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歯はいのち、全身病のもとになる [医学・医療短信]

40歳以上の8割が罹患 歯周病は怖い“国民病”
落合邦康 / 日本大学歯学部特任教授

 歯周病は、40歳以上の日本人の80%以上がかかっていると考えられており、「国民病」とも言われています。

「単なる口の中の病気でしょ?」と思っている人もいるかもしれませんね。

 歯周病を軽く考えてはいけません。

 実は、全身の病気に関わる非常に怖い病気なのです。

 自分の歯を持つ高齢者が増加

 歯周病患者が増えた理由の一つとして、年を取っても自分の歯を持っている人が多くなったことが挙げられます。

 口の中の病気では、かつては虫歯(う蝕<しょく>)が国民病と言われていました。

 歯科界は事態の改善に向けて、

「砂糖の摂取量を減らす」

「歯磨きの習慣を定着させる」

 という啓発活動に取り組みました。

 それが功を奏し、虫歯の患者数を大きく減少させることに成功したのです。

 そして現在は、高齢でも自分の歯を持っている人がたくさんいるようになりました。

 ある調査によると、高齢者の70~80%が20本以上の歯を持っている地域さえあります。

 歯がなければ歯周病にはならない

 自分の歯で食事をすることは、健康を維持するために重要です。

 皮肉なことに、このことが歯周病患者を増やしているのです。

 歯周病は、歯と歯肉の間にある歯肉溝内に、細菌が歯垢(プラーク)を作り、歯周組織(歯肉組織や血管)の中に原因菌(ジンジバリス菌を中心とした多くのグラム陰性桿菌<かんきん>)が入り込むことで起こります。

 歯がなければ歯肉溝は存在しませんので、細菌が生息できず、歯周病も起こらないわけです。

 歯肉炎と歯周炎

 歯周病は、歯肉が炎症を起こす「歯肉炎」から始まります。

 歯肉炎の時は、歯肉溝は3mm以下で、歯肉が赤く腫れ、軽い出血があります。

 その炎症が続くと、歯肉の下で歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が溶けてしまう「歯周炎」になります。

 歯肉溝は4mm以上と深くなります。

 口臭や違和感などの自覚症状があり、歯肉溝から膿(うみ)や出血があります。

 歯周病の治療

 歯肉炎は、歯科医や歯科衛生士から歯磨きの指導を受けて実践することで、比較的よく治ります。

 しかし、歯周炎になって歯槽骨が溶けてしまうと、健康な歯周組織の回復は困難です。

 ですから、軽度の歯肉炎の段階で早めに治療を行うことが大切です。

 予防方法は、日々適切に歯を磨き、定期的に歯科医による専門的な口腔(こうくう)ケアを受け、原因となるプラークを一定量以下に抑えることです。

 日常生活でもさらされる歯周病のリスク

 歯周病は歯周組織に原因菌が入り込むことで起こると説明しました。

 実は日々の生活でも、私たちは常に歯周病のリスクにさらされています。

 歯磨きや食べ物をかむだけでも20~50%、つまようじや糸ようじなどによる歯間の掃除(デンタルフロス)の後は約50%の確率で細菌が血管に侵入することが分かっているのです。

 健康で正常な免疫機能が維持されていれば、侵入した細菌は数時間で全て排除されます。

 しかし、免疫機能は加齢によって低下し、喫煙や肥満、ストレス、不十分な口腔清掃などが低下を加速します。

 高齢になるほど、また、生活習慣が乱れるほど、歯周病のリスクは高まるのです。

 歯科医だけでは治せない

 歯周病は「歯科医だけでは治せない」病気だということも覚えておいてください。

 虫歯は歯科医院に行けば、歯科医が治してくれます。

 一方、歯周病は、患者自身が生活習慣を改善し、歯科医師に指示された口腔ケアを長期間にわたって行う努力をしなければ治りません。

 歯周病は原因から結果まで、全てにおいて自分自身が関わる病気なのです。

 全身疾患とも深い関係

 冒頭にも説明したように、歯周病の問題は口の中だけにとどまりません。

 歯周病の炎症部位から細菌や炎症物質が血液によって全身に流れると、全身のさまざまな病気の発症に関わることがわかってきています。

 そのことについては、次回お話しします。

「毎日新聞 医療プレミア」2018年6月25日
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