耳と寿命は無関係 [健康常識ウソ・ホント]
健康常識ウソ・ホント(19)
耳と寿命は無関係
私事だが、私は10年前にほとんど全聾同然の重度難聴になった。
「ミンツン(聾を意味する屋久島方言。ミン=耳)になったよ」といったら、「目でなくてよかったな」といわれたり、「耳が遠くなると長生きするそうだよ」と慰められたりした。
目と耳とどちらがより重要か。これは一概にはいえない。
視力には、感覚・知覚・認知のすべてが反映され、人間は外部情報のほとんどを目から収集しており、その割合は約80%にもなるといわれる。
一方、聴力の欠如は人間関係をいちじるしく希薄にする。人の肉声(話)を聞くことができないことが、どれほど寂しいものか、なった者でなければわからないだろう。
「目が見えないことは、人と物を切り離す。耳が聴こえないことは、人と人を切り離す」と、カントがいっているそうだ。
なるほど、目、耳、どちらを選ぶ? という問いを突き詰めると、物か? 人か? の二者択一、人それぞれの価値観を問うことに通じることになるようだ。つまり一概にはいえないってわけ。
─と、書いて、いま、目を閉じて全盲の状態をつくってみて、これが死ぬまでつづくのかと想像したら、怖くなった。
ミンツンのほうがまだしも救いがあるなと思い、わが精神性の低さを自覚したしだい。
さて、本題の「耳が遠くなると長生き」だが、これ、ホントか? ウソか?
まるっきりウソ、ナンセンスな俗説である。
難聴は伝音難聴と感音難聴に大別される。
前者は、外耳から中耳までの音を伝える働きが障害された場合に起こる。
後者は、内耳から大脳までの音を感じる神経系が壊れる。
内耳は、耳の奥にある体の中で最も硬い骨に囲まれている。
そこの蝸牛(かぎゅう)と呼ばれるカタツムリのような形の器官に、有毛細胞という毛の生えた細胞がびっしり並んでいる。
この有毛細胞の壁に収縮たんぱく(プレスチン)という物質があり、音の振動が伝わると、伸び縮みしてその刺激を脳へ伝える。
蝸牛の中にひしめき合うように生えている有毛細胞は、生まれたときから減り始めて、けっして再生しない。
だから年をとるにつれてだんだん耳が遠くなるのは(個人差はあるが)、だれも避けられない。いわゆる老人性難聴である。
昔、「人生50年」といわれた短命時代には、老人性難聴が起こるまで長生きする人はごく少なかった。
結果、長生きした人はみんな耳が遠かった。
その原因と結果が逆立ちして、「耳が遠くなると長生きする」という俗説が生まれ、信じられるようになったわけだ。
いまや「人生80年」どころか「90年」の時代になりかけている。
だれもが避けられぬ加齢性難聴の進行を抑えるにはどうしたらよいか。
小川郁・慶応大教授(耳鼻咽喉科)らは、10年以上前から「イヤー・フード」の実験的研究を続けていて、抗酸化物質が難聴の進行を抑えることを実証した。
一口に抗酸化物質といっても、フィトケミカル、カロテノイド、ポリフェノール、ビタミン、CoQ10などさまざま。
これを多く含む抗酸化食品となると、とてもここには挙げきれない。
耳と寿命は無関係
私事だが、私は10年前にほとんど全聾同然の重度難聴になった。
「ミンツン(聾を意味する屋久島方言。ミン=耳)になったよ」といったら、「目でなくてよかったな」といわれたり、「耳が遠くなると長生きするそうだよ」と慰められたりした。
目と耳とどちらがより重要か。これは一概にはいえない。
視力には、感覚・知覚・認知のすべてが反映され、人間は外部情報のほとんどを目から収集しており、その割合は約80%にもなるといわれる。
一方、聴力の欠如は人間関係をいちじるしく希薄にする。人の肉声(話)を聞くことができないことが、どれほど寂しいものか、なった者でなければわからないだろう。
「目が見えないことは、人と物を切り離す。耳が聴こえないことは、人と人を切り離す」と、カントがいっているそうだ。
なるほど、目、耳、どちらを選ぶ? という問いを突き詰めると、物か? 人か? の二者択一、人それぞれの価値観を問うことに通じることになるようだ。つまり一概にはいえないってわけ。
─と、書いて、いま、目を閉じて全盲の状態をつくってみて、これが死ぬまでつづくのかと想像したら、怖くなった。
ミンツンのほうがまだしも救いがあるなと思い、わが精神性の低さを自覚したしだい。
さて、本題の「耳が遠くなると長生き」だが、これ、ホントか? ウソか?
まるっきりウソ、ナンセンスな俗説である。
難聴は伝音難聴と感音難聴に大別される。
前者は、外耳から中耳までの音を伝える働きが障害された場合に起こる。
後者は、内耳から大脳までの音を感じる神経系が壊れる。
内耳は、耳の奥にある体の中で最も硬い骨に囲まれている。
そこの蝸牛(かぎゅう)と呼ばれるカタツムリのような形の器官に、有毛細胞という毛の生えた細胞がびっしり並んでいる。
この有毛細胞の壁に収縮たんぱく(プレスチン)という物質があり、音の振動が伝わると、伸び縮みしてその刺激を脳へ伝える。
蝸牛の中にひしめき合うように生えている有毛細胞は、生まれたときから減り始めて、けっして再生しない。
だから年をとるにつれてだんだん耳が遠くなるのは(個人差はあるが)、だれも避けられない。いわゆる老人性難聴である。
昔、「人生50年」といわれた短命時代には、老人性難聴が起こるまで長生きする人はごく少なかった。
結果、長生きした人はみんな耳が遠かった。
その原因と結果が逆立ちして、「耳が遠くなると長生きする」という俗説が生まれ、信じられるようになったわけだ。
いまや「人生80年」どころか「90年」の時代になりかけている。
だれもが避けられぬ加齢性難聴の進行を抑えるにはどうしたらよいか。
小川郁・慶応大教授(耳鼻咽喉科)らは、10年以上前から「イヤー・フード」の実験的研究を続けていて、抗酸化物質が難聴の進行を抑えることを実証した。
一口に抗酸化物質といっても、フィトケミカル、カロテノイド、ポリフェノール、ビタミン、CoQ10などさまざま。
これを多く含む抗酸化食品となると、とてもここには挙げきれない。
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