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キズ治療の常識の変化 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(12)  

キズ治療の常識の変化

日常のちょっとしたケガ(すり傷、切り傷)の手当ては、①毎日消毒する。②患部を乾かす。──が、かつての常識だった。

いまでもまだそうしている人が多いようだ。

これ、二つともマチガイ! 理由はこうだ。

すり傷、切り傷の傷口は、皮膚が欠損した状態である。欠損した皮膚細胞が再生し、新しい皮膚ができることで、傷はふさがっていく。
消毒薬は、雑菌を殺すとともに新しい皮膚細胞まで殺してしまう。

毎日消毒をする乾いたキズ面は治りが遅く、傷跡が残りやすい。傷口をぴったり覆ったキズ面のほうが早くきれいに治る。

生まれたばかりの皮膚細胞が育つためには、適度な水分が必要で、乾かすと皮膚細胞は死んでしまうからだ。

この創傷治療の湿潤療法(モイスト・ヒーリング)の正しさが実験的に証明されたのは、1962年である。

それまでは─じつに100年以上にわたって─キズやヤケドや床ずれなどの治療は、「開放した状態で早く乾燥させるのがベスト」と信じられてきた。

モイスト・ヒーリングが報告されてからも、それが普及するのに欧米では20年も30年もかかった。

日本ではさらに遅れて2000年ごろようやく一部の医師たちが行うようになった。なぜ、そんなに時間がかかったのか?

2004年7月、湿潤療法の普及啓発を目的として設立されたNPO法人「創傷治療センター」の理事長、塩谷信幸・北里大名誉教授(形成外科)は、当時開かれたプレスセミナーで、こう話した。

「いわゆる〝習慣の奴隷〟というやつで、新しい提言がなかなか受け入れなかったのです。

その最大の理由は、キズ面を閉鎖した湿潤環境ではバイ菌が繁殖しやすく、感染を誘発するのではないか。キズ面は開放しておいたほうがよい──とする根強い固定観念=習慣にとらわれていたのです。

その根源を辿ると、リスターの石炭酸消毒法に行き着きます」。

リスターの石炭酸消毒法とはなにか?

『広辞苑』をひいてみた。

「リスター【Joseph Listr】イギリスの外科医。石炭酸溶液による消毒法の開発で近代外科手術に貢献。(1827~1912)」。

19世紀の後半まで、外科手術は、術後に起こる敗血症(細菌、とくに化膿菌が血管やリンパ管に入って起こる病気)による高い死亡率との戦いだった。

これを解決したのが、リスターの石炭酸消毒法だった。

以来、キズの治療は、アルコールや消毒液で消毒したあと、通気性のよいガーゼで覆って早く乾燥させるのがよい、とされてきた。

だが前述のように消毒薬は細菌を殺すが、同時に、傷口の再生に必要な生きた細胞まで傷つけてしまう。

また、傷口からしみ出してくる浸出液にはキズを修復する成分が含まれているが、ガーゼで覆うと乾燥してかさぶたになる。

かさぶたはガーゼにくっつき、ガーゼ交換のたびに治りかけの皮膚も一緒にはがれて痛いうえに、治りも悪くしてしまう。

これに対し、湿潤療法は、

1 傷口を生理食塩水や水道水で洗い、異物を除く。

2 傷口の潤いを保てる被覆材で覆い、乾燥を防ぐ、という方法だ。

結論。キズ治療の消毒&乾燥の常識は、ウソ。

家庭で治せるようなキズは、水道の水でよく洗い、被覆材(バンドエイド・キズパワーパッドなど)で覆うのがホント。

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