健康雑談(8)猫 [健康雑談]
猫の諸問題
2月22日は「ニャン、ニャンニャン」の語呂合わせで「猫の日」。
猫大好きの文化人たちが決めたそうだ。
ニャンとものどか、太平楽でご同慶の至りだが、ちょっとヤボな水を差すと、猫には保健上いくつか問題がある。
① トキソプラズマ症の感染源となる。
② 回虫の卵をうつすことがある。
③ 食中毒のカンピロバクター菌を媒介することがある。
④ 皮膚病をうつされることがある。
⑤ 猫の毛やフケは、ぜんそくのアレルゲンになりやすい。
⑥ 引っかかれたり、かまれたりすると、猫ひっかき病になることがある。
急いでつけ加えるが、②から⑤までのトラブルは犬でも起こりうる。
一つずつ説明する。
① トキソプラズマ症は、猫の糞便中や豚などの生肉にみられる原虫が、口から入って感染する。
だが感染してもほとんど無症状。
こわいのは、胎盤を介しての胎児への感染。
妊娠中に感染すると、流産、死産を引き起こし、生後、脳水腫などの急性症状を示して死亡することがある。
これを免れたばあいでも水頭症、小頭症、脈絡網膜炎などの赤ちゃんが生まれる。先天性トキソプラズマ症である。
尻なめた舌でわが口なめる猫 好意謝するに余りあれども 寒川猫持
寒川氏は、眼科医にして愛猫家の歌人。「猫持」はむろん雅号である。
「犬と違って、猫が飼い主をなめるのは余程のことである。アイ・ラブ・ユーの印である。
なるべく黙ってなめてもらうことにしているが、尻をなめた舌で口を、となると話は別である。
猫のウンチにはトキソプラズマという原虫がいる。そんなものを口移しされたのではたまらない」と、歌の意味を説明している。
人間にうつったトキソプラズマは、普通は何の症状も現れない。不顕性感染という。
ごくまれに発病すると発熱、発疹(ぶつぶつ)、リンパ節炎(ぐりぐり)、肺炎、脳炎、脈絡網膜炎(目の病気)などを起こす。
妊娠中の女性が初めて感染すると、胎児に感染し、流産、死産、先天性トキソプラズマ症になる。
成人のトキソプラズマ症同様、先天性トキソプラズマ症も、以前はめったにみられない病気だった。
近年ややふえているのは、日本人にはびこっている「超清潔症候群」のせいだと、『笑うカイチュウ』などの著者、藤田紘一郎・東京医科歯科大学名誉教授(寄生虫学)は明言している。
「トキソプラズマは、ネコの便から感染するというので、ネコが悪者扱いされているが、感染経路はネコよりもむしろ加熱の不十分な豚肉のほうが多い。
それにしても感染率は下がっているし、仮に感染してもどうってことはない。
問題は、妊婦が妊娠中に初めて感染すると、母親は大丈夫だけど胎児に感染して、新生児に重大な影響が出ることです。
子どものうちにかかっていたら何でもない病気なのに、感染率が下がってくると、妊婦が初めて感染する率はそれだけ上がる。
感染率が下がったぶん、逆に胎児に行く発症率はふえている、という妙な時代になっている。
猫の糞(ふん)なんかこわがらないで、妊娠年齢になる前にうつっといたほうがいいんですよ」と。
② 犬・猫回虫症と呼ばれる病気。
猫や1歳未満の犬の回虫の卵が人体に入り、幼虫になって発症する。
糞で汚染された砂場や庭からうつるケースがある。
肝臓が腫れる一過性の症状がほとんどだが、肺炎や視力障害を起こすこともある。
③ カンピロバクター腸炎。主症状は下痢、腹痛、発熱など。
ニワトリ、豚、牛、犬、猫、鳥などが、原因菌をもっていることがあり、生肉やペットから人に感染する。
④ 犬や猫のタムシの原因菌(犬小胞子菌)が、人間にうつるペット病の一つ。
