酒の諸問題 [医学・医療短信]
アルコールとの「上手な付き合い方」
花見の真っ盛り。
飲めや! 飲めや!の日が続く。
酒は適量の場合はストレス解消の効果を期待できるが、量が増えると確実に健康を損なう原因になる。
「酒は百薬の長」と言われ、飲酒は日常生活でさまざまな行事と深い関わりをもっている。
飲酒は疲労の回復やストレスの解消あるいは人間関係を円滑にするなど、望ましい影響を与えてくれるが、その効果は適度な飲酒を守ることではじめて得られる。
アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次ぐ高カロリーの食品だ。
カロリーの他の栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。
はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのが酒だ。
さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因になる。
アルコールを飲み過ぎないための対処法
アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まり、日本人は4~5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされる。
下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは、切実な問題だ。
酒を飲むときの注意点
• 血糖降下薬を飲んでいる人は、食事を十分に摂らずに飲酒すると低血糖になるおそれがある。
食事量が低下すると、肝臓のグリコーゲンが減少し、さらにアルコールの代謝に伴う代謝経路の変化により、糖新生(糖質以外からの糖の産生)が抑制されるからだ。
• インスリン注射や経口血糖降下剤などでの薬物治療中の人は、とくに低血糖を起こしやすいので、食事をとらずに飲酒するのは避けるべきだ。
• アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴い血糖値に影響を与える。
アルコールを飲むときでも、食事は3食をきちんととることが大切。
アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険が伴う。
• 酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておく。
• 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用する。
• 酒を飲むときは水も飲む。
アルコールには利尿作用がありトイレが近くなる。
排出された水分を補わないと脱水状態になりやすい。
純アルコール量で約20gが限度
厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしている(女性は男性の2分の1から3分の2程度)。
これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)となる。
アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02~0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれる。
このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度だ。
0.05~0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりする。
酔いが進むと次第に、理性をつかさどる大脳皮質の活動は低下していく
0.11~0.15%の「酩酊初期」では、気が大きくなって大声を出し、怒りっぽくなる。
さらに、0.16~0.30%の「酩酊期」になると、鎮静効果が強くなり麻痺が小脳まで広がり、運動失調の状態になる。
呼吸が速くなり、千鳥足になったり、何度も同じことをしゃべったりするようになる。
一般的に、純アルコール量で約20gを限度とするのが上手なお酒の飲み方といえる。
これは、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」でとどめておける量だ。
体重約60kgの人が日本酒にして2合のお酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは約3~4時間体内にとどまる。
それより多い量のお酒を飲むと、アルコールが体内から消失するまで約6~7時間かかる。
これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性はもっと長い時間がかかる。
深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いになってしまう。
関連情報
「糖質ゼロ」でもカロリーは「ゼロ」ではない
「糖質ゼロ」「カロリーオフ」といった表示をしたビールや発泡酒などの酒類が店頭をにぎわしている。
しかし、「糖質ゼロ」と表示してあっても、カロリーは「ゼロ」ではないので注意が必要だ。
健康増進法に基づく栄養表示基準では、飲料では100mL当りで糖質0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示でき、熱量(カロリー)が20kcal以下であれば「カロリーオフ」と表示できる。
実際には、量を少なくしていても糖質が含まれていたり、カロリーがある場合もある。
そもそも酒類のカロリーは、糖質の量よりもアルコール度数の方が影響は大きい。
アルコールは栄養表示基準で1g当たり7kcalで計算される。
100mLは約100gなので、アルコール分5%であれば100mL当たり35kcal、350mL(レギュラーサイズ)では123kcalが目安になる。
寝る前の飲酒は睡眠の質を下げる
アルコールは寝つくまでの時間を短縮させるので、寝酒に使っている人は少なくない。
しかし就床前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することが知られている。
つまり、寝つきは良いが夜中に目覚めてその後なかなか眠れない「中途覚醒」が起こりやすくなる。
睡眠の質を高めたいのなら、就床前にはアルコールを飲まないのが望ましい。
アルコールが体内から消失するまでにおよそ6~7時間がかかる。
就床6時間前までに飲まないようにすると、気持ちの良い睡眠を得られる。
アルコールは血圧を上昇させる
適量のお酒を飲むと、一般的に血圧が低下し、善玉コレステロールのHDLコレステロールが上昇する。
適量に抑えていれば、血小板の凝集が抑制され、心臓疾患を抑えられることが知られている。
しかし、大量に飲み続けると、血管の収縮反応が高まり、心臓の拍動が速まり、逆に血圧は上昇する。
毎日の飲酒量が多い人ほど血圧の平均値が高く、高血圧のリスクが上昇することが多くの研究で確かめられている。
アルコールは中性脂肪値も上昇させる
血中の脂質が増え過ぎる脂質異常症は、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や脳卒中などのリスクを上昇させる。
異常高値になると体に異常をもたらすのはコレステロールと中性脂肪だ。
そのうち中性脂肪が増え過ぎる原因のひとつは、肝臓で中性脂肪の合成が増えることだ。
そして、アルコールを飲み過ぎると、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出が促され、それとともに肝臓でのアルコール代謝が亢進し、結果として脂肪酸からの中性脂肪の合成が増え過ぎる。
過度のアルコール摂取は脂肪肝の原因になる。
なお、おつまみとして糖質や脂肪の多い高カロリーの食品を食べると、さらに脂肪肝になりやすくなるので注意が必要だ。
おつまみは野菜や大豆食品など、食物繊維が豊富で低カロリーのものが勧められる。
アルコールは低血糖の危険性を高める
アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴って血糖値に影響を与える。
多量の飲酒は糖尿病の危険性を高め、特に肝障害や膵障害が加わるとコントロールが難しい糖尿病になるため、糖尿病患者は多量飲酒は避けた方が良い。
また、アルコールは低血糖を引き起こすことがある。
特に食事を十分にとらずに飲酒すると低血糖になりやすい。
それは食事量低下のため肝臓のグリコーゲンが減少しており、さらにアルコールの代謝に伴い糖新生(糖質以外の物質からグルコースを産生する作用)が抑制されるためだ。
インスリン注射や経口血糖降下剤などでの治療中の患者では、低血糖がより起こりやすくなるので、食事をとらずに飲酒することは原則として禁止されている。
食事をとるのであれば、低脂肪で高タンパク質の食品(豆腐・枝豆・イワシなど)を食べると良い。
アルコールは糖尿病も悪化させる
アルコールは、アルコールそのものの作用のほかに、肝臓や膵臓の障害などのさまざまな因子を介して、血糖コントロールを困難にする。
糖尿病のある人は、アルコール摂取にとくに注意が必要だ。
体重を減らすことで、糖尿病を予防でき、糖尿病のある人では血糖値などのコントロールなどが改善することが知られている。
アルコールの飲み過ぎは、糖尿病患者にとって減量の妨げなるという研究を、米国のペンシルベニア大学が発表した。
研究は、糖尿病患者が生活スタイルを改善し、体重を減らすことで、心血管疾患などの発症をどれだ減らせるかを調べた「Look AHEAD」研究に参加した4,901人の男女(45~76歳)を対象に行われた。
参加者は2型糖尿病もしくは肥満で、調査は4年間追跡して行われた。
食事や運動などの生活スタイルを徹底して改善するグループと、生活指導のみを受けたグループに分けて比べたところ、生活スタイルを改善してアルコールもほどほどに抑えた人は、平均して体重を5.1%減らすのに成功した。
