を占める。
調理済み食品と魚の生ものにはくれぐれもご注意。
あやしいと思ったら食べるのをやめるか、火を通すなどする。
つ=冷たい飲みものの飲み過ぎに注意。
暑い日にはとかく冷たいジュース類を飲み過ぎて、食事の量が少なくなり、栄養のバランスを崩す恐れがある。
や=夜食に気をつけよう。
夏休みは花火、ぼん踊り、映画会など夜の行事も多く、つい遅い時間に夜食を取りがち。
夜ふかし、夜食は害のみあって益なし。
す=好き嫌いをなくそう。親子の接触が多い夏休みは偏食をなおす絶好の機会だ。
み=三日坊主をなくそう。
夏休みは、子どもが自分で計画を立て、実践し、よい習慣を身につけたい時期。
例えば、ふだん朝食抜きの子は「朝ご飯しっかり」の目標を立て毎日実行することで習慣化する。
新規ホルモン療法の有効性 [医学・医療短信]
新規ホルモン療法の日本人における有効性は独自に検証する必要あり
進行性前立腺がんに対する初期治療へのアビラテロン併用の有効性を検討した試験では、同薬の併用によって著しい全生存期間の延長が得られたと報告された。
これを受けて日本でも同薬の適応が拡大されたものの、日本では大規模臨床試験による検証は行われていない。
ただし、LATITUDE試験の日本人サブグループ解析では、日本人グループにおける長期生存効果が示唆されている。
新規前立腺がん治療薬に関する欧米の臨床試験を参考にする際には、適応患者の基準が欧米と日本で同様でよいのかという問題がある。
アビラテロンのホルモン療法未治療前立腺がん患者に対する適応はGleason score (GS=がん細胞の悪性度)8以上、骨シンチグラフィで3カ所以上の骨病変、内臓転移ありといった高リスク症例に限られる。
骨病変の個数は日本人でも有効な予後予測因子であるものの、3〜5個の骨病変を有していても予後良好の症例が多く含まれる可能性がある。
また、転移性前立腺がんにおけるGS 8以上の症例の割合は、欧米では50〜60%だが、日本では80〜90%と高率であり、日本ではGS 8によるリスク選別の意義が小さい。
昭和大学江東豊洲病院・深貝 隆志センター長(泌尿器科診療科長)が同院でのホルモン療法施行患者の予後をGS別に調べた検討によると、GS 8未満にはホルモン療法が非常に有効な症例も含まれ、Gleasonパターン5の方が強い予後予測因子と考えられたという。
さらに、欧米の臨床試験における対照群はアンドロゲン除去療法(ADT)であり、日本で広く用いられているビカルタミドを用いたCAB療法との比較ではない点にも留意する必要がある。
これらのことから、同氏は
「日本で広く用いられてきたビカルタミドによるCAB療法との比較を含め、どの程度の生命予後改善効果が認められるのかを検証する必要がある。また、生存期間が長期に及ぶため、有害事象への対応も求められる。
臨床現場において日本人に最適なホルモン療法を確立するためには、欧米での臨床試験を参考にしながら、それぞれがホルモン療法の有効性を独自に検証する必要がある」とまとめた。
進行性前立腺がんに対する初期治療へのアビラテロン併用の有効性を検討した試験では、同薬の併用によって著しい全生存期間の延長が得られたと報告された。
これを受けて日本でも同薬の適応が拡大されたものの、日本では大規模臨床試験による検証は行われていない。
ただし、LATITUDE試験の日本人サブグループ解析では、日本人グループにおける長期生存効果が示唆されている。
新規前立腺がん治療薬に関する欧米の臨床試験を参考にする際には、適応患者の基準が欧米と日本で同様でよいのかという問題がある。
アビラテロンのホルモン療法未治療前立腺がん患者に対する適応はGleason score (GS=がん細胞の悪性度)8以上、骨シンチグラフィで3カ所以上の骨病変、内臓転移ありといった高リスク症例に限られる。
骨病変の個数は日本人でも有効な予後予測因子であるものの、3〜5個の骨病変を有していても予後良好の症例が多く含まれる可能性がある。
また、転移性前立腺がんにおけるGS 8以上の症例の割合は、欧米では50〜60%だが、日本では80〜90%と高率であり、日本ではGS 8によるリスク選別の意義が小さい。
