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冬こそダイエット! [医学・医療短信]

「寒い冬こそダイエット!」なぜ効果的なのか
石蔵文信 / 大阪大学招へい教授

 肥満でダイエットをがんばっている患者さんがいる。

 寒くなってきたのに、半袖Tシャツと半ズボンといういで立ちで診察に来る。

 本人は夏も冬も同じ服装で、別に寒くはないらしい。

 むしろ夏は汗をかいてきついという。

 私が留学していた米国ミネソタ州には肥満の人が多く、結構寒い時でも半袖で歩いている人が多かった。

 おそらく皮下脂肪がコート代わりになって寒さを感じないのだろう。

 逆に夏の暑さには弱く、エアコンで室内をがんがん冷やすので、夏の間彼らと一緒にいると薄着の私は寒さで震えたものだった。

「夏はやせる」は昔の話?

 肥満の人は夏には大汗をかくのでやせる、と思われがちだが、実は案外冬の方がやせやすい。

 私の患者さんも冬は自然と数キロやせるが、夏にはかえって太るという。

 なぜだろうか。

 夏に体重が増えるのを夏太りという。
 
 今や夏やせは死語になりつつある。

 夏やせはエアコンがなかった時代、暑さのために食欲が落ち、食べないことでやせる状態を指していた。

 十分に栄養が取れず、水分やミネラル補給もできなければ熱中症などで命に危険が及ぶ。

 昔は栄養状態の悪い高齢者や乳幼児が夏場に亡くなることが多かった。

 そのため、夏には栄養のあるものを食べようと、江戸時代の発明家、平賀源内が提唱して、ウナギのかば焼きを食べる土用の丑(うし)が定着したともいわれている。

 現代はエアコンで室温を管理できるので、高温で食欲がなくなるのは外出の後ぐらいだろう。

 しかし、栄養のあるものを食べないと夏バテになるという意識から、しっかり食べるだけでなく、脱水予防のためにカロリーのあるスポーツドリンクなどをガブ飲みすることも多い。

 そうなるとやせるどころか逆に体重が増えても不思議ではない。

 また、夏の気温は私たちの体温に近いので、体温維持などの基礎代謝が落ちる。

 これも夏太りの原因だ。

 汗をかくからカロリーを消費しているように感じるが、汗は主にクールダウンなど体温調節の役割を持つので、エネルギー消費量はわずかだ。

 寒さに震えるとブドウ糖と脂肪が燃える

 では冬はというと、夏と違って外気温と体温に大きな差があり、基礎代謝が上がる。

 ブドウ糖だけで体温を維持するのに足りない時は脂肪も使うので、ダイエットにはもってこいの季節である。

 やせている人は体脂肪が少ないので、体温を維持しにくく体温を上げにくい。

 だから「やせている人は寒さに弱い」は正しい。

 消費されたブドウ糖や脂肪は熱になり、残りかすはガソリンなどの燃料と同じく二酸化炭素と水になる。

 二酸化炭素は肺から、水は腎臓から排出される。

 そのため冬は尿の回数が増える。

 特に寒いところに長くいると、水分を飲んでいないのに尿がよく出るのはこのメカニズムからだ。

 冬も半袖、短パン姿の冒頭の患者さんの体内では脂肪がたくさん燃えているはずだから、ダイエット効果は確かにあるだろう。

 ただし、夏と同様にエアコンで部屋を快適な室温にして過ごしたり、防寒服で暖かくして外出したりすると基礎代謝は下がり、ダイエット効果も減る。

 そこで、冬は室温を少し低めに設定し、なるべく薄着で過ごすと基礎代謝が上がり、ダイエット効果が上がる。

 その時、尿の回数と量が増えれば代謝が盛んになっている証拠なので、目安にしてほしい。

 ただし、夜寝る時に同じことをすると体温が下がり、冬山遭難と同じような低体温症になる恐れがある。

 夜はしっかり部屋を暖めて布団に入ろう。

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指がしびれる [医学・医療短信]

更年期以降の女性に多い「指がしびれる」病気とは

【Q】右手の人さし指、中指、薬指の3本がしびれ、突き指したような感覚があります。医師に老化と言われましたが、納得いきません。治す方法は。(京都市、女性、85歳)

【A】神経が通り道で締め付けられる「手根管(しゅこんかん)症候群」かもしれません。

 更年期以降の女性に多く、手をよく使う人に発症しやすい傾向があります。整形外科の受診を勧めます。

 しびれの原因としてまず脳卒中、糖尿病、頸椎(けいつい)症を疑います。

脳卒中は半身まひ、糖尿病は両脚から始まるしびれ、頸椎症は首を動かした時の腕や指の痛みやしびれが特徴です。

 しかし相談者の場合、手指に限ったしびれなのでその他の原因が考えられます。

 人さし指、中指と薬指に感覚障害があるので、神経が通り道で締め付けられる末梢(まっしょう)神経絞扼(こうやく)性障害の一つ、「手根管(しゅこんかん)症候群」ではないでしょうか。

