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動脈硬化予防指針 [医学・医療短信]

動脈硬化予防指針、5年ぶりに改訂

日本動脈硬化学会は、5年ぶりに改訂する「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」(以下、2017年版)の骨子が固まったとして、動脈硬化教育フォーラムで作成委員長の木下誠氏(帝京大学客員教授)が概要を発表した。

今回、クリニカルクエスチョン(CQ=臨床的疑問)とシステマチックレビュー(文献をくまなく調査しデータの偏りを除き、分析を行うこと)の部分的な導入や絶対リスクの評価法の変更、冠動脈疾患の二次(再発)リスクが高い病態の追加などが盛り込まれる。

 2017年版における脂質異常症の診断基準は、2012年に発行した現行のガイドライン(以下、現行GL)と同様、高LDL-C血症はLDL-C値140mg/dL以上(境界型は120~139mg/dL)、低HDL-C血症は40mg/dL未満、高トリグリセライド(TG)血症は150mg/dL以上となる。

 ただし、TG 400mg/dL以上や食後採血の場合の基準値としてnon-HDLコレステロール値が付記される。

 注=LDL-C(悪玉コレステロール)血症 HDL-C(善玉コレステロール)血症

 またLDL-Cの測定法については、Friedewald(フリードワルド)式と直接法の両方を挙げているが、エビデンスのほとんどがFriedewald式を用いていることから、Friedewald式がやや優位であるという。

 注=Friedewald(フリードワルド)式。かつてLDL-コレステロールは、総コレステロール、中性脂肪、HDL-コレステロール値から、LDL-コレステロール=総コレステロール−HDLコレステロール−(中性脂肪/5)の計算式(フリードワルドの式)で算出されていた。

 絶対リスク評価:死亡から発症に変更

 木下氏によると、今回の主な変更点のつはCQとシステマチックレビューの導入であるという。しかし、全ての項目で導入するわけではなく、エビデンス(科学的証拠)がある「危険因子の評価」「絶対リスク評価」「食事療法」「薬物療法」の項目に限定される。

 エビデンスレベルは、臨床試験では5段階(1+~4)に、疫学研究では4段階(E-Ⅰa~E-Ⅲ)に分け、推奨レベルは「グレードA(強い推奨)」と「グレードB(弱い推奨)」の2段階とする。

 その他の主な改訂点として、絶対リスク評価方法の変更、動脈硬化性疾患の危険因子の追加、高リスクの病態の追加が挙げられている。

 冠動脈疾患の一次(初発)予防におけるリスク区分の評価は、現行GLのNIPPON DATA 80に基づく「冠動脈疾患の死亡」から、吹田研究に基づく「発症率」に変更される。その背景には、スタチン使用の普及により冠動脈疾患死が減少したことが挙げられる。

 国内のさまざまな疫学研究の中から吹田研究を選定した理由について木下氏は、同研究のアウトカムが冠動脈疾患発症であること、LDL-CおよびHDL-Cの測定データがあることなどを挙げた。

 これらを踏まえ、発症リスクの予測ツールとして吹田研究での吹田スコアが採用される。

 同スコアの評価項目は、年齢、性、喫煙、血圧値、HDL-C値、LDL-C値、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患の家族歴で構成され、これらの合計点が40点未満は「低リスク」(予測される10年間の発症リスク2%未満)、41~55点であれば「中リスク」(同2~8%)、56点以上であれば「高リスク」(同9%以上)にそれぞれ分類するというもので、同スコアの簡易版も作成される。

 木下氏らは、現行GLにおける10年間の冠動脈疾による死亡率と2017年版の発症率に齟齬はないとの認識を示している。

 初発予防の管理目標値:変更なし

 初発予防におけるリスク区分別の脂質管理目標値は現行GLと変わりはなく、低リスク:LDL-C160 mg/dL未満、中リスク:140mg/dL未満、高リスク:LDL-C120 mg/dL未満をそれぞれ目指す。

 しかし、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)のいずれかがあれば、同スコアにかかわらず「高リスク」となる。

 なお、同スコアは、家族性高コレステロール血症(FH)患者には用いない。

 リスク管理:腹部大動脈瘤、動脈硬化性腎動脈狭窄症などを追加

 動脈硬化性疾患予防に対する包括的リスク管理として、2017年版では現行GLにある脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、CKD、冠動脈疾患の家族歴、動脈硬化性疾患の既往(冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、PAD)、加齢、性などの危険因子に加え、「腹部大動脈瘤」「動脈硬化性腎動脈狭窄症」「高尿酸血症」「睡眠時無呼吸症候群」が追加される。

 また再発予防において、より厳格な管理を要する高リスクの病態も大きく変わり、①急性冠症候群②喫煙③糖尿病④CKD⑤非心原性脳梗塞・PAD⑥メタボリックシンドローム⑦主要危険因子の重複⑧FH-となった。

