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突き指、引っぱるな! [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(5)  

突き指、引っぱるな!


甲子園の熱闘をテレビ観戦していて、子どものころの草野球を思い出した。

いつもライトで9番だった。

あるとき、気まぐれみたいに飛んできたフライを(当然のことながら)捕りそこねて、おまけに突き指した。

「いてぇ!」とベソをかいたら、セカンドのトシローが、「タイム!」と叫んで駆け寄り、兄貴顔して指を引っぱってくれた。

そうだった。

あのころの突き指は引っぱるものだった。

いまも、それをやっている子がけっこう多いのではないだろうか。

あの「常識」は、まちがってるだけでなく、非常に危険でさえある─と、整形外科医は警告している。

突き指には、捻挫、打撲、脱臼、骨折、腱または靭帯の断裂など、さまざまな傷害が混じっている。

腱(けん)=筋肉と骨を結びつけている丈夫な筋。

靭帯(じんたい)=関節の運動を制御する弾力性のある繊維性の組織。

軽い捻挫や打撲は放っておいてもたいてい大丈夫だ。

だが、放っておいてはまずい場合もある。

指先を伸ばす腱(伸筋腱)が切れたり、剥離骨折(腱の付着部で末節骨が剥がれた状態)を起こしたり、脱臼したり、あるいは関節を固定している靭帯(側副靭帯)が切れたりしたときが、そうだ。

腱が切れると、指先が曲がってまっすぐ伸ばせない。

そのうえ腫れてきたら剥離骨折を起こしている可能性がある。

靭帯が切れると、関節がぐらぐらする。

いずれの場合もひどく痛い。

そういう状態の指を引っぱればどんなことになるか。申し上げるまでもないだろう。

では、軽い捻挫や打撲だったら引っぱってもいいのか。

そうはいかない。

捻挫の大部分は靭帯がねじれたり、傷ついたりしたものだ。

引っぱればさらに傷んでしまう。

突き指、引っぱるな!

もんだりさすったりするのもよくない。

突き指したら、氷(か、冷水)を入れたポリ袋を当てて冷やすと、痛みが薄らぎ、明日には治る。

冷やすと、血管が収縮し、内出血や炎症がいくらか抑えられる。

しかし、痛みがなかなか引かなかったり、腫れてきたり、指先が曲がったままだったりしたら、急いで専門医(整形外科)の治療を受けなければいけない。

余談だが、『広辞苑』第一版(昭和30年発行)には、「突き指」の項目がない。

44年の第二版以降の各版には、

「突指 外力によって指先を突かれたために起る症状。指先と付近の関節の腫脹・疼痛・運動障害を伴う」とある。『広辞苑』らしい生硬な語釈だ。

少年の日の草野球の思い出とともにある突き指は、こんなシチ面倒なものではなかった。

せいぜい「ボールなどが当たって指をくじくこと」(『新潮国語辞典』)だった。
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腹が減ってはいくさができぬ生理学 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(4)  

空腹の運動生理学

〈腹が減っては軍(いくさ)はできぬ 空腹では活動ができない=『広辞苑』〉。

これはホントのことである。

東京大学教養学部の宮下充正教授(運動生理学)は、そのことを実験的に証明した。

若い元気な男性が、朝飯抜きで、息がちょっとはずみ、胸がわずかにドキドキする程度の軽い運動をやったとき、血液中の糖分の数値=血糖値が、どのように変わっていくかを調べた。