 手のひらの付け根の部分には、手根管と呼ばれるトンネルがあります。

 手根管症候群は、手根管の中で神経が圧迫され、指にしびれや運動まひを生じる病気です。 

 小指以外に痛みやしびれがあり、夜間や朝に強くなるのも特徴的です。

 進行すると親指の付け根がやせ、縫い物やボタンかけなどの細かい作業が難しくなります。

 更年期以降の女性に多く、手をよく使う人に発症しやすい傾向があります。

 超音波検査や末梢神経の伝達速度をはかる検査などで診断を確定します。

 治療の基本は手指の負担軽減です。

 軽症なら手首に装具を付け安静にすれば改善しますが、進行した場合は、内服薬やステロイド薬注射で治療します。

 神経の圧迫を取り除く手術もあります。相談者は症状が進行している可能性もあるので、整形外科の受診を勧めます。

 高齢になると、ペットボトルやびんのふたを開ける動作でも、手に大きな負担がかかります。

 これらの動作を控えるなど、痛みを出さないための注意と工夫が必要です。

 回答者 喜多島出先生(虎の門病院・整形外科)

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問題あり? 糖尿病の食事療法。 [医学・医療短信]

糖尿病の食事療法「カロリー制限」で栄養不足に?
  成田崇信 / 管理栄養士

 糖質制限食を、糖尿病の食事療法の一つとするかどうか、国内では議論が続いています。

 糖質制限食には、長期的な安全性や有効性などについて批判がありますが、実は、従来のエネルギー(カロリー)制限による糖尿病の食事療法にも大きな問題があります。

 その問題を詳しく解説したいと思います。

 糖尿病の人の適切なエネルギー摂取量とは

 糖尿病の食事療法と言えば、エネルギーを制限したバランスのよい食事をイメージする人が多いでしょう。

 実際に肥満がある場合は、減量によって血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きがよくなり、血糖値を適切な範囲に保つ「血糖コントロール」を改善するケースが多いことが知られています。

 ただ、厳しいエネルギー制限はつらいため、流行している「エネルギー制限はせずに糖質をとる量を減らす」糖質制限食に興味を持っている患者も多いようです。

 実際のところ、糖尿病であっても肥満傾向がなければ体重を減らす必要はなく、消費するエネルギーに見合った栄養量をとることが目標になります。

 このことは糖尿病の診療指針を定めた「糖尿病の診療ガイドライン2016」にも書かれています。

 しかし病院では、肥満傾向のない人にもエネルギー制限のある糖尿病食が提供されたり、栄養指導でもエネルギー摂取量を減らすように教育されたりすることが多いようです。

糖尿病の人は「エネルギー消費量が2割少ない」は根拠がある?

 なぜ、必要のない人にもエネルギー制限が指示されるのか。

 その理由の一つに、糖尿病の食事療法で用いられる、「摂取すべき総エネルギー量の算出式」の問題が考えられます。

 この算出式は上述の診療ガイドラインにも記載されています。

 問題点を明らかにするために、身長170cm、体重63.6kg(体格を示す指数BMIは糖尿病診療ガイドラインによる目標値の22)の男性を例に、糖尿病診療ガイドラインに基づいて、摂取すべき総エネルギー量を計算します。

 そして、国民の摂取すべきエネルギーや栄養素を定めた「日本人の食事摂取基準2015」に基づいて、エネルギー消費量を計算して、両者を比較します。

 目標の体格にもかかわらず、糖尿病診療ガイドラインの総エネルギー量は、食事摂取基準のエネルギー消費量に比べ、20%ほど低くエネルギー量を算出してしまいます。

 これを「適切なもの」とするには、「糖尿病患者は糖尿病でない人に比べて、エネルギー消費量が2割ほど少ない」というデータが必要です。

 糖尿病の人のエネルギー消費量は「普通の人と変わらない」という報告

 本当に糖尿病の人はエネルギー消費量が少ないのでしょうか。

 これについては「日本人の食事摂取基準2015」に次のような記載があります。

「糖尿病者の基礎代謝量は、健康な人に比べて差がないか5~7%程度高いとする報告が多い」

「糖尿病患者で二重標識水法(※日常生活でのエネルギー消費量を、現時点で最も正確に調べられるとされる測定法)により総エネルギー消費量を見た研究は少ないが、やはり、糖尿病患者と耐糖能(体内の糖分を処理する能力)正常者の間で総エネルギー消費量に差を認められていない」

 つまり、「糖尿病の人のエネルギー消費量は、糖尿病でない人と変わらないか、むしろ5~7%高い」と報告されているのです。

 ここで根拠として採用されている論文は日本人を対象としたものではありません。

 そのためこれまで、「日本人ではどうなのか」という議論の余地はありました。

 しかし最近、日本人を対象とした2型糖尿病患者の男性12人と、体格がほぼ同じ糖尿病でない男性10人に対し、二重標識水法を用いた総エネルギー消費量を測定した論文が公表されました。