一方で、お酒を大量に飲む人で10%以上の減量を達成したのは、たったの2人だけだった。
アルコールの飲み過ぎは、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」に直接に影響し、2型糖尿病のリスクを上昇させることも分かっている。
アルコールには、食欲を亢進する作用もある。
アルコールを多量摂取すると、脂肪細胞から分泌され食欲を抑制する作用のあるホルモン「レプチン」が減少する。
「アルコールの飲み過ぎには、長期的に体重に大きく影響します。糖尿病のある人は、なるべくお酒を控えるべきです」と、ペンシルベニア大学行動保健科学科のアリアナ チャオ氏は述べている。
花見の真っ盛り。
飲めや! 飲めや!の日が続く。
酒は適量の場合はストレス解消の効果を期待できるが、量が増えると確実に健康を損なう原因になる。
「酒は百薬の長」と言われ、飲酒は日常生活でさまざまな行事と深い関わりをもっている。
飲酒は疲労の回復やストレスの解消あるいは人間関係を円滑にするなど、望ましい影響を与えてくれるが、その効果は適度な飲酒を守ることではじめて得られる。
アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次ぐ高カロリーの食品だ。
カロリーの他の栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。
はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのが酒だ。
さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因になる。
アルコールを飲み過ぎないための対処法
アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まり、日本人は4~5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされる。
下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは、切実な問題だ。
酒を飲むときの注意点
• 血糖降下薬を飲んでいる人は、食事を十分に摂らずに飲酒すると低血糖になるおそれがある。
食事量が低下すると、肝臓のグリコーゲンが減少し、さらにアルコールの代謝に伴う代謝経路の変化により、糖新生(糖質以外からの糖の産生)が抑制されるからだ。
• インスリン注射や経口血糖降下剤などでの薬物治療中の人は、とくに低血糖を起こしやすいので、食事をとらずに飲酒するのは避けるべきだ。
• アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴い血糖値に影響を与える。
アルコールを飲むときでも、食事は3食をきちんととることが大切。
アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険が伴う。
• 酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておく。
• 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用する。
• 酒を飲むときは水も飲む。
アルコールには利尿作用がありトイレが近くなる。
排出された水分を補わないと脱水状態になりやすい。
純アルコール量で約20gが限度
厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしている(女性は男性の2分の1から3分の2程度)。
これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)となる。
アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02~0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれる。
このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度だ。
0.05~0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりする。
酔いが進むと次第に、理性をつかさどる大脳皮質の活動は低下していく
0.11~0.15%の「酩酊初期」では、気が大きくなって大声を出し、怒りっぽくなる。
さらに、0.16~0.30%の「酩酊期」になると、鎮静効果が強くなり麻痺が小脳まで広がり、運動失調の状態になる。
呼吸が速くなり、千鳥足になったり、何度も同じことをしゃべったりするようになる。
一般的に、純アルコール量で約20gを限度とするのが上手なお酒の飲み方といえる。
これは、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」でとどめておける量だ。
体重約60kgの人が日本酒にして2合のお酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは約3~4時間体内にとどまる。
それより多い量のお酒を飲むと、アルコールが体内から消失するまで約6~7時間かかる。
これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性はもっと長い時間がかかる。
深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いになってしまう。
関連情報
「糖質ゼロ」でもカロリーは「ゼロ」ではない
「糖質ゼロ」「カロリーオフ」といった表示をしたビールや発泡酒などの酒類が店頭をにぎわしている。
しかし、「糖質ゼロ」と表示してあっても、カロリーは「ゼロ」ではないので注意が必要だ。
健康増進法に基づく栄養表示基準では、飲料では100mL当りで糖質0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示でき、熱量(カロリー)が20kcal以下であれば「カロリーオフ」と表示できる。
実際には、量を少なくしていても糖質が含まれていたり、カロリーがある場合もある。
そもそも酒類のカロリーは、糖質の量よりもアルコール度数の方が影響は大きい。
アルコールは栄養表示基準で1g当たり7kcalで計算される。
100mLは約100gなので、アルコール分5%であれば100mL当たり35kcal、350mL(レギュラーサイズ)では123kcalが目安になる。
寝る前の飲酒は睡眠の質を下げる
アルコールは寝つくまでの時間を短縮させるので、寝酒に使っている人は少なくない。
しかし就床前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することが知られている。
つまり、寝つきは良いが夜中に目覚めてその後なかなか眠れない「中途覚醒」が起こりやすくなる。
睡眠の質を高めたいのなら、就床前にはアルコールを飲まないのが望ましい。
アルコールが体内から消失するまでにおよそ6~7時間がかかる。
就床6時間前までに飲まないようにすると、気持ちの良い睡眠を得られる。
アルコールは血圧を上昇させる
適量のお酒を飲むと、一般的に血圧が低下し、善玉コレステロールのHDLコレステロールが上昇する。
適量に抑えていれば、血小板の凝集が抑制され、心臓疾患を抑えられることが知られている。
しかし、大量に飲み続けると、血管の収縮反応が高まり、心臓の拍動が速まり、逆に血圧は上昇する。
毎日の飲酒量が多い人ほど血圧の平均値が高く、高血圧のリスクが上昇することが多くの研究で確かめられている。
アルコールは中性脂肪値も上昇させる
血中の脂質が増え過ぎる脂質異常症は、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や脳卒中などのリスクを上昇させる。
異常高値になると体に異常をもたらすのはコレステロールと中性脂肪だ。
そのうち中性脂肪が増え過ぎる原因のひとつは、肝臓で中性脂肪の合成が増えることだ。
そして、アルコールを飲み過ぎると、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出が促され、それとともに肝臓でのアルコール代謝が亢進し、結果として脂肪酸からの中性脂肪の合成が増え過ぎる。
過度のアルコール摂取は脂肪肝の原因になる。
なお、おつまみとして糖質や脂肪の多い高カロリーの食品を食べると、さらに脂肪肝になりやすくなるので注意が必要だ。
おつまみは野菜や大豆食品など、食物繊維が豊富で低カロリーのものが勧められる。
アルコールは低血糖の危険性を高める
アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴って血糖値に影響を与える。
多量の飲酒は糖尿病の危険性を高め、特に肝障害や膵障害が加わるとコントロールが難しい糖尿病になるため、糖尿病患者は多量飲酒は避けた方が良い。
また、アルコールは低血糖を引き起こすことがある。
特に食事を十分にとらずに飲酒すると低血糖になりやすい。
それは食事量低下のため肝臓のグリコーゲンが減少しており、さらにアルコールの代謝に伴い糖新生(糖質以外の物質からグルコースを産生する作用)が抑制されるためだ。
インスリン注射や経口血糖降下剤などでの治療中の患者では、低血糖がより起こりやすくなるので、食事をとらずに飲酒することは原則として禁止されている。
食事をとるのであれば、低脂肪で高タンパク質の食品(豆腐・枝豆・イワシなど)を食べると良い。
アルコールは糖尿病も悪化させる
アルコールは、アルコールそのものの作用のほかに、肝臓や膵臓の障害などのさまざまな因子を介して、血糖コントロールを困難にする。
糖尿病のある人は、アルコール摂取にとくに注意が必要だ。
体重を減らすことで、糖尿病を予防でき、糖尿病のある人では血糖値などのコントロールなどが改善することが知られている。
