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火事場の馬鹿力の生理学 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(15)  

火事場の馬鹿力の生理学

夏休み中の高校の講堂からボヤが出た。

駆けつけた生徒2人でピアノを運び出した。

鎮火後、元に戻す段になったら、同じ2人の力ではもうピアノはびくともしなかった。

──という話を、むかし聞いたことがある。当方も当時、その高校の生徒の1人だった。

筋肉は、無数の筋線維(収縮能をもつ細胞)でできていて、たんぱく質の一種のアクチンとミオシンの相互作用によって収縮し、力を出す。

通常、筋線維は20~30%しか収縮せず、ほかの部分は交替で休息するしくみになっていて、健康な人間なら自分の体重と同じ重さくらいまでの物は持ち上げられる。

ところが、なにか極限に近い状況に追い込まれると、60%以上の筋線維がいちどきに収縮して意外な力を発揮する。

それが「火事場の馬鹿力」だ。

ボクシングなどの「瞬発力」というのもそれだと考えられている。

これも昔、不良(いまでいうヤンキー)をやっていた男から聞いた話だが、アベックをおどしたとき、相手の男が死に物狂いで向かってきたら「ちょっとヤバイ」とのことだった。

男が体を張って愛する女性を守ろうとするとき、自分でも思いがけぬ力が出るものらしい。

そんなときは交感神経が急激に緊張する。

すると、ストレスホルモンのアドレナリンが大量に分泌され、神経の情報伝達を迅速にする。

それまではのんびり交代制でやっていた筋線維に緊急出動の命令が出て、筋線維フル活動となるわけだ。

運動生理学では「緊急反応」というそうだが、そうしたモチベーションが強いほど行動のパワーは強く現われる。体内の予備能力が出てくる。

別の言葉でいえば気力が体力を過剰に引き出すわけだ。

体力とは、狭い意味では、ある力がある時間内にどれだけ出せるかというスポーツ能力のようなもののこと。

広い意味では、長いあいだ病気をせずに働いている状態のことである。

そのどちらの場合にも気力の影響は大きい。

多くの場合、気力と体力は平行し、しばしば一致する。

われわれは経験的にそのことをよく知っている。

ダウンしたボクサーが立ち上がるのも気力なら、高校野球の投手が炎天下の甲子園で3連投、4連投できるのも気力の占める割合が大きいはずだ。

むろん、二日酔いの体を自ら敢然と満員電車の中に押し込むなんてのも、気力以外のなにものでもあるまい(3連投投手などとの状況レベルとはだいぶ差はあるけど)。

では、気力とはなにか。

それは努力をいとわない精神のことだろう。

結果のいかんを問わず、ひたむきに努力しつづける精神、それが気力だろうと思う。

ところで、諸兄。

気力に欠くる勿(な)かりしか!

努力に憾(うら)み勿かりしか!
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食べてすぐ寝ると牛になる [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(14)  

食べてすぐ寝ると牛になる

誰でも、子どものころ親によく言い聞かされ、記憶の深層に沈着したことわざや格言の類の一つ、二つを持っているだろう。

たとえば、浪費や怠惰を戒める「一円を笑う者は一円に泣く」とか、「今日の仕事を明日に延ばすな」など、口うるさく言われたのがどんな子で、その親がどんなにそのことを気にしていたかわかるようだ(それ、じつはおれのことだけど)。

もう一つ、「食べてすぐ寝ると牛になる」もよく言われた。

これは誰に聞いてもたいてい「覚えがある」という答えが返ってくる。

つまり子どもというのは、いや大人だって、食べたあとはつい体を横にしたくなるのではないか。
そして、むかしの家の「茶の間」という畳敷きのダイニングルームは、それをするのに好適の部屋だった。

なぜ、食べると眠くなるのか?