 結果は、糖尿病の人のグループと、糖尿病でない人のグループの総エネルギー消費量には、統計的に有意な差はなかったと報告されました。海外で過去に行われた研究とも矛盾しない結果です。

 標準的な糖尿病の食事療法で栄養不足に陥る危険性も

 糖尿病の治療は、食事療法と並び運動習慣を持つことが大切です。

 しかし、必要なエネルギーをとることのできないエネルギー制限食を処方されていては、運動のためのエネルギーを確保できないでしょう。

 私の知人の糖尿病の人から、「医師に指示された食事量をきちんと守り、BMI20を切るぐらいの体格でがんばっているのに、一向に血糖コントロールが改善しない。十分に食べていないので運動に必要な筋肉も落ちてしまう」という悩みを打ち明けられたことがあります。

 これまで糖尿病のエネルギー制限食の問題があまり指摘されてこなかった理由として、厳しい制限のため、厳密に食事制限をする人が少なく、結果的に望ましい食事をとっていた可能性が挙げられます。

 実は、食事の記録などから割り出したエネルギー摂取量は、過少申告によって実際より少なくなることが分かっています。

 ただし、前述したように真面目に食事制限を守る患者や、病院で標準的なエネルギー制限食を食べている人は、本当に栄養不足に陥ってしまう危険性があるのです。

 真面目にエネルギー制限食に取り組んでも思ったような効果が得られなかった人が、注目したのが糖質制限食だったのでしょう。

 実行した人が「食事をしっかり食べても血糖コントロールが悪化せず、同時に運動できる体力も戻ってきた」などとブログや掲示板などで伝えたことが、糖質制限食が広がる一つのきっかけであったと考えられます。

糖尿病の食事療法は検証が必要な時期では

 糖尿病学会は「糖尿病診療ガイドライン2016」の中で、

「総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限することによって減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンス(根拠)が不足しており、現時点では勧められない」としています。

 しかし、標準的な糖尿病の食事療法であるエネルギー制限食は、効果や安全性について明確な根拠があって実施されてきたのでしょうか。検証が必要な時期が来ていると思います。

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オーガニック食品とがん予防 [健康短信]

オーガニック食品はがん予防に有用か

 化学肥料や農薬を使用しないオーガニックの果物や野菜は高価だが、それだけの価値があるようだ。

 ソルボンヌ・パリ・シテ大学(フランス)のJulia Baudry氏らの研究から、オーガニック食品の摂取頻度が高いほどがんに罹患(りかん)するリスクが低い可能性があることが分かった。

 詳細は「JAMA Internal Medicine」10月22日オンライン版に掲載された。

 これまでの研究で、オーガニック食品を摂取する人は、尿中の残留農薬の数値が低いことや、農薬に暴露するほどがんの罹患リスクが上昇することが報告されている。

 ある英国の研究では、今回の研究と同様に、オーガニック食品を摂取すると非ホジキンリンパ腫の罹患リスクが低減することが示されているという。

 今回の研究は、フランスで進行中の栄養と健康に関する研究に参加した成人男女6万8946人(ベースライン時の平均年齢44.2歳、女性78%)のデータを分析したもの。

 参加者には質問紙調査を実施し、果物や野菜、乳製品、肉、魚、卵、パンなどのオーガニック食品の摂取状況について尋ねた。

 平均4.5年間追跡して解析した結果、がんの家族歴や生活習慣因子などを考慮しても、オーガニック食品を摂取するほど、がんの罹患リスクが低減することが明らかになった。

 オーガニック食品の遵守度スコアが最高四分位群では、最低四分位群に比べてがんリスクが25%低かった(ハザード比0.75、95%信頼区間0.63~0.88、傾向P値0.001)。

 オーガニック食品の摂取頻度が高い人では、特に閉経後の乳がんリスクは34%低下し、全てのリンパ腫リスクは76%、非ホジキンリンパ腫リスクは86%それぞれ低下したという。

 しかし、Baudry氏をはじめとする専門家らは、オーガニックか否かにかかわらず、果物や野菜が豊富な食事は慢性疾患やがんのリスクを低減することは明らかであり、

 「オーガニック製品を買えないからといって果物や野菜の摂取をやめるべきではない」と指摘している。

 米国がん協会(ACS)のMark Guinter氏は「人種にかかわらず、果物や野菜の摂取ががん予防につながることは明らかだ」と話している。

 論文の付随論評を執筆した米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のFrank Hu氏によると、動物実験レベルでは農薬によりDNA損傷が進み、がんリスクが増大する可能性が示されている。