アルコールの飲み過ぎは、糖尿病患者にとって減量の妨げなるという研究を、米国のペンシルベニア大学が発表した。
研究は、糖尿病患者が生活スタイルを改善し、体重を減らすことで、心血管疾患などの発症をどれだ減らせるかを調べた「Look AHEAD」研究に参加した4,901人の男女(45~76歳)を対象に行われた。
参加者は2型糖尿病もしくは肥満で、調査は4年間追跡して行われた。
食事や運動などの生活スタイルを徹底して改善するグループと、生活指導のみを受けたグループに分けて比べたところ、生活スタイルを改善してアルコールもほどほどに抑えた人は、平均して体重を5.1%減らすのに成功した。
一方で、お酒を大量に飲む人で10%以上の減量を達成したのは、たったの2人だけだった。
アルコールの飲み過ぎは、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」に直接に影響し、2型糖尿病のリスクを上昇させることも分かっている。
アルコールには、食欲を亢進する作用もある。
アルコールを多量摂取すると、脂肪細胞から分泌され食欲を抑制する作用のあるホルモン「レプチン」が減少する。
「アルコールの飲み過ぎには、長期的に体重に大きく影響します。糖尿病のある人は、なるべくお酒を控えるべきです」と、ペンシルベニア大学行動保健科学科のアリアナ チャオ氏は述べている。
タグ:1日のアルコール摂取量 アルコール
腕立て伏せの効果 [医学・医療短信]
腕立て40回以上できると心疾患リスク低下
消防士身体検査データの後ろ向き解析
腕立て伏せが40回以上できる中年男性は、10回未満しかできない同世代の男性と比べて心血管疾患(CVD)リスクが有意に低いことが、米・ハーバード公衆衛生大学院のJustin Yang氏らの研究で分かった。
同氏らによると、腕立て伏せができる回数とCVDリスクの関連について検討した研究はこれが初めで、
「腕立て伏せ回数の測定は、簡便かつ安価なCVDリスクの評価法になりうる」としている。
詳細はJAMA Netw Open(2019;2:e188341)に発表された。
Harvard T.H. Chan School of Public Health
Yang氏らによると、客観的に評価した体力(心肺フィットネス) は健康状態の強い予測因子であり、医療機関で患者の心肺フィットネスを評価する必要性が指摘されている。
また、トレッドミル最大運動負荷試験などによる心肺フィットネスの評価結果とCVDリスクに負の関連が認められたとの報告がある。
しかし、トレッドミル試験などの体力測定方法はルーチンで実施するには高額で時間もかかる。
そこで同氏らは今回、より簡便で低コストの体力測定方法として腕立て伏せができる回数の測定に着目。
2000~10年に収集された18歳以上の男性消防士のデータを用いて、腕立て伏せ可能回数とCVDリスクの関連について後ろ向きに検討した。
対象はベースライン時および研究開始後、定期的に腕立て伏せ可能回数の測定やトレッドミル最大運動負荷試験などを含めた身体検査の他、健康状態に関する質問票を用いた調査が実施されていた。
最終解析対象は、ベースライン時の身体検査を受けた消防士1,562例のうち、腕立て伏せ可能回数のデータが入手できた1,104例。
平均年齢は39.6歳(SD9.2歳)、平均BMIは28.7(同4.3)だった。
10回未満の男性と比べて96%のリスク低下
10年の追跡期間中にCVD関連イベント(冠動脈疾患、心不全、心臓突然死)が37件発生していた。
ロジスティック回帰モデルを用いた解析の結果、腕立て伏せ可能回数が40回の男性は、10回以下の男性と比べて年齢やBMIで調整後のCVDリスクが96%低かった。
腕立て伏せ可能回数は、トレッドミル最大運動負荷試験の結果に基づいた最大酸素摂取量(VO2max)よりもCVDリスク低下に強く関連していた。
これらの結果について、Yang氏らは「職業上、身体活動レベルが高い中年男性を対象とした研究であるため、女性や他の年齢層の男性、身体活動レベルが低い男性には当てはまらない」と説明。
その上で「より多様なコホートにおける大規模研究で検証する必要はあるものの、腕立て伏せ可能回数の測定は、有益かつ客観的な身体機能およびCVDリスクの臨床評価ツールとなりうる」と結論している。
同大学のStefanos Kales氏は、
「今回の研究から、健康の維持には体力が重要であること、医師は診察の際に患者の体力を評価すべきであることが、あらためて示された」とコメントしている。
消防士身体検査データの後ろ向き解析
腕立て伏せが40回以上できる中年男性は、10回未満しかできない同世代の男性と比べて心血管疾患(CVD)リスクが有意に低いことが、米・ハーバード公衆衛生大学院のJustin Yang氏らの研究で分かった。
同氏らによると、腕立て伏せができる回数とCVDリスクの関連について検討した研究はこれが初めで、
「腕立て伏せ回数の測定は、簡便かつ安価なCVDリスクの評価法になりうる」としている。
詳細はJAMA Netw Open(2019;2:e188341)に発表された。
Harvard T.H. Chan School of Public Health
Yang氏らによると、客観的に評価した体力(心肺フィットネス) は健康状態の強い予測因子であり、医療機関で患者の心肺フィットネスを評価する必要性が指摘されている。
また、トレッドミル最大運動負荷試験などによる心肺フィットネスの評価結果とCVDリスクに負の関連が認められたとの報告がある。
しかし、トレッドミル試験などの体力測定方法はルーチンで実施するには高額で時間もかかる。
そこで同氏らは今回、より簡便で低コストの体力測定方法として腕立て伏せができる回数の測定に着目。
2000~10年に収集された18歳以上の男性消防士のデータを用いて、腕立て伏せ可能回数とCVDリスクの関連について後ろ向きに検討した。
対象はベースライン時および研究開始後、定期的に腕立て伏せ可能回数の測定やトレッドミル最大運動負荷試験などを含めた身体検査の他、健康状態に関する質問票を用いた調査が実施されていた。
最終解析対象は、ベースライン時の身体検査を受けた消防士1,562例のうち、腕立て伏せ可能回数のデータが入手できた1,104例。
平均年齢は39.6歳(SD9.2歳)、平均BMIは28.7(同4.3)だった。
10回未満の男性と比べて96%のリスク低下
10年の追跡期間中にCVD関連イベント(冠動脈疾患、心不全、心臓突然死)が37件発生していた。
ロジスティック回帰モデルを用いた解析の結果、腕立て伏せ可能回数が40回の男性は、10回以下の男性と比べて年齢やBMIで調整後のCVDリスクが96%低かった。
腕立て伏せ可能回数は、トレッドミル最大運動負荷試験の結果に基づいた最大酸素摂取量(VO2max)よりもCVDリスク低下に強く関連していた。
これらの結果について、Yang氏らは「職業上、身体活動レベルが高い中年男性を対象とした研究であるため、女性や他の年齢層の男性、身体活動レベルが低い男性には当てはまらない」と説明。
その上で「より多様なコホートにおける大規模研究で検証する必要はあるものの、腕立て伏せ可能回数の測定は、有益かつ客観的な身体機能およびCVDリスクの臨床評価ツールとなりうる」と結論している。
同大学のStefanos Kales氏は、
「今回の研究から、健康の維持には体力が重要であること、医師は診察の際に患者の体力を評価すべきであることが、あらためて示された」とコメントしている。
インフルワクチン⇒心疾患予防 [医学・医療短信]
インフルワクチンは心疾患の予防薬
毎年インフルエンザワクチンを接種する意義は、感染予防以外にもあるようだ。
米・マウントサイナイ病院の研究チームが、約3,000万例の入院記録を調査したところ、入院中に同ワクチンの予防接種を受けた患者は、受けなかった患者に比べて1年間の心筋梗塞(MI)の発症リスクが10%低減することが分かった。
詳細は第68回米国心臓病学会(ACC 2019)で発表された。
入院中に約2%がワクチンを接種
研究チームのKhandaker氏らは、まず米国の診療データベース Nationwide Inpatient Sample(NIS)から、2014年に同国の医療機関を受診した成人約3,000万例を抽出。
次に、同年の入院患者で入院中にインフルエンザワクチンを接種した群(全体の約2%)と接種しなかった群に分け、同年中にMIまたは不安定狭心症で再受診した症例の割合をそれぞれ分析した。
入院期間中以外のワクチン接種例は除外した。
MIまたは不安定狭心症の発症は非接種群の4%に対し、接種群では3%と低く、両群に有意差が認められた。
インフルワクチンと心疾患の関連を検討した研究では最大規模
この結果は、当初、接種群で推計されたMIまたは不安定狭心症の発症数より5,000例少なかった。
また、さまざまな交絡因子を補正したところ、インフルエンザワクチンの接種はMIリスクを10%低減することが示された。
これまでにも同ワクチンの接種により心血管リスクを低減しうることが報告されており、今回の結果も一致していた。
ただし今回の結果は、両者の関連を検討した研究としては最大規模であるという。
Khandaker氏は、
「血圧値、血糖値、コレステロール値の管理と同じように、インフルエンザワクチン接種を心疾患の初発(一次)予防と捉えるべき」としている。
ワクチンを接種しても感染リスクは完全に排除できないが、同氏は、
「ワクチンを接種することで重症化が抑制できるため、心疾患に対しても有用な可能性がある」という。
米疾病対策センター(CDC)は、生後6カ月以上への毎年のインフルエンザワクチン接種を推奨しているが、実際に接種を受けているのは米国成人の10人中約4人で、 2017~18年シーズンの接種率は37%と推計されている。
同氏は「インフルエンザワクチンの接種率を上げるには、入院中の患者への接種が有用かもしれない」としている。
毎年インフルエンザワクチンを接種する意義は、感染予防以外にもあるようだ。