食物が胃腸に入ると、消化のため血液がそこに集まり、頭のほうに回る血液が少なくなるからだ。
「腹の皮が張れば目の皮がたるむ」というわけで、ごく自然な生理的現象なのである。

そんなとき、気ままに横になって、その兆しが生じたらガス放出なんかも気がねなくやれて、とろとろまどろむことができたら、ゴクラク、ゴクラクである。

昔の人もその効用をよく知っていて、「食後の一睡、万病円」といっている。

万病円とは、江戸時代、万病に効能があるとされた丸薬である。

この食後の横臥は、右腹を下にすればさらによろしい。

胃袋は腹のなかで左上から右下にかけて斜めに位置している。

右腹を下にすれば、胃の中の食物が流れやすく、消化作用を促進する。

体を横にすれば、肝臓の働きもよくなる。

食後の一睡は、胃腸の弱い人や肝機能の落ちている人にとっては、適切な養生法であるともいえる。

反対に、食後すぐ風呂に入ったり、運動したりするのは、よくない。

胃に回る血液が少なくなり、消化作用を妨げる。

もっとも、食べて寝るのがよいといっても、それはあくまで「一睡(30分くらい)」であって、就寝前に食べてそのまま朝まで寝てしまうのは、最悪だ。

食物が胃と腸で消化されるには4~5時間はかかる。

就寝中、頭は休んでいても、腹はえんえん徹夜作業していたのでは、体の疲労は回復しない。

就寝前3~4時間は食べないほうがよい。

胃がんの患者には、①15分以内に食べ終わる「早めし」で、②食後すぐに働き始め、③夕食をとる時刻が遅い人が多かった──という研究調査がある。

昔の人は「親が死んでも食(じき)休み」とも言っている。

──といったようなわけで、食べてすぐ横になるのが悪いことではない─のは、医学的にも検証ずみ。

「牛になる」を、「牛のような丈夫な胃になる」と解釈すれば正解だ。

「牛になるよ!」と叱るのは、牛に対しても失礼だ。

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タバコと肥満の関係 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(13)  

タバコと肥満の関係

フランスのなんとかいう女優は、ウソつきで有名だった。
「どうしてそうウソばかり言うの?」と聞かれて、彼女は答えた。

「だって、ウソを言うと歯がキレイになるそうじゃありませんか」

日本のなんとかいう女性(ということにしておこう)は、どうしようもないタバコのみである。

タバコのさまざまな健康障害は世界の常識であり、むろん彼女もそのことは知っている。

知っていながら、やめないのはなぜかと聞いてみたら、

「だって、タバコをやめると太るんだもの」。

昔から女という生きものは、痩せるためと色が白くなるためだったら、草でも食う。

おれじゃないよ。斎藤緑雨(さいとうりょくう)だったか、薄田泣菫(すすきだきゅうきん)だったかの、そんな意味の警句を読んだことがある。

いや、草にはヨモギ、ドクダミ、セリ、ナズナ、ゲンノショウコ……、体にいいものがいくらでもある。

タバコ(煙草)もれっきとした草の一種、これくらい世界中に愛好者の多い、加工技術の粋をきわめた草は、ほかにはない。

タバコは文化、現代文明が創造した最も普遍的な嗜好品の一つである。

だからまあ、体にはよくないと知りながら吸う愛煙家に文句をいう筋合いはない。
受動喫煙のはた迷惑さえかけなければ、自由存分に吸うがよろしい。

だが、しかし、「タバコをやめると太る」は大間違い、ウソである。

実際はタバコを吸うとかえって太ることが、これまでに行われた2回の調査によって証明されている。

最初の調査は1986年の秋、厚生省(現厚生労働省)が行った。

その20歳以上の約1万2000人対象の面接調査で、喫煙者の多くが喫煙を続ける理由として「タバコをやめると太る」を挙げている。

だが、喫煙者と非喫煙者とでは、相対的に肥満の差はなく、むしろタバコの本数がふえるにつれて肥満者の割合が増加した。

とくに1日40本以上吸う男性、30本以上吸う女性では目立ってその割合が増加、なかでも女性は、非喫煙者と比べ、肥満者の数が2倍以上も多いことがわかった。

ついで1989年の夏、浜松医大と静岡健康管理センターが報告した共同調査のデータでも、同じような結果が出ている。

34歳から49までの健康な男性2146人を対象にしたこの調査によれば、タバコを全く吸ったことのない非喫煙者(634人)の平均体重は60.9㌔、吸ったことはあるがいまは吸ってない禁煙者(480人)は61.5㌔だった。

これに対し、1日の本数が10本以下の喫煙者(131人)は60.8㌔、11~20本(232人)は60.7㌔で、いずれも非喫煙者よりも少ない。

しかし、21~30本(232人)は61.6㌔、31~40本(130人)は62.2㌔、

41本以上(46人)は63.4㌔と、いずれも非喫煙者・禁煙者を上回り、本数がふえるにつれて体重も増加していた。

これを要するに、本数が少ないと体重をやや抑えるが、1日に20本(1箱)以上吸うと逆に体重がふえる。

つまり頭からタバコは肥満防止の効果があると信じ込むのは、ハッキリいってなんとかの一つ覚え、ウソが歯みがき剤の代わりになると強弁するようなものである。
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キズ治療の常識の変化 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(12)  

