血液型性格分類は心理的マジックだ [健康常識ウソ・ホント]
健康常識ウソ・ホント(20)
血液型性格分類は心理的マジックだ
B型の私が冷めている次女の私を今日もつつき始める (富山市)松田わこ
「朝日歌壇」=朝日新聞2015年9月13日掲載。
月曜の朝の小さなタノシミの一つは、朝日歌壇のなかに、松田梨子、松田わこ、の名をさがすことだ。
去年ぐらいまではほとんど毎週、姉妹どちらか(しばしばお二人とも)の名を見つけることができた。
明るいウイットに富む口語詠に微笑を誘われ心なごむひとときである。
昨春、梨子さんが高校へ、わこさんが中学へ進んで、このごろは梨子さんの作品にふれることが少なくなった。
高校生活、なにかと忙しく、作歌の時間が得られにくいのだろうか。
それはさておき―。
上掲の句から察するに、わこさんの血液型は「B型」で、心のなかに「次女」の「冷めている」性格が同居しているらしい。
このような血液型による性格分類は、いまや日本人のジョーシキになっている。
たとえば―、
「私、A型だから、生真面目で面白みのない女だって、よく言われるわ」とか、
「あいつ、B型なんで大ザッパで短絡的なところがあるんだよ」
なんてセリフは年中そこらじゅうで耳にする。
なんとなく(あるいは、けっこう)説得力があるように聞こえる。
だが、それはまことしやかなウソなのだ。
「血液型から性格が分かるとか、行動から血液型が当たるといった話に科学的根拠はありません」というのが、まともな専門家の一致した見解なのである。
血液型と性格が相関するという説は、1927(昭和2)年、古川竹二・東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大)教授の論文「血液型による気質の研究」に始まるとされる。
教授は、家族、同僚、学生らにアンケートし、「A型=おとなしい、心配性、B型=世話好き、陽気」などと分類した。
ざっと半世紀後の1971(昭和46)年、この古川学説をもとに、芸能人など有名人の例をたくさんあげて、俗受けする読み物に仕立てたのが、能見正比古著『血液型でわかる相性』である。
これが大ベストセラーになったのがきっかけで、血液型による性格分類が一般に広まった。
だからこれは日本人好みの「占い」のようなもので、その限りで話の種にする分には何ら不都合はない。
だが、これに確かな科学的根拠があるとして、例えば幼稚園で血液型別のクラス編成を行ったとか、企業の採用面接で特定の血液型は採用しないと言われた─となると、問題だ。
いわゆる「ブラッド・ハラスメント」(ブラハラ)の典型である。
ある会社の社長は、仕事の実績に血液型による指数をかけて、社員の賞与を決めている。
A型はもともと几帳面だから0.8、B型はマイペースなのに成果をあげられたから1.2倍……といった話を新聞で読んで、
「B型はトクだなあ」と笑ったことがある。
しかし、同じ成果を上げて賞与に格差がつくのは不公平だ。
当人にとっては笑いごとではない。
なぜ、この社長は、「仕事には血液型など関係ないんだな」と気づかないのだろう。
血液型性格診断なんて偽科学だといわれても、「でも、自分の場合は当たっている」と思う人は多いだろう。
その理由は、心理学では「バーナム効果」という理論で説明されている。
これは、誰にでも当てはまるようなあいまいで一般的な性格を記した文章を、自分だけに合った正確なものだと思い込む心理現象のことだ。
アメリカの心理学者フォアラーは、心理学専攻の学生に「性格診断テスト」を行い、回答を無視して、すべての学生に同文の「診断結果」を示した。
そして、それが「よく当たっている」と思う場合は5、「比較的当たっている」場合は4、と評価するように求めた。
学生たちはその「正確な診断結果」に驚き、全員が5ないし4と答えた。
フォアラーが用いた「診断結果」は、スタンド売りされている新聞の占星術欄から星座を無視して、適当に抜き出してつなぎ合わせたものだった。
なお、バーナムとは、「地上最大のショー」などさまざまな興行を成功させた、アメリカの有名な興行師。
バーナム効果は、彼の「誰にでも当てはまる要点がある」ということばにちなむものだそう。