米・マウントサイナイ病院の研究チームが、約3,000万例の入院記録を調査したところ、入院中に同ワクチンの予防接種を受けた患者は、受けなかった患者に比べて1年間の心筋梗塞(MI)の発症リスクが10%低減することが分かった。
詳細は第68回米国心臓病学会(ACC 2019)で発表された。
入院中に約2%がワクチンを接種
研究チームのKhandaker氏らは、まず米国の診療データベース Nationwide Inpatient Sample(NIS)から、2014年に同国の医療機関を受診した成人約3,000万例を抽出。
次に、同年の入院患者で入院中にインフルエンザワクチンを接種した群(全体の約2%)と接種しなかった群に分け、同年中にMIまたは不安定狭心症で再受診した症例の割合をそれぞれ分析した。
入院期間中以外のワクチン接種例は除外した。
MIまたは不安定狭心症の発症は非接種群の4%に対し、接種群では3%と低く、両群に有意差が認められた。
インフルワクチンと心疾患の関連を検討した研究では最大規模
この結果は、当初、接種群で推計されたMIまたは不安定狭心症の発症数より5,000例少なかった。
また、さまざまな交絡因子を補正したところ、インフルエンザワクチンの接種はMIリスクを10%低減することが示された。
これまでにも同ワクチンの接種により心血管リスクを低減しうることが報告されており、今回の結果も一致していた。
ただし今回の結果は、両者の関連を検討した研究としては最大規模であるという。
Khandaker氏は、
「血圧値、血糖値、コレステロール値の管理と同じように、インフルエンザワクチン接種を心疾患の初発(一次)予防と捉えるべき」としている。
ワクチンを接種しても感染リスクは完全に排除できないが、同氏は、
「ワクチンを接種することで重症化が抑制できるため、心疾患に対しても有用な可能性がある」という。
米疾病対策センター(CDC)は、生後6カ月以上への毎年のインフルエンザワクチン接種を推奨しているが、実際に接種を受けているのは米国成人の10人中約4人で、 2017~18年シーズンの接種率は37%と推計されている。
同氏は「インフルエンザワクチンの接種率を上げるには、入院中の患者への接種が有用かもしれない」としている。
喫煙と黒色腫 [医学・医療短信]
喫煙で黒色腫患者の生存率が40%低下
英・University of LeedsのJoanna Poźniak氏らは、英国の黒色腫患者703例を対象に、黒色腫に対する免疫応答の調節因子について検討。
黒色腫=メラノーマ(ほくろのがん)
結果、環境因子として喫煙が黒色腫患者の免疫応答を変化させ、そのために非喫煙の患者より生存率が40%低下することが示されたとCancer Res(2019年2月17日オンライン版)に発表した。
免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測因子にも
Poźniak氏らによる解析の結果、黒色腫と診断された喫煙者の10年生存率は、喫煙歴のない黒色腫患者に比べて40%低かった。
黒色腫に対する免疫応答が強い患者156例に限定したサブグループ解析では、喫煙者の生存率は非喫煙者の4.5分の1だった。
同氏らは、免疫応答が強い喫煙者で生存率の低下幅が大きかったことから、喫煙が黒色腫細胞に対する免疫応答に直接影響している可能性があると考えており、これらの結果は免疫チェックポイント阻害薬による治療効果の予測因子になりうるとしている。
ただし、この研究では黒色腫患者の生存率低下と喫煙との関連は判明したものの、因果関係について確固たる結論を導くことはできなかった。
喫煙が免疫系に有害作用を及ぼすことは他の研究でも報告されているが、有害作用の原因物質はまだ特定されていない。
喫煙が免疫系の調和を乱す
研究責任者である同大学のJulia Newton-Bishop氏は、
「免疫系は多数の楽器で合奏するオーケストラのようなものだ。この研究は、喫煙がオーケストラの調和を乱し、各楽器の奏者がばらばらに演奏を続ける状態をつくり出している可能性があることを示している。
喫煙者は黒色腫に対抗する免疫応答を維持しているものの、その効果が非喫煙者に比べて低下しているため、生存率が低下していると考えられる」と説明。
「これらの結果に基づき、黒色腫と診断された患者には禁煙を強く推奨すべきである」と述べている。
英・Cancer Research UKの健康情報責任者であるJulie Sharp氏は、
「喫煙が黒色腫患者の生存率を低下させる可能性があることが示された以上、患者が生涯にわたり禁煙できるように、あらゆる支援を行うことが極めて重要」と述べている。
英・University of LeedsのJoanna Poźniak氏らは、英国の黒色腫患者703例を対象に、黒色腫に対する免疫応答の調節因子について検討。
黒色腫=メラノーマ(ほくろのがん)
結果、環境因子として喫煙が黒色腫患者の免疫応答を変化させ、そのために非喫煙の患者より生存率が40%低下することが示されたとCancer Res(2019年2月17日オンライン版)に発表した。
免疫チェックポイント阻害薬の治療効果予測因子にも
Poźniak氏らによる解析の結果、黒色腫と診断された喫煙者の10年生存率は、喫煙歴のない黒色腫患者に比べて40%低かった。
黒色腫に対する免疫応答が強い患者156例に限定したサブグループ解析では、喫煙者の生存率は非喫煙者の4.5分の1だった。
同氏らは、免疫応答が強い喫煙者で生存率の低下幅が大きかったことから、喫煙が黒色腫細胞に対する免疫応答に直接影響している可能性があると考えており、これらの結果は免疫チェックポイント阻害薬による治療効果の予測因子になりうるとしている。
ただし、この研究では黒色腫患者の生存率低下と喫煙との関連は判明したものの、因果関係について確固たる結論を導くことはできなかった。
喫煙が免疫系に有害作用を及ぼすことは他の研究でも報告されているが、有害作用の原因物質はまだ特定されていない。
喫煙が免疫系の調和を乱す
研究責任者である同大学のJulia Newton-Bishop氏は、
「免疫系は多数の楽器で合奏するオーケストラのようなものだ。この研究は、喫煙がオーケストラの調和を乱し、各楽器の奏者がばらばらに演奏を続ける状態をつくり出している可能性があることを示している。
喫煙者は黒色腫に対抗する免疫応答を維持しているものの、その効果が非喫煙者に比べて低下しているため、生存率が低下していると考えられる」と説明。
「これらの結果に基づき、黒色腫と診断された患者には禁煙を強く推奨すべきである」と述べている。
英・Cancer Research UKの健康情報責任者であるJulie Sharp氏は、
「喫煙が黒色腫患者の生存率を低下させる可能性があることが示された以上、患者が生涯にわたり禁煙できるように、あらゆる支援を行うことが極めて重要」と述べている。
肺機能の低下を抑制 [医学・医療短信]
トマトまたは果物の効果
米ジョンズ・ホプキンス大の研究チームは、食事から摂取する抗酸化物質と肺機能の関係を検討。
果物とトマトの摂取が、成人、特に前喫煙者の肺機能低下を遅らせる可能性が示されたと報告しました。
ドイツ、英国、ノルウェーの3カ国680人(平均年齢43.8±6.6歳)を10年追跡し、食事から摂取した抗酸化物質によって10年後の加齢に伴う肺機能低下を抑制できるどうかを検討しました。
1日にトマトを2個以上、あるいは生の果物を3人前以上摂取した人は、トマト1個未満または果物1人前未満の人に比べて、肺機能の低下が遅れることが示されました。
特に慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患リスクが高い人には果物の摂取が推奨されるということです。
米ジョンズ・ホプキンス大の研究チームは、食事から摂取する抗酸化物質と肺機能の関係を検討。
果物とトマトの摂取が、成人、特に前喫煙者の肺機能低下を遅らせる可能性が示されたと報告しました。
ドイツ、英国、ノルウェーの3カ国680人(平均年齢43.8±6.6歳)を10年追跡し、食事から摂取した抗酸化物質によって10年後の加齢に伴う肺機能低下を抑制できるどうかを検討しました。
1日にトマトを2個以上、あるいは生の果物を3人前以上摂取した人は、トマト1個未満または果物1人前未満の人に比べて、肺機能の低下が遅れることが示されました。
特に慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患リスクが高い人には果物の摂取が推奨されるということです。
タグ:肺機能
心リハ⇒認知機能改善 [医学・医療短信]
心臓リハビリテーションで認知機能改善
高齢者の慢性心不全は認知機能の低下を伴うことが多いといわれています。
獨協医科大学心臓・血管内科・井上晃男教授は、心臓リハビリテーションが認知機能の改善に有効であることを第52回日本成人病学会で解説しました。
慢性心不全になると、身体活動が低下、フレイル(生活機能が全般に衰える)に陥ることで認知機能の低下を招きます。
そのため服薬アドヒアランス(積極的に治療を受ける)が低下し、さらに心不全を悪化させるという悪循環に陥ります。
しかし、心リハ開始3カ月で注意機能・遂行機能が改善、12カ月後には言語記憶能力も有意に改善した、と海外文献でも報告されています。
井上教授らの研究もそのことを裏づけるものです。
高齢者の慢性心不全は認知機能の低下を伴うことが多いといわれています。
獨協医科大学心臓・血管内科・井上晃男教授は、心臓リハビリテーションが認知機能の改善に有効であることを第52回日本成人病学会で解説しました。
慢性心不全になると、身体活動が低下、フレイル(生活機能が全般に衰える)に陥ることで認知機能の低下を招きます。
そのため服薬アドヒアランス(積極的に治療を受ける)が低下し、さらに心不全を悪化させるという悪循環に陥ります。
しかし、心リハ開始3カ月で注意機能・遂行機能が改善、12カ月後には言語記憶能力も有意に改善した、と海外文献でも報告されています。
井上教授らの研究もそのことを裏づけるものです。
タグ:心臓リハビリテーション
片頭痛&ドライアイ? [医学・医療短信]
片頭痛があるとドライアイになりやすい?