キズ治療の常識の変化

日常のちょっとしたケガ(すり傷、切り傷)の手当ては、①毎日消毒する。②患部を乾かす。──が、かつての常識だった。

いまでもまだそうしている人が多いようだ。

これ、二つともマチガイ! 理由はこうだ。

すり傷、切り傷の傷口は、皮膚が欠損した状態である。欠損した皮膚細胞が再生し、新しい皮膚ができることで、傷はふさがっていく。
消毒薬は、雑菌を殺すとともに新しい皮膚細胞まで殺してしまう。

毎日消毒をする乾いたキズ面は治りが遅く、傷跡が残りやすい。傷口をぴったり覆ったキズ面のほうが早くきれいに治る。

生まれたばかりの皮膚細胞が育つためには、適度な水分が必要で、乾かすと皮膚細胞は死んでしまうからだ。

この創傷治療の湿潤療法(モイスト・ヒーリング)の正しさが実験的に証明されたのは、1962年である。

それまでは─じつに100年以上にわたって─キズやヤケドや床ずれなどの治療は、「開放した状態で早く乾燥させるのがベスト」と信じられてきた。

モイスト・ヒーリングが報告されてからも、それが普及するのに欧米では20年も30年もかかった。

日本ではさらに遅れて2000年ごろようやく一部の医師たちが行うようになった。なぜ、そんなに時間がかかったのか?

2004年7月、湿潤療法の普及啓発を目的として設立されたNPO法人「創傷治療センター」の理事長、塩谷信幸・北里大名誉教授(形成外科)は、当時開かれたプレスセミナーで、こう話した。

「いわゆる〝習慣の奴隷〟というやつで、新しい提言がなかなか受け入れなかったのです。

その最大の理由は、キズ面を閉鎖した湿潤環境ではバイ菌が繁殖しやすく、感染を誘発するのではないか。キズ面は開放しておいたほうがよい──とする根強い固定観念=習慣にとらわれていたのです。

その根源を辿ると、リスターの石炭酸消毒法に行き着きます」。

リスターの石炭酸消毒法とはなにか?

『広辞苑』をひいてみた。

「リスター【Joseph Listr】イギリスの外科医。石炭酸溶液による消毒法の開発で近代外科手術に貢献。(1827~1912)」。

19世紀の後半まで、外科手術は、術後に起こる敗血症(細菌、とくに化膿菌が血管やリンパ管に入って起こる病気)による高い死亡率との戦いだった。

これを解決したのが、リスターの石炭酸消毒法だった。

以来、キズの治療は、アルコールや消毒液で消毒したあと、通気性のよいガーゼで覆って早く乾燥させるのがよい、とされてきた。

だが前述のように消毒薬は細菌を殺すが、同時に、傷口の再生に必要な生きた細胞まで傷つけてしまう。

また、傷口からしみ出してくる浸出液にはキズを修復する成分が含まれているが、ガーゼで覆うと乾燥してかさぶたになる。

かさぶたはガーゼにくっつき、ガーゼ交換のたびに治りかけの皮膚も一緒にはがれて痛いうえに、治りも悪くしてしまう。

これに対し、湿潤療法は、

1 傷口を生理食塩水や水道水で洗い、異物を除く。

2 傷口の潤いを保てる被覆材で覆い、乾燥を防ぐ、という方法だ。

結論。キズ治療の消毒&乾燥の常識は、ウソ。

家庭で治せるようなキズは、水道の水でよく洗い、被覆材(バンドエイド・キズパワーパッドなど)で覆うのがホント。

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つばき、万病のくすりか? [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(11)  

つばき、万病のくすりか?

昔、昭和ヒトケタ世代の子どもは、ケンカや遊びでケガをすると、

「ツバキ、万病のクスリ」と唱えながら傷口につばをつけたものだ。

ことわざ辞典にもちゃんと載っている。

「唾(つばき)万病の薬【意味】つばは薬になるという俗説。こういって傷口などにもぬる」(『故事ことわざ辞典』=東京堂版)。

いまでもナイフやキリなどを使いそこねて、「イテッ!」という瞬間、思わず指を口に持っていくのは、だれでもやっている。

バンドエイドが手近になかったり、あっても根がケチだったりすると、そのまま放っておくことも多い。> はたして、つばは傷薬の代用になるのか?

