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心房細動と脳梗塞 [ひとこと養生記]

先天性心疾患患者のAFリスクは対照の20倍超

脳卒中の約6割が脳梗塞(血管が詰まるタイプ)で、心臓にできた血のかたまり(血栓)が脳や頸の動脈につまることによっておこる脳梗塞(心原性脳塞栓症)は、脳梗塞の2~3割を占める。

梗塞のサイズが大きいために死亡率が高く(2割)、歩行に介助を要したり、寝たきりなどの重い後遺症が残る場合が多い(4割)。

心原性脳塞栓症の原因の3/4は心房細動。

心房細動は、心臓の上半部にある心房が、小刻みに震える高齢者に多い不整脈。

小淵恵三・元首相、長嶋茂雄・読売ジャイアンツ終身名誉監督、サッカーのイビチャ・オシム監督らの心原性脳塞栓症のもとになったのが心房細動だった。

日本脳卒中協会と日本不整脈心電学会は、3月9日の「脈の日」からの1週間を「心房細動週間」として、心房細動の症状、脳梗塞の危険性と医学的管理による脳梗塞予防の必要性を広く知らせる啓発活動を行った。

先天性心疾患患者はその後に心房細動を発症するリスクが高く、年齢や性が一致する対照群の22倍であると、スウェーデンのグループが発表した。

先天性心疾患患者は遺残シャント、解剖学的な血管の異常、進行性の弁膜症、高血圧、以前の心臓手術による心房の瘢痕などの結果として、心房細動を発症しやすいと考えられている。

平均27年の追跡期間中に、先天性心疾患患者では2万1,982例中654例、対照群では21万9,816例中328例が心房細動を発症した。

解析の結果、先天性心疾患患者の心房細動発症リスクは対照群に比べて約22倍だった。

先天性心疾患のうち、心房細動発症リスクが最も高かったのは円錐動脈幹異常だった。

米国のグループは、起立性低血圧により心房細動の発症リスクが高まることを心臓学会誌「American Journal of Cardiology」に発表した。

先行研究で、起立性低血圧は心房細動リスクの上昇に関連することが報告されている。

同グループは、この関連が高血圧および他の心血管危険因子を補正後も認められるかどうかについて検討した。

1,736例のうち、登録時に256例(14.7%)で起立性低血圧が確認された。

10年間の追跡期間中に224例が新たに心房細動を発症した。

解析の結果、登録時の起立性低血圧は心房細動の発症リスク上昇と有意に関係していた。

また、立位への体位変換時の平均動脈圧の低下幅が大きいことも心房細動発症リスクと関係していた。

心房細動患者が適切な抗凝固療法(血液を固まりにくくする治療)を受けると、約6割の脳梗塞を予防できることがわかっている。

しかし、最近の調査によると、心房細動患者の約半数しか抗凝固療法を受けてない。

心房細動患者の半数は無症状であり、脈拍のチェックや心電図検査によって早期発見・受診をすることが、心房細動からの脳梗塞予防に不可欠だ。
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「立つだけダイエット」 [ひとこと養生記]

糖尿病対策に「立つだけダイエット」

 1日で座ったまま過ごす時間を減らし、立つ時間を増やすだけで、体重を減らせることが明らかになった。

 座らないだけでダイエットになるという「立つだけダイエット」が話題になっているが、そこには科学的な根拠があることが裏付けられた。

 座ったまま過ごす時間が30分続いたら、立ち上がって軽い運動をするだけで、血糖値とインスリン値を低下できる。

座り過ぎのもたらす弊害が大きな話題に

 肥満や2型糖尿病の原因のひとつが運動不足だと知っていても、椅子に座り過ぎているからだと考える人はまだ少ない。

 しかし、欧米では椅子の座り過ぎのもたらす弊害が大きな話題になって、オフィスから椅子を撤去する企業も出てきた。

 主な事務機器メーカーは、スタンディングデスクを開発した。

 一部のベンチャー企業や外資系企業では、健康増進のためにスタンディングデスクを導入するケースも増えている。

 米国のメイヨークリニックが「立位時間を増やすだけで、体の代謝が向上し、消費カロリーを増やせる。立ち上がるだけで健康増進につながり、寿命を延ばせる」という研究を発表した。

 この研究は、欧州心臓病学会の学会誌に発表された。

 健康上のリスクを軽減するためには、1日を通して座ったまま過ごす時間がどれだけ長いかを知り、意識して体をより多くを動かすことが重要だ。

 目に見える効果があると分かれば、「仕事中にもなるべく立ち上がろう」「余暇の時間は立ったまま過ごそう」という気持ちになるかもしれない。

 細切れの時間でも1日分を集めると相当な時間になる。

 立ったまま過ごす時間を1日1時間増やすことを目標に取り組んでみてはいかがだろう。

 座ったままの生活が引き起こす健康リスク

 これまでの研究で、座ったまま体を動かさないことで引き起こされる健康リスクとして、次のことが分かっている。

 座ったまま過ごす時間が4時間増えると――

・ エネルギーの消費量を減少し、エネルギー代謝が悪くなる。

・ 体脂肪を燃焼させるホルモンが不活性になる。

・ インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が起こり、血糖値が上昇しやすくなる。

・ 血管の内皮機能が低下し、交感神経の働きが上がり、血圧が上昇しやすくなる。

・ 脚の筋肉が衰え、肥満になりやすくなる。これらが相乗的に作用し、エネルギー代謝がますます悪くなる。

 座ったまま過ごす時間が長く、身体活動が減ると、▽心臓病、▽2型糖尿病、▽肥満、▽がん、▽背部痛、▽認知症、▽うつ病、▽筋肉変性といった疾患の発症リスクが上昇する。