 再発予防の管理目標値は、現行GLのLDL-C100mg/dL未満であることに変わりはない。

 しかし、上記の高リスク病態を有する既往例では「目標値LDL-C 70mg/dL未満が妥当と考えられる」とする一文を本文に入れる予定だと木下氏は述べた。

 FHの治療:新規薬剤や第一選択薬を変更

 FHの診断基準値は、小児(15歳未満)および成人(15歳以上)ともに現行GLと変わりない。

 しかし、2017年版では成人FHヘテロ接合体およびホモ接合体、小児ヘテロ接合体における治療フローチャートが加わる。

 いずれも薬物療法の追加・変更があり、成人例ではPCSK9阻害薬、ホモ接合体のみの適応ではあるがMTP阻害薬の2剤を追加。小児では第一選択薬がレジンからスタチンに変更される。

 動脈硬化予防指針:PCSK9阻害薬、MTP阻害薬を付記

 2017年版における薬物療法については、現行GLにあるスタチン、陰イオン交換樹脂、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬、フィブラート、ニコチン酸誘導体、プロブコール、EPA製剤に加え、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬が付記される。

 ただしMTP阻害薬については前述の通り、投与患者が限定されることから、一般的に用いられる脂質異常症治療薬とはならない。

 なお、2017年版の発行スケジュールについては、今後募集するパブリックコメントを経て、ことし7月に開かれる日本動脈硬化学会までの発行を予定している。

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友人&糖尿病 [医学・医療短信]

「友人が多いほど糖尿病になりにくい」は本当か

 中高年から高齢になると社会的に孤立している人よりも、付き合いのある友人が多い人ほど2型糖尿病になりにくい可能性があることが、オランダで行われた新たな研究で報告された。

「BMC Public Health」オンライン版に掲載された論文の著者らは、社会的なネットワークを広げて孤立を防ぐことは、2型糖尿病の予防策の一つになると強調している。

 この研究は、オランダに在住する40~75歳の男女を対象とした観察研究(Maastricht Study)に参加した2861人のデータを解析したもので、交友関係の広さや社会的な交流への参加頻度と糖尿病リスクとの関係を調べた。

 参加者の平均年齢は60歳、半数は女性であり、56.7%は血糖値が正常で、15%は糖尿病前症、28.3%は2型糖尿病患者(既往例が24.4%、新規診断例が3.9%)であった。

 解析の結果、付き合いのある知り合いが多い方が、少ない人よりも2型糖尿病の発症リスクが低かった。

 こうした知り合いが1人減るごとに、男女で糖尿病リスクは5~12%高まっていた。

 また、女性では独居であるかどうかは糖尿病リスクに影響しなかったが、男性では一人暮らしをする人で糖尿病リスクが94%高まっていた。

 研究を主導したマーストリヒト大学のStephanie Brinkhues 氏は、

「社会的ネットワークはその範囲が広いほど、個人のライフスタイルに重要な影響を与えるようになる。

 ネットワークが広いということは、必要な時に社会的支援を受けやすく、自宅の外に出る機会が多いことを意味する。

 こうした活動は健康的な食習慣や運動習慣を促し、ライフスタイルに改善をもたらす」

 と述べており、社会的なネットワークを広げることは運動不足や肥満を主たる原因とする2型糖尿病を予防するのに重要なステップになると強調している。

 また、1人暮らしの男性で2型糖尿病リスクが高かった理由について、論文の責任著者を務める同大学准教授のMiranda Schram氏は、

「男性は一人になると、女性よりも自分自身の事に無頓着になり、新鮮な野菜や果物を食べなくなったり、運動をしなくなるなど不健康な生活習慣に陥りやすくなると考えられる」と指摘する。

 そのため、2型糖尿病のリスクが高い人には、新しい友人を作って交流したり、ボランティアや趣味の集まりに積極的に参加することが勧められるとしている。

 両氏はともに、この研究は社会的ネットワークの広さと2型糖尿病リスクとの関連を示したに過ぎないが、これまで他の研究で、独居や社会的サポートの不足が2型糖尿病リスクを高める可能性が報告されていることから、

「これらの2つの因子は2型糖尿病の発症に大きく影響する可能性が高い」との考えを示している。

 一方、米モンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センター長を務めるJoel Zonszein氏は、専門家の立場から、この研究は大規模で印象的なものではあるが、数々の限界点があると指摘する。

 その一つは、研究デザイン自体の問題で、人生のある時期だけを検討したに過ぎず、人生の中で起こった個々人の変化を考慮していない点にあるという。

 また、糖尿病の発症には多くの因子が関連しており、それぞれの影響の大きさを正確に測るのは難しく、今回の結果を再現するにはさらに多くの研究を行う必要があるとしている。

 同氏は、社会的ネットワークが2型糖尿病の発症に何らかの役割を果たすにしてもその影響は小さく、

「友人の多さや社会的な孤立の有無で糖尿病の発症や進行に影響があるとは考えにくい」と話している。
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快眠、七つの方法 [医学・医療短信]

快眠で日中の効率をUP!「質のよい睡眠」を得る七つの方法

ちゃんと寝たはずなのに、日中に眠気に襲われることってありませんか?