昭和大学江東豊洲病院・深貝 隆志センター長(泌尿器科診療科長)が同院でのホルモン療法施行患者の予後をGS別に調べた検討によると、GS 8未満にはホルモン療法が非常に有効な症例も含まれ、Gleasonパターン5の方が強い予後予測因子と考えられたという。
さらに、欧米の臨床試験における対照群はアンドロゲン除去療法(ADT)であり、日本で広く用いられているビカルタミドを用いたCAB療法との比較ではない点にも留意する必要がある。
これらのことから、同氏は
「日本で広く用いられてきたビカルタミドによるCAB療法との比較を含め、どの程度の生命予後改善効果が認められるのかを検証する必要がある。また、生存期間が長期に及ぶため、有害事象への対応も求められる。
臨床現場において日本人に最適なホルモン療法を確立するためには、欧米での臨床試験を参考にしながら、それぞれがホルモン療法の有効性を独自に検証する必要がある」とまとめた。
日本人の前立腺がん、最適な治療は? [医学・医療短信]
日本人に最適な前立腺がん治療は?
男性特有「前立腺がん」は新たに発症する人が年間およそ10万人と急増。
その伸びは、ここ10年で2倍以上。
進行性、転移性前立腺がんに対する治療は目覚ましく変化しているが、ホルモン療法が主体であることに変わりはない。
ホルモン療法の有効性には人種差があることが示唆されている。
昭和大学江東豊洲病院泌尿器科教授の深貝隆志氏は、日本と欧米におけるホルモン療法の現状を比較した上で、今後、臨床において日本人に最適なホルモン療法を独自に検証する必要があると第106回日本泌尿器科学会で述べた。
日本人は欧米人に比べてホルモン療法の効果が高い
深貝氏は、前立腺がんの日本研究グループ(Japan Study Group of Prostate Cancer=J-CaP )と、米国の泌尿器診療施設(Cancer of the Prostate Strategic Urologic Research Endeavor=CaPSURE)のデータを用いて前立腺がん治療の動向を紹介した。
近年では、日本でも米国と同様に前立腺摘除術が主流となりつつあるが、日本は米国と比べて転移がん、高リスクがんが多く、高齢患者が多い。
そして、限局がんから転移がんまで広くホルモン療法が行われている。
ホルモン療法の内訳を見ると、日本ではビカルタミドを用いた複合アンドロゲン遮断(CAB)療法が約75%の症例で行われている点が特徴だ。
日本人では白人や黒人と比較して、ホルモン療法が有効である可能性が示唆されている。
深貝氏らは2006年に発表したハワイ在住の日系人と白人でホルモン療法後の臨床転帰を比較した研究で、全生存率と疾患特異的生存率は日系人患者の方が良好であり、多変量解析の結果、有意な予後予測因子の1つとして人種が同定されたことを報告している。
同様に、米国の白人、黒人、アジア人を対象とした報告でも、アジア人の予後は白人より有意に良好であることが示されている。
さらに、J-CapとCaPSUREを比較した研究においても、日本人のホルモン療法後の予後が米国人より良好であると報告されている。
同氏は
「日本人を含むアジア人ではホルモン療法に対する感受性が高い可能性や、虚血性心疾患や骨折などの有害事象が少ない可能性、日本の泌尿器科医の方が手厚いホルモン療法を施行している可能性などが挙げられるものの、その原因は明確ではない」と言う。
また、同氏らの研究のサブ解析では、前立腺特異抗原(PSA)100ng/mL以上の進行性前立腺がん患者で、予後に白人との差が認められない傾向が示されている。
同氏は、
「日本人では、より早期のがんの方が欧米人と比べてホルモン療法による生存期間の延長が期待できる可能性がある」と述べた。
男性特有「前立腺がん」は新たに発症する人が年間およそ10万人と急増。
その伸びは、ここ10年で2倍以上。
進行性、転移性前立腺がんに対する治療は目覚ましく変化しているが、ホルモン療法が主体であることに変わりはない。
ホルモン療法の有効性には人種差があることが示唆されている。
昭和大学江東豊洲病院泌尿器科教授の深貝隆志氏は、日本と欧米におけるホルモン療法の現状を比較した上で、今後、臨床において日本人に最適なホルモン療法を独自に検証する必要があると第106回日本泌尿器科学会で述べた。
