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頭痛鉢巻きの理論 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(9)  

頭痛鉢巻きの理論

吉村昭さんのエッセーで知ったことだが、昭和20年ごろの肺結核の手術は、局所麻酔で行われていた。

その麻酔があまりよく効かず、痛みを感じ、患者が身動きすると、手術の妨げになる。

これを防ぐため、手術台上の患者のほっぺたに平手打ちをくわせる役目の看護婦がいた。

ほっぺたをピシャッ! とやられる瞬間、メスの痛みがまぎれるというわけ。

体のどこかに痛みがあるとき、ほかの部位に強い刺激を加えると、元の痛みを感じにくくなる。

この現象に着目して、兵頭正義・大阪医大教授(麻酔学)は、注射を打つとき、針を差し込む5~10秒前から注射が終わるまで、体の敏感なところをつねると、注射の痛みがへることを確かめた。

最も効果的だったのは、太ももをつねったときだったそうだ。

どうしてそんな効果が生じるのか。

「ゲートコントロール(門調節)説」という理論で説明できる。

体の痛みは、脊髄を通って脳へいき、痛みとして認知される。

脊髄には、痛みの信号にゴー・ストップをかける「門番細胞」があり、脳へいく痛みをコントロールしている。

痛みの信号と同時にほかの感覚刺激がやってくると、門番細胞は門を閉じる。

つまり、どこかが痛いとき、そこをなでたりさすったり、あるいはほかの部位をつねったりすると、その感覚刺激が門を閉じさせ、痛みが弱くなる。

この門のはたらきには、脳からの影響も及ぶから、なにかに熱中しているときは、あまり痛みを感じない。

近年の研究で、門番機構は、脊髄だけでなく、脳の中枢にもあることがわかった。

また、ある種の刺激によってエンドルフィンというモルヒネ様の物質が分泌され、痛みをやわらげることもわかった。

さて、そうしてみると、「頭痛鉢巻き」もリッパに理屈に合っているわけで、昔の人の経験的知恵というのはほんとうに大したものだと思う。

もっとも、鉢巻きが有効なのは、片頭痛、風邪、二日酔いなどのような血管性頭痛で、肩こりなどによる筋収縮性頭痛には、さほどの効果は望めない。

この場合は、後頭部をもむとよいそうだ。

頭痛は、じつにいろいろな原因によって起こる。

入れ歯を直したとか、老眼鏡をかけるようにしたとかで、長いことつづいていた頭痛がウソのように消えた例もある。

中耳炎などの耳の病気が頭痛の原因になることもある。

このように頭痛には眼科、耳鼻科、歯科などが絡んでいるものがある。

頭を詳しく調べても原因が見つからなかったら、目じゃないか? 鼻じゃないか? 歯じゃないか? と、頭を切り換えてみよう。

●ひとこと追記

皮膚に塗るクリーム状の局所麻酔薬エムラクリーム(主成分=リドカイン、プロピトカイン)が、去年6月から子どもに注射するときにも使えるようになった。

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