血液型性格分類は心理的マジックだ
B型の私が冷めている次女の私を今日もつつき始める (富山市)松田わこ
「朝日歌壇」=朝日新聞2015年9月13日掲載。
月曜の朝の小さなタノシミの一つは、朝日歌壇のなかに、松田梨子、松田わこ、の名をさがすことだ。
去年ぐらいまではほとんど毎週、姉妹どちらか(しばしばお二人とも)の名を見つけることができた。
明るいウイットに富む口語詠に微笑を誘われ心なごむひとときである。
昨春、梨子さんが高校へ、わこさんが中学へ進んで、このごろは梨子さんの作品にふれることが少なくなった。
高校生活、なにかと忙しく、作歌の時間が得られにくいのだろうか。
それはさておき―。
上掲の句から察するに、わこさんの血液型は「B型」で、心のなかに「次女」の「冷めている」性格が同居しているらしい。
このような血液型による性格分類は、いまや日本人のジョーシキになっている。
たとえば―、
「私、A型だから、生真面目で面白みのない女だって、よく言われるわ」とか、
「あいつ、B型なんで大ザッパで短絡的なところがあるんだよ」
なんてセリフは年中そこらじゅうで耳にする。
なんとなく(あるいは、けっこう)説得力があるように聞こえる。
だが、それはまことしやかなウソなのだ。
「血液型から性格が分かるとか、行動から血液型が当たるといった話に科学的根拠はありません」というのが、まともな専門家の一致した見解なのである。
血液型と性格が相関するという説は、1927(昭和2)年、古川竹二・東京女子高等師範学校(現・お茶の水女子大)教授の論文「血液型による気質の研究」に始まるとされる。
教授は、家族、同僚、学生らにアンケートし、「A型=おとなしい、心配性、B型=世話好き、陽気」などと分類した。
ざっと半世紀後の1971(昭和46)年、この古川学説をもとに、芸能人など有名人の例をたくさんあげて、俗受けする読み物に仕立てたのが、能見正比古著『血液型でわかる相性』である。
これが大ベストセラーになったのがきっかけで、血液型による性格分類が一般に広まった。
だからこれは日本人好みの「占い」のようなもので、その限りで話の種にする分には何ら不都合はない。
だが、これに確かな科学的根拠があるとして、例えば幼稚園で血液型別のクラス編成を行ったとか、企業の採用面接で特定の血液型は採用しないと言われた─となると、問題だ。
いわゆる「ブラッド・ハラスメント」(ブラハラ)の典型である。
ある会社の社長は、仕事の実績に血液型による指数をかけて、社員の賞与を決めている。
A型はもともと几帳面だから0.8、B型はマイペースなのに成果をあげられたから1.2倍……といった話を新聞で読んで、
「B型はトクだなあ」と笑ったことがある。
しかし、同じ成果を上げて賞与に格差がつくのは不公平だ。
当人にとっては笑いごとではない。
なぜ、この社長は、「仕事には血液型など関係ないんだな」と気づかないのだろう。
血液型性格診断なんて偽科学だといわれても、「でも、自分の場合は当たっている」と思う人は多いだろう。
その理由は、心理学では「バーナム効果」という理論で説明されている。
これは、誰にでも当てはまるようなあいまいで一般的な性格を記した文章を、自分だけに合った正確なものだと思い込む心理現象のことだ。
アメリカの心理学者フォアラーは、心理学専攻の学生に「性格診断テスト」を行い、回答を無視して、すべての学生に同文の「診断結果」を示した。
そして、それが「よく当たっている」と思う場合は5、「比較的当たっている」場合は4、と評価するように求めた。
学生たちはその「正確な診断結果」に驚き、全員が5ないし4と答えた。
フォアラーが用いた「診断結果」は、スタンド売りされている新聞の占星術欄から星座を無視して、適当に抜き出してつなぎ合わせたものだった。
なお、バーナムとは、「地上最大のショー」などさまざまな興行を成功させた、アメリカの有名な興行師。
バーナム効果は、彼の「誰にでも当てはまる要点がある」ということばにちなむものだそう。
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