日本人は欧米人に比べてホルモン療法の効果が高い
深貝氏は、前立腺がんの日本研究グループ(Japan Study Group of Prostate Cancer=J-CaP )と、米国の泌尿器診療施設(Cancer of the Prostate Strategic Urologic Research Endeavor=CaPSURE)のデータを用いて前立腺がん治療の動向を紹介した。
近年では、日本でも米国と同様に前立腺摘除術が主流となりつつあるが、日本は米国と比べて転移がん、高リスクがんが多く、高齢患者が多い。
そして、限局がんから転移がんまで広くホルモン療法が行われている。
ホルモン療法の内訳を見ると、日本ではビカルタミドを用いた複合アンドロゲン遮断(CAB)療法が約75%の症例で行われている点が特徴だ。
日本人では白人や黒人と比較して、ホルモン療法が有効である可能性が示唆されている。
深貝氏らは2006年に発表したハワイ在住の日系人と白人でホルモン療法後の臨床転帰を比較した研究で、全生存率と疾患特異的生存率は日系人患者の方が良好であり、多変量解析の結果、有意な予後予測因子の1つとして人種が同定されたことを報告している。
同様に、米国の白人、黒人、アジア人を対象とした報告でも、アジア人の予後は白人より有意に良好であることが示されている。
さらに、J-CapとCaPSUREを比較した研究においても、日本人のホルモン療法後の予後が米国人より良好であると報告されている。
同氏は
「日本人を含むアジア人ではホルモン療法に対する感受性が高い可能性や、虚血性心疾患や骨折などの有害事象が少ない可能性、日本の泌尿器科医の方が手厚いホルモン療法を施行している可能性などが挙げられるものの、その原因は明確ではない」と言う。
また、同氏らの研究のサブ解析では、前立腺特異抗原(PSA)100ng/mL以上の進行性前立腺がん患者で、予後に白人との差が認められない傾向が示されている。
同氏は、
「日本人では、より早期のがんの方が欧米人と比べてホルモン療法による生存期間の延長が期待できる可能性がある」と述べた。
耳に虫! さあ、どうする? [医学・医療短信]
夏に増加 耳に虫が入ったら救急外来へ!
志賀隆 / 国際医療福祉大学准教授/同大学三田病院救急部長
家庭での対処はやめた方がいい理由
夏の爽やかな夕方、自転車を運転していたら急に耳が聞こえなくなった。
痛みもある。そしてなにやら動いている気がする--。
こんな経験はありますか?
暖かい季節になると、一定の確率で起こります。
そんな時、どのように対処したら良いのでしょうか。
虫が入ったぐらい、自分で対処できると思われるかもしれませんが、結論からいうと救急医の意見は「耳鼻科や救急外来など医療機関を受診してほしい」です。
理由としては、家庭で試すことによって
1)虫がさらに奥に進んでしまう
2)1)の結果、虫が取れにくくなる
3)虫が鼓膜にダメージを与えることがある
という恐れがあるためです。
病院に来る前にできることはあるか?
そうはいっても、山登り中やキャンプなどですぐに病院に行ける状況ではない場合にどうするか、というご質問もあるのではないかと思います。
そのような時に自分でできる対処法をまず、解説しましょう。
A)つまんで出す
もし外耳道(耳の穴)から虫の一部が見えてつまめるようであれば、ピンセットなどの器具で注意深くつまんで引っ張り出すことも一つの選択肢です。
ただ、この際に痛みが強かったり出血したりするようであれば、無理をしない方がよいでしょう。
B)光をあてる
虫は光の方向に向かう習性があるため、この方法を試してみる価値はあるかもしれません。
一方で、大抵の場合は頭から外耳道に入り込んでしまっています。
このような状態では、虫は前に進むことがほとんどで、光をあてても方向転換して外に出てくることはあまり期待できません。
C)油
教科書によっては、ミネラルオイルなどの油を外耳道に入れることで虫を油漬けにして窒息させ、動きを止めるという方法を記載しているものもあります。
とはいえ、この方法で虫を除去できる可能性が高いかというと、残念ながら必ずしもそうではありません。
ということで、最終的には病院の受診をお勧めします。
病院ではどうやって対応するのか?
