悪性黒色腫(メラノーマ) [医学・医療短信]
危険なほくろの見分け方
医学的には色素性母斑や単純黒子などと呼ばれる「ほくろ」。
メラニン色素を生み出すメラノサイトという細胞が集まってできたもので、良性の腫瘍に分類されます。
生まれつきのものもありますが、後天的なものは小児期から思春期に増え、それ以降はあまり増えることはありません。
女性の場合、ホルモン分泌の変化によって、妊娠中に増える人もみられます。
しかし、形のおかしいほくろができた、前からあったものの一部の色が濃くなってきたなど、何かしら変化がみられたら、要注意です。
皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」が疑われる場合があります。
メラノサイト(色素細胞)が「がん化」する
皮膚は、表皮(角質層、顆粒層、有棘層、基底層)、真皮、皮下組織と、何層もの組織でできています。
メラノーマは、表皮の基底層にあるメラノサイトが、がん化したものです。
メラノサイトがあれば、全身のどこでも発症する可能性があり、ときにはまぶたや鼻腔、唇、口腔などにできることも。
また、進行が速いものでは、肺や肝臓、骨、リンパ節などに転移することも少なくないのです。
メラノーマの4つのタイプ
メラノーマは、できやすい部位や形状などによって、主に四つのタイプに分けられます。
1.末端黒子型
日本人に最も多いタイプ/足の裏や手のひら、手足の爪などにできやすい/褐色・黒褐色の小さなシミが広がっていき黒くなる/潰瘍ができることもある/爪にできる場合、黒褐色のスジが縦に入り、広がっていく
2.表在拡大型
メラニン色素の少ない白色人種に多いタイプ/胸、腹、背中などの体幹や、四肢のどこにでも発症する/小さなシミが、徐々に濃くなり、盛り上がっていく
3.結節型
部位を問わず発生する/進行が速く転移しやすいため、メラノーマの中で最も悪性度の高いタイプ/突然ほくろのような黒い盛り上がりができ、それが徐々に大きくなっていく
4.悪性黒子型
高齢者に多い/日光にさらされている顔に発生しやすく、首や手の甲などにできることもある/褐色・黒褐色のシミが濃くなりながら徐々に大きくなる/しこりやこぶになることもある/紫外線と外的刺激が発症要因に
メラノーマの罹患率は、高齢になるほど上がります。
これは紫外線の影響で、高齢者ほど紫外線を浴びてきた期間が長くなるためだと考えられています。
日焼け止めの使用で、メラノーマの発生率が下がるという報告もあります。
一方、日本人は足の裏など紫外線の影響を受けにくい部位の発症が多く、体重がかかったり、衣類でこすれるなどの刺激も要因のひとつと考えられています。
転移、再発に注意が必要
治療の基本は切除手術です。
再発防止のため、がんの縁から1~2cm程度の範囲を切除します。
また、切除した部位や範囲によって、皮膚の一部を移植することもあります。
なお、メラノーマはリンパ節に転移しやすい疾患のため、手術の際に「センチネルリンパ節生検」が行われます。
近年の研究で、がん細胞が一番初めに到達するセンチネルリンパ節に転移が認められなければ、転移の心配はほとんどないことがわかったためです。
しかし、なかには術後の早い時期に再発や転移がみられることあり、経過観察を続けることが必要となります。
また、抗がん剤による化学療法や放射線治療は、あまり有効性が高くないと考えられています。
ほかに、ニボルマブ、イピリムマブなどNKT細胞を利用した免疫療法などがありますが、その効果は一定していません。
このようなことからも、メラノーマは早期発見が非常に大切だといえるでしょう。
メラノーマを見逃さないために
メラノーマは、良性のほくろやシミとの違いがわかりづらく、見逃されやすいといえます。
しかし、注意深く観察すれば、自分でも発見できる「がん」なのです。
メラノーマは大きさや形状などが次第に変化していくので、1年に1回は全身のチェックをしましょう。
頭や背中など自分で見えない部分は、家族や身近な人と確認し合うことをおすすめします。