 1日6時間立っていると54kcalを多く燃焼

 メイヨークリニックの行った研究では、坐ったまま過ごす時間を1日に6時間減らし、代わりに立ったまま過ごすと、体重増加を防げることが明らかになった。

 この研究は医学誌「欧州予防医学雑誌」に発表された。

 研究では、座位よりも立位がより多くのカロリーを燃焼するかを検証するために、合計1,184人を対象とした46件の研究を分析した。

 対象者の平均年齢は33歳で、60%が男性、BMI(体格指数)の平均は24、平均体重は65kgだった。
 
 結果、立っているは、座っているときに比べ、1分当たり0.15kcalのエネルギーを多く燃焼することが明らかになった。

 1日6時間立っていると、坐っている場合に比べ、体重が65kgの人は1日に54kcalを多く燃焼することになる。

 立ったまま過ごす時間を増やすことで、食事の摂取カロリーが増えないと仮定すると、1年間で体重を2.5kg、4年間で10kg減らせる計算になる。

 「立ったまま過ごす時間を増やすことで得られる恩恵は、体重コントロールにとどまりません。

 より多くのカロリーを燃焼でき、筋肉の活動を増やし、心疾患、脳卒中、2型糖尿病の発症リスクを低下できます」

 と、米国のメイヨークリニックの予防心臓学部の部長であるフランシスコ ロペス-ヒメネス教授。

 座ったままの生活は体に悪い影響をもたらす

 立つことで基礎代謝を向上し、体幹・腹筋・太腿などの筋肉を刺激することができる。

「1度に何時間も座り続けないようにすることが重要です。

 座ったまま過ごすことは、明らかに体に悪い影響をもたらします」

 と、ロペス-ヒメネス教授は強調している。

 「週に適度な運動を150分以上行い、座ったまま過ごす時間が続いたら、休憩を挟んでなるべく体を動かすように、生活スタイルを変えていくべきです。

 このことを知ることが健康改善に向けた第一歩となります」と。

 立位時間を増やすことで燃焼できるカロリーはさらに増える可能性がある。

「研究では座ったまま動作をしない場合を想定しましたが、実際には人は立っている間に、何かしらの活動をするものです。

 体の重心を保とうとして、重心をかける足を片方からもう片方に変えたり、前後に動いたりして、しっかりとした自発的な活動をしています」(ロペス-ヒメネス教授)。

 さらに、たとえばオフィスで立ち上がると、キャビネットからファイルを取り出したり、ごみ箱を移したり、体が動かす頻度が増す。

 長く座り続けると代謝機能や血流が悪くなる
 
これまでの研究で、長く座り続けると体の代謝機能や血液の流れに悪影響を及ぼすことが分かってきた。

 立ったり歩いたりしているときは脚の筋肉が働く。

 すると、筋肉の細胞内で血液中から糖や中性脂肪が取り込まれエネルギーとして消費される。

 ところが座ると、全身の代謝機能を支えてきた脚の筋肉が活動せず、糖や中性脂肪が取り込まれにくくなり、血液中で増えてしまう。

 活発なウォーキングなどの運動を週に150分以上行うことが推奨されている。

 この基準を満たしている人でも、座ったまま過ごす時間が長いと、糖尿病など体に悪影響が出てくることが、スコットランドのエディンバラ大学などが1万4,000人を対象に行った研究で明らかになった。

 生活のちょっとした活動は運動になる

 「体を動かさない時間が増加すると、健康上の悪影響が懸念されます。

 生活を見直して、ウォーキングなどのアクティブな時間を増やすべきです」

 と、エディンバラ大学のスポーツ運動科学研究所のテッサ ストレイン氏。

「日常生活で必要とされる身体活動のレベルを少しでも超えるものは全て"運動"と言えます。運動するかしないかの違いはとても大きいのです」と、ストレイン氏は指摘する。

 人と並んで話しながら歩いているときに、呼吸をちょっと意識する、あるいは心臓がドキドキ動いていることを自覚するぐらいの速度で歩く――この程度でも立派な運動になる。

 階段を2階や3階まで歩いて上がるとか、掃除をするといったことも運動だ。

 仕事の合間に2分間の休憩をとり体を動かそう

「仕事で座っている時間が長いオフィスワーカーは、仕事の合間にときどき2分間の休憩をとり、体を動かし、さらに、毎日30分ウォーキングをすると、動脈硬化や血栓の原因になる中性脂肪を大幅に低下できます」

 と、オタゴ大学の人間栄養学部のメレディス ペディー氏は言う。

 過去の研究では、オフィスワーカーが30分ごとに2分間の休憩をとり、軽いウォーキングなどの運動をすると、血糖値とインスリン値が低下することも示されている。

 デスクワーク中心の生活を、立位に切り替えるのはなかなか難しいかもしれないが、目に見える効果や数字的な裏付けがあれば、糖尿病のある人でもモチベーションを高められるだろう。

 オフィスワーカーが身体活動量を増やす工夫

 毎日の生活で、ちょっとしたことを工夫すると、身体活動量を増やすことができるという。

 ペディー氏は次のことを勧めている。

・ 仕事のミーティングなどは、電話や電子メールで済まさないで、相手に直接話す。

・ 1時間ごとに立ち上がり体操や運動をする。

・ ランチの時間には10~20分ほど歩く。

・ 休憩時間に歩く。家やオフィスの周りを歩くことを習慣にする。

・ ちょっとした用事があるときは、車でなく徒歩で行く。

・ エレベーターやエスカレータを使わず、階段を使う。

・ 家にはテレビのリモコンを近くに置かない。家事は立ったまま行う。

・ スーパーマーケットに買い物に行くときは、歩いて行ける一番遠い場所に駐車する。
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「低糖質 vs 低脂肪」どちらが優れている? [ひとこと養生記]

