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子どもたちへ [日記・雑感]

「こどもの日」に再読したくなる文章がある。

 ドストエフスキーの小説「カラマーゾフの兄弟」の「エピローグ3 イリューシャの葬式。石のそばでの演説」の一節だ。

 みんなに愛された「親切で勇敢な少年」の葬式の帰り道、少年が生前、「あの下に葬られたい」と言った大きな石のそばで、カラマーゾフ家の三男─宗教心のあついアリョーシャが、子どもたちに話し始める。

「みなさん、このイリューシャの石のそばで、僕たちは第一にイリューシャを、第二にお互いにみんなのことを、決して忘れないと約束しようじゃありませんか。
 ─略─
 可愛い子供たち、ことによると僕が今から言うことは、君たちにはわからないかもしれない。僕はひどくわかりにくい話をよくしますからね。だけどそれでも僕の言葉を覚えていてくれれば、そのうちいつか共感してくれるはずです」

 このあとに続く300字ほどの文章を初めて読んだときの感動は、いまも筆者の胸中にある。

「いいですか、これからの人生にとって、何か素晴らしい思い出、それも特に子供のころ、親の家にいるころに作られた素晴らしい思い出ほど、その後の一生にとって大切で、力強く、健全で、有益なものはないのです。

 君たちは教育についていろいろ話してもらうでしょうが、少年時代から大事にしてきた、美しい神聖な思い出こそ、おそらく、最良の教育にほかならないのです。

 そういう思い出をたくさん集めて人生を作りあげるなら、その人はその後一生、救われるでしょう。

 たとえ一つでもよい思い出が残っていれば、いつかはそれがぼくらを救ってくれるのです」

 なにか人のふんどしで相撲をとるようで気がひけたが、原卓也訳(新潮世界文学全集)と亀山郁夫訳(光文社文庫)を読み合わせてリライトした。

 どうか、子どもたちによい思い出を─。
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