血液中の糖分(ブドウ糖)は、運動のエネルギー源となる物質で、空腹時の血糖値の正常値は80~100㍉㌘(血液1㌥㍑中)とされている。

詳しいデータは省略するが、運動開始から60分後には、血糖値が70㍉㌘に減った。

さらに90~120分後には60㍉㌘に下がった。

そして、60㍉㌘を境目としてそれ以下になると、運動を続けることができなくなった。

つまり、朝飯前の運動や仕事は1時間が限度──ということが、まずわかった。

そこで、次の実験として、血糖値が下がってきて、60㍉㌘近くになったとき、角砂糖を吸収しやすいように水に溶かして飲ませた。

すると、血糖値が上がり、元気が出て、運動を続けることができた。

だが、砂糖水を飲ませない(糖分を補給しない)と、血糖値はそのまま下がり続けて、60㍉㌘を切ると、「もうイヤです」と運動をやめてしまった。

体がへばるだけでなく、ヤル気もなくなったわけだ。

このように血糖値が下がってくると、体の働きが低下するだけではなく、脳の働きも低下する。

いや、体よりも先に脳がへばってくる。

体ではたんぱく質や脂肪もエネルギー源となるが、脳のエネルギー源となるのはブドウ糖だけだからだ。

ひどく疲れたとき、甘いものを口にすると元気がでるのは、血糖値が上がり、脳と体の働きが回復するからである。

会議などが長引いてだれてきたら(頭が疲れてきたら)、コーヒーや紅茶に少し多めに砂糖を入れて飲むとよい。

また、運動の前にとる食事も糖質の多いものがよい。

運動のエネルギーとして直接使われるのは糖分だけだからだ。

試合の2時間ぐらい前にごはん、もち、うどん、パン、ようかん、カステラなど、糖質たっぷりの食品を食べる。

肉や卵などを食べても、たんぱく質が分解されてエネルギー源となるのには時間がかかるので、即効性は得られない。

しかし、体を構成するのはたんぱく質なのだから、日常、肉や卵もしっかり食べなければいけない。

たんぱく質と糖質、脂肪の関係を車にたとえると、たんぱく質は車体やエンジンで、糖質と脂肪はガソリンである。

どれが欠けても車は走らない。
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頭寒足熱のエピソード [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(3)

頭寒足熱・和&洋

18世紀初頭のオランダにヘルマン・ブールハーフェという天下に隠れもない名医がいた。

いくら名医でも寿命には勝てない。

病名は不明だが、70歳で没し、どういう理由でか、遺産が競売されることになった。

競売品のなかに1冊の手稿本(手書きの本)があった。

手づくりの書物がしっかり封じられ、表紙に「医学の無類で最も深い秘密」と記されてある。

競り合いの末、裕福な町医者が非常な高価でこの本を落札した。

さあ、なにはともあれ、当代の名医が書き遺した「医学の秘密」である。

なにか画期的な治療法か、あるいは不老長寿の妙薬の処方か、さぞかし貴重な学殖知識が述べられてあるだろう。

ふるえる手で封印を切り、本を開いた。

なんと、どのページも白紙である。

いや、第1ページだけに大きな文字で、こう書いてあった。
「頭を冷やし、足を温かくし、体を窮屈にするな。そうすれば、お前はすべての医者をあざ笑うことができる!」

ことの真偽はともかく、これは「健康説話」としてよくできた話である。

実際、頭を熱くしない、足を冷やさない、窮屈な衣服を着ない──どれも、健康法の基本的な心得である。

「頭を冷やし、足を温かくし」が、いわゆる「頭寒足熱」のことであるのは言うまでもないだろう。

「頭寒足熱【意味】頭部はのぼせず、足のほうは冷えないのが人体の健康な状態であること。また頭を冷やして足をあたためるのが、健康を保つためにはよい方法であること。」─とは、鈴木棠三・広田栄太郎編『故事ことわざ辞典』の簡にして要を得た説明。