 しかし、GuinterとHuの両氏は、がん予防を目的とした食事に関する新たな勧告を出すには、その根拠となるヒトを対象としたエビデンスがまだ不十分だとし、「現時点では食事や運動を通して適正体重を維持することががん予防には重要だ」との見解を述べている。

 Hu氏は「オーガニック食品かどうかにかかわらず、果物や野菜の摂取量を増やすことは食事の質を改善し、がんを含めた慢性疾患の予防に有用だと考えられる」と付け加えている。

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快適睡眠の三つの法 [医学・医療短信]

寒い冬の夜も快適に眠るための三つの法則

内村直尚 / 久留米大学教授


 暑さによる寝つきにくさ、寝苦しさを訴える人は、四季の中では夏に多いものですが、気温が低下する冬においても「ぐっすり眠れない」と訴える方は少なくありません。

 この理由は何だと思いますか? 

 多分多くの方が「寒いから」と答えるでしょう。

 これは一部正解です。

 冬の眠りにくさの原因と解決法についてお話しします。

だらだらと寝床にいるのは禁物

 冬は朝の冷え込みのために目覚めた後も布団から出るのがおっくうな人は少なくないと思います。

 また、夜もやはり寒さを回避するために布団を暖房代わりに早々と潜り込んで横になったままテレビを見ている人の話もよく聞きます。

 こうした「布団とお友達」という状態が睡眠の質を下げることをご存じでしょうか?

 2009年度厚生労働科学研究「睡眠習慣と不眠に関する研究」(分担研究者:内山真・日本大学医学部精神医学系教授)では、成人2559人の面談調査から寝床にいる時間(床上時間)と夜中に目が覚めて、睡眠の質を下げてしまう「中途覚醒」の関係を明らかにしています。

 それによると、中途覚醒の頻度は床上時間が6時間未満の人が25.2%、6時間~8時間台の人が24.8%でしたが、9時間以上の人では44.3%と急上昇しました。

 つまり、寝床にいる時間が長いほど中途覚醒を認め、睡眠の質が悪くなるという結果が示されたのです。

 なぜこのようなことが起こるのかについて、簡単に解説しましょう。

 人が日中に眠気を感じずに日常生活を送る睡眠時間は、各種調査では成人の場合で6~7時間ぐらいが最も多いものです。

 そして人には体内時計があるため、個々人により望ましい睡眠時間は異なりますが、このそれぞれの望ましい睡眠時間は、体内時計が記憶し調整しています。

 体内時計は、寝床にいる時間についても睡眠時間として扱うため、望ましい睡眠時間を超えて過度に長く寝床にいると、余分に寝床にいた時間の一部を中途覚醒という状態に置き換え、調整してしまう可能性があるということです。

 また、床上時間が長くなれば活動する時間が減少するため、その結果、夜間の睡眠の質が低下し、中途覚醒も増えます。

 寝床に早く入った割には、かえってよく眠れなかったということになりかねません。

 とはいえ、人は寝床に入ってから眠りにつくまで一定の時間は要します。

 その時間はおおむね30分以内です。

 一方、目が覚めてから寝床を出るまでは、あまり時間を要しません。

 このように考えると、床上時間は自分にとっての適切な睡眠時間プラス1時間程度にとどめた方が睡眠の質を下げずにすむのです。

 実際、不眠を訴える方に対し、私たちが睡眠改善薬などを使用せずに治療する場合、床上時間を短めにする認知行動療法が一般的です。

冬こそ積極的に日光浴を

 一方、人の体内には、脈拍・体温・血圧などを低下させ、人を眠りに導くメラトニンと呼ばれるホルモンが存在します。

 メラトニンの分泌量は体内時計の作用で1日の中で変動しています。

 起床後に太陽光を浴びると分泌量が低下し始め、その約15~16時間後に分泌量が増加し始めます。

 つまり人の体は、起きてから15時間たたないと眠くならない仕組みだということです。

 一方で、太陽光を浴びると、体内時計の働きで人は心身とも活動性が上昇します。

 ところが冬は日の出が遅く、日照時間が短いのが特徴です。

 これに加え、冬に天気の悪い時は短い日照時間で浴びることができる太陽光も弱くなるので、他の季節と比べてメラトニンの分泌調整がうまくいかなくなります。

 その結果、就寝予定時刻とメラトニン分泌が増える時間が一致せず、眠りにくくなるのです。

 これを防ぐには、まずは日の出が遅いことや寒いことを理由に、他の季節よりも起床時間を遅めにしないことです。

 それに加え、起床直後に軽く散歩するなど積極的に太陽光を浴びることを心掛けることです。

寝室の室温は15度前後に

 さらに寝室の室温も重要になります。
 
 夜になると、人の体内では心身をリラックスさせる副交感神経が活発になります。

 この結果、一時的に末梢(まっしょう)の血管が拡張して皮膚の表面から放熱し、体の中心の温度である深部体温を低下させます。この過程が入眠には必須です。

 ところが寝室の室温があまりに低いと、人の体は体温を保持しようとして末梢血管が収縮し、深部体温の低下に向けた皮膚表面からの放熱がうまく行われず、入眠しにくくなります。