では、次に病院にいらっしゃった際にはどのような方法があるのかを以下に解説します。
診断:まずはどのように医師が診断をするかについてです。
大抵の場合は前述のように、
◯突然耳に何かがつまった
◯突然耳が聞こえなくなった
◯耳に何かが入った気がする
◯異物感があり動いている
◯痛みがある
などの症状やエピソードがある場合に外耳道に虫が入ったことを疑います。
地域によって異なりますが、ガ、ゴキブリ、コオロギなどさまざまな種類のものが入り込むことがあります。
診察では、耳鏡という外耳道や鼓膜を観察するための特殊な診察器具を使って、患者さんの協力を得ながら注意深く外耳道や鼓膜を観察していきます。
出血がないか? 鼓膜は破れていないか? 虫はどのような種類で方向はどちらを向いているか?などを観察します。
処置:どのように虫を取り出すのでしょうか。
△局所麻酔薬
局所麻酔薬のうちリドカインという名称のものにはゼリー状の製品があり、よく虫の除去の際に使います。
この薬を使うことで患者さんの外耳道の痛みを取ることでき、かつ虫の動きが止まります。
ただし、鼓膜が破れているとリドカインが鼓膜より内側に入ってしまい、めまいの原因になります。
そのため、耳鏡での所見で鼓膜の損傷を疑う場合や出血がある場合には注意が必要です。
△洗い出す
虫の動きが止まり、患者さんの痛みも局所麻酔薬で治まってから行います。
点滴の際に使われる留置針というプラスチックの軟らかい針を使います。
その際に使用するのはぬるま湯です。冷たい水を使ってしまうとめまいが起きてしまうことがあるからです。
針の深さを調節しつつ何度か洗浄することが必要で、患者さんに説明をして協力を得ながら進めていきます。
△つまんで出す・吸引する
上述の局所麻酔薬+ぬるま湯での洗い出しがうまくいかなった際に行います。
先ほどご紹介した耳鏡を用いて直接虫をみながら小さな把持鉗子(かんし)という器具を使ってつまんで虫を出します。外耳道は狭いスペースなので、スパッととれないこともあります。
他の方法としては医療用の吸引器を用いて吸引する方法もあります。吸引用のカテーテルを虫にあてがい吸引しながら取り出します。その後鉗子でつまんで取り出します。
無事、虫がとれても、外耳道の損傷や感染を考えて点耳薬を処方し、翌日耳鼻科医の診察を受けるようにお勧めしています。
いかがでしょうか?
外耳道に虫が入った時には自宅でできることもありますが、不快な時間を短くする上でも医療機関を受診することをお勧めします。
対応可能な耳鼻科の受診が理想ですが、夜間や休日でも「ER型」とウェブサイトに紹介されていれば、救急外来であっても虫を除去できる可能性が高いです。
<「毎日新聞 医療プレミアよる
志賀隆 / 国際医療福祉大学准教授/同大学三田病院救急部長
家庭での対処はやめた方がいい理由
夏の爽やかな夕方、自転車を運転していたら急に耳が聞こえなくなった。
痛みもある。そしてなにやら動いている気がする--。
こんな経験はありますか?
暖かい季節になると、一定の確率で起こります。
そんな時、どのように対処したら良いのでしょうか。
虫が入ったぐらい、自分で対処できると思われるかもしれませんが、結論からいうと救急医の意見は「耳鼻科や救急外来など医療機関を受診してほしい」です。
理由としては、家庭で試すことによって
1)虫がさらに奥に進んでしまう
2)1)の結果、虫が取れにくくなる
3)虫が鼓膜にダメージを与えることがある
という恐れがあるためです。
病院に来る前にできることはあるか?
