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お笑いとうつ病 [医学・医療短信]

「うつ病に効果あるかも」お笑いと健康の関係
石蔵文信 / 大阪大学招へい教授

 明るく楽しく過ごすことが健康につながり、がんや高血圧、糖尿病の治療に良い効果があることはよく知られている。

 例えばがんと診断され、完治の見込みがなく、余命が1年くらいと宣告された時、より良い治療を求めてドクターショッピングを繰り返すとあまり長生きできない印象があるが、逆に腹をくくって、残った財産で好きなことをしようと決めた患者さんは、予想以上に元気でい続けることがある。

 私の知人も末期がんで余命1年未満と宣告されたが、残った人生を楽しく生きるしかないと腹をくくったようで、最後までたばこや酒をやめなかったが3年以上元気だった。

 笑いと健康の関係を調べる研究が進んでいる

 がん患者が楽しく生きることで、がん細胞をやっつけるナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫系が活性化され、がんを封じ込めるのではないかと考えられている。

 さらに笑うことで、緊張時の交感神経モードから、リラックス時の副交感神経モードになるため血圧が下がり、血流が改善する効果も期待できる。

 最近は、笑いの健康への効果を真剣に検討する研究者が増えてきたようだ。

 中国の研究者が成人のうつ病、不安および睡眠の質に対するお笑い介入の効果をいろいろなデータベースを解析して検討している(Journal of Advanced Nursing誌オンライン版2019年3月18日号)。
 
 それによると、お笑い介入が成人のうつ病、不安を有意に減少させ、睡眠の質を改善することが示されたという。

 そして長期的なお笑い介入は、うつ病患者により多くの利益をもたらすのではないか? と推測されている。

 難しいのは笑いのツボが個人で違うことや、笑いの質をどのように評価するかだろう。

 お笑いがうつ病に良いかもしれないと思って、患者を無理に演芸場に連れて行くのは、あまりお勧めできない。

 またスペインの研究者は、笑いを誘うようなユーモラスなビデオをうつ病患者と健常者に見せて笑いの質を分析している(Journal of Affective Disorders誌2014年5月号)。

 それによると、うつ病患者と健常者では笑いのタイプに差が見られ、さらに笑いとうつ病状態との間にも強い関連性があることが示唆されている。

 このことから笑いを分析することでうつ病の状態や深刻度を把握できる可能性があるとしている。

 ただ、やはり笑いには個人的な差が大きく、楽しそうに笑っていない場合もあったようだ。

 日本でも、落語家を招いて「笑いの健康作用検証試験」が行われた 。

 見ただけでは病気と分からない「ほほえみうつ病」

 「ニコニコしているからうつ病ではない」と短絡的に考えて診断を誤ることもある。

 通称“ほほえみうつ病”という概念がある。

 中高年男性によくある状態で、診察室に入ってきた時は妙にニコニコしていて、あまり重症なうつ病には見えない。

 症状も軽めに言うので、医師は深刻なうつ病と診断しない場合がある。

 うつ病は血液や画像検査では診断できないので、本人の申告をもとに医師が判断する。

 だから、ニコニコして症状も深刻でなかったらうつ病と診断できないことがある。

「深刻なうつ病と診断されて、休職でもさせられたら大変だ」との思いから、症状をつい軽く伝えてしまう人もいるからだ。

 それを避けるためにも身近にいる妻や親からの聞き取りは重要だ。

 もし妻や親がもっと深刻な状態であると話したら、そちらの方が真実かもしれないと判断した方が安全である。

 ほほえみ型うつ病の男性の表情は総じて硬く、楽しそうでないことは経験豊富な医師なら気づくだろう。

 笑うことが健康に良いのは確かだろうが、しんどい時に無理に笑う必要はない。

 つらい気持ちを素直に出したほうがよい場合もある。

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