 睡眠に最適な室温は季節によって異なり、経験的に冬の場合は約15度と言われています。

 そのため就寝30分前ぐらいから寝室に暖房を入れ、寝室の室温を15度程度に保つことが必要になります。

 ただ暖房を入れっぱなしにすると、放熱後の体温低下がうまくいかないばかりか、睡眠中に体温が上昇し、中途覚醒を起こしやすくなるのでお勧めできません。

 暖房にタイマー機能があれば、それを利用して、眠ってからスイッチが切れるようにすれば良いでしょう。

 ただし、タイマーが切れた後、急速に室温が低下してしまうと、それが原因で深部体温の低下が行えず、中途覚醒を引き起こすこともありますので注意が必要です。

 では、温度調節をするにはどうすれば良いのでしょうか。

 入眠に合わせてより緩やかに温度が低下していく睡眠に適した暖房器具があります。

 それは「湯たんぽ」です。

 世代によっては大きい銀の小判のような古典的な湯たんぽを思い浮かべる方もいるようですが、最近では湯たんぽカバーの種類も豊富で、ぬいぐるみ形のものや手触りもいいおしゃれなものもあるようです。

 このように三つの条件を整えるだけでも、寒い冬に快適な睡眠を得られることでしょう。

 ぜひ試していただきたいと思います。【聞き手=ジャーナリスト・村上和巳】

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徹夜⇒認知症? [医学・医療短信]

「一度の徹夜」はアルツハイマー病への第一歩?

大西睦子 / 内科医

 世界でも有名な、睡眠不足の日本人。

 子供も大人も、睡眠時間を削っては、勉強、仕事や飲み会など深夜まで忙しくしています。

 ところが睡眠は「未来への投資」と言われるほど大切な時間です。

 米国立衛生研究所の国立心肺血液研究所(NHLBI)は「睡眠は一生を通して、私たちの健康と幸せに重要な役割を果たす」と訴え、必要な睡眠時間は人それぞれだとしながらも一般論として、高齢者を含めて18歳以上の人には「1日平均7~8時間の睡眠」を勧めています。

「そんなことはわかっているけど、寝ている時間はない」という読者もいらっしゃるかもしれません。

 それではさらに、短期間の睡眠不足でも、アルツハイマー病につながりかねないとしたらどうでしょう? 

 今回は、米国立衛生研究所(NIH)の薬物乱用研究所(NIDA)所長のノラ・ボルコウ博士らが、今年4月に科学雑誌「米国科学アカデミー紀要」(PNAS)に発表した論文https://などを参考に、「睡眠とアルツハイマー病」のお話です。

 睡眠不足だと脳の中で「ゴミ」が増える!?

 脳の間質液(脳細胞の間にある液体)に含まれる、「アミロイドβ」というたんぱく質は、脳の活動に伴う老廃物、つまり「ゴミ」だと考えられています。

 アルツハイマー病の人の脳では、この「ゴミ」がたまっています。

 アミロイドβが塊状に蓄積すると、脳の組織に染みついて、「老人斑」(アミロイド斑)と呼ばれる染みを作ります。

 老人斑は、アルツハイマー病の人の脳にみられる特徴の一つで、神経細胞の働きを妨げるのです。

 そして、この「ゴミ」はどうも、寝不足だとたまりやすいようです。

 人為的にアルツハイマー病に似た状態にしたショウジョウバエでの実験では、慢性の睡眠不足で、脳内のアミロイドβの蓄積が高まるという結果が出ています。

 また米ウィスコンシン・アルツハイマー病研究センターの研究者らは、脳とつながっている脊髄(せきずい)の内部の液体(脊髄液)の成分を、101人(平均年齢63歳、女性65.3%)で検査し、2017年に「米神経学会」誌で論文として発表しました。

 検査の結果、101人のうちで睡眠の質が悪く睡眠障害や日中の眠気が深刻だった人たちは、睡眠障害のない人たちに比べて、アミロイドβなどアルツハイマー病に関連するとみられる物質が、脊髄液中に多いことが分かりました。

 脳内のゴミは睡眠中に掃除される!? 