 低糖質ダイエットと低脂肪ダイエットのどちらかを支持している糖尿病の人には失望をもたらすかもしれない研究が発表された。

 結果は「どちらのダイエットも体重減少については差がない」というものだった。

「食事療法にも多様性が求められいる」と研究者は指摘している。

「低糖質ダイエット vs 低脂肪ダイエット」を検証

 糖質の摂取量を減らす「低糖質ダイエット」と、脂肪の摂取量を減らす「低脂肪ダイエット」を比べたところ、減量効果は同程度だという研究が発表された。

 この研究は、米国のスタンフォード大学などの研究チームによるもので、詳細は「JAMA」(米国医師会雑誌)に発表された。

 「"このダイエット方法は効果があった"という知り合いの勧めに乗って、同じことを自分でも試してみたが、まったく効果がなかった"といった話はよくあります」

 と、スタンフォード大学のクリストファー ガードナー教授(予防医学)。

 「私たちの体は一人ひとり異なっており、食事療法にも多様性が求められることが、分かってきました。

 問われているのは、"最良のダイエットが何であるか?"ということではなく、"そのダイエットは誰にとって最良なのか?"ということです」

 減量効果は同じ? 体重変動に個人差が

 研究チームは、18~50歳の男女609人を対象に、低糖質ダイエットを行うグループ(304人)と、低脂肪ダイエットを行うグループ(305人)の2つに無作為に分けた。

 それぞれのグループは1年間、指示された食事法を続けた。

 1年間の期間の終了時に、低糖質ダイエットを続けた人は、平均して1日に132グラムの炭水化物を摂取しており、試験前の247グラムの半分近くまで減らした。

 同様に、低脂肪ダイエットを続けた人は、平均して1日に57グラムの脂肪を摂取していた。

 試験が始まる前には平均87グラムを摂取しており、3分の1を減らした。

 参加者のうち79%(481人)が試験を完遂した。

 結果、試験開始から1年後には、低糖質ダイエット群では平均で6.0キログラム、低脂肪ダイエット群では5.3キログラム減量し、減量効果は両群間で同程度であることが分かった。

 しかし、個人によって体重の変動幅は大きく、27キログラム減らした人や、逆に6.8~9キログラム増やした人もいた。

 どの食事スタイルが成功するかは予測できない

 研究チームは実験開始時に、参加者のゲノムの一部を解析し、炭水化物や脂肪の代謝を変調させるタンパク質の生成に関連する特定の遺伝子パターンを探った。

 さらに参加者にブドウ糖負荷試験を行い、空腹時から糖負荷後の血糖値の変動を測定した。

 血液のインスリン量の測定も行った。

 すると、これまで考えられていた仮説と異なり、どの食事スタイルが成功するかは予測できないことが、遺伝子型パターンやインスリン値によって明らかになった。

 研究チームは参加者に、どちらの食事スタイルに振り分けられたにせよ、

 「新鮮な野菜を食べる」
 「精製された加工食品をなるべく控える」
 「極端に空腹になるのを避ける」
 「食後に運動をし、血糖値が上昇するのを防ぐ」など、一般的な食事のアドバイスをした。

 とくに注意したのは、特定の食事スタイルを長期間続けられるよう調整することだ。

 「研究が終わっても、自分の選んだ健康的な食事スタイルを、ずっと続けられるようになることを目指した」という。

 食事療法を個別化することが必要

 「低脂肪ダイエットと低糖質ダイエットのどちらも、無条件に健康に良いわけではありません。

 たとえば、カロリーの多い炭酸飲料は低脂肪ですが、健康的ではなく、ラードは低糖質ですが、アボカドの方がより健康的です」と、ガードナー教授は指摘する。

 体重を減らすために基本となることは、食事で必要な栄養素を十分に摂り、カロリー摂取量が消費カロリーを上回らないようにコントロールすることだ。

 教授によると、体重を効果的に減らすことを目指しているという点で、低脂肪ダイエットと低糖質ダイエットは戦略が似ている。

 糖類を控えて、全粒粉を積極的に摂り、野菜も十分に摂るなど、健康的な食事には共通した点があるからだ。

「研究で得られた最大の利点は、とくに減量に成功した参加者から、"食事と健康の関係についてより深く考えるようになり、自分の食事を見直して、食品の選び方にも注意するようになった"といった声が多く聞かれたことです」

 「求められているのは、食べることを我慢することではなく、もっとスマートな食べ方に変えていく方法を探ることです。

 食事療法を成功させるために、患者よって個別化することを考えるべきでしょう」
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糖質制限ダイエットのポイント [ひとこと養生記]

高糖質な野菜にも注意

健康食品メーカーのサニーヘルスが、調査レポート『成功する糖質制限ダイエットのポイント四つ』を公開した。

糖質制限ダイエットや炭水化物抜きダイエットは、主食である米やパンをできる限り食べないようにするというダイエット法。

シンプルで実践しやすいことに加え、効果が出るのも早いとされているため、挑戦する人も多い。

しかし、正しい糖質制限ができている人は意外と少ないようだ。

糖質を摂取すると血糖値が上がり、すい臓からインスリンが分泌される。

糖はエネルギーとして筋肉や臓器、脳などで使われるが、使われなかった糖は中性脂肪に変換される。

これが糖の余剰によって体に脂肪がつく理由の一つ。

運動をすると脂肪の分解を助けるホルモンが分泌される。

運動でエネルギーを消費すると糖の余剰分が出ない。

しかし、インスリンがたくさん分泌された状態にあると、脂肪の分解を助けるホルモンの働きが阻害される。

そうした状態にならないためには糖質の摂取量を適切にし、血糖値の急上昇を抑えなければならない。

糖質の摂取量を「適切にオフにする」方法のポイントは、

① 「糖質はゼロにしなくてよい」。

糖質の摂取量ゼロを目指す必要はなく、1食あたり糖質20~30g前後と一定量の糖質を摂取すること。

一定量を摂取すればダイエットが促され、健康的にやせることにもつながる。

糖質20~30gは、白米の場合は70~80g(茶碗半分ほど)、パンなら食パン6枚切り1枚。

糖質の高い野菜や煮物など、砂糖を使った献立のときには、主食はそれより減らすことを心がける。

② 「高糖質の野菜に注意する」。

さつま芋・じゃが芋、里芋などのいも類全般やかぼちゃ、にんじん、とうもろこし、れんこん、ごぼう、グリーンピース、空豆、にんにく、ゆりねなど、水分の少ない野菜は高糖質な傾向にある。食べすぎには注意が必要。