頭皮に炎症を起こし、円形脱毛のように毛が抜ける皮膚病もある。ケルスス禿瘡(とくそう)という。
ペットが皮膚病にかかったら密着的接触を避け、早く完全に治すようにしよう。
ちなみに、ケルスス(Aurelius Cornelius Celsus)は、BC30年に生まれてAD45年に没したイタリアの医師、医事文筆家──と、医学辞典に記されてある。日本は弥生時代である。
⑤ 犬・猫の毛やフケが、ぜんそくのアレルゲンになりやすいのは、周知の事実。
⑥ 犬ではみられず、猫だけで起こるのが、猫ひっかき病。
猫によく接触する子どもがかかりやすい。
発生は秋から冬にかけて多く、小流行の報告もある。
猫に引っかかれて数日後、その部分が発赤し、小さい水疱(すいほう)ができる。
これは自然に治るが、それから2、3週間後にリンパ節が腫れて、発熱、頭痛が起こる。
化膿することもある。
脳炎になったり、肝臓が腫れたり、パリノー症候群という眼球の異常症状が起こることもあるが、死亡例はなく後遺症もない。
猫ひっかき病は、1950年にフランスの医師が初めて報告した。
92年、原因病原体が、猫の赤血球の中に寄生する「バルトネラ・ヘンセレ菌」という細菌とわかり、「バルトネラ症」とも呼ばれるようになった。
猫が感染しても猫には何の症状も出ないが、2年以上も保菌している。
ある調査では約7%が「保菌猫」だった。
予防法はまず猫ノミを駆除すること。
猫の血を吸ったノミがフンをして菌を猫の体表にばらまき、猫の爪や口の中にくっつき、引っかき傷やかみ傷から人にうつる。
引っかかれたりしたら傷口を消毒しよう。
以上、いずれもめったにはみられないし、大ごとになることもまれなのだが、ま、お気をつけください。
犬や猫と遊んだあとは、必ず手をよく洗おう。
2月22日は「ニャン、ニャンニャン」の語呂合わせで「猫の日」。
猫大好きの文化人たちが決めたそうだ。
ニャンとものどか、太平楽でご同慶の至りだが、ちょっとヤボな水を差すと、猫には保健上いくつか問題がある。
① トキソプラズマ症の感染源となる。
② 回虫の卵をうつすことがある。
③ 食中毒のカンピロバクター菌を媒介することがある。
④ 皮膚病をうつされることがある。
⑤ 猫の毛やフケは、ぜんそくのアレルゲンになりやすい。
⑥ 引っかかれたり、かまれたりすると、猫ひっかき病になることがある。
急いでつけ加えるが、②から⑤までのトラブルは犬でも起こりうる。
一つずつ説明する。
① トキソプラズマ症は、猫の糞便中や豚などの生肉にみられる原虫が、口から入って感染する。
だが感染してもほとんど無症状。
こわいのは、胎盤を介しての胎児への感染。
妊娠中に感染すると、流産、死産を引き起こし、生後、脳水腫などの急性症状を示して死亡することがある。
これを免れたばあいでも水頭症、小頭症、脈絡網膜炎などの赤ちゃんが生まれる。先天性トキソプラズマ症である。
尻なめた舌でわが口なめる猫 好意謝するに余りあれども 寒川猫持
寒川氏は、眼科医にして愛猫家の歌人。「猫持」はむろん雅号である。
「犬と違って、猫が飼い主をなめるのは余程のことである。アイ・ラブ・ユーの印である。
なるべく黙ってなめてもらうことにしているが、尻をなめた舌で口を、となると話は別である。
猫のウンチにはトキソプラズマという原虫がいる。そんなものを口移しされたのではたまらない」と、歌の意味を説明している。
人間にうつったトキソプラズマは、普通は何の症状も現れない。不顕性感染という。
ごくまれに発病すると発熱、発疹(ぶつぶつ)、リンパ節炎(ぐりぐり)、肺炎、脳炎、脈絡網膜炎(目の病気)などを起こす。