もしかしたら、寝ているはずなのに元気が足りないと感じるときは「質の良い睡眠」が不足しているのかもしれません。

運動週間、栄養バランスと合わせて、しっかり質の良い睡眠も確保していきましょう。

睡眠の質をあげることで、仕事や日常生活の中でさまざまなメリットを感じられるようになりますよ。

睡眠の質をあげると、どんな効果がある?

睡眠の質を向上させるほど、疲労から心身を回復させる効果があります。

肉体疲労はもちろん、脳のように目に見えない部分に蓄積した疲労を取り除くことは睡眠の大きな効果です。

成長促進・健康維持はもちろん、ダイエット・美容促進・スポーツのパフォーマンスアップなど様々な効果をもたらします。

質の良い睡眠って?

どういう感覚を得られていれば質の良い睡眠を得ていると言えるのでしょうか。

それは以下三つで判断することができます。

この三つをクリアしていれば、正しい睡眠をとっているといえるでしょう。

三つの快眠ポイント

1 寝つきがよい

2 ぐっすり眠れる

3寝 起きがすっきり

心地よい睡眠を得るための7つの方法

それでは、どうすれば自分にとって質の良い睡眠を得られるのだろう?

朝、昼、夜と、時間帯に適した方法をご紹介します。

八つの方法を試して、最適な睡眠を確保しましょう。

1. 朝、窓をあけて自然光を浴びる。

朝日を浴びながらゆっくり深呼吸をしてみましょう。

生体リズムが補正されやすくなります。

昼間に日光にあたる時間をつくることも有効的です。

2. カフェインの摂取を16時以降は控える。

カフェインとアルコールはいずれも刺激物であるため、睡眠を調整、もしくは改善したい場合量を減らすのが一番。

とくに16時以降は控えてみましょう。

3. 就寝前に湯船に肩まで浸かろう。

40℃の湯船につかり、10分身体を温めよう。

お風呂と睡眠は繋がっています。

4. 寝る3時間前にブルーライトから開放してあげる。

テレビ、タブレット、スマホなどのブルーライトは、睡眠ホルモンの生成を最大3時間も遅らせるとか。

眠る前は液晶画面を見ず、暗めの部屋でゆっくり過ごしましょう。

5. 重めの布団を試してみる。

少し重さのある布団で身体に重みを加えることで、睡眠を促す概日リズムを調整できるという研究があります。

6. 睡眠7時間を目安に、体内リズムを整える。

朝起きて、昼働き、夜眠るという人間本来に備わったリズム。

同じ就寝時間と起床時間を維持することで、体内リズムが調整され、睡眠の質があがります。

体型や性質により個人差がありますが、一晩あたり7時間目安に微調整するといいでしょう。

7. 土日のジェットラグをなくす。

平日と休日の就寝・起床リズムのズレをなるべく減らそう。就寝・起床時刻のズレが大きいほど体内リズムは乱れやすくなります。

まとめ

ほんの少しの意識をして気をつけるだけで「快眠」に導けることができます。

良い睡眠をとることで、生活のリズムも整って、仕事や日々のルーティーンも効率もアップします。

今日からはじめられる「快眠のすすめ」、皆さんもぜひトライしてみてください。

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もち米玄米! [医学・医療短信]

 玄米に血糖値を下げる効果

 玄米は、稲の果実である籾から籾殻のみを取り除いたもの。

 玄米の外皮は栄養価が高いため、精白米に比べ食物繊維が約6倍、ビタミンB1が約5倍、マグネシウムが約5倍多く含まれる。

 琉球大学の研究チームは、玄米に含まれる成分「γ(ガンマ)-オリザノール」に、インスリンの分泌を促進し、血糖値を下げる効果があることを明らかにしている。

 この栄養成分が脳の中枢に作用し、食欲を抑えることも解明。

 玄米を食べると、自然に食事の好みが変化し、食べ過ぎを抑えられるという。

 このように健康に良い効果のある玄米だが、一般的には好んで食べられていない傾向がある。

 玄米が好まれない原因はいくつかある。

 そのひとつは硬さ(食感)。

 えぐみや匂いが気になるという人も少なくない。

「もち米玄米」は玄米の欠点を解消

 そうした玄米の欠点を解消する方法がある。

 それは、「もち米玄米」を使うというものだ。

 「もち米玄米」が血糖コントロールを改善するという研究が発表された。

 米を主食とする日本人にとって嬉しい情報だ。

 聖マリアンナ医科大学代謝・内分泌内科は、2型糖尿病患者37人を対象に、「もち米玄米」を8週間摂取してもらう研究を行った。

 その結果、24時間平均血糖値および食後血糖値が改善することが明らかになった。

 研究チームは、参加者を精白米を摂取するグループと、「もち米玄米」を摂取するグループに無作為に分けた。

 24時間の平均血糖値は、「白米」を摂取したグループでは144.2mg/dLだったのに対し、「もち米玄米」を摂取したグループでは126mg/dLに低下した。食後血糖値も改善した。