 一方、動物実験では▽マウスなどを強制的に慢性の睡眠不足にすると、脳の間質液に含まれるアミロイドβが増える▽アミロイドβが脳から取り除かれるのは、主に睡眠中である――との結果が出ています。

 人間の場合、アミロイドβが脳から取り除かれるメカニズムは完全にはわかっていませんが、最近、やはり睡眠が重要な役割を果たしているという報告があります。

 一晩だけの徹夜でも

 このようにアミロイドβと睡眠について、次々と新しい報告が発表される中、ボルコウ博士たちは、慢性ではなくわずか一晩の睡眠不足が、脳内のアミロイドβを増やしてしまうことを示しました。

 博士たちは、22〜72歳(平均40歳)の健常者20人に協力してもらいました。

 そして、眠り方が脳内のアミロイドβの量に与える影響を調べるための実験を、全員に2回ずつ行い、実験のたびに研究所に1泊してもらいました。

 実験のうち1回では、20人はそれぞれ「好きなだけ眠ってよい」といわれました。

 泊まった晩の午後10時から翌日の午前7時までは、睡眠中かどうかを1時間ごとに看護師が確かめ、実際の睡眠時間を測りました。

 もう1回の実験では、全員が、眠らないように指示され、徹夜して翌日の午後まで約31時間起き続けました。

 本当に眠っていないかどうかは、看護師が監視していました。

 そしてボルコウ博士たちは、この20人を「好きなだけ寝た」翌日と「徹夜した」翌日にそれぞれ、陽電子放射断層撮影(PET)で検査し、脳内のアミロイドβの量を調べました。

 その結果、徹夜明けの日のアミロイドβの量は、よく寝た翌日の量と比べて、平均で約5%増えていました。

(詳しくいうと、徹夜明けの方が約0.6%減った、という人が1人だけいましたが、残りの19人はみな増え、最高は16.1%増でした。)

 また、脳内のどこでアミロイドβが増えたかをみると、主に右の「海馬」や「視床」だと分かりました。

「海馬」は記憶を担う場所、「視床」は、目や耳などから入ってきた情報の中継点となる場所です。

 いずれもアルツハイマー病の初期に、アミロイドβがたまりやすく、傷つきやすいところです。

 さらに、20人にアンケートして気分を聞いてみると、徹夜明けでは疲労感が増し、幸福感が下がるなど、よく眠った後に比べて気分が悪化していることが分かりました。(これは当たり前かもしれません)。

 そして徹夜明けの日に、海馬の部分でアミロイドβが大きく増えた人ほど、よく寝た翌日に比べて、気分の悪化が激しくなっていました。

 海馬や視床の働きが、気分と関係していることは従来から知られており、今回はこうした知識とうまく合う結果になりました。

 この結果から、睡眠不足がアミロイドβの蓄積のリスクを高める可能性が示されました。

 また、良い睡眠の習慣がアルツハイマー病を予防することも考えられます。
 
 実験結果について、博士たちは「眠らないことで、アミロイドβが脳から取り除かれにくくなり、結果として量が増えたのではないか」と推測しています。

 一方で、起き続けている間に、脳内でアミロイドβが作られる量が増えた可能性も否定はできないそうです。

 また「アルツハイマー病の高齢者は、健康な高齢者に比べ、脳内のアミロイドβの量が4割余り増えている」という別の研究結果を引用し「一晩の徹夜での増加(平均5%)はこれに比べ少なかった」と指摘。

 現段階では、徹夜で増えたアミロイドβが、後から十分に眠れば元に戻るのかどうかは、はっきりしないとしています。

 なお、この研究では、睡眠不足とアルツハイマー病との関係について、結論を下すことまではできません。

 まず、脳内に固体となって染みついたアミロイドβ(不溶性)と、脳内の液体に溶けて洗い流されるアミロイドβ(可溶性)の違いは、PET検査ではわかりません。

 ですから、徹夜の結果、脳内でアミロイドβの染み(老人斑)が増えたのかどうかは不明です。

 また、そもそもアミロイドβのレベルが、1日のうちで、時間とともにどのように変化するかは、まだ分かっていません。

 アミロイドβの短期的な変化が、アルツハイマー病の発症リスクと関連しているかも不明です。

 さらに▽睡眠不足と良い睡眠を長期的に繰り返すと、どのくらいアミロイドβのレベルが変化するか▽睡眠不足で増えたアミロイドβの量が、週末の寝だめで元のように減るか――など、さまざまな疑問が残っています。今後の研究が楽しみです。

睡眠不足を軽視しないで

 ところでボルコウ博士は、この論文を発表した後の今年5月末に、米ハーバード大学で講演しました。

 講演の内容の一部を、ハーバード大のホームページなどから紹介します。

 博士は最初に書いた通り「薬物乱用研究所」の所長です。「あれ、なぜ薬物じゃなくて睡眠の研究を?」と不思議に思われる方もいるでしょう。

 博士はもともと、脳の画像を用いて、薬物の毒性や依存性を調べる研究のパイオニアで、薬物中毒が脳の病気であることを実証してきました。

 そして講演で「薬物の研究が睡眠パターンの調査につながった」と説明しました。

 たとえば、コカインは睡眠を妨げる薬です。

 博士は講演で「動物にコカインを与えると眠れなくなり、最終的には生き残れず死亡しました」と語りました。

 一方でコカインなしでも睡眠が欠けると、薬物で起きるのと同様な「記憶の破壊」「覚醒の抑制」「肥満」などが生じるそうです。

 博士は、今回紹介した研究結果にも触れ「一晩の徹夜で生じたアミロイドβの増加は、一晩ぐっすり眠れば元に戻るかもしれない。しかし、睡眠不足が続けば危険なレベルになる可能性がある」と警告しました。
 