片頭痛のある人は慢性的なドライアイである確率が高く、特に高齢の女性でその傾向が強いことが、新たな研究で明らかになった。
この研究結果は「JAMA Ophthalmology」3月7日オンライン版に掲載された。
この研究は、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のRichard Davis氏らによるもの。
同氏らは、ノースカロライナ州の眼科クリニックで治療を受けた18歳以上の患者7万2969人を対象に、10年にわたって追跡し、片頭痛とドライアイの関連を調べた。
対象患者のうち7.3%は片頭痛、13.2%はドライアイと診断されていた。
結果、特定の薬剤の使用などの因子を考慮しても、片頭痛のある人では、片頭痛のない人に比べてドライアイであるリスクは20%以上高いことが分かった。
また、片頭痛の人がドライアイであるリスクは、65歳以上では男性でほぼ2倍、女性でほぼ2.5倍になることも明らかになった。
Davis氏らは、
「加齢に伴いドライアイのリスクは高まる上に、女性で特にその傾向が強いと考えられる」と考察している。
また、同氏は「片頭痛の既往のある患者を治療する医師は、患者がドライアイのリスクが高いことを知っておく必要があるだろう」と述べている。
米アリゾナ州トゥーソンでドライアイを治療するクリニックを開業している検眼医のAngela Bevels氏は、
「個人としても専門家としても、この研究結果に共感する」と話す。
彼女自身も長年、片頭痛に悩まされていた上に未診断のドライアイでもあったが、当時はこの二つの疾患が関連するとは思いもしなかった。
ところが、2年間かけてドライアイの治療を成功させ、同時に片頭痛も劇的に改善したことから、これらの関連性を信じるようになったという。
この研究の背景情報によれば、米国成人の8~34%がドライアイである可能性がある。
ドライアイになると眼の表面を覆う涙液層が障害され、眼の不快感や視覚障害をはじめ、生活の質(QOL)の低下につながりうる眼の障害が生じる。
今回の研究では因果関係は明らかになっていないが、Davis氏らによれば、ドライアイと片頭痛の関連は以前から指摘されていたという。
なお、米国人の14%に片頭痛があるとされる。
では、片頭痛とドライアイを結びつける要因は何なのか?
今回の報告によると、ドライアイと片頭痛のいずれにも、細胞レベルでの似通った「潜在的な炎症プロセス」が関与していることが分かっている。
Davis氏らは「ドライアイの炎症性の変化が神経筋組織でも同じような事象を引き起こし、片頭痛の発症や進行をもたらす」との仮説を立てている。
また、眼の表面が過度に乾燥すると、重要な神経経路に作用して片頭痛を誘発する可能性もあるという。
Davis氏は、
「片頭痛とドライアイの関連がどのようなものであっても、どちらか一方の疾患があれば、もう一方も併存している可能性が高いことを念頭に治療に当たる必要がある」と結論づけている。
一方、Bevels氏は、
「今回のような研究は、多くの人のQOLに明らかに影響するドライアイの合併症に新たな光を当てるものであり、重要だ」と話している。
片頭痛のある人は慢性的なドライアイである確率が高く、特に高齢の女性でその傾向が強いことが、新たな研究で明らかになった。
この研究結果は「JAMA Ophthalmology」3月7日オンライン版に掲載された。
この研究は、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校のRichard Davis氏らによるもの。
同氏らは、ノースカロライナ州の眼科クリニックで治療を受けた18歳以上の患者7万2969人を対象に、10年にわたって追跡し、片頭痛とドライアイの関連を調べた。
対象患者のうち7.3%は片頭痛、13.2%はドライアイと診断されていた。
結果、特定の薬剤の使用などの因子を考慮しても、片頭痛のある人では、片頭痛のない人に比べてドライアイであるリスクは20%以上高いことが分かった。
また、片頭痛の人がドライアイであるリスクは、65歳以上では男性でほぼ2倍、女性でほぼ2.5倍になることも明らかになった。
Davis氏らは、
「加齢に伴いドライアイのリスクは高まる上に、女性で特にその傾向が強いと考えられる」と考察している。
また、同氏は「片頭痛の既往のある患者を治療する医師は、患者がドライアイのリスクが高いことを知っておく必要があるだろう」と述べている。
米アリゾナ州トゥーソンでドライアイを治療するクリニックを開業している検眼医のAngela Bevels氏は、
「個人としても専門家としても、この研究結果に共感する」と話す。
彼女自身も長年、片頭痛に悩まされていた上に未診断のドライアイでもあったが、当時はこの二つの疾患が関連するとは思いもしなかった。
ところが、2年間かけてドライアイの治療を成功させ、同時に片頭痛も劇的に改善したことから、これらの関連性を信じるようになったという。
この研究の背景情報によれば、米国成人の8~34%がドライアイである可能性がある。
ドライアイになると眼の表面を覆う涙液層が障害され、眼の不快感や視覚障害をはじめ、生活の質(QOL)の低下につながりうる眼の障害が生じる。
今回の研究では因果関係は明らかになっていないが、Davis氏らによれば、ドライアイと片頭痛の関連は以前から指摘されていたという。
なお、米国人の14%に片頭痛があるとされる。
では、片頭痛とドライアイを結びつける要因は何なのか?