妊娠中の女性が初めて感染すると、胎児に感染し、流産、死産、先天性トキソプラズマ症になる。
成人のトキソプラズマ症同様、先天性トキソプラズマ症も、以前はめったにみられない病気だった。
近年ややふえているのは、日本人にはびこっている「超清潔症候群」のせいだと、『笑うカイチュウ』などの著者、藤田紘一郎・東京医科歯科大学名誉教授(寄生虫学)は明言している。
「トキソプラズマは、ネコの便から感染するというので、ネコが悪者扱いされているが、感染経路はネコよりもむしろ加熱の不十分な豚肉のほうが多い。
それにしても感染率は下がっているし、仮に感染してもどうってことはない。
問題は、妊婦が妊娠中に初めて感染すると、母親は大丈夫だけど胎児に感染して、新生児に重大な影響が出ることです。
子どものうちにかかっていたら何でもない病気なのに、感染率が下がってくると、妊婦が初めて感染する率はそれだけ上がる。
感染率が下がったぶん、逆に胎児に行く発症率はふえている、という妙な時代になっている。
猫の糞(ふん)なんかこわがらないで、妊娠年齢になる前にうつっといたほうがいいんですよ」と。
② 犬・猫回虫症と呼ばれる病気。
猫や1歳未満の犬の回虫の卵が人体に入り、幼虫になって発症する。
糞で汚染された砂場や庭からうつるケースがある。
肝臓が腫れる一過性の症状がほとんどだが、肺炎や視力障害を起こすこともある。
③ カンピロバクター腸炎。主症状は下痢、腹痛、発熱など。
ニワトリ、豚、牛、犬、猫、鳥などが、原因菌をもっていることがあり、生肉やペットから人に感染する。
④ 犬や猫のタムシの原因菌(犬小胞子菌)が、人間にうつるペット病の一つ。
頭皮に炎症を起こし、円形脱毛のように毛が抜ける皮膚病もある。ケルスス禿瘡(とくそう)という。
ペットが皮膚病にかかったら密着的接触を避け、早く完全に治すようにしよう。
ちなみに、ケルスス(Aurelius Cornelius Celsus)は、BC30年に生まれてAD45年に没したイタリアの医師、医事文筆家──と、医学辞典に記されてある。日本は弥生時代である。
⑤ 犬・猫の毛やフケが、ぜんそくのアレルゲンになりやすいのは、周知の事実。
⑥ 犬ではみられず、猫だけで起こるのが、猫ひっかき病。
猫によく接触する子どもがかかりやすい。
発生は秋から冬にかけて多く、小流行の報告もある。
猫に引っかかれて数日後、その部分が発赤し、小さい水疱(すいほう)ができる。
これは自然に治るが、それから2、3週間後にリンパ節が腫れて、発熱、頭痛が起こる。
化膿することもある。
脳炎になったり、肝臓が腫れたり、パリノー症候群という眼球の異常症状が起こることもあるが、死亡例はなく後遺症もない。
猫ひっかき病は、1950年にフランスの医師が初めて報告した。
92年、原因病原体が、猫の赤血球の中に寄生する「バルトネラ・ヘンセレ菌」という細菌とわかり、「バルトネラ症」とも呼ばれるようになった。
猫が感染しても猫には何の症状も出ないが、2年以上も保菌している。
ある調査では約7%が「保菌猫」だった。
予防法はまず猫ノミを駆除すること。
猫の血を吸ったノミがフンをして菌を猫の体表にばらまき、猫の爪や口の中にくっつき、引っかき傷やかみ傷から人にうつる。
引っかかれたりしたら傷口を消毒しよう。
以上、いずれもめったにはみられないし、大ごとになることもまれなのだが、ま、お気をつけください。
犬や猫と遊んだあとは、必ず手をよく洗おう。
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