人間の体は、上半身は温度が高くて(心臓を中心に37度前後)、下半身は低く、とくに足は31度以下だ。

このような体温の上下差は、全身の血液循環をわるくする。

血液循環がわるくなると、動脈からはじゅうぶんな酸素や栄養が送られてこない。

静脈からは老廃物や炭酸ガスがスムーズに出ていかない。

そういう状態が長く続くと、しだいに体調が低下し、本格的な悪化(つまり病気)を招くことにもなる。

だから、病気を防ぎ、病気を治し、健康を保つためには、まず体温の上下差を解消し、下半身の冷えのない状態をつくらなければいけない。

そのための最も効果的な方法は「靴下の重ねばき」と「半身浴」である。

─と、「冷えとり健康法」の第一人者、進藤義晴先生は勧める。
冬はもとより夏でも靴下をしっかりはき、毎日一度は、みずおちから下をぬるま湯(体温よりやや高い程度の湯)に20~30分つけてじっくり温める。

この二つを励行するだけで、多くの病気や症状が軽快し、体調がめきめきよくなるはずだ。現代日本のブールハーフェは、そう力説した。

内輪話─。

いま「半身浴」という言葉はだれでも知っていて、『広辞苑』(第六版)にも載っているが、そもそもの始まりは、小生が進藤先生の話を聞いて、雑誌『壮快』(1989年3月号=マキノ出版)に記事を書いたとき、編集部がかんがえた造語である。

取材に同行した若い編集者は、現在、同社の社長である。

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焼け焦げの発がん性 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(2)

 焼け焦げの発がん性

 友人にいわゆるキャンサー・フォビア(がん恐怖症)みたいな男がいて、焼き鳥、焼き肉、焼き魚などはいっさい口にしない。

 動物性たんぱく質に多く含まれるトリプトファン(必須アミノ酸の一種)が焼けると、発がん物質に変わるから─というのだ。

 目玉焼きの焦げた部分も絶対、食べない。

 パンの耳もむしり取って自分は食わないのだが、近所の小公園に集まるハトに投げ与えている。

 ハトはがんになってもいいと思っているのか?

 ま、なにを食おうが食うまいが、他人に強制さえしなければ、当人の勝手である。

 しかし、それを一般論にされては困る。焼け焦げを食べても、がんにはならないことがわかっているからだ。

 こう言うと、国立がんセンターの「がんを防ぐための12ヶ条」には「焦げた部分はさける」とあるではないか─と反問する人がいるかもしれない。

 あなたも古いのです。

 2011年発表の「がんを防ぐための新12か条」ではその条項は削除されています。

 肉や魚にたくさん含まれているアミノ酸が焼けると、細胞の遺伝子に突然変異を起こす物質(変異原性物質)ができる。

 なかでもトリプトファンからできる2種類の物質〈トリプP1、トリプP2〉は、特に強い変異原性=発がん性をもつことが動物実験によって確かめられた。

 そのため肉や魚の焼け焦げを食べるとがんになる─ということになった。

 だが、その発がん実験は、合成された純粋なトリプP1やP2を、マウスに大量に与えて行ったものである。

 実際の肉や魚の焼け焦げのなかに含まれるトリプP1やP2は、1㌘当たり1ナノ㌘というきわめて微量なものでしかない。(1ナノ㌘は10億分の1㌘)。

 もし実験で与えたトリプP1やP2と同じ量を、本物の焼け焦げの状態で食べさせるとしたら、体重30㌘のマウスが、真っ黒焦げに焼いたイワシを毎日70㌔㌘、1年以上も食べ続けなければならない計算になるそうだ。

 仮にマウスと人間の、発がん物質に対する感受性が同質のものだとして、これを人間に当てはめてみると、体重60㌔の人が毎日140㌧もの真っ黒に焼いたイワシを食べ続けることになる。

 つまり、現実の問題として重要なのは、発がん性があるかないかではなく、どれだけの量あるか─なのである。

 物質の性質をみることを定性分析、量をみることを定量分析というが、定性分析だけにこだわると、人は往々にして科学的迷信のとりこになる。

 焼け焦げ恐怖はその最たる一つといえるだろう。

 むろんパンの焼け焦げも問題外だ。

 それはあのハトたちのためにもよろこばしいことである。
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