今回の報告によると、ドライアイと片頭痛のいずれにも、細胞レベルでの似通った「潜在的な炎症プロセス」が関与していることが分かっている。
Davis氏らは「ドライアイの炎症性の変化が神経筋組織でも同じような事象を引き起こし、片頭痛の発症や進行をもたらす」との仮説を立てている。
また、眼の表面が過度に乾燥すると、重要な神経経路に作用して片頭痛を誘発する可能性もあるという。
Davis氏は、
「片頭痛とドライアイの関連がどのようなものであっても、どちらか一方の疾患があれば、もう一方も併存している可能性が高いことを念頭に治療に当たる必要がある」と結論づけている。
一方、Bevels氏は、
「今回のような研究は、多くの人のQOLに明らかに影響するドライアイの合併症に新たな光を当てるものであり、重要だ」と話している。
動脈硬化予防指針 [医学・医療短信]
動脈硬化予防指針、5年ぶりに改訂
日本動脈硬化学会は、5年ぶりに改訂する「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(以下、2017年版)の骨子が固まったとして、動脈硬化教育フォーラムで作成委員長の木下誠氏(帝京大学客員教授)が概要を発表した。
今回、クリニカルクエスチョン(CQ=臨床的疑問)とシステマチックレビュー(文献をくまなく調査しデータの偏りを除き、分析を行うこと)の部分的な導入や絶対リスクの評価法の変更、冠動脈疾患の二次(再発)リスクが高い病態の追加などが盛り込まれる。
2017年版における脂質異常症の診断基準は、2012年に発行した現行のガイドライン(以下、現行GL)と同様、高LDL-C血症はLDL-C値140mg/dL以上(境界型は120~139mg/dL)、低HDL-C血症は40mg/dL未満、高トリグリセライド(TG)血症は150mg/dL以上となる。
ただし、TG 400mg/dL以上や食後採血の場合の基準値としてnon-HDLコレステロール値が付記される。
注=LDL-C(悪玉コレステロール)血症 HDL-C(善玉コレステロール)血症
またLDL-Cの測定法については、Friedewald(フリードワルド)式と直接法の両方を挙げているが、エビデンスのほとんどがFriedewald式を用いていることから、Friedewald式がやや優位であるという。
注=Friedewald(フリードワルド)式。かつてLDL-コレステロールは、総コレステロール、中性脂肪、HDL-コレステロール値から、LDL-コレステロール=総コレステロール−HDLコレステロール−(中性脂肪/5)の計算式(フリードワルドの式)で算出されていた。
絶対リスク評価:死亡から発症に変更
木下氏によると、今回の主な変更点のつはCQとシステマチックレビューの導入であるという。しかし、全ての項目で導入するわけではなく、エビデンス(科学的証拠)がある「危険因子の評価」「絶対リスク評価」「食事療法」「薬物療法」の項目に限定される。
エビデンスレベルは、臨床試験では5段階(1+~4)に、疫学研究では4段階(E-Ⅰa~E-Ⅲ)に分け、推奨レベルは「グレードA(強い推奨)」と「グレードB(弱い推奨)」の2段階とする。
その他の主な改訂点として、絶対リスク評価方法の変更、動脈硬化性疾患の危険因子の追加、高リスクの病態の追加が挙げられている。
冠動脈疾患の一次(初発)予防におけるリスク区分の評価は、現行GLのNIPPON DATA 80に基づく「冠動脈疾患の死亡」から、吹田研究に基づく「発症率」に変更される。その背景には、スタチン使用の普及により冠動脈疾患死が減少したことが挙げられる。
国内のさまざまな疫学研究の中から吹田研究を選定した理由について木下氏は、同研究のアウトカムが冠動脈疾患発症であること、LDL-CおよびHDL-Cの測定データがあることなどを挙げた。
これらを踏まえ、発症リスクの予測ツールとして吹田研究での吹田スコアが採用される。
同スコアの評価項目は、年齢、性、喫煙、血圧値、HDL-C値、LDL-C値、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患の家族歴で構成され、これらの合計点が40点未満は「低リスク」(予測される10年間の発症リスク2%未満)、41~55点であれば「中リスク」(同2~8%)、56点以上であれば「高リスク」(同9%以上)にそれぞれ分類するというもので、同スコアの簡易版も作成される。
木下氏らは、現行GLにおける10年間の冠動脈疾による死亡率と2017年版の発症率に齟齬はないとの認識を示している。
初発予防の管理目標値:変更なし
初発予防におけるリスク区分別の脂質管理目標値は現行GLと変わりはなく、低リスク:LDL-C160 mg/dL未満、中リスク:140mg/dL未満、高リスク:LDL-C120 mg/dL未満をそれぞれ目指す。
しかし、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)のいずれかがあれば、同スコアにかかわらず「高リスク」となる。
なお、同スコアは、家族性高コレステロール血症(FH)患者には用いない。
リスク管理:腹部大動脈瘤、動脈硬化性腎動脈狭窄症などを追加
動脈硬化性疾患予防に対する包括的リスク管理として、2017年版では現行GLにある脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、CKD、冠動脈疾患の家族歴、動脈硬化性疾患の既往(冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、PAD)、加齢、性などの危険因子に加え、「腹部大動脈瘤」「動脈硬化性腎動脈狭窄症」「高尿酸血症」「睡眠時無呼吸症候群」が追加される。
また再発予防において、より厳格な管理を要する高リスクの病態も大きく変わり、①急性冠症候群②喫煙③糖尿病④CKD⑤非心原性脳梗塞・PAD⑥メタボリックシンドローム⑦主要危険因子の重複⑧FH-となった。
再発予防の管理目標値は、現行GLのLDL-C100mg/dL未満であることに変わりはない。
しかし、上記の高リスク病態を有する既往例では「目標値LDL-C 70mg/dL未満が妥当と考えられる」とする一文を本文に入れる予定だと木下氏は述べた。
FHの治療:新規薬剤や第一選択薬を変更
FHの診断基準値は、小児(15歳未満)および成人(15歳以上)ともに現行GLと変わりない。
しかし、2017年版では成人FHヘテロ接合体およびホモ接合体、小児ヘテロ接合体における治療フローチャートが加わる。
いずれも薬物療法の追加・変更があり、成人例ではPCSK9阻害薬、ホモ接合体のみの適応ではあるがMTP阻害薬の2剤を追加。小児では第一選択薬がレジンからスタチンに変更される。
動脈硬化予防指針:PCSK9阻害薬、MTP阻害薬を付記
2017年版における薬物療法については、現行GLにあるスタチン、陰イオン交換樹脂、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、フィブラート、ニコチン酸誘導体、プロブコール、EPA製剤に加え、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬が付記される。
ただしMTP阻害薬については前述の通り、投与患者が限定されることから、一般的に用いられる脂質異常症治療薬とはならない。
なお、2017年版の発行スケジュールについては、今後募集するパブリックコメントを経て、ことし7月に開かれる日本動脈硬化学会までの発行を予定している。
日本動脈硬化学会は、5年ぶりに改訂する「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(以下、2017年版)の骨子が固まったとして、動脈硬化教育フォーラムで作成委員長の木下誠氏(帝京大学客員教授)が概要を発表した。
今回、クリニカルクエスチョン(CQ=臨床的疑問)とシステマチックレビュー(文献をくまなく調査しデータの偏りを除き、分析を行うこと)の部分的な導入や絶対リスクの評価法の変更、冠動脈疾患の二次(再発)リスクが高い病態の追加などが盛り込まれる。
2017年版における脂質異常症の診断基準は、2012年に発行した現行のガイドライン(以下、現行GL)と同様、高LDL-C血症はLDL-C値140mg/dL以上(境界型は120~139mg/dL)、低HDL-C血症は40mg/dL未満、高トリグリセライド(TG)血症は150mg/dL以上となる。
ただし、TG 400mg/dL以上や食後採血の場合の基準値としてnon-HDLコレステロール値が付記される。
注=LDL-C(悪玉コレステロール)血症 HDL-C(善玉コレステロール)血症
またLDL-Cの測定法については、Friedewald(フリードワルド)式と直接法の両方を挙げているが、エビデンスのほとんどがFriedewald式を用いていることから、Friedewald式がやや優位であるという。
注=Friedewald(フリードワルド)式。かつてLDL-コレステロールは、総コレステロール、中性脂肪、HDL-コレステロール値から、LDL-コレステロール=総コレステロール−HDLコレステロール−(中性脂肪/5)の計算式(フリードワルドの式)で算出されていた。
絶対リスク評価:死亡から発症に変更
木下氏によると、今回の主な変更点のつはCQとシステマチックレビューの導入であるという。しかし、全ての項目で導入するわけではなく、エビデンス(科学的証拠)がある「危険因子の評価」「絶対リスク評価」「食事療法」「薬物療法」の項目に限定される。
エビデンスレベルは、臨床試験では5段階(1+~4)に、疫学研究では4段階(E-Ⅰa~E-Ⅲ)に分け、推奨レベルは「グレードA(強い推奨)」と「グレードB(弱い推奨)」の2段階とする。
その他の主な改訂点として、絶対リスク評価方法の変更、動脈硬化性疾患の危険因子の追加、高リスクの病態の追加が挙げられている。
冠動脈疾患の一次(初発)予防におけるリスク区分の評価は、現行GLのNIPPON DATA 80に基づく「冠動脈疾患の死亡」から、吹田研究に基づく「発症率」に変更される。その背景には、スタチン使用の普及により冠動脈疾患死が減少したことが挙げられる。
国内のさまざまな疫学研究の中から吹田研究を選定した理由について木下氏は、同研究のアウトカムが冠動脈疾患発症であること、LDL-CおよびHDL-Cの測定データがあることなどを挙げた。
これらを踏まえ、発症リスクの予測ツールとして吹田研究での吹田スコアが採用される。