 そして「臨床研究は、あまりにもしばしば、睡眠の重要性を無視してきた」と指摘し「睡眠は脳の回復に重要な役割を果たす。その証拠は明らかだ」と訴えました。

 年末忙しくなる方も多いと思いますが、しっかり睡眠時間をとって、良いお年をお迎えください。

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「朝から牛丼」? [医学・医療短信]

「朝から牛丼」は昼の血糖値急上昇を防ぐ?

米井嘉一 / 同志社大学教授

 健康な体を作るためには朝ご飯をきちんと食べることが大切です。

 しかし最近、朝食を取らない子供や大人が増えています。

 朝食を欠食すると子供が肥満になりやすいことが知られています。

 大人では脳卒中の頻度が増えます。

 朝食を取らないことでどのような悪い作用があるのか。

 朝食を食べない理由は「夜更かし」

 過去と比べて日本人の食事パターンは大きく変化しています。

 子供も大人も夜型の生活パターンが増え、夜食や間食は増えていますが、朝食を抜くケースも増える傾向にあります。

 その原因を突き詰めると睡眠との関連が大きいことがわかります。

 夜更かしをすれば当然、睡眠不足になります。

 それは朝食の欠食に直結します。

 朝起きても、寝ぼけ状態が強ければ朝食を食べる気にはなれません。

 胃腸のぜん動運動が落ち込んでしまっているからです。

 同じカロリーでも、夜食は血糖値が上がりやすくなります。

 そのため睡眠中に高血糖になったり、その反動で低血糖になったりします。

 反動というのは、高血糖になった時にインスリンが過剰に分泌され、余分のインスリン作用によって低血糖が生じてしまう現象です。

 高血糖や低血糖のように、睡眠中に血糖値が不安定になると睡眠の質が下がります。

 また、寝る前にスマートフォンを触る人も要注意です。

 スマホの光は網膜を刺激して、睡眠を促すホルモンのメラトニン分泌を止める作用があります。

 そのため睡眠の質が低下します。
 心身のストレスが強い人も、朝食を食べない率が高いようです。

 ストレスが強いと寝つきが悪くなり、夜中に目が覚める頻度が高まります。

 朝起きても気分はすぐれず、元気よく朝食を食べる気分にはなれないでしょう。

朝食を食べないと何が起きるの?

 朝食を食べないと、昼食や夕食時の血糖値が上昇します。

 血糖値が140 mg/dL 以上になる急激な血糖上昇は「血糖値スパイク」と呼ばれ、さまざまなアルデヒドが同時多発的に生成される「アルデヒドスパーク」を引き起こします。

