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柿と酒のやや複雑な関係 [健康常識ウソ・ホント]

健康常識ウソ・ホント(23) 

柿と酒のやや複雑な関係

師走12月、忘年会の月は、肝臓受難の月である。

「悪酔い・二日酔いを防ぐ上手な酒の飲み方」といった記事が散見される月でもある。

そんな記事にはもしかしたら、

「酒を飲む前に柿やミカンなど果物を食べておけば悪酔いしない」などと書いてあるかもしれない。

この助言、酒にある程度以上強い人に対してならホントだが、酒に弱い人に対してはウソになる。

まずいことに、そういう助言を忠実に実行しがちなのは、弱い人のほうだから、余計なことをしたばっかりに余計ひどい目に遭うことになりかねない。

「酔い覚ましには柿を食えばよい」とは、昔から言われていて、これはホントのことだ。

柿がいいのならミカンやリンゴだっていいのではないか、と思う人もあるだろう。

それもまあけっこうである。

柿やミカンやリンゴなどの果物が酔い覚ましに効いたり、悪酔いを防いだりするのは、それらに多く含まれている果糖にアルコールを分解する酵素の活性を強める働きがあり、タンニン(柿にはとくに多い)やビタミンCにはアセトアルデヒドを分解する酵素の活性を強める働きがあるからだ。

アセトアルデヒドというのは、アルコールが分解されてできる毒性の強い物質である。

体内に入った酒(アルコール)は、肝臓でまずADH(アルコール脱水素酵素)やMEOS(ミクロゾーム酸化系)という酵素によって分解されてアセトアルデヒドになる。

次に、ALDH(アルデヒド脱水素酵素)という酵素の働きで、アセトアルデヒドが無害の酢酸に変わる。

そして最後に、酢酸が炭酸ガスと水に分解されて、体から出ていき、アルコールの旅は終わる。

こう見てくると、アルコールの代謝がスムーズにいくかどうか―言い換えると、悪酔いや二日酔いをするか、しないか―は、一群の酵素の働きにかかっていることが、わかる。

一つずつ順番に見ていくと―、

ADHはだれもがだいたい同じように持っている。

MEOSは、ADHの補助的な働きをするのだが、アルコールを飲むことで肝臓のなかで増加し、活性が強くなる。

酒飲みのキャリアが重なるのにつれて酒に強くなる一つの理由は、この酵素が増加するからだろう。

そして三つ目のALDH。これがアルコール代謝の最も重要なカギをにぎっている酵素だ。

というのは、ALDHがその代謝を受け持つアセトアルデヒドこそ、悪酔い・二日酔いの元凶だからだ。

ALDHには1型(ALDH1)と2型(ALDH2)という二つのタイプがある。

ALDH1は、だいぶ飲んで血液中のアセトアルデヒドが高濃度になったとき、ようやく働き始める後発型の酵素である。

ALDH2は、飲み始めの低濃度のときからよく働き、アセトアルデヒドを次から次へ酢酸に分解する。

酒に強い人は、ALDHの1型も2型も両方持っている。

酒に弱い人は、1型しか持っていない。

飲み始めから働く2型がないから、酒をちょっと飲んだだけでもアセトアルデヒドがたまってしまい、顔が赤くなり、胸がドキドキしたりする。

日本人など黄色人種の半数は、ALDHの2型が遺伝的に欠損している。

つまり酒に弱い体質に生まれついている。

酒を飲むと顔が真っ赤になる症状をオリエンタル・フラッシュと呼ぶのは、そういうわけである。
―というところで柿(果物)の話に戻る。

酒を飲む前や飲んでいるときに果物を食べると、そのなかの果糖がADHの活性を強くし、アルコールを分解する働きが促進され、アセトアルデヒドがそれだけ早くできる。

ところが、そのアセトアルデヒドを次々に処理していくALDHの2型がないと、アセトアルデヒドはどんどんふえていく。

果物を食べたために悪酔いの度合いがさらにひどくなる。

実際、ALDH2の欠損者では、酒を飲む前に果糖を摂取したときと、そうでないときとでは、アセトアルデヒドの血中濃度の上昇速度が明らかに異なることが実験的に確かめられている。

だから酒に弱い人が果物を食べるのなら、酒を飲んだあと(アルコールがすっかりアセトアルデヒドに分解されたころ)だと、タンニンやビタミンCのALDHの活性を高める作用が期待できる。

酒の前の果物は人によってはNG、酒のあとの果物はだれでもグー。そういうわけです。

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