SSブログ

火事場の馬鹿力の生理学 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(15)  

火事場の馬鹿力の生理学

夏休み中の高校の講堂からボヤが出た。

駆けつけた生徒2人でピアノを運び出した。

鎮火後、元に戻す段になったら、同じ2人の力ではもうピアノはびくともしなかった。

──という話を、むかし聞いたことがある。当方も当時、その高校の生徒の1人だった。

筋肉は、無数の筋線維(収縮能をもつ細胞)でできていて、たんぱく質の一種のアクチンとミオシンの相互作用によって収縮し、力を出す。

通常、筋線維は20~30%しか収縮せず、ほかの部分は交替で休息するしくみになっていて、健康な人間なら自分の体重と同じ重さくらいまでの物は持ち上げられる。

ところが、なにか極限に近い状況に追い込まれると、60%以上の筋線維がいちどきに収縮して意外な力を発揮する。

それが「火事場の馬鹿力」だ。

ボクシングなどの「瞬発力」というのもそれだと考えられている。

これも昔、不良(いまでいうヤンキー)をやっていた男から聞いた話だが、アベックをおどしたとき、相手の男が死に物狂いで向かってきたら「ちょっとヤバイ」とのことだった。

男が体を張って愛する女性を守ろうとするとき、自分でも思いがけぬ力が出るものらしい。

そんなときは交感神経が急激に緊張する。

すると、ストレスホルモンのアドレナリンが大量に分泌され、神経の情報伝達を迅速にする。

それまではのんびり交代制でやっていた筋線維に緊急出動の命令が出て、筋線維フル活動となるわけだ。

運動生理学では「緊急反応」というそうだが、そうしたモチベーションが強いほど行動のパワーは強く現われる。体内の予備能力が出てくる。

別の言葉でいえば気力が体力を過剰に引き出すわけだ。

体力とは、狭い意味では、ある力がある時間内にどれだけ出せるかというスポーツ能力のようなもののこと。

広い意味では、長いあいだ病気をせずに働いている状態のことである。

そのどちらの場合にも気力の影響は大きい。

多くの場合、気力と体力は平行し、しばしば一致する。

われわれは経験的にそのことをよく知っている。

ダウンしたボクサーが立ち上がるのも気力なら、高校野球の投手が炎天下の甲子園で3連投、4連投できるのも気力の占める割合が大きいはずだ。

むろん、二日酔いの体を自ら敢然と満員電車の中に押し込むなんてのも、気力以外のなにものでもあるまい(3連投投手などとの状況レベルとはだいぶ差はあるけど)。

では、気力とはなにか。

それは努力をいとわない精神のことだろう。

結果のいかんを問わず、ひたむきに努力しつづける精神、それが気力だろうと思う。

ところで、諸兄。

気力に欠くる勿(な)かりしか!

努力に憾(うら)み勿かりしか!
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:健康

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。