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食い合わせの真偽 [「健康常識ウソ・ホント」再録]

 健康常識ウソ・ホント(1) 

「同食」の禁忌少なし

 食い合わせ─というものがある。

 ウナギに梅干し、スイカに天ぷら、タニシにそば……などというあれだ。

 むかし(昭和10年代)、いなかの家の台所の壁に食い合わせの絵が貼ってあった。

 雑誌『家の光』の付録か、富山の薬屋さんの景品だったか。

 タブロイド判ほどの紙にいくつもの食品の組み合わせが原色で描いてあった。

 一々は憶えていないが、いま記したもののほか、カニと氷水、サバとカボチャ、肉とホウレン草……といったふうだったはずだ。

 この食い合わせの原典は、たぶん貝原益軒の『養生訓』だろう。

 同書を開いてみると、

「同食(くいあわせ)の禁忌多し、その要(おも)なるをここに記す。

 猪肉(ぶたにく)に、生薑(しょうが)、蕎麦(そば)、胡荽(こすい=コエンドロの漢名)、炊豆(いりまめ)、梅、牛肉、鹿肉、鼈(すっぽん)、鶴、鶉(うずら)をいむ」とはじまり、

「南瓜(ぼうふり)を、魚鱠(なます)に合せ食すべからず」まで、100を超える食い合わせが挙げてある。(『養生訓』巻第四)。

 もしもそれがホントなら、うっかり食うことも飲むこともできない。

 なにしろ「酒後に茶を飲むべからず、腎をやぶる」というのだから─。

 無茶苦茶とはこのことだろう。

 栄養学の大家、川島四郎先生は、食い合わせの真偽を確かめるため、一つ一つ試食された。

「全部、大丈夫でしたよ」と笑っておっしゃった。

 では「食い合わせ」などないのか。

 あながちそうともいえない。

『養生訓』が挙げた食品には、牛肉、鹿肉など肉類、魚鱠、魚の鮓(すし)、生菜、冷水…その他、いたみやすく、食あたりしやすいものが多い。

 また、ちょっと想像してみても、ウナギのかば焼きと梅干しとか、天ぷらとスイカなんて、とても一緒に食う気がしない。

 味の調和がとれないと、心理的に不快感を覚え、腹の調子がおかしくなることだってあるのではないか。

 この点について、『養生訓』に、

「食物の気味、わが心にかなわざる物は、養いとならず。かへって害となる」とあるのは正解だと思う。

 益軒という人は、徹底した少食主義で、肉でも、魚でも、飯でも、野菜でも、「多食すべからず」の一点張りである。

 食べ物ばかりか、酒も「少しのみ、少し酔へるは、酒の禍なく」と説いている。

 ごもっともだけど、ちっとも盛り上がらない酒を飲んだ人のようだ。

 もっとも、考えてみると(考えるまでもなく)、なにがいけないといって、暴飲暴食ほど体を害するものはない。

 その意味では、この二つこそ「食い合わせ」の最たるもの─であるだろう。
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