同スコアの評価項目は、年齢、性、喫煙、血圧値、HDL-C値、LDL-C値、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患の家族歴で構成され、これらの合計点が40点未満は「低リスク」(予測される10年間の発症リスク2%未満)、41~55点であれば「中リスク」(同2~8%)、56点以上であれば「高リスク」(同9%以上)にそれぞれ分類するというもので、同スコアの簡易版も作成される。
木下氏らは、現行GLにおける10年間の冠動脈疾による死亡率と2017年版の発症率に齟齬はないとの認識を示している。
初発予防の管理目標値:変更なし
初発予防におけるリスク区分別の脂質管理目標値は現行GLと変わりはなく、低リスク:LDL-C160 mg/dL未満、中リスク:140mg/dL未満、高リスク:LDL-C120 mg/dL未満をそれぞれ目指す。
しかし、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)のいずれかがあれば、同スコアにかかわらず「高リスク」となる。
なお、同スコアは、家族性高コレステロール血症(FH)患者には用いない。
リスク管理:腹部大動脈瘤、動脈硬化性腎動脈狭窄症などを追加
動脈硬化性疾患予防に対する包括的リスク管理として、2017年版では現行GLにある脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、CKD、冠動脈疾患の家族歴、動脈硬化性疾患の既往(冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、PAD)、加齢、性などの危険因子に加え、「腹部大動脈瘤」「動脈硬化性腎動脈狭窄症」「高尿酸血症」「睡眠時無呼吸症候群」が追加される。
また再発予防において、より厳格な管理を要する高リスクの病態も大きく変わり、①急性冠症候群②喫煙③糖尿病④CKD⑤非心原性脳梗塞・PAD⑥メタボリックシンドローム⑦主要危険因子の重複⑧FH-となった。
再発予防の管理目標値は、現行GLのLDL-C100mg/dL未満であることに変わりはない。
しかし、上記の高リスク病態を有する既往例では「目標値LDL-C 70mg/dL未満が妥当と考えられる」とする一文を本文に入れる予定だと木下氏は述べた。
FHの治療:新規薬剤や第一選択薬を変更
FHの診断基準値は、小児(15歳未満)および成人(15歳以上)ともに現行GLと変わりない。
しかし、2017年版では成人FHヘテロ接合体およびホモ接合体、小児ヘテロ接合体における治療フローチャートが加わる。
いずれも薬物療法の追加・変更があり、成人例ではPCSK9阻害薬、ホモ接合体のみの適応ではあるがMTP阻害薬の2剤を追加。小児では第一選択薬がレジンからスタチンに変更される。
動脈硬化予防指針:PCSK9阻害薬、MTP阻害薬を付記
2017年版における薬物療法については、現行GLにあるスタチン、陰イオン交換樹脂、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、フィブラート、ニコチン酸誘導体、プロブコール、EPA製剤に加え、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬が付記される。
ただしMTP阻害薬については前述の通り、投与患者が限定されることから、一般的に用いられる脂質異常症治療薬とはならない。
なお、2017年版の発行スケジュールについては、今後募集するパブリックコメントを経て、ことし7月に開かれる日本動脈硬化学会までの発行を予定している。
タグ:動脈硬化予防指針
友人&糖尿病 [医学・医療短信]
「友人が多いほど糖尿病になりにくい」は本当か
中高年から高齢になると社会的に孤立している人よりも、付き合いのある友人が多い人ほど2型糖尿病になりにくい可能性があることが、オランダで行われた新たな研究で報告された。
「BMC Public Health」オンライン版に掲載された論文の著者らは、社会的なネットワークを広げて孤立を防ぐことは、2型糖尿病の予防策の一つになると強調している。
この研究は、オランダに在住する40~75歳の男女を対象とした観察研究(Maastricht Study)に参加した2861人のデータを解析したもので、交友関係の広さや社会的な交流への参加頻度と糖尿病リスクとの関係を調べた。
参加者の平均年齢は60歳、半数は女性であり、56.7%は血糖値が正常で、15%は糖尿病前症、28.3%は2型糖尿病患者(既往例が24.4%、新規診断例が3.9%)であった。
解析の結果、付き合いのある知り合いが多い方が、少ない人よりも2型糖尿病の発症リスクが低かった。
こうした知り合いが1人減るごとに、男女で糖尿病リスクは5~12%高まっていた。
また、女性では独居であるかどうかは糖尿病リスクに影響しなかったが、男性では一人暮らしをする人で糖尿病リスクが94%高まっていた。
研究を主導したマーストリヒト大学のStephanie Brinkhues 氏は、
「社会的ネットワークはその範囲が広いほど、個人のライフスタイルに重要な影響を与えるようになる。
ネットワークが広いということは、必要な時に社会的支援を受けやすく、自宅の外に出る機会が多いことを意味する。
こうした活動は健康的な食習慣や運動習慣を促し、ライフスタイルに改善をもたらす」
と述べており、社会的なネットワークを広げることは運動不足や肥満を主たる原因とする2型糖尿病を予防するのに重要なステップになると強調している。
また、1人暮らしの男性で2型糖尿病リスクが高かった理由について、論文の責任著者を務める同大学准教授のMiranda Schram氏は、
「男性は一人になると、女性よりも自分自身の事に無頓着になり、新鮮な野菜や果物を食べなくなったり、運動をしなくなるなど不健康な生活習慣に陥りやすくなると考えられる」と指摘する。
そのため、2型糖尿病のリスクが高い人には、新しい友人を作って交流したり、ボランティアや趣味の集まりに積極的に参加することが勧められるとしている。
両氏はともに、この研究は社会的ネットワークの広さと2型糖尿病リスクとの関連を示したに過ぎないが、これまで他の研究で、独居や社会的サポートの不足が2型糖尿病リスクを高める可能性が報告されていることから、
「これらの2つの因子は2型糖尿病の発症に大きく影響する可能性が高い」との考えを示している。
一方、米モンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センター長を務めるJoel Zonszein氏は、専門家の立場から、この研究は大規模で印象的なものではあるが、数々の限界点があると指摘する。
その一つは、研究デザイン自体の問題で、人生のある時期だけを検討したに過ぎず、人生の中で起こった個々人の変化を考慮していない点にあるという。
また、糖尿病の発症には多くの因子が関連しており、それぞれの影響の大きさを正確に測るのは難しく、今回の結果を再現するにはさらに多くの研究を行う必要があるとしている。
同氏は、社会的ネットワークが2型糖尿病の発症に何らかの役割を果たすにしてもその影響は小さく、
「友人の多さや社会的な孤立の有無で糖尿病の発症や進行に影響があるとは考えにくい」と話している。
中高年から高齢になると社会的に孤立している人よりも、付き合いのある友人が多い人ほど2型糖尿病になりにくい可能性があることが、オランダで行われた新たな研究で報告された。
「BMC Public Health」オンライン版に掲載された論文の著者らは、社会的なネットワークを広げて孤立を防ぐことは、2型糖尿病の予防策の一つになると強調している。
この研究は、オランダに在住する40~75歳の男女を対象とした観察研究(Maastricht Study)に参加した2861人のデータを解析したもので、交友関係の広さや社会的な交流への参加頻度と糖尿病リスクとの関係を調べた。
参加者の平均年齢は60歳、半数は女性であり、56.7%は血糖値が正常で、15%は糖尿病前症、28.3%は2型糖尿病患者(既往例が24.4%、新規診断例が3.9%)であった。
解析の結果、付き合いのある知り合いが多い方が、少ない人よりも2型糖尿病の発症リスクが低かった。
こうした知り合いが1人減るごとに、男女で糖尿病リスクは5~12%高まっていた。
また、女性では独居であるかどうかは糖尿病リスクに影響しなかったが、男性では一人暮らしをする人で糖尿病リスクが94%高まっていた。
研究を主導したマーストリヒト大学のStephanie Brinkhues 氏は、
「社会的ネットワークはその範囲が広いほど、個人のライフスタイルに重要な影響を与えるようになる。
ネットワークが広いということは、必要な時に社会的支援を受けやすく、自宅の外に出る機会が多いことを意味する。
こうした活動は健康的な食習慣や運動習慣を促し、ライフスタイルに改善をもたらす」
と述べており、社会的なネットワークを広げることは運動不足や肥満を主たる原因とする2型糖尿病を予防するのに重要なステップになると強調している。
また、1人暮らしの男性で2型糖尿病リスクが高かった理由について、論文の責任著者を務める同大学准教授のMiranda Schram氏は、
「男性は一人になると、女性よりも自分自身の事に無頓着になり、新鮮な野菜や果物を食べなくなったり、運動をしなくなるなど不健康な生活習慣に陥りやすくなると考えられる」と指摘する。
そのため、2型糖尿病のリスクが高い人には、新しい友人を作って交流したり、ボランティアや趣味の集まりに積極的に参加することが勧められるとしている。
両氏はともに、この研究は社会的ネットワークの広さと2型糖尿病リスクとの関連を示したに過ぎないが、これまで他の研究で、独居や社会的サポートの不足が2型糖尿病リスクを高める可能性が報告されていることから、
「これらの2つの因子は2型糖尿病の発症に大きく影響する可能性が高い」との考えを示している。
一方、米モンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センター長を務めるJoel Zonszein氏は、専門家の立場から、この研究は大規模で印象的なものではあるが、数々の限界点があると指摘する。
その一つは、研究デザイン自体の問題で、人生のある時期だけを検討したに過ぎず、人生の中で起こった個々人の変化を考慮していない点にあるという。
また、糖尿病の発症には多くの因子が関連しており、それぞれの影響の大きさを正確に測るのは難しく、今回の結果を再現するにはさらに多くの研究を行う必要があるとしている。
同氏は、社会的ネットワークが2型糖尿病の発症に何らかの役割を果たすにしてもその影響は小さく、
「友人の多さや社会的な孤立の有無で糖尿病の発症や進行に影響があるとは考えにくい」と話している。
快眠、七つの方法 [医学・医療短信]
快眠で日中の効率をUP!「質のよい睡眠」を得る七つの方法
ちゃんと寝たはずなのに、日中に眠気に襲われることってありませんか?