③ 「フルーツは食べる時間に注意」。

フルーツに含まれている糖質の中で最も大きな比率を占める「果糖」は、過剰摂取すると中性脂肪の蓄積を招く。

フルーツを食べる場合は「吸収」の時間帯である夜よりも、「浄化・排泄」の時間帯である朝のほうがよい。

④ 「炭水化物をしっかり食べたいときはGI値の低いものを摂取する」。

白米よりもGI値が低い玄米や雑穀を混ぜた米を選ぶことで、ダイエットは成功に近づく。

GI値=グリセミック・インデックス(Glycemic Index)の略。食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを計ったもの。

ブドウ糖を摂取した時の血糖値上昇率を100として、相対的に表される。

GI値が低ければ低いほど血糖値の上昇が遅くなり、インシュリンの分泌も抑えられる。
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カエルとメタボ 肥満児の背後 [ひとこと養生記]

 ニュースのない日は動物園に行ってみる─というのが、昔の新聞記者心得の一つだった。

 サル山のボス争いとかカバの大あくびとか、心和む閑種(ひまだね)を探す早道だったからだ。

 また、スポーツ、芸能、流行、健康、子どもに関する話題は見逃さず記事にすべし─ともいわれた。

 大方の読者共通の関心事だからで、これはいまでもそうだろう。

 であるなら、子どもの健康は、さしずめ関心の2乗だろう。

「こどもはわれわれの未来であるとともに、われわれの過去でもある」

 と民俗学者、柳田国男は言っているが(『こどもと言葉』)、

 子ども(の現在)がわれわれの過去であるのなら、われわれ(の現在)は子どもの将来にほかならない。

「親を見りゃボクの人生知れたもの」なるメイ吟もある。

 これを健康面に当てはめると、親が太っていると、子も太る。

 カエルの子はカエル、メタボの子はメタボというわけで、その理由は、体質の遺伝と同一の食事環境だ。

 子どもの肥満はそのまま大人の肥満につながりやすく、大人になってからの肥満よりも治しにくい。

 ママの責任

 肥満児の背後には、たいてい肥満した親が控えている。

 多くは母親だ。

 理由は体質の遺伝と同一の食事環境。

 太りやすい体質を共有していて、いつも同じ物を同じように食べていれば、同じように太るのは当然の成り行きだろう。

 子どもの肥満は、そのまま大人の肥満に移行しやすい。

 脂肪細胞は、思春期まではその数が増え、それ以後は細胞自身が大きくなるといわれる。

 つまり子どものときからの(脂肪細胞がいっぱい増えた状態の)肥満は、大人になってからの肥満とは違い、なかなか治しにくい。

 成人後の肥満は、もっぱら当人の責任だが、子どもの肥満は、離乳食の食べさせ過ぎが基盤となって完成する。

 責任は母親が負わなければならない。

 離乳食については、もう一つ問題がある。

 母親が自分の味覚に合わせて味つけをするため、しぜん塩分が多くなることだ。

 で、日本人は赤ん坊のころから塩味好みになり、成人後の高血圧発症の原因になる。

 高血圧予防は離乳食から─と説き続けた人が、循環器内科の大家、故五島雄一郎・東海大学名誉教授だった。
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イップスとギャバ [ひとこと養生記]

仔犬がキャンキャン吠えつづけている。

どうすることもできない。なきやむのを待つしかない。

英語で「イップ(yip)」という。

これを語源とするのが「イップス(yips)」。

「(スポーツ競技者が精神を集中してプレーに入るときの)極度の緊張(による震え)」というのが英和辞典の語釈(『新英和中辞典』研究社刊)。

新刊の国語辞典(『広辞苑』岩波書店刊)にはこうある。

「これまでできていた運動動作が心理的原因でできなくなる障害。もとはゴルフでパットが急に乱れることを指したが、現在は他のスポーツにもいう」

1930年代、プロゴルファーのトミー・アーマーが、パッティングで緊張すると手がふるえて止まらなくなり、引退を余儀なくされた。

アーマー自身が、のちに自分に起きた現象を「イップス」と表現した。

以後、スポーツの集中すべき局面で極度に緊張し、震えや硬直を起こす運動障害を指す用語として用いられてきた。

ゴルフに加え、野球、テニス、卓球、弓道、アーチェリー、ダーツなど手先を使うスポーツに多く見られる症状だという。

あのイチロー選手も高校時代に体験したことがあると、テレビ朝日系列「報道ステーション」で、稲葉篤紀・侍ジャパン監督によるインタビューでこう話した。

「(高校時代) ピッチャーを続けたいというのはあったんですけど、途中、僕イップスになっちゃったんで、僕らの時代は1年生の僕らがゴミで、2年生が人間、3年生が神様っていう位置付けなので。ゴミが神様に投げるわけですから、それは大変なもんですよ。それでイップスに……」