そうはいっても、山登り中やキャンプなどですぐに病院に行ける状況ではない場合にどうするか、というご質問もあるのではないかと思います。
そのような時に自分でできる対処法をまず、解説しましょう。
A)つまんで出す
もし外耳道(耳の穴)から虫の一部が見えてつまめるようであれば、ピンセットなどの器具で注意深くつまんで引っ張り出すことも一つの選択肢です。
ただ、この際に痛みが強かったり出血したりするようであれば、無理をしない方がよいでしょう。
B)光をあてる
虫は光の方向に向かう習性があるため、この方法を試してみる価値はあるかもしれません。
一方で、大抵の場合は頭から外耳道に入り込んでしまっています。
このような状態では、虫は前に進むことがほとんどで、光をあてても方向転換して外に出てくることはあまり期待できません。
C)油
教科書によっては、ミネラルオイルなどの油を外耳道に入れることで虫を油漬けにして窒息させ、動きを止めるという方法を記載しているものもあります。
とはいえ、この方法で虫を除去できる可能性が高いかというと、残念ながら必ずしもそうではありません。
ということで、最終的には病院の受診をお勧めします。
病院ではどうやって対応するのか?
では、次に病院にいらっしゃった際にはどのような方法があるのかを以下に解説します。
診断:まずはどのように医師が診断をするかについてです。
大抵の場合は前述のように、
◯突然耳に何かがつまった
◯突然耳が聞こえなくなった
◯耳に何かが入った気がする
◯異物感があり動いている
◯痛みがある
などの症状やエピソードがある場合に外耳道に虫が入ったことを疑います。
地域によって異なりますが、ガ、ゴキブリ、コオロギなどさまざまな種類のものが入り込むことがあります。
診察では、耳鏡という外耳道や鼓膜を観察するための特殊な診察器具を使って、患者さんの協力を得ながら注意深く外耳道や鼓膜を観察していきます。
出血がないか? 鼓膜は破れていないか? 虫はどのような種類で方向はどちらを向いているか?などを観察します。
処置:どのように虫を取り出すのでしょうか。
△局所麻酔薬
局所麻酔薬のうちリドカインという名称のものにはゼリー状の製品があり、よく虫の除去の際に使います。
この薬を使うことで患者さんの外耳道の痛みを取ることでき、かつ虫の動きが止まります。
ただし、鼓膜が破れているとリドカインが鼓膜より内側に入ってしまい、めまいの原因になります。
そのため、耳鏡での所見で鼓膜の損傷を疑う場合や出血がある場合には注意が必要です。
△洗い出す
虫の動きが止まり、患者さんの痛みも局所麻酔薬で治まってから行います。
点滴の際に使われる留置針というプラスチックの軟らかい針を使います。
その際に使用するのはぬるま湯です。冷たい水を使ってしまうとめまいが起きてしまうことがあるからです。
針の深さを調節しつつ何度か洗浄することが必要で、患者さんに説明をして協力を得ながら進めていきます。
△つまんで出す・吸引する
上述の局所麻酔薬+ぬるま湯での洗い出しがうまくいかなった際に行います。
先ほどご紹介した耳鏡を用いて直接虫をみながら小さな把持鉗子(かんし)という器具を使ってつまんで虫を出します。外耳道は狭いスペースなので、スパッととれないこともあります。
他の方法としては医療用の吸引器を用いて吸引する方法もあります。吸引用のカテーテルを虫にあてがい吸引しながら取り出します。その後鉗子でつまんで取り出します。
無事、虫がとれても、外耳道の損傷や感染を考えて点耳薬を処方し、翌日耳鼻科医の診察を受けるようにお勧めしています。
いかがでしょうか?
外耳道に虫が入った時には自宅でできることもありますが、不快な時間を短くする上でも医療機関を受診することをお勧めします。
対応可能な耳鼻科の受診が理想ですが、夜間や休日でも「ER型」とウェブサイトに紹介されていれば、救急外来であっても虫を除去できる可能性が高いです。
<「毎日新聞 医療プレミアよる