調べてみたら、なるようでもあり、ならないようでもある。

つば(唾液)のなかにはさまざまな有用成分が含まれている。

主なものだけを挙げてみる。

食物を包み込んで嚥下(えんげ)しやすくするムチン。

でんぶんを分解するアミラーゼ(ジアスターゼ)。

味覚の働きを敏感にするガスチン。

歯を守るカルシウム。

カルシウムと結合して歯を強くするスタテリン。

発がん物質の力を弱めるラクとオキシターゼ。

体内のシアン(青酸)を解毒するチオシアン。

──といったあんばい。

そして、ここからがキズに関係あるのだが、唾液中の微量の青酸と硫黄がくっついてできるロダン・過酸化酵素やリゾチームという酵素には殺菌作用がある。

だが、あらゆる細菌に対してオールマイティに効くわけではない。

その守備範囲と実力を将棋のコマにたとえると、桂馬か香車といったところのようだ。

反面、唾液の中には細菌の活動を促す物質も含まれている。

さいわい口の中ではほとんどが不活性だが、いったん外に出ると、細菌の活動を7割かたスピードアップさせる。

つまり、ツバは、口の中にあるときは大したスグレモノで、だから口の中のキズはとても治りやすいわけだ。

しかし、口の外へ出ると、とたんに効力が激減するだけでなく、キズ口などの有害菌の活動を活発にしかねない。

結論。

ケガをしたとき、自分の口をじかに傷口に当てて、傷を吸ってきれいにするのは理にかなっている。

しかし、指先にツバをつけて傷口に塗るのは有害無益。

まして他人のキズにツバをつけてやるなんて、非衛生以外のなんでもない。

人によっては、エイズや肝炎ウイルスをうつしてしまうことだってあるだろう。

ケガをしたら(自分で治せる程度の小さなケガだったら)、水道の水を流しっぱなしにして傷口を洗い、クスリをつけて消毒するのがいちばんだ。

あ、いや、「クスリをつけて消毒」はマチガイ、ウソ、であることが証明されている。

それについては次回に──。

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「爪半月」と健康の関係 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(10) 

「爪半月」と健康の関係

爪は、1日平均0.1㍉~0.2㍉伸びる。

足より手のほうが速く、老人より若者のほうが速く伸びる。

爪母(そうぼ)と呼ばれる根元の部分から爪先まで伸びるには4~6ヵ月かかる。

その間の全身の健康状態が爪の色や形にあらわれる。

だから「爪は健康のバロメーター」といわれる。

いくつか、例を挙げる。

指先がふくれ、爪が指を包むように丸みを帯びる「ばち指」は、指先が太鼓のばちのように太くなることからついた名前。

なぜそうなるのか発症のしくみはわからないが、すべての指がばち指になったら肺がん、COPD(慢性閉塞性肺疾患)など、肺疾患が疑われる。

原発性の肺がん患者の60%にばち指が現れるという。

ばち指は、ヒポクラテス爪、時計ガラス爪とも呼ばれる。

そのような爪の変形が、肺の病気と関係があることを最初に発見した人がヒポクラテスであり、むかしの時計ガラスは中央がまるく盛り上がっていたからだ。

爪の先のほうが薄くはがれる「二枚爪」や、爪の中央がへこみ、スプーンのような形にそり返る「スプーン爪」は、貧血の可能性が大きい。

薄くはがれたり、反り返ったりするのは、貧血によって、爪に送られる鉄分と酸素が不足し、爪が薄くなり、骨のない指の横腹に加わる力を爪が支えきれなくなるためだ。

爪に横溝ができるのは、爪の発育をおさえるような刺激が、爪母に加わった証拠、つまり過去の病変を表している。

最も多いのは、腸チフス、猩紅熱(しょうこうねつ)、薬疹など、高熱のでる感染症や中毒である。

慢性の病気が一時的に悪化したときも横溝が現れる。

で、爪の根元から横溝までの長さによって、障害のあった時期が推測できる。

爪が白く濁ってボロボロとはがれてくるのは爪の水虫だが、すべての爪が同時にそうなることはない。

すべての爪がほとんど同時に白く濁ってくるのは、慢性の肝臓病が疑われる。

慢性腎疾患の一つのネフローゼでは、爪に白い線が横に走る。

がんの一種の悪性黒色腫(メラノーマ)は、爪の色素沈着で始まることがある。

爪にできた黒い縦の筋の色が濃くなったり、広がったり、爪が割れてきたら、すぐ皮膚科へ─。

爪に縦のすじができるのは、皮膚のしわと同様、老化現象だ。

ところで、爪の根元のところに見える「爪半月(そうはんげつ)」が、くっきり出ているのは健康の証拠、出てないのは体のどこかに故障がある─という昔からの俗説は本当か?