 嗜好性に関するアンケートを行った結果、おいしさを示すスコアは、白米、玄米と比べ「もち米玄米」が最高値を示した。

「玄米食のパサパサとした食感を好まない人も多いが、もち米玄米のしっとりと柔らかな食感は日本人の好みに合っている」と、研究者は述べている。

全粒穀物を食べている人は2型糖尿病の発症が少ない、心血管疾患リスクも低下、と、スウェーデンとデンマークの研究チームが報告している。

 全粒穀物を食べると心血管疾患リスクが低下

 米国ハーバード大学公衆衛生大学院が約12万人を対象とした研究によると、全粒穀物を1日28g以上食べる人は、ほとんど食べない人に比べ、死亡率が5%低下する。

 とくに心筋梗塞や心臓発作などの心血管疾患で死ぬリスクは9%も低下するという。

 約16万人を18年間追跡した調査では、全粒穀物が多い人では2型糖尿病の発症リスクが最大で35%低下することが判明した。

 毎日のパンを全粒穀物に代えることを推奨

 全粒穀物を毎日50g(1日に3皿分)以上摂っていたグループでは、ほとんど摂らないグループに比べて、2型糖尿病の発症リスクは、男性で34%、女性で22%それぞれ低下した。

 玄米が2型糖尿病リスクを低下

 玄米にも糖尿病を予防する効果がある。

 1日の摂取量の3分の1に相当する50gの白米を、同じ量の玄米にかえると、2型糖尿病のリスクは16%低下する。

「全粒穀物を食べることで糖尿病や心血管疾患を予防でき、寿命を延ばせることが示されました。

 精製されていない穀類を食べ続ければ、長期間で大きな差が出てきます」と、ハーバード大学公衆衛生大学院のキ サン准教授は言う。

 米国の食事ガイドラインでは、成人は全粒穀物を1日あたり少なくとも3〜5サービングを食べることを推奨している。

 全粒穀物のパン1切れがおよそ1サービングに相当し、食物繊維は2g以上含まれる。

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人工甘味料は血糖値に? [医学・医療短信]

人工甘味料は血糖値に影響しない可能性/米研究

 人工甘味料は砂糖の代替として飲料や菓子などの食品に広く用いられているが、人工甘味料を摂取しても血糖値には影響を及ぼさないことが、29件のランダム化比較試験(RCT)を対象に行ったメタ解析で示された。

 ただし、研究を行った米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校食品栄養科学部のAlexander Nichol氏は、

「この結果から、血糖値が気になる場合でも人工甘味料の摂取は安全だと言えるが、人工甘味料入りの飲料や食品を好きなだけ食べてよいという意味ではない」と強調している。

 研究の詳細は「European Journal of Clinical Nutrition」5月15日オンライン版に掲載された。

 注=European Journal of Clinical Nutritionは、栄養学を網羅、毎月の査読付き医学雑誌。

 砂糖の替わりに人工甘味料(非栄養甘味料とも呼ばれる)を用いると、甘みを減らすことなく食品や飲料のカロリーを抑えられることから、人工甘味料は肥満や心臓病、特に糖尿病のリスクを低減させると期待されている。

 米国では、その使用量は急激に増えており、1999~2000年から2009~2012年にかけて子どもでは約3倍に、成人でも約1.5倍に増加した。

 現在では、子どもの4人に1人、成人の5人に2人が人工甘味料を習慣的に摂取しているとの推計もある。

 米国では8種類の人工甘味料が認可されており、これらには今回のRCTで検討対象とされたサッカリンとアスパルテーム、ステビオール配糖体、スクラロースが含まれる。

 また、「無糖(sugar-free)」と表示された食品の一部には、糖アルコールと呼ばれる甘味料(ソルビトール、マンニトール、キシリトール、イソマルトース、水素化デンプン加水分解物)が含まれている。

 今回の研究で、Nichol氏らは、対象者が人工甘味料を他の食品やカロリーを含む飲料なしで単独で摂取したRCT論文を抽出。

 計741人が参加した29件のRCTを対象にメタ解析を実施し、4種類の人工甘味料(アスパルテーム、サッカリン、ステビオール配糖体、スクラロース)が血糖値に及ぼす影響について調べた。