イップスに陥ると、一流のアスリートでも実力が発揮できない。
 
これに対するギャバ(GABA)の効果を試した実験がある。

ギャバは、アミノ酸の一種で正式な名称はγ-アミノ酪酸。英語のGamma Amino Butyric Acidを略してGABA(ギャバ)。

アミノ酸といえば、たんぱく質を構成する成分を指すのが普通だが、ギャバはそれらとは異なり、主に脳や脊髄ではたらく「抑制系の神経伝達物質」である。

脳の興奮を鎮め、ストレスをやわらげるリラックス効果、抗ストレス作用、脳細胞の代謝活性化作用などが明らかにされている。

ギャバが不足すると、興奮系の神経伝達物質が過剰に分泌するのを抑えることができなくなり、精神的な緊張感が続いてしまう。

大井静雄・東京慈恵医大教授(脳神経外科)らは、ゴルファーのイップスにギャバが有効であるかどうかを検証する試験を行った。

兵庫県・上月コースで行われた試験には、30歳代~60歳代の男性20人(平均ゴルフ歴21.2年。平均ハンディ22.1)が参加した。

試験方法は、集合時にギャバ錠60㍉㌘を摂取、前半9ホールのラウンド中にギャバ100㍉㌘含有のスポーツドリンクを飲み、9ホールでギャバ錠60㍉㌘を摂取。

後半11ホール、13ホール、15ホール、17ホールでギャバチョコを2粒ずつ(ギャバ量14㍉㌘)食べて、適宜、ギャバドリンクを飲んだ。

ギャバの総摂取量は376㍉㌘だった。

結果はどうだったか。

ゴルファー自身の自己評価をみると、ギャバ効果が「大いにあった」+「まずまずあったと思われる」が、ドライバーでは43%、

ショートアイアンやアプローチ、パッティングでは50%、

全ホールを通じては79%。

イップス(精神的緊張による失敗)の予防効果を認めた人は93%だった。

「謎の病の処方箋」の一例とは言えまいか。

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不整脈は怖い [ひとこと養生記]

心臓の鼓動─それはあなたの健康リズム

きょう3月9日=3(ミャ)9(ク) =は、脈のチェックを呼びかける「脈の日(Check Pulse Day)」」。

通常、心臓は1分間に50~80回前後の脈を規則的に打ちます。

このリズムが崩れる状態が「不整脈」。

安静時に100回を超える「頻脈」、50回未満になる「徐脈」、脈がとんでリズムが乱れる「期外収縮」に大別されます。

不整脈が怖いのは、突然死につながる恐れがあるためで、最も怖いのは「心室細動」です。

心臓の下半部にあって血液を動脈に送り出す心室がけいれんし、脈拍が数え切れないほど速くなります。

脳に血液が行かないので10秒前後で意識が遠のき、10分間続くと脳死になってしまいます。

一刻も早くAED(自動体外式除細動器)による電気ショックで心肺蘇生をする必要があります。

脳に血栓が行き脳梗塞を招く「心房細動」もふえています。

心臓の上半部にある心房が、小刻みに震える高齢者に多い不整脈です。

血液をきちんと送り出すことができず、心房に血の流れが滞り、血栓(血のかたまり)ができやすく、それが血流に乗って脳に運ばれて血管を詰まらせると、脳梗塞になります。
   
「心臓の鼓動─それはあなたの健康リズム」は、WHO(世界保健機関)の、ある年の世界保健デーのスローガンでした。

生まれてから死ぬまで休みなく働きつづける心臓は、心筋という特別な筋肉でできています。

この心筋に血液(酸素と栄養)を供給しているのが、心臓を冠状に取り巻いている3本の大きな血管(冠動脈)です。

冠動脈の一部が狭くなって、血液が流れにくくなるのが、狭心症。

狭くなったところに血栓が詰まって、血流がストップしてしまうのが、心筋梗塞。

まとめて虚血性心疾患と呼ばれます。虚血とは、血液が虚する(不足する)という意味です。

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)のもとになるのは、動脈硬化です。

動脈硬化の危険因子は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満。かつては「死の四重奏」といわれました。メタボリック症候群のことです。

四つのうち一つ持っている人は、持っていない人の1.5~2倍、心臓病になりやすく、複合すると数倍になるといわれます。

 これを防ぐ12カ条─。

 1 血圧と血中コレステロール値を正常に保つ。

 2 脂質の摂取は、良質の植物油と魚油をバランスよく(おすすめは「カメリナオイル」)。

 3 塩分は控えめに。

 4 甘い物を食べ過ぎない。

 5 栄養のバランスのよい食事を。

 6 腹七~八分目に。

 7 日常適度の運動を(努めて歩く)。

 8 十分な睡眠(一日7~8時間)。

 9 ストレスを上手に発散。

 10 適正飲酒(清酒なら1合程度)を守る。

 11 禁煙または節煙。

 12 毎年1回は健康診断。

 こうした生活を心がけていれば、心臓のみならず全身の健康を守ることができます。
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ナッツで心血管病を予防 [ひとこと養生記]

 ナッツの心血管疾患予防効果に注目が集まっている。

 山田 悟・北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の解説をご紹介します。

 2013年、スペインの研究チームは、地中海食による指導介入が脂質制限食による指導介入と比較して心血管疾患を30%減少させることを示した。

 この折、地中海食指導介入群の中にさらに2群が設定され、1群には地中海食を摂取しつつ1週間に1㍑のオリーブ油の使用が求められ、もう1群には1日30㌘のナッツの摂取が求められた。

 オリーブ油群、ナッツ群ともに脂質制限食群に比べ心血管疾患の発症を有意に抑制した。

 正直、私はどうあがいても1週間に1㍑のオリーブ油は使いこなせないが、1日30㌘のナッツであれば摂取できる。

 このときから、私はナッツ摂取に関心を持つようになったのだが、実は同じ2013年に早速ナッツ摂取と総死亡率との負の相関、翌2014年にはナッツ摂取と心血管疾患発症との負の相関が示された。

 この二つの観察研究は、いずれも米・ハーバード大学公衆衛生学栄養学部門が報告していたが、前者はNurses' Health StudyとHealth Professionals Follow-Up Studyという同大学が実施しているコホート研究の解析であり、後者はそれらも含めたコホート研究のメタ解析であった。

 今回、同大学が実施している三つのコホート研究の検討があらためて行われ、ナッツ摂取と心血管疾患の発症がやはり負の相関関係にあることが報告された。

 力強いタイトルのeditorial (J Am Coll Cardiol 2017;70:2533-2535)も含めてご紹介したい。

 研究のポイント1: 3コホートでナッツ摂取と心血管疾患の相関を検討

 本研究で解析されたコホート研究は以下の三つである。

・Nurses' Health Study(NHS:7万6,364人、女性、1980~2012年のデータ)

・Nurses' Health Study Ⅱ(NHSⅡ:9万2,946人、女性、1991~2013年のデータ)

・Health Professionals Follow-Up Study(HPFS:4万1,526人、男性、1986~2012年のデータ)