答えは、ノーである。

爪半月の有無は生まれつき。高血圧症や糖尿病でも爪半月のハッキリしている人はいくらでもいる。

ただ、もともと爪半月があった人が、肺炎などの急性疾患で衰弱するとか、極度の栄養失調にかかると、爪母の細胞分裂に影響し、爪が伸びなくなり、爪半月が消えることがある。

このことから逆に「爪半月は健康の証拠」という俗説が生まれたのだろう。

だから一般論としては爪半月のあるなしを気にすることはないが、いままでハッキリ見えていた爪半月が急に消失したら問題─といえるようだ。
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頭痛鉢巻きの理論 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(9)  

頭痛鉢巻きの理論

吉村昭さんのエッセーで知ったことだが、昭和20年ごろの肺結核の手術は、局所麻酔で行われていた。

その麻酔があまりよく効かず、痛みを感じ、患者が身動きすると、手術の妨げになる。

これを防ぐため、手術台上の患者のほっぺたに平手打ちをくわせる役目の看護婦がいた。

ほっぺたをピシャッ! とやられる瞬間、メスの痛みがまぎれるというわけ。

体のどこかに痛みがあるとき、ほかの部位に強い刺激を加えると、元の痛みを感じにくくなる。

この現象に着目して、兵頭正義・大阪医大教授(麻酔学)は、注射を打つとき、針を差し込む5~10秒前から注射が終わるまで、体の敏感なところをつねると、注射の痛みがへることを確かめた。

最も効果的だったのは、太ももをつねったときだったそうだ。

どうしてそんな効果が生じるのか。

「ゲートコントロール(門調節)説」という理論で説明できる。

体の痛みは、脊髄を通って脳へいき、痛みとして認知される。

脊髄には、痛みの信号にゴー・ストップをかける「門番細胞」があり、脳へいく痛みをコントロールしている。

痛みの信号と同時にほかの感覚刺激がやってくると、門番細胞は門を閉じる。

つまり、どこかが痛いとき、そこをなでたりさすったり、あるいはほかの部位をつねったりすると、その感覚刺激が門を閉じさせ、痛みが弱くなる。

この門のはたらきには、脳からの影響も及ぶから、なにかに熱中しているときは、あまり痛みを感じない。

近年の研究で、門番機構は、脊髄だけでなく、脳の中枢にもあることがわかった。

また、ある種の刺激によってエンドルフィンというモルヒネ様の物質が分泌され、痛みをやわらげることもわかった。

さて、そうしてみると、「頭痛鉢巻き」もリッパに理屈に合っているわけで、昔の人の経験的知恵というのはほんとうに大したものだと思う。

もっとも、鉢巻きが有効なのは、片頭痛、風邪、二日酔いなどのような血管性頭痛で、肩こりなどによる筋収縮性頭痛には、さほどの効果は望めない。

この場合は、後頭部をもむとよいそうだ。

頭痛は、じつにいろいろな原因によって起こる。

入れ歯を直したとか、老眼鏡をかけるようにしたとかで、長いことつづいていた頭痛がウソのように消えた例もある。

中耳炎などの耳の病気が頭痛の原因になることもある。

このように頭痛には眼科、耳鼻科、歯科などが絡んでいるものがある。

頭を詳しく調べても原因が見つからなかったら、目じゃないか? 鼻じゃないか? 歯じゃないか? と、頭を切り換えてみよう。

●ひとこと追記

皮膚に塗るクリーム状の局所麻酔薬エムラクリーム(主成分=リドカイン、プロピトカイン)が、去年6月から子どもに注射するときにも使えるようになった。

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コンブと髪の毛 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(8)

コンブと髪の毛

男にとって、AGA(早くいえばハゲ)と、ED(漢字で書けば勃起不全)と、どちらがより重大問題か?