 対象者のほとんどは健康な人で、2型糖尿病患者は69人、健康状態が不明だった人は150人だった。

 結果、人工甘味料を摂取しても血糖値にはベースライン時から上昇はみられず、人工甘味料は血糖値には影響しないことが分かった。

 また、4種類の人工甘味料の間で血糖値への影響に差はみられなかった。

 論文共著者の一人で同校食品栄養科学部のMaxwell Holle氏は、

「過去の研究の多くでは、他の食品と一緒に摂取した場合の人工甘味料の影響のみが検討されていた。

 今回の結果は、人工甘味料を単独で摂取した場合を検討しており、信頼性が高いと言えるだろう」と述べている。

 専門家の1人で米コロンビア大学のMaudene Nelson氏は、

「無糖」表示については誤解が多いと指摘する。

「たとえ砂糖が含まれていなくても、食品や飲料そのものには炭水化物や脂質、たんぱく質が含まれており、摂取すれば血糖値に影響する。

 カロリーもあるので体重にも影響を及ぼすことに気を配る必要がある」と話している。

 また、今回の解析には含まれなかった糖アルコールについて、

「(糖アルコールを)摂取し過ぎると、腹部膨満感や下痢の原因になることにも注意する必要がある」と同氏は付け加えている。

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膵がんリスク [医学・医療短信]

果物および野菜の摂取と膵がん罹患との関連

国立がん研究センターなどの研究グループは、約9万人のデータに基づき、果物および野菜の摂取と膵がん罹患との関連を検討。

膵がんの罹患リスクは果物摂取により低下し、野菜の摂取で上昇することが示された、と発表しました。

解析対象は45~74歳の男女9万185人。

138食品を含む食品摂取頻度調査を基に、果物(17品目)・野菜(29品目)の摂取量によって対象者を4群に分け、最少群を対照としてその他の群のがん罹患リスクを調べました。

16.9年間(中央値)の追跡期間中に、577人が膵がんと診断された。

全果物摂取量の最多群では、最少群に比べて膵がんの罹患リスクが26%低かった。

柑橘類(みかん、みかん以外の柑橘類、オレンジジュース)に限定した場合にも、ほぼ同様のリスク低下が認められた。

果物摂取と膵がん罹患リスク低下との関連は、非喫煙者でより明瞭だった。

一方、全野菜摂取の最多群では、最少群に比べて膵がんの罹患リスクが30%高かった。

ただ、アブラナ科野菜や緑黄色野菜など特定の種類に限定した場合、膵がん罹患リスクとの有意な関連は認められなかった。

また、全野菜摂取と膵がん罹患リスク上昇との関連は、喫煙者において有意だったが、非喫煙者では有意な関連は示されなかった。

果物や野菜の摂取によるがんの予防効果については、幾つかのがんで可能性が示されている。

しかし、膵がんに関しては、これまでに一定の研究結果が得られていない。

そこで研究グループは、日本人の生活習慣病予防と健康寿命延伸を目的に国内で実施されているJPHCのデータを用いて、果物・野菜の摂取量と膵がんの罹患リスクとの関連を検討した。

果物摂取と膵がんの罹患リスク低下との関連が認められた今回の結果について、研究グループは、

「果物に含まれるビタミンなどの抗酸化成分が、膵がんのリスク低下に関係しているのではないか」と考察。

一方で、野菜摂取にリスク上昇との関連が認められた点については、

「喫煙者でリスクの上昇が顕著になることから、野菜とたばこに含まれる成分との相互作用の可能性が考えられるが、明確な理由は分からない」とコメントしている。

その上で、

「今回の研究は、日本人が対象のものでは過去最大規模だが、症例数は必ずしも多くはない。日本人を含むアジア人における疫学研究は少ないため、さらなる研究の蓄積が必要だ」と今後の課題を示している。

食物繊維をとろう

さまざまな食材をバランスよく食べましょう。

なかでも便秘予防に役立つ食物繊維は重要。

食物繊維には2種類あり、ごぼうやいも類などに多い「不溶性食物繊維」は便のかさを増し、海藻類や雑穀などに多い「水溶性食物繊維」は便の滑りをよくします。

こうして便通がよくなっていると、腸内が掃除され、腸内環境が整うのです。

さらには、全粒穀物に含まれる食物繊維により、満腹感を長時間持続しやすくなり、摂取カロリーを抑えられる。全粒穀物は体重コントロールにも有利です。

発酵食品も強い味方

味噌、納豆、チーズをはじめ、有益な菌を含む発酵食品も、腸の健康に欠かせません。

なかでも手軽にとれるヨーグルトはおすすめで、目安量は毎日100g。

夕食後に食べると有益な菌が腸に長時間留まるので、より高い効果が期待できるようです。

ヨーグルトは商品によって入っている菌が異なります。

ドリンクやフルーツ入りなどのタイプもありますが、カロリーなどに気をつければ、基本的にどれを選んでもOK。体調や便の状態をチェックしながら、いろいろ試すのもいいでしょう。