 これらはいずれも世界的に有名なコホート研究であり、これまでにも数多くの論文を出しているが、念のため、簡単にご紹介する。

 NHSは1976年に開始され、30~55歳の女性看護師12万1,700人を登録したコホート研究である。

 NHSⅡは1989年に設立され、25~42歳の女性看護師11万6,671人を登録したコホート研究である。

 HPFSは1986年に開始され、40~75歳の男性医療従事者5万1,529人を登録したコホート研究である。

 いずれも登録から2年ごとに生活習慣や健康状態についてのアンケートがなされている。

 本研究では、登録の時点で心血管疾患やがんの既往がある人、ナッツ摂取の状況についての情報を提供しなかった人、食事摂取記録の記載に漏れが多い人、エネルギー摂取が過少の人(男性<800kcal/日、女性<600kcal/日)、エネルギー摂取が過剰の人(男性>4,200kcal/日、女性>3,500kcal/日)を除外し、NHSの7万6,364人、NHSⅡの9万2,946人、HPFSの4万1,526人を解析対象とした。

 食習慣アンケートにおけるナッツ摂取についての質問は28gを1サービングと定義し、以下の中から選択することになっていた。

 サービング=食べ物や飲み物の平均化した単位。例、パン1枚、ナッツ28㌘は1サービング。

 1.ほとんど摂取しない

 2.月に1~3サービング

 3.週に1サービング

 4.週に2~4サービング

 5.週に5~6サービング

 6.日に1サービング

 7.日に2~3サービング

 8.日に4~6サービング

 9.日に7サービング以上

 また1998年以降には、それまでの総ナッツ摂取量に変えて、クルミ、ピーナツ、ピーナツバター、その他のナッツの摂取量を調査することとし、それらの合算量を総ナッツ摂取量とした。

 実際の解析においては、暦年のナッツ摂取量を基に、以下の5群にまとめて解析した。

 第一群:ほとんど摂取しない(0.00サービング/日)

 第二群:週に1サービング未満(0.01~0.09サービング/日)

 第三群:週に1サービング(0.10~0.19サービング/日)

 第四群:週に2~4サービング(0.20~0.59サービング/日)
 
 第五群:週に5サービング以上(0.60サービング/日以上)

 心血管疾患の定義として、主要アウトカムには心筋梗塞、脳卒中、心血管死の複合エンドポイントをおいた。

 また、複合エンドポイントのそれぞれの構成要素〔致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳卒中(虚血性、出血性)〕を二次エンドポイントとした。

 これらのエンドポイントがアンケ―ト上で回答された場合に、本人(本人が亡くなった場合には家族)にカルテ開示の承諾を求め、エンドポイントが生じた月とエンドポイントの診断内容を確認した。

 研究のポイント2:ナッツ摂取量と心血管疾患の発症に負の相関

 NHSで28.7年、NHSⅡで21.5年、HPFSで22.5年(計506万3,439人・年)の平均追跡期間中に、8,390人の心筋梗塞、5,910人の脳卒中、計1万4,136人の心血管疾患の発症があった。

 そこで、主要アウトカムの発症リスクを各群で見てみると、ナッツ摂取が多い方が心血管疾患の発症リスクが少なかった。

 これは年齢で調整しても、多変量(年齢、人種、BMI、身体活動量、エネルギー摂取量、喫煙状況、ビタミン剤内服の有無、アスピリン使用の有無、家族歴、既往歴、エネルギー摂取量、閉経状況、飲酒、野菜摂取、肉摂取)で調整しても同様であった。

 こうしたナッツ摂取量と心血管疾患との負の相関は、一つひとつの心血管イベントについて検討した場合、心筋梗塞に対しては認められたが、脳卒中に対しては認められなかった。

 ナッツの種類による相違を検討したところ、心筋梗塞に対してはいずれのナッツも発症リスクの減少につながっており、脳卒中に対しては特にクルミが(3コホートの合計ではピーナツも)発症リスクの減少につながっていた。

 今回の結果を別な言葉で表現すると、「ナッツを28㌘食べるごとに心血管疾患が全体として6%ずつ減少し、心筋梗塞としては13%ずつ減少する」ということになるらしい。

 私の考察:早速今日の夜食にナッツを食べよう
 
 今回のデータ解析結果からは、なんとナッツを1サービング(28㌘)摂取するごとに13%もの心筋梗塞リスクの減少が得られるという。

 もちろん、これはあくまでも観察研究から得られた解析結果にすぎない。

 栄養学では、観察研究のデータと介入試験のデータに乖離が生じることがあり、観察研究のデータだけをうのみにして因果関係を推し量ることはできない。

 しかし、PREDIMED試験で既に介入試験の結果と一致しているだけに、因果関係はあるのではなかろうか。

 1サービングで13%もの心筋梗塞リスクの減少が得られるというのは大げさな気もするが、負の関連があるのは間違いように思う。

 この論文に対してJ Am Coll Caridol誌は、PREDIMED試験のメンバーでもある、スペイン・バルセロナの肥満栄養病態生理研究所のEmilio Ros氏にeditorial commentを委ね、

「ナッツを食べよ!されば生きながらえん!!(Eat Nuts, Live Longer)」という題名の論文を掲載している。

 Ros氏も既存のデータとの一致から、ナッツ摂取による心血管疾患保護への因果関係が強く示唆されるとし、αリノレン酸(植物性ω3多価不飽和脂肪酸。特にクルミに多いとされる)が特に良い効果をもたらし、故にクルミは脳卒中に対しても保護的に働くのではないかとしている。

 また、クルミと同様、ピーナツも脳卒中を含めて保護的であることにも注目しつつ、ピーナツバターではそうした作用がないことから、「おそらく、塩分や糖質が添加されるためにナッツのメリットが消失してしまっているのであろう」としている。

 Ros氏の結論は、"ナッツは天然の健康カプセルと見なせるかもしれない"である。

 1週間に1㍑のオリーブ油の摂取は難しい私ではあるが、1日に28㌘のナッツなら可能だ。

 早速今日の夜食にナッツを食べようと思う。
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耳が遠い高齢者への対応 [ひとこと養生記]