小生の小さな見聞では、どうも前者のほうのようである。

製薬会社は新薬を発売するとき、医学・医療担当の報道関係者を対象とした説明会を開催する。

多くのばあい、新聞・雑誌・放送の記者たち、小生のようなフリーランスのライターなど50人ばかりが集まる。

だが「バイアグラ」発売のさいは様相一変。

参集した記者の数はいつもの2倍以上、100人を超え、その空前の人数が、このクスリに対する社会的関心の強さを現していた。

しかし、「リアップ」のときはさらにすごかった。

なんと200人を突破する記者たちが詰めかけて、仄聞だが、大いによろこんだ広報担当者が、「勝った!」と叫んだそうだ。

ご存じのとおり、バイアグラはEDの治療薬で、リアップはAGAへの育毛剤である。

すなわち、ハゲがインポに「勝った」わけだ。

リアップ発売の記者会見は、経団連会館のホールで行われた。

ちょっと遅刻した小生は、もう下の階のドアは閉めきったからと、2階席へ通された。

席について見下ろすと、1階のホールは黒い頭で埋めつくされていた。

隅から隅まで見渡しても、毛髪の過疎化の著しい頭部はたった2コしか発見できなかった。

つまり、リアップ発表会に集まった記者たちのなかで、ハゲは小生を含めて3人しかいなかった。

「なるほど、男たちはみんな先行きの心配をしてるんだなあ」と思ったものだ。

─というところで「コンブと髪の毛」の話。

ハゲ防止にコンブ、という昔からよく知られている俗信はどこからきたのだろう。

たぶん、海藻(とくにコンブ)にはヨードが多く含まれているのが、誤解のもとではないだろうか。

ヨードは、甲状腺にとってなくてはならない物質である。
甲状腺はヨードを主たる材料にしてホルモンをつくる。

この甲状腺ホルモンの役目は、体の新陳代謝の刺激だ。

ヨードが不足すると、甲状腺の機能が低下し、新陳代謝が不活発になる。

甲状腺機能低下症とか単純性甲状腺腫といった病気が、それだ。

その症状の一つとして、毛髪が艶を失い、もろく折れやすくなり、脱毛が起こる。

ヨードが欠乏するとハゲる。だったらヨード(コンブ)を食べればよいという短絡思考。

それが、ハゲにコンブの由来ではないだろうか。

だが、大陸内部や山岳地帯の住民ならともかく、日本人の食生活でヨード不足による甲状腺疾患はほとんど考えられない。

そもそも、そんな病気による脱毛症と、AGA(Androgenetic Alopecia=男性型脱毛症)とは何の関係もない。

コンブなんかじゃ、われらのハゲは絶対止められないのだ。

そのことは、同憂の男性諸兄全員、とっくに体験ずみの事実のはずである。

だが……、いまだに食卓にコンブを見つけると、ついいそいそと箸を出してしまうのは、なぜだろうか?
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夏風邪は馬鹿がひく? [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(7)  

夏風邪は馬鹿がひく?

冬の手紙に「寒気厳しき折柄、お風邪など召しませんように─」などと書くのは、古風で月並みだが、常識的な時候の挨拶である。

だが、夏の手紙に「暑い日が続いています。風邪をひかないようにしてください」と書いたとする。

バカじゃないかとその非常識を笑われたり、バカにするなと怒られたりするかもしれない。

古人もこんなことわざを残している。

「夏の風邪は犬も食わぬ」

「夏の風邪は猿でもひかぬ」

「夏風邪は馬鹿がひく」

夏に風邪をひくのは、犬よりも悪食で、猿よりも知能が低く、馬か鹿なみの人間である─というのである。

そうだろうか?