食べる量も大切

食べる量が少ないと便の材料が不足して、スムーズに排便できなくなります。

その対策のためにもしっかり食べ、体に必要な成分を取り込みましょう。

食欲がないときは、具だくさんの味噌汁やスープ、ヨーグルトなどがおすすめです。

なお、お菓子やインスタント食品に含まれる添加物は、腸内細菌のバランスを崩すとも言われています。

できるだけ避けましょう。

 体を動かす

 ウォーキングやストレッチなどの適度な運動は、腸の動きを活性化し、排便を促します。体を動かせば、おなかがすき、おいしく食事ができるというメリットもあります。

監修:飯野久和昭和女子大教授 農学博士
(「みんなの健康ライブラリー」2017年3月掲載より)

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悪性黒色腫(メラノーマ) [医学・医療短信]

危険なほくろの見分け方

 医学的には色素性母斑や単純黒子などと呼ばれる「ほくろ」。

 メラニン色素を生み出すメラノサイトという細胞が集まってできたもので、良性の腫瘍に分類されます。

 生まれつきのものもありますが、後天的なものは小児期から思春期に増え、それ以降はあまり増えることはありません。

 女性の場合、ホルモン分泌の変化によって、妊娠中に増える人もみられます。

 しかし、形のおかしいほくろができた、前からあったものの一部の色が濃くなってきたなど、何かしら変化がみられたら、要注意です。

 皮膚がんの一種「悪性黒色腫(メラノーマ)」が疑われる場合があります。

 メラノサイト(色素細胞)が「がん化」する

 皮膚は、表皮(角質層、顆粒層、有棘層、基底層)、真皮、皮下組織と、何層もの組織でできています。

 メラノーマは、表皮の基底層にあるメラノサイトが、がん化したものです。

 メラノサイトがあれば、全身のどこでも発症する可能性があり、ときにはまぶたや鼻腔、唇、口腔などにできることも。

 また、進行が速いものでは、肺や肝臓、骨、リンパ節などに転移することも少なくないのです。

 メラノーマの4つのタイプ

 メラノーマは、できやすい部位や形状などによって、主に四つのタイプに分けられます。
 
 1.末端黒子型

 日本人に最も多いタイプ/足の裏や手のひら、手足の爪などにできやすい/褐色・黒褐色の小さなシミが広がっていき黒くなる/潰瘍ができることもある/爪にできる場合、黒褐色のスジが縦に入り、広がっていく

 2.表在拡大型

 メラニン色素の少ない白色人種に多いタイプ/胸、腹、背中などの体幹や、四肢のどこにでも発症する/小さなシミが、徐々に濃くなり、盛り上がっていく

 3.結節型

 部位を問わず発生する/進行が速く転移しやすいため、メラノーマの中で最も悪性度の高いタイプ/突然ほくろのような黒い盛り上がりができ、それが徐々に大きくなっていく

 4.悪性黒子型

 高齢者に多い/日光にさらされている顔に発生しやすく、首や手の甲などにできることもある/褐色・黒褐色のシミが濃くなりながら徐々に大きくなる/しこりやこぶになることもある/紫外線と外的刺激が発症要因に

 メラノーマの罹患率は、高齢になるほど上がります。

 これは紫外線の影響で、高齢者ほど紫外線を浴びてきた期間が長くなるためだと考えられています。 
 日焼け止めの使用で、メラノーマの発生率が下がるという報告もあります。

 一方、日本人は足の裏など紫外線の影響を受けにくい部位の発症が多く、体重がかかったり、衣類でこすれるなどの刺激も要因のひとつと考えられています。

 転移、再発に注意が必要

 治療の基本は切除手術です。

 再発防止のため、がんの縁から1~2cm程度の範囲を切除します。

 また、切除した部位や範囲によって、皮膚の一部を移植することもあります。

 なお、メラノーマはリンパ節に転移しやすい疾患のため、手術の際に「センチネルリンパ節生検」が行われます。

 近年の研究で、がん細胞が一番初めに到達するセンチネルリンパ節に転移が認められなければ、転移の心配はほとんどないことがわかったためです。

 しかし、なかには術後の早い時期に再発や転移がみられることあり、経過観察を続けることが必要となります。

 また、抗がん剤による化学療法や放射線治療は、あまり有効性が高くないと考えられています。

 ほかに、ニボルマブ、イピリムマブなどNKT細胞を利用した免疫療法などがありますが、その効果は一定していません。

 このようなことからも、メラノーマは早期発見が非常に大切だといえるでしょう。

 メラノーマを見逃さないために

 メラノーマは、良性のほくろやシミとの違いがわかりづらく、見逃されやすいといえます。

 しかし、注意深く観察すれば、自分でも発見できる「がん」なのです。

 メラノーマは大きさや形状などが次第に変化していくので、1年に1回は全身のチェックをしましょう。

 頭や背中など自分で見えない部分は、家族や身近な人と確認し合うことをおすすめします。

 【早期発見しやすい特徴】

 今までなかった場所にできた/足の裏や手のひらでは直径が7mm以上ある(直径の目安は6mm以上など諸説あります)/色にムラがある/輪郭がギザギザしている、にじみ出たようになっている/形が左右非対称である/爪に褐色または黒褐色の細い縦のスジ(色素線条)が入っている