耳が遠い高齢者にどう接するか-加齢性難聴への対応

「耳が遠い高齢者」の多くは加齢性難聴(老人性難聴)。

その聴こえにくさの特徴と、周囲の正しい対応の仕方について、木村琢磨・北里大学医学部准教授が以下のように解説している。


「加齢性難聴」とは、「耳が遠い高齢者」の多くは加齢性難聴(老人性難聴)で、程度の差こそあれ年を重ねるにつれて多くの高齢者に生ずるといえます。

その"聞こえにくさ"の特徴には、

① 高い音が聞こえにくい(特に「さ行」「は行」「か行」などの子音)

② 音は聞こえても内容が聞き取りにくい(語音明瞭度の低下)

③ 会話以外の音があると音が響いて聞き取りにくい(補充現象)などがあります。

具体的な徴候として「何回も聞き返す」「聞き間違い」「見当違いの返答」などが生じます。

本人は自覚していないことも多いため、やみくもに「耳が遠い」と指摘すれば本人が認めないばかりか、関係性が悪化することがあり、注意が必要です。

そのため医師には、耳が遠い高齢者へ適切に接することはもちろん、家族へ対応法を助言できることが求められています。

加齢性難聴が高齢者に及ぼす影響

耳が遠い高齢者の中には、会話の内容が聞こえていないにもかかわらず「相槌をうつ」など"聞こえる振り"をしている方がいます。

それは「聞き返すことが恥ずかしい」「聞き返すと相手を煩わせたり嫌がられたりするのではないか」といった思惑がはたらくためでしょう。

会話の内容が十分に聞こえない生活が続けば、コミュニケーションに支障が生じてなんらかのトラブルが生ずることも懸念されます。

相手の声が聞こえないためしゃべり続けて"空気を読めない"状態となり、悪影響を及ぼすこともありうるでしょう。

"引っ込み思案"となることもあります。

耳が遠い高齢者が"的外れな"ことを言ったり、難聴に伴う小さなトラブルが日常生活で積み重なった結果、本人がしゃべらなくなったり、周囲が必要以上には話しかけなくなったりするかもしれません。

そのような際には、耳が遠い高齢者に疎外感・孤独感、ある種のイライラが生じたり、「被害的」「閉じこもり気味」になり、認知症の進行につながる可能性も秘めています。

なお、耳が遠い高齢者は、見当違いの言動が多くなるため認知症と間違えやすいので、長谷川式などの認知症スケールの判定の際には難聴を考慮します。

五つの配慮で意思が伝わりやすくなる

耳が遠い高齢者とのコミュニケーションは、その対応次第で改善します。

第一に、難聴の方に話す準備として、雑音を少なくするための「静かな環境」、口の形や表情が見やすいように「暗過ぎない環境」「マスクをしない」などに配慮します。

そして、話始める際には、声かけや合図をします。

ふいに話しかけられるよりも、聞こうと準備するため聞こえやすいと考えられます。

そもそも急に背後から話しかけると、高齢者は足音などから気配を感じにくいため、びっくりしてしまう可能性もあり避けるべきでしょう。

第二に、難聴の程度を確認し、声の大きさ、声のトーン、話すペース、話しかける距離に留意します。

「大して難聴がない高齢者へ、耳元で大きな声で叫ぶこと」は慎むべきです。

かくいう筆者も"耳"が痛いところです。

話す距離が近過ぎたり、声が大き過ぎたりすると母音が強調され、かえって聞きにくいとされています。

加齢性難聴は高い音が聞きにくいため、低いトーンの声が理想です。

具体的な話し方として、耳元ではなく数十cm程度離れた距離から、まず普通の声の大きさで、ややゆっくりめのペースで、ハキハキと話します。

そして、耳が遠い高齢者の反応、「聞こえているか」「理解しているか」を確認しつつ、徐々に声を大きくしていきます。

なお、耳垢除去で聴力の大幅な改善が望める高齢者がいることを認識しておきます。

第三に、話始める際に「[新月]?[新月]?のお話ですが・・・」などとトピックを明示します。

たとえ難聴があっても、なんの話題か理解していれば、幾らか聞こえにくい箇所があっても"勘"が働きやすくなり、理解度が増すと考えられます。

もしも話題が次々に変われば理解しにくくなるので、話題はなるべく絞り込みます。

第四に、話すスピードはゆっくりとしたペースとし、間を置いて区切りながら話すようにします。

そして、話す内容は、なるべく簡潔な文にし、適宜、文節ごとに短く区切って話します。

丁寧な言い方よりも、普通の言い回しの方が分かりやすいと考えられます(たとえば、「ご飯召し上がりましたか?」よりも「ご飯食べました?」)。

そして、理解しているか否か問いかけたり、「今、[新月]?[新月]?のお話をしていますよ」などとトピックを確認しながら話し、相手が聞き返すタイミングも図ることが理想でしょう。

もしも聞こえにくい場合には、より聞きやすそうな他の言葉に変えて話を続けます。

第五に、非言語的な側面を重視します。

一般的にいわれている「患者の方を向き正面から話す」「相手の目を時々見ながら話す」「なるべく目線の高さを合わせる」の他、視力が保たれている方には、身振りや筆談も併用します。

筆談は、紙に書くことも有用ですが、最近では電子カルテの画面に大きなフォントで書くことも有用でしょう。

もちろん、耳が遠い高齢者本人や介護者が不便を感じている場合は補聴器の適応も念頭に置きます。

介護者のみが不便に感じていて、本人が難聴で生活に不便を感じていなければ、高価な補聴器を購入しても使用は困難な可能性があり、補聴器の導入はあくまで本人の意志を重視すべきでしょう。

第五に、非言語的な側面を重視します。

一般的にいわれている「患者の方を向き正面から話す」「相手の目を時々見ながら話す」「なるべく目線の高さを合わせる」の他、視力が保たれている方には、身振りや筆談も併用します。