 これが血管内皮障害など、体のさまざまな部位の細胞障害、組織障害の直接的な原因になるのです。

 ではなぜ、朝食を食べないと昼食時の血糖値が上昇するのでしょうか。

 それは血糖を上昇させるホルモンが多く分泌されるからです。

 血糖値を調整するホルモンは、血糖値を下げるホルモンと上げるホルモンに大別されます。

 血糖値低下ホルモンはインスリンだけですが、血糖値上昇ホルモンはコルチゾル、アドレナリン、成長ホルモン、グルカゴンなど複数あります。

 低血糖は体にとって危険なので、低血糖を防ぐための機構が備わっているのです。

 低血糖防御機構の中でもっとも強力な血糖上昇作用があるのが、グルカゴンです。

朝食「あり」と「なし」の時の血糖変動の違い
 
 朝食をしっかりと、よくかんでゆっくり食べると、食後の血糖上昇は緩やかで、血糖値スパイクは生じません。

 低血糖にもならないのでグルカゴンの出番はありません。

 ところが、朝食を抜くと食べない時間が長くなります。

 血糖値が下がるのでグルカゴンが分泌されて血糖値を上げようとします。

 その状態で昼食を取ると血糖値はさらに上がりやすくなります。

 当然、上昇した血糖値を下げるためにインスリンも多く分泌されます。

 朝食を抜くとインスリンもグルカゴンも多く分泌されます。

 両者ともに膵臓(すいぞう)で作られます。

 このような生活を続けると、膵臓がインスリンもグルカゴンも大量に作り続けなくてはならないため、膵臓が疲れてインスリンを作れなくなり、糖尿病の発症につながります。

朝食を食べられる体作りが大切

 これまで朝食を食べない習慣がついた人が突然、朝食を食べるとかえって調子が悪くなることがあります。

 おなかが張ったり、気持ち悪くなったり、胃がもたれたりします。

 そのような人は胃腸の働き(ぜん動運動)が衰えているので、まずは胃腸の働きを整え、朝食を受け入れる準備から始めましょう。

 朝食の欠食と睡眠には深い関係があります。

 朝食を食べたいと思ったら、前の日は夜更かしをせず、睡眠を十分にとることが大切です。

 時間の余裕がないと朝食も食べられないので、朝は早めに起きましょう。

 できれば散歩するくらいの余裕がほしいところです。

 これでばっちり、朝食受け入れ準備の完了です。

 前夜の飲酒が過ぎると、アルコール分解過程で生成されたアルデヒドの作用で睡眠の質が下がり、胃腸のぜん動運動も抑えられます。

 お酒の量を減らしてみましょう。

 タバコのニコチンも胃腸の動きを抑えます。

 ニコチンの禁断症状がもっとも強く表れる朝に一服すると食欲が抑えられ、朝ご飯を食べられなくなります。

 一服をやめ、散歩などをしておなかをすかせましょう。

 朝食に何を食べればよいか?

 私たちの実験で、朝に牛丼を食べると、おにぎりやサンドイッチに比べて昼食後の血糖値が上がりにくいという結果が得られました。

 朝はできるだけガッツリ食べた方がよいというのが結論です。

 結果を見て以降、私も時々「朝牛(あさぎゅう=朝に牛丼を食べること)」をしています。

 朝から牛丼が食べられるのは元気な証拠。健康に生まれ変わった自分を実感してください。

 よねい・よしかず 日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。

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歩いて重症脳卒中を予防 [医学・医療短信]

1日35分歩いて重症脳卒中を予防
スウェーデン・断面研究

 週に4時間以上歩く、週に2~3時間水泳をするなど、軽~中等度の身体活動をする人は、活動性の低い人に比べて重症脳卒中が少ない。

 スウェーデン・University of GothenburgのMalin Reinholdsson氏らが、初回脳卒中患者925例の発症前の身体活動レベルを後ろ向きに調査した断面研究の結果をNeurology(2018年9月19日オンライン版)で発表した。

発症前の身体活動を質問調査

 身体活動・運動は、自己管理できる費用効果が高い健康増進法としてよく知られているが、運動不足は世界的に蔓延している。

 動物実験では、脳卒中発症前の身体活動は神経保護に作用し、神経障害を軽減して重症脳卒中を減らすと報告されている。

 しかし、この効果は臨床研究では一貫していない。

 今回の研究では、急性脳卒中の重症度に、脳卒中発症前の身体活動量が及ぼす影響について検討した。

 スウェーデンの脳卒中登録2件から、2014年11月~16年4月にSahlgrenska University Hospital脳卒中センターで治療した20歳以上の初回脳卒中患者925例(平均年齢73歳、女性45.2%)のデータを抽出。

 脳卒中発症前の身体活動は、Saltin-Grimby Physical Activity Level Scale(SGPALS)を用いて患者または近親者に質問調査を実施。

 レベル1:低度、レベル2:軽度(歩行週4時間以上)、レベル3:中等度(水泳、速歩、ランニングなど週2~3時間)、レベル4:高度(競技目的の練習週数回)−の4段階で評価したところ、レベル1が481例(52%)、レベル2~3が443例(47.9%)だった。

 脳卒中重症度は、米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS:0~42点)を用いて、軽症(0~5点)、中等症(6~14点)、重症(15~24点)、極めて重症(25点以上)に分類。入院時738例(79.8%)が軽症脳卒中と評価された。

 毎週軽い運動で重症化防ぐ可能性も

 軽症脳卒中の頻度は、レベル1群は354例(73.6%)、レベル2群は330例(85.9%)、レベル3群は53例(89.8%)。

 多変量回帰分析の結果、脳卒中が軽症である可能性は、発症前の身体活動レベル2~3群でレベル1群の約2倍になり〔オッズ比(OR)2.02、95%CI 1.43~2.86、P<0.001〕、また若年ほど高くなることが示された(年齢のOR 0.97、95%CI 0.96~0.99)。

 身体活動と年齢は、脳卒中重症度の6.8%を予測していた。

重症度の差の大部分は他因子が関与

 以上の結果から、軽度および中等度の身体活動は同等に有益であることが示された。

 共著者で同大学のKatharina S. Sunnerhagen氏は

 「1日35分歩くだけでも、その後の脳卒中重症化を防ぐ可能性がある。

 身体活動が脳に保護的に作用することを示す報告が増えており、今回の研究でエビデンスが増強された。

 さらなる検討が必要だが、運動不足は重症脳卒中のリスクとして監視すべき」と述べている。

 また、研究の限界として、断面研究であること、発症前の身体活動量を発症後に質問調査で評価した点や、身体活動量の違いは脳卒中重症度の差の大部分を説明するものではない点を挙げている。

 Medical Tribune編集部  坂田真子
タグ:歩行 脳卒中
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