 【1~2年の間に変化して見られる特徴】

 色=薄い褐色から濃い黒に変化する/色に濃淡が出てくる/一部の色が抜けてまだらになる
 大きさ=明らかに大きくなっている(1年以内の短期間で大きくなるものは特に注意が必要)/形=輪郭がギザギザしたり、左右非対称になってくる/輪郭の一部から色が染み出して見える/一部が盛り上がったりしこりができる

 かたさ=一部または全部がかたくなってくる(通常、ほくろのかたさは均一)
□爪=縦のスジの色が濃くなってくる/スジの幅が広くなってくる/爪が割れたり、爪の生え際に色が染み出したりする

 早期発見のためにも、チェックポイントに当てはまるようなほくろやシミを見つけたら、速やかに皮膚科を受診してください。

 大きさの変化などを確認するには、写真を保存しておくと比較しやすいでしょう。

 受診の際は、いつごろ現れたのか、変化に気づいた時期などを可能な限り医師に伝えるようにします。

 外的な刺激もメラノーマの発生要因になると考えられているので、ほくろやシミを気にして頻繁にさわったり、傷つけたりすることはやめましょう。

 ダーモスコピー検査と皮膚生検

 「ダーモスコピー」は、患部を拡大して観察する医療機器で、メラノーマの診察に用いられます。

 専門医でも見分けのつきにくいほくろやシミの状態を、より詳しく観察できるため、早期発見に役立ちます。

 それでも診断がつかない場合、患部を慎重に採取して顕微鏡でさらに詳しく調べる「皮膚生検」を行うこともあります。

 ただし、皮膚科専門医であってもダーモスコピー検査を行っていない場合もあるので、事前に確認してから受診するとよいでしょう。

 監修:関東中央病院皮膚科特別顧問 日野治子
 (「みんなの健康ライブラリー」2018年11月掲載より)

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睡眠時間と脱水 [医学・医療短信]

睡眠時間が短いと脱水リスク上昇

 睡眠時間が短いと脱水になるリスクが高くなる。

米・Pennsylvania State UniversityのAsher Y. Rosinger氏らは、米国人と中国人を対象に睡眠時間と脱水リスクについて検討した結果、一晩の睡眠時間が8時間の人に比べて6時間の人では脱水になるリスクが6割上昇すると「Sleep」オンライン版)で報告した。

バソプレシンの分泌を逃す

 短時間または長時間の睡眠は腎機能の低下に関連するとされているが、睡眠と脱水の関連についてはほとんど研究が行われていない。

 そこでRosinger氏らは、米国人と中国人を対象に睡眠が体内水分量と脱水リスクに与える影響を検討した。

 米国民保健栄養調査(NHANES)に参加した米国人1万4,239例(2007~08年:4,680例、2009~12年:9,559例)とKailuan Studyに参加した中国人1万1,903例を対象に、睡眠時間と体内水分量のバイオマーカー(尿比重と尿浸透圧)との関係を検討した。

 尿比重が1.020 g/mL超、尿浸透圧は831mOsm/kg超の場合を不適切な体内水分量と定義した。

 糖尿病患者と利尿薬服用者を除外し、より健康的なサブグループ(米国人1万1,353例、中国人8,766例)を対象に解析を行った。

 米国人の解析では、睡眠時間が8時間の群に比べて6時間の群では尿比重が有意に上昇し、体内水分量が不適切になるリスクが59%上昇していた(調整後オッズ比1.59、95%CI 1.25~2.03)。

 中国人の解析では、8時間睡眠群に比べて6時間以下の睡眠群で尿比重が上昇し、体内水分量が不適切になる傾向が認められた(8時間睡眠群に対する6時間睡眠群の調整後オッズ比1.42、95%CI 1.26~1.60)。

 9時間以上の睡眠と体内水分量に関連は認められなかった。

 同氏は「体内水分量を調整する抗利尿ホルモンのバソプレシンは終日分泌されているが、睡眠サイクルの後半に短時間でより多量に分泌される。

 そのため夜間の睡眠時間が短いと、バソプレシンがより多く分泌されるタイミングを逃してしまう可能性がある」と指摘する。

 脱水は認知、気分、体力など多くの身体システムと機能に負の影響を及ぼし、長期または慢性の脱水は尿路感染症や腎結石などのリスクを高める可能性がある。

 同氏は、

 「夜間に6時間しか寝ていない人では脱水リスクが上昇する可能性がある。十分な睡眠時間が確保できなかった日の翌日に体調不良または疲労を感じた場合は、水分を多く摂取することが重要だ」とアドバイスしている。

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歯の本数と睡眠時間 [医学・医療短信]

歯の本数が少ないと適切な睡眠時間を保てない?