【早期発見しやすい特徴】
今までなかった場所にできた/足の裏や手のひらでは直径が7mm以上ある(直径の目安は6mm以上など諸説あります)/色にムラがある/輪郭がギザギザしている、にじみ出たようになっている/形が左右非対称である/爪に褐色または黒褐色の細い縦のスジ(色素線条)が入っている
【1~2年の間に変化して見られる特徴】
色=薄い褐色から濃い黒に変化する/色に濃淡が出てくる/一部の色が抜けてまだらになる
大きさ=明らかに大きくなっている(1年以内の短期間で大きくなるものは特に注意が必要)/形=輪郭がギザギザしたり、左右非対称になってくる/輪郭の一部から色が染み出して見える/一部が盛り上がったりしこりができる
かたさ=一部または全部がかたくなってくる(通常、ほくろのかたさは均一)
□爪=縦のスジの色が濃くなってくる/スジの幅が広くなってくる/爪が割れたり、爪の生え際に色が染み出したりする
早期発見のためにも、チェックポイントに当てはまるようなほくろやシミを見つけたら、速やかに皮膚科を受診してください。
大きさの変化などを確認するには、写真を保存しておくと比較しやすいでしょう。
受診の際は、いつごろ現れたのか、変化に気づいた時期などを可能な限り医師に伝えるようにします。
外的な刺激もメラノーマの発生要因になると考えられているので、ほくろやシミを気にして頻繁にさわったり、傷つけたりすることはやめましょう。
ダーモスコピー検査と皮膚生検
「ダーモスコピー」は、患部を拡大して観察する医療機器で、メラノーマの診察に用いられます。
専門医でも見分けのつきにくいほくろやシミの状態を、より詳しく観察できるため、早期発見に役立ちます。
それでも診断がつかない場合、患部を慎重に採取して顕微鏡でさらに詳しく調べる「皮膚生検」を行うこともあります。
ただし、皮膚科専門医であってもダーモスコピー検査を行っていない場合もあるので、事前に確認してから受診するとよいでしょう。
監修:関東中央病院皮膚科特別顧問 日野治子
(「みんなの健康ライブラリー」2018年11月掲載より)
医学的には色素性母斑や単純黒子などと呼ばれる「ほくろ」。
メラニン色素を生み出すメラノサイトという細胞が集まってできたもので、良性の腫瘍に分類されます。
生まれつきのものもありますが、後天的なものは小児期から思春期に増え、それ以降はあまり増えることはありません。
女性の場合、ホルモン分泌の変化によって、妊娠中に増える人もみられます。
しかし、形のおかしいほくろができた、前からあったものの一部の色が濃くなってきたなど、何かしら変化がみられたら、要注意です。
皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」が疑われる場合があります。
メラノサイト(色素細胞)が「がん化」する
皮膚は、表皮(角質層、顆粒層、有棘層、基底層)、真皮、皮下組織と、何層もの組織でできています。
メラノーマは、表皮の基底層にあるメラノサイトが、がん化したものです。
メラノサイトがあれば、全身のどこでも発症する可能性があり、ときにはまぶたや鼻腔、唇、口腔などにできることも。
また、進行が速いものでは、肺や肝臓、骨、リンパ節などに転移することも少なくないのです。
メラノーマの4つのタイプ
メラノーマは、できやすい部位や形状などによって、主に四つのタイプに分けられます。
1.末端黒子型
日本人に最も多いタイプ/足の裏や手のひら、手足の爪などにできやすい/褐色・黒褐色の小さなシミが広がっていき黒くなる/潰瘍ができることもある/爪にできる場合、黒褐色のスジが縦に入り、広がっていく
2.表在拡大型
メラニン色素の少ない白色人種に多いタイプ/胸、腹、背中などの体幹や、四肢のどこにでも発症する/小さなシミが、徐々に濃くなり、盛り上がっていく
3.結節型
部位を問わず発生する/進行が速く転移しやすいため、メラノーマの中で最も悪性度の高いタイプ/突然ほくろのような黒い盛り上がりができ、それが徐々に大きくなっていく
4.悪性黒子型