参考文献: 佐野 智子ら、難聴高齢者とのコミュニケーション-ICF モテ?ルの視点から.城西国際大学紀要2015;23(3)

木村琢磨・北里大学医学部准教授(総合診療医学・地域総合医療学 北里大学東病院 在宅・緩和支援センター長)。
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ケトン食に抗がん作用? [ひとこと養生記]

糖尿病治療食として糖質制限食が広がりつつある

その極端な形であるケトン産生食(ケトン食)に対する関心が世界的に高まっている。

摂取エネルギーの60~90%を脂肪で摂る糖質制限食。

糖・炭水化物の摂取を極端に減らすことにより、体内でエネルギー源として通常使われている糖が枯渇し、代わりに脂肪が分解されてケトン体(体内の脂肪が分解されてできる産物)が生じ、これをエネルギー源として利用する。

ケトン食の治療効果は、難治性てんかんに対してはすでに確立されている。

がんに対しても有効性があるのではないかと、研究が盛んに行われている。

以下は、糖尿病の専門医、山田 悟・北里研究所病院糖尿病センター長が、医学専門紙「Medical Tribune」の最新号へ寄稿した論文の要約。

研究のポイント1:臨床研究での有効性判定は当面不可能か

がん患者に対するケトン食の臨床試験についてシステマチックレビューを実施したのは、韓国・ソウルの崇義女子大のグループである。

研究グループは、PubMed, MEDLINE, Springer Linkといったデータベースに対して、ケトン食、ケトン、がん、腫瘍、腫瘍学といった用語を掛け合わせ、言語制限をかけずに1985年以降の年代限定をつけて検索を行った。

ランダム化比較試験(RCT)、コホート研究を採用し、症例報告や動物実験は除外することとした。

当初、468件の論文がヒットしたが、上記の基準に照らし合わせ、最終的に選択されたのは10件の論文であった。

これらの論文の中に明確なRCTはなく、ほとんどが少人数のcase seriesになっている。

また多くの研究で、既に他の治療法による加療が困難になった末期がん患者が対象とされており、有効性について判定することは不可能だという印象を持たざるをえない。

わが国でもステージIVの進行した大腸がん、乳がんの患者を対象に、前後比較で糖質制限食の有効性を検証しようとする多摩南部地域病院における臨床試験がUMIN-CTRに登録されているが、有効性を検証することは難しいのではなかろうか。

このシステマチックレビューでは、clinicalTrials.gov(米国におけるUMINに当たるもの)に登録されて実施中の臨床試験が13件掲載されているが、当面結論は出なさそうに思われる。

研究のポイント2:基礎研究ではケトン体に対する反応はがん種により異なる

さて、実際の臨床におけるケトン食のがんに対する効果が不確定な中、中国の研究グループががん種によってケトンに対する反応が異なることを示す基礎的なデータを発表した(J Lipid Res2018年2月5日オンライン版)。

研究グループは、33種のがんのモデル細胞を用いて、ケトン体をエネルギー源にするための酵素のmRNAの発現を検討した。

その結果、がん種によって酵素発現に差異があり、最も発現が少なかったのが膵がんのモデル細胞の1つであるPANC-1であり、最も発現が多かったのが子宮頸がんのモデル細胞Helaであった。

そこで研究グループは、培養液のブドウ糖濃度を54mg/dLとやや低めにしておいた中で、0, 5, 10mMでケトン体であるβヒドロキシ酪酸を添加する培養実験をPANC-1とHelaで行った。

その結果、ブドウ糖濃度100mg/dLで通常通りに培養した場合に比較し、PANC-1では細胞増殖が抑制されていたのに対し、Helaでは抑制がβヒドロキシ酪酸濃度依存性に細胞増殖が向上していた。

また、マウスにPANC-1細胞あるいはHela細胞を移植し、その後のマウスの飼育において通常食あるいはケトン食を食べさせたところ、PANC-1を移植されたマウスはケトン食で寿命が延長されたが、Helaを移植されたマウスはケトン食で寿命が短縮してしまった。

こうしたことから、研究グループはケトン体を利用できないがん種に対してのみケトン食の効果を期待できるであろうと結論している。

私の考察:ケトン体利用酵素発現の有無は確認すべき

がん細胞はミトコンドリアでのTCA回路を用いず、細胞質での解糖系からエネルギーを生み出していることをWarburgが報告して以来、極端に糖質を制限して腫瘍のエネルギー源を断つことで抗腫瘍効果が期待できるとされてきた。

しかし、韓国のグループのシステマチックレビューを見ると、臨床現場におけるケトン食の意義は未確立である。

一方、今回の中国のグループのデータは、腫瘍細胞でもケトン体→アセチルCoAという反応さえ生じれば、アセチルCoA→TCA回路というミトコンドリアでの反応を起こせることを示している。

ケトン体→アセチルCoAという反応を起こせるかどうかがケトン体に対するがん細胞ごとの反応性の相違を生むので、がん種によってはケトン食ががんを進行させる可能性すら存在することになる。

実際、がんは必ずしもミトコンドリアを使えないのではなく、増殖の過程で血管新生を起こせるまで低酸素環境下にさらされることが多く、そうした環境に適応しているだけという仮説もあるようである。

今後、臨床研究においてケトン食を取り扱う際には、少なくともがん種がケトン体利用酵素(BDH、OXCT)を発現しているかどうかを確認する必要があるように思われる。

ケトン食のがんに対する有効性:1926年、Warburgは腫瘍細胞が通常の酸素濃度下でもミトコンドリアでのTCA回路を利用せず、細胞質での解糖系でエネルギーを確保していること(Warburg効果と呼ぶ)を報告した。

腫瘍細胞にはミトコンドリアの利用障害があるのではないかと考えられ、健常細胞には脂質やケトン体といったミトコンドリアでエネルギーを得られる栄養素を与え、がん細胞には糖質を届けないようにすればがん治療になるとの仮説が生じ、ケトン食のがんに対する有効性に期待が持たれている。
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