 現在の歯の本数が少ない高齢者は、歯の本数が多い人に比べて短時間睡眠や長時間睡眠になるリスクが高い可能性があることが、東北大学大学院国際歯科保健学分野の小山史穂子氏(現・大阪国際がんセンターがん対策センター)の検討で分かった。

 詳細は「Sleep Medicine」オンライン版に掲載された。

 適切な睡眠時間を保つことは健康維持に重要であるが、これまでの研究で睡眠時間は長すぎても短すぎても死亡率の上昇など健康問題につながることが示されている。

 一方、歯の本数が少ない人はかみ合わせが不安定になり、下の顎(あご)が上方に回転して気道を狭め、睡眠時の呼吸を妨げる可能性があることが指摘されている。

 そこで、小山氏らは今回、日本人の高齢者を対象に、歯の本数と睡眠時間の長さの関連を調べる横断研究を実施した。

 この研究は、65歳以上を対象に実施した日本老年学的評価研究(JAGESプロジェクト)の2010年度調査データを用いたもの。

 睡眠時間に関する質問については、ランダムに抽出した2万3444人のうち2万548人(平均年齢73.7歳)から回答が得られた。

 解析では、7時間の睡眠時間を基準として現在の歯の本数と短時間睡眠(4時間以下)あるいは長時間睡眠(10時間以上)との関連を調べた。

 結果、歯が20本以上の高齢者では、短時間睡眠の割合は2.3%(160人)、長時間睡眠の割合は2.8%(195人)だったのに対し、歯が少ない高齢者ではそれぞれ3.3%(100人)、9.0%(272人)といずれも割合が高いことが分かった。

 また、性や年齢などの関連因子で調整して統計解析したところ、歯の本数と睡眠時間はU字型の関連を示し、歯が20本以上の高齢者に比べて歯が少ない人では短時間睡眠であるリスクは1.4倍、長時間睡眠であるリスクは1.8倍であることが明らかになった。

 さらに、歯の本数が1~9本の人でも短時間睡眠のリスクは1.3倍、長時間睡眠のリスクは1.5倍であった。

 以上の結果を踏まえ、小山氏らは「歯が20本以上ある高齢者に比べて、10本未満と少ない高齢者では短時間睡眠や長時間睡眠になりやすい可能性がある。

 高齢になっても歯の健康を保ち、数多くの歯を保持することが適切な睡眠時間を取り続けることにつながると考えられる」と結論づけている。

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運動不足による疾患 [医学・医療短信]

 数千人、数万人規模を長年追跡
世界の成人14億人に運動不足による疾患リスク

 世界で成人の4人に1人が運動不足による疾患リスクに直面しているとみられることが、世界保健機関(WHO)の研究チームの調査で明らかになった。

 14億人を超える成人が座りがちな生活による運動不足が原因で、心疾患や糖尿病、認知症、一部のがんを発症しやすい状態にあるという。

 詳細は医学専門紙「The Lancet Global Health」オンライン版に掲載された。

 WHO非感染性疾患予防部門のRegina Guthold氏らは今回、世界168カ国、計190万人の18歳以上の成人を対象に実施された358件の調査データを用いて、国や地域別の運動不足の人の割合について分析を行った。

 結果、2016年には世界の女性の約3人に1人(31.7%)、男性の4人に1人(23.4%)が推奨される身体活動レベル(中強度運動を週に150分以上または高強度運動を週に75分以上)に達していないことが分かった。

 また、東アジアと東南アジアを除く全ての地域で、女性は男性に比べて運動量が少ないことも明らかになった。

 そのほか、高所得国では、2001年から16年にかけて運動不足の成人の割合は約5ポイント増加し36.8%に達したのに対し、東アジアや東南アジアといった低所得国では0.2ポイント増の16.2%にとどまっていた。

 この結果について、Guthold氏らは、高所得国ではデスクワークなどで座りがちな仕事が増えたことや、車社会の発達で運動不足が加速しているのではとの見方を示している。

 これらの結果を踏まえ、Guthold氏らは「自転車や徒歩で通勤したり、積極的にスポーツを楽しめるようなインフラ整備を国レベルで進めることが重要だ」と指摘している。

 論文の共著者でWHO同部門のFiona Bull氏は、こうした取り組みにおいては、特に女性が運動できる環境を整備して、運動量の男女差を解消することが不可欠だと付け加えている。

 この研究論文の付随論評を執筆したシドニー大学(オーストラリア)のMelody Ding氏によれば、一部の国や地域では女性が運動するのを妨げる社会的、文化的な障壁があり、例えば、女性の活動が著しく制限されるサウジアラビアやイラクでは、成人の約半数が運動不足であると推計されるという。


 同氏はまた、「今回の調査では低所得国よりも高所得国で運動不足の蔓延(まんえん)が深刻化しているという結果が得られたが、運動不足に関連する疾患の負荷は低中所得の国でより大きいことにも注意が必要だ」と話している。
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