高齢者に多い/日光にさらされている顔に発生しやすく、首や手の甲などにできることもある/褐色・黒褐色のシミが濃くなりながら徐々に大きくなる/しこりやこぶになることもある/紫外線と外的刺激が発症要因に
メラノーマの罹患率は、高齢になるほど上がります。
これは紫外線の影響で、高齢者ほど紫外線を浴びてきた期間が長くなるためだと考えられています。
日焼け止めの使用で、メラノーマの発生率が下がるという報告もあります。
一方、日本人は足の裏など紫外線の影響を受けにくい部位の発症が多く、体重がかかったり、衣類でこすれるなどの刺激も要因のひとつと考えられています。
転移、再発に注意が必要
治療の基本は切除手術です。
再発防止のため、がんの縁から1~2cm程度の範囲を切除します。
また、切除した部位や範囲によって、皮膚の一部を移植することもあります。
なお、メラノーマはリンパ節に転移しやすい疾患のため、手術の際に「センチネルリンパ節生検」が行われます。
近年の研究で、がん細胞が一番初めに到達するセンチネルリンパ節に転移が認められなければ、転移の心配はほとんどないことがわかったためです。
しかし、なかには術後の早い時期に再発や転移がみられることあり、経過観察を続けることが必要となります。
また、抗がん剤による化学療法や放射線治療は、あまり有効性が高くないと考えられています。
ほかに、ニボルマブ、イピリムマブなどNKT細胞を利用した免疫療法などがありますが、その効果は一定していません。
このようなことからも、メラノーマは早期発見が非常に大切だといえるでしょう。
メラノーマを見逃さないために
メラノーマは、良性のほくろやシミとの違いがわかりづらく、見逃されやすいといえます。
しかし、注意深く観察すれば、自分でも発見できる「がん」なのです。
メラノーマは大きさや形状などが次第に変化していくので、1年に1回は全身のチェックをしましょう。
頭や背中など自分で見えない部分は、家族や身近な人と確認し合うことをおすすめします。
【早期発見しやすい特徴】
今までなかった場所にできた/足の裏や手のひらでは直径が7mm以上ある(直径の目安は6mm以上など諸説あります)/色にムラがある/輪郭がギザギザしている、にじみ出たようになっている/形が左右非対称である/爪に褐色または黒褐色の細い縦のスジ(色素線条)が入っている
【1~2年の間に変化して見られる特徴】
色=薄い褐色から濃い黒に変化する/色に濃淡が出てくる/一部の色が抜けてまだらになる
大きさ=明らかに大きくなっている(1年以内の短期間で大きくなるものは特に注意が必要)/形=輪郭がギザギザしたり、左右非対称になってくる/輪郭の一部から色が染み出して見える/一部が盛り上がったりしこりができる
かたさ=一部または全部がかたくなってくる(通常、ほくろのかたさは均一)
□爪=縦のスジの色が濃くなってくる/スジの幅が広くなってくる/爪が割れたり、爪の生え際に色が染み出したりする
早期発見のためにも、チェックポイントに当てはまるようなほくろやシミを見つけたら、速やかに皮膚科を受診してください。
大きさの変化などを確認するには、写真を保存しておくと比較しやすいでしょう。
受診の際は、いつごろ現れたのか、変化に気づいた時期などを可能な限り医師に伝えるようにします。
外的な刺激もメラノーマの発生要因になると考えられているので、ほくろやシミを気にして頻繁にさわったり、傷つけたりすることはやめましょう。
ダーモスコピー検査と皮膚生検
「ダーモスコピー」は、患部を拡大して観察する医療機器で、メラノーマの診察に用いられます。
専門医でも見分けのつきにくいほくろやシミの状態を、より詳しく観察できるため、早期発見に役立ちます。
それでも診断がつかない場合、患部を慎重に採取して顕微鏡でさらに詳しく調べる「皮膚生検」を行うこともあります。
ただし、皮膚科専門医であってもダーモスコピー検査を行っていない場合もあるので、事前に確認してから受診するとよいでしょう。
監修:関東中央病院皮膚科特別顧問 日野治子
(「みんなの健康ライブラリー」2018年11月掲載より)