もしかしたら、寝ているはずなのに元気が足りないと感じるときは「質の良い睡眠」が不足しているのかもしれません。
運動週間、栄養バランスと合わせて、しっかり質の良い睡眠も確保していきましょう。
睡眠の質をあげることで、仕事や日常生活の中でさまざまなメリットを感じられるようになりますよ。
睡眠の質をあげると、どんな効果がある?
睡眠の質を向上させるほど、疲労から心身を回復させる効果があります。
肉体疲労はもちろん、脳のように目に見えない部分に蓄積した疲労を取り除くことは睡眠の大きな効果です。
成長促進・健康維持はもちろん、ダイエット・美容促進・スポーツのパフォーマンスアップなど様々な効果をもたらします。
質の良い睡眠って?
どういう感覚を得られていれば質の良い睡眠を得ていると言えるのでしょうか。
それは以下三つで判断することができます。
この三つをクリアしていれば、正しい睡眠をとっているといえるでしょう。
三つの快眠ポイント
1 寝つきがよい
2 ぐっすり眠れる
3寝 起きがすっきり
心地よい睡眠を得るための7つの方法
それでは、どうすれば自分にとって質の良い睡眠を得られるのだろう?
朝、昼、夜と、時間帯に適した方法をご紹介します。
八つの方法を試して、最適な睡眠を確保しましょう。
1. 朝、窓をあけて自然光を浴びる。
朝日を浴びながらゆっくり深呼吸をしてみましょう。
生体リズムが補正されやすくなります。
昼間に日光にあたる時間をつくることも有効的です。
2. カフェインの摂取を16時以降は控える。
カフェインとアルコールはいずれも刺激物であるため、睡眠を調整、もしくは改善したい場合量を減らすのが一番。
とくに16時以降は控えてみましょう。
3. 就寝前に湯船に肩まで浸かろう。
40℃の湯船につかり、10分身体を温めよう。
お風呂と睡眠は繋がっています。
4. 寝る3時間前にブルーライトから開放してあげる。
テレビ、タブレット、スマホなどのブルーライトは、睡眠ホルモンの生成を最大3時間も遅らせるとか。
眠る前は液晶画面を見ず、暗めの部屋でゆっくり過ごしましょう。
5. 重めの布団を試してみる。
少し重さのある布団で身体に重みを加えることで、睡眠を促す概日リズムを調整できるという研究があります。
6. 睡眠7時間を目安に、体内リズムを整える。
朝起きて、昼働き、夜眠るという人間本来に備わったリズム。
同じ就寝時間と起床時間を維持することで、体内リズムが調整され、睡眠の質があがります。
体型や性質により個人差がありますが、一晩あたり7時間目安に微調整するといいでしょう。
7. 土日のジェットラグをなくす。
平日と休日の就寝・起床リズムのズレをなるべく減らそう。就寝・起床時刻のズレが大きいほど体内リズムは乱れやすくなります。
まとめ
ほんの少しの意識をして気をつけるだけで「快眠」に導けることができます。
良い睡眠をとることで、生活のリズムも整って、仕事や日々のルーティーンも効率もアップします。
今日からはじめられる「快眠のすすめ」、皆さんもぜひトライしてみてください。
ちゃんと寝たはずなのに、日中に眠気に襲われることってありませんか?
もしかしたら、寝ているはずなのに元気が足りないと感じるときは「質の良い睡眠」が不足しているのかもしれません。
運動週間、栄養バランスと合わせて、しっかり質の良い睡眠も確保していきましょう。
睡眠の質をあげることで、仕事や日常生活の中でさまざまなメリットを感じられるようになりますよ。
睡眠の質をあげると、どんな効果がある?
睡眠の質を向上させるほど、疲労から心身を回復させる効果があります。
肉体疲労はもちろん、脳のように目に見えない部分に蓄積した疲労を取り除くことは睡眠の大きな効果です。
成長促進・健康維持はもちろん、ダイエット・美容促進・スポーツのパフォーマンスアップなど様々な効果をもたらします。
質の良い睡眠って?
どういう感覚を得られていれば質の良い睡眠を得ていると言えるのでしょうか。
それは以下三つで判断することができます。
この三つをクリアしていれば、正しい睡眠をとっているといえるでしょう。
三つの快眠ポイント
1 寝つきがよい
2 ぐっすり眠れる
3寝 起きがすっきり
心地よい睡眠を得るための7つの方法
それでは、どうすれば自分にとって質の良い睡眠を得られるのだろう?
朝、昼、夜と、時間帯に適した方法をご紹介します。
八つの方法を試して、最適な睡眠を確保しましょう。
1. 朝、窓をあけて自然光を浴びる。
朝日を浴びながらゆっくり深呼吸をしてみましょう。
生体リズムが補正されやすくなります。
昼間に日光にあたる時間をつくることも有効的です。
2. カフェインの摂取を16時以降は控える。
カフェインとアルコールはいずれも刺激物であるため、睡眠を調整、もしくは改善したい場合量を減らすのが一番。
とくに16時以降は控えてみましょう。
3. 就寝前に湯船に肩まで浸かろう。
40℃の湯船につかり、10分身体を温めよう。
お風呂と睡眠は繋がっています。
4. 寝る3時間前にブルーライトから開放してあげる。
テレビ、タブレット、スマホなどのブルーライトは、睡眠ホルモンの生成を最大3時間も遅らせるとか。
眠る前は液晶画面を見ず、暗めの部屋でゆっくり過ごしましょう。
5. 重めの布団を試してみる。
少し重さのある布団で身体に重みを加えることで、睡眠を促す概日リズムを調整できるという研究があります。
6. 睡眠7時間を目安に、体内リズムを整える。
朝起きて、昼働き、夜眠るという人間本来に備わったリズム。
同じ就寝時間と起床時間を維持することで、体内リズムが調整され、睡眠の質があがります。
体型や性質により個人差がありますが、一晩あたり7時間目安に微調整するといいでしょう。
7. 土日のジェットラグをなくす。
平日と休日の就寝・起床リズムのズレをなるべく減らそう。就寝・起床時刻のズレが大きいほど体内リズムは乱れやすくなります。
まとめ
ほんの少しの意識をして気をつけるだけで「快眠」に導けることができます。
良い睡眠をとることで、生活のリズムも整って、仕事や日々のルーティーンも効率もアップします。
今日からはじめられる「快眠のすすめ」、皆さんもぜひトライしてみてください。
タグ:質のよい睡眠