隠れ1位 [医学・医療短信]
抗生物質ができて、肺炎で亡くなる人はずいぶん減った。
それでも肺炎は、がん、心臓病、脳卒中に次ぐ日本人の死因4位であり、高齢者の場合、病理解剖で死亡の直接の原因を調べると、肺炎が最も多い。
例えば脳卒中で倒れて入院治療中に亡くなったが、実は肺炎を併発し、そのために死亡したといった例がとても多く、高齢者の死因の隠れ1位といわれる。
肺炎は依然、きわめて危険な病気なのだ。
肺炎を防ぐには、どうしたらいいか。
まず第一に風邪をひかないこと。
常識的なことだが、なるべく人ごみに出ないようにする。
外出のさいは寒くない服装をし、マスクをする。
帰宅したらうがいをし、手を洗う。
栄養のバランスのいい食事をして、睡眠を十分とる。
もし風邪をひいても全身の状態がよければ、普通の風邪ですんで肺炎にはならない。
なぜか?
肺炎のような感染症は、ホスト・パラサイト・リレーションズ(宿主─寄生体関係)といって、病人の体そのもの(宿主)と、それに寄生する病原体との力関係で、重くもなるし、軽くもなるからだ。
高齢者の肺炎の死亡率が高いのは、寄生体(ウイルスや細菌=パラサイト)の側に問題があるのではなく、その人の体(宿主=ホスト)のほうの要因による。
肺炎を乗り切った人と、死亡した人を調べた臨床報告「老年者の肺炎100例」を見ると、亡くなった人たちには、
1 脱水症状のある人
2 腎臓や肝臓の機能が低下した人
3 意識障害(意識がもうろうとなる)が出た人がとても多い。
だから肺炎だけを治療の目標にするのではなく、全身状態をよくしなければ肺炎は治らない。
肺炎を防ぎ・治すためには、要するに老化現象が進まないように日ごろから規則正しい活動的な生活をすること─と、老年学の大家は話した。
普段から健康に気を配って体調を整えておくことが大切だ。
もう一つ、肺の健康のために大切なことは深呼吸だ。
普通の呼吸では、肺が完全にはふくらまない。深呼吸で肺を十分ふくらませると気管がリラックスし、肺がまんべんなく活動する。
朝晩、日中、思いつくたびに深呼吸をしよう。
ある呼吸器内科の専門医は、
「おやつ代わりに深呼吸を─」と話した。