そうではないのである。

古人は、ヘルパンギーナを知らなかったし、昔はプール熱なんてものもなかった。

いまの夏風邪は、バカでなくても、ひく。

バカにするとひどい目に遭うこともある。

ヘルパンギーナは、最初に発見されたアメリカの村の名をとってコクサッキーウイルスと呼ばれるウイルスで起こる。

乳幼児の夏風邪の一種である。

突然、高い熱が出て、のどの痛みを訴えるのが主症状で、食欲がなくなり、吐いたり、腹痛が起こったりする。

のどをのぞいて見ると、口蓋垂(こうがいすい=のどちんこ)の上の辺に小さな白い斑点がブツブツと横に這うように並んでいる。

ヘルパンギーナ(ヘルプ+アンギーナ)とは、この症状を表現した合成語で、ヘルプは「這う」、アンギーナは「のどの炎症」という意味。

厚生労働省は、「感染症発生動向調査」にもとづき、毎年夏がくると「ヘルパンギーナ警報」を出している。

ことしもただいま「警報」発令中である。

一方、プール熱は、学童がプールで感染して集団発生することがあり、俗にそう呼ばれるが、正しい病名は咽頭結膜熱だ。

やはり突然、高熱を発し、のどが赤く腫れて痛み、結膜(白目)が充血し、涙や目やにが出る。

アデノウィルスの感染によっておこる。

もう一つ、夏(または秋)に流行する子どもの病気に手足口病がある。

名のとおり、手のひら、足の裏、口の中に小さな水疱ができる。

熱が出ることもある。

口の中の水疱はすぐ破れて、口内炎のように痛い。

年長の子どもなら「痛い!」と訴えることができるが、赤ちゃんはなにも言ってくれない。

「赤ちゃんが、食べ物を口に入れただけで出してしまったり、食べるのをいやがるようなときは、口の中になにかできているのではないか、のぞいてみましょう」と、小児科医。

手足口病の病原菌は、コクサッキーウイルスと、エンテロウイルスなどの腸内ウイルスだ。

ウイルスに効く薬はないから(インフルエンザウイルスに対するタミフルなどを除いて)、ヘルパンギーナもプール熱も手足口病も、特別の治療法はない。

普通の風邪と同じ対症療法でじゅうぶんだ。

たいていは3~4日で自然に熱が下がり、数日で治る。

だいじなのは回復期。きっちり治さないとぐずぐずと長引く。大人の夏風邪と同じだ。

ともあれ─、

暑い日が続いています。風邪をひかないようにしてください。
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「麻薬迷信」を打破せよ! [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(6) 

「麻薬迷信」を打破せよ!


俳優の今井雅之さんの生前最後の壮絶な記者会見をテレビで見て、感動した。

すごい! 強い! 男だ!

胸がふるえた。目頭が熱くなった。

それだけにモーレツに腹が立った。

「夜中に痛みと戦うのはつらいです。モルヒネで殺してくれ、と言いました。安楽死ですね」

今井さんがしぼり出すような声でそう話したときだ。

今井さんに対してではない。

どこの病院の何という医者かしらないが、緩和ケアを怠った、能天気なバカ医者に対してである。

そもそも今井さんが最初に受診した病院では誤診があったという話もある。

ステージⅣの大腸がんを「腸の風邪」と診断したというのだが、これはちょっと信じられない。

いまどきそんなとんでもないヤブ医者がいるだろうか?

もしかしたら、それは今井さんが周りの人を心配させまいとして、つくった病名だったのかも?

事実はどうだったのか、当方にはわからないから、この件はひとまず保留としたい。

いま、ここで問題にしたいのは、今井さんが最後の病床で受けた治療のことである。

がんの末期には7割の人が強い痛みに襲われるといわれる。

このがん性疼痛(とうつう)について、WHO(世界保健機関)は1986年、鎮痛薬の段階的使用法などを含む「WHO方式がん疼痛治療法」を公表、各国で80~90%の患者が痛みから解放された。

だが、日本のみ先進国中最低の成績が続いている。

日本のがん疼痛治療がなかなか進まない要因として、次の三つを専門家は指摘している。

①医師に遠慮して患者が痛みを積極的に訴えない。

②医師が抗がん治療のみを考え、痛みを病気が示す症状の一つにすぎないとみて、痛みへの関心が浅い。

③痛みの治療に用いる医療用麻薬に対する偏見と誤解がいまだに強い。

①には「我慢が美徳」という日本人的心情も働いているようだ。

緩和医療の専門医は強くこう言っている。

「痛みの感じ方は人それぞれで、他人にはわかりません。はっきりしているのは、痛みは伝えてもらわなければ、無いものとして扱われかねないということです。我慢せずに、まずは訴えるべきです」

さらに問題は、③だ。

「モルヒネは怖い、寿命を縮める」というまことしやかなウソを信じる人が、まだずいぶん多いようなのだ。

事実は全く逆で、モルヒネなどで痛みを抑えたほうが病状も安定し、延命効果につながることが医学的に証明されている。

なのに、今井さんにあのような苦痛を強いた原因は、②に属する担当医の無知な怠慢以外にはかんがえられない。

テレビも今井さんの苦闘を伝えるだけではなく、がんの痛みは緩和できることを報じるべきだったのではないか。
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