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ナッツで心血管病を予防 [ひとこと養生記]

 ナッツの心血管疾患予防効果に注目が集まっている。

 山田 悟・北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の解説をご紹介します。

 2013年、スペインの研究チームは、地中海食による指導介入が脂質制限食による指導介入と比較して心血管疾患を30%減少させることを示した。

 この折、地中海食指導介入群の中にさらに2群が設定され、1群には地中海食を摂取しつつ1週間に1㍑のオリーブ油の使用が求められ、もう1群には1日30㌘のナッツの摂取が求められた。

 オリーブ油群、ナッツ群ともに脂質制限食群に比べ心血管疾患の発症を有意に抑制した。

 正直、私はどうあがいても1週間に1㍑のオリーブ油は使いこなせないが、1日30㌘のナッツであれば摂取できる。

 このときから、私はナッツ摂取に関心を持つようになったのだが、実は同じ2013年に早速ナッツ摂取と総死亡率との負の相関、翌2014年にはナッツ摂取と心血管疾患発症との負の相関が示された。

 この二つの観察研究は、いずれも米・ハーバード大学公衆衛生学栄養学部門が報告していたが、前者はNurses' Health StudyとHealth Professionals Follow-Up Studyという同大学が実施しているコホート研究の解析であり、後者はそれらも含めたコホート研究のメタ解析であった。

 今回、同大学が実施している三つのコホート研究の検討があらためて行われ、ナッツ摂取と心血管疾患の発症がやはり負の相関関係にあることが報告された。

 力強いタイトルのeditorial (J Am Coll Cardiol 2017;70:2533-2535)も含めてご紹介したい。

 研究のポイント1: 3コホートでナッツ摂取と心血管疾患の相関を検討

 本研究で解析されたコホート研究は以下の三つである。

・Nurses' Health Study(NHS:7万6,364人、女性、1980~2012年のデータ)

・Nurses' Health Study Ⅱ(NHSⅡ:9万2,946人、女性、1991~2013年のデータ)

・Health Professionals Follow-Up Study(HPFS:4万1,526人、男性、1986~2012年のデータ)

 これらはいずれも世界的に有名なコホート研究であり、これまでにも数多くの論文を出しているが、念のため、簡単にご紹介する。

 NHSは1976年に開始され、30~55歳の女性看護師12万1,700人を登録したコホート研究である。

 NHSⅡは1989年に設立され、25~42歳の女性看護師11万6,671人を登録したコホート研究である。

 HPFSは1986年に開始され、40~75歳の男性医療従事者5万1,529人を登録したコホート研究である。

 いずれも登録から2年ごとに生活習慣や健康状態についてのアンケートがなされている。

 本研究では、登録の時点で心血管疾患やがんの既往がある人、ナッツ摂取の状況についての情報を提供しなかった人、食事摂取記録の記載に漏れが多い人、エネルギー摂取が過少の人(男性<800kcal/日、女性<600kcal/日)、エネルギー摂取が過剰の人(男性>4,200kcal/日、女性>3,500kcal/日)を除外し、NHSの7万6,364人、NHSⅡの9万2,946人、HPFSの4万1,526人を解析対象とした。

 食習慣アンケートにおけるナッツ摂取についての質問は28gを1サービングと定義し、以下の中から選択することになっていた。

 サービング=食べ物や飲み物の平均化した単位。例、パン1枚、ナッツ28㌘は1サービング。

 1.ほとんど摂取しない

 2.月に1~3サービング

 3.週に1サービング

 4.週に2~4サービング

 5.週に5~6サービング

 6.日に1サービング

 7.日に2~3サービング

 8.日に4~6サービング

 9.日に7サービング以上

 また1998年以降には、それまでの総ナッツ摂取量に変えて、クルミ、ピーナツ、ピーナツバター、その他のナッツの摂取量を調査することとし、それらの合算量を総ナッツ摂取量とした。

 実際の解析においては、暦年のナッツ摂取量を基に、以下の5群にまとめて解析した。

 第一群:ほとんど摂取しない(0.00サービング/日)

 第二群:週に1サービング未満(0.01~0.09サービング/日)

 第三群:週に1サービング(0.10~0.19サービング/日)

 第四群:週に2~4サービング(0.20~0.59サービング/日)
 
 第五群:週に5サービング以上(0.60サービング/日以上)

 心血管疾患の定義として、主要アウトカムには心筋梗塞、脳卒中、心血管死の複合エンドポイントをおいた。

 また、複合エンドポイントのそれぞれの構成要素〔致死性・非致死性心筋梗塞、致死性・非致死性脳卒中(虚血性、出血性)〕を二次エンドポイントとした。

 これらのエンドポイントがアンケ―ト上で回答された場合に、本人(本人が亡くなった場合には家族)にカルテ開示の承諾を求め、エンドポイントが生じた月とエンドポイントの診断内容を確認した。

 研究のポイント2:ナッツ摂取量と心血管疾患の発症に負の相関

 NHSで28.7年、NHSⅡで21.5年、HPFSで22.5年(計506万3,439人・年)の平均追跡期間中に、8,390人の心筋梗塞、5,910人の脳卒中、計1万4,136人の心血管疾患の発症があった。

 そこで、主要アウトカムの発症リスクを各群で見てみると、ナッツ摂取が多い方が心血管疾患の発症リスクが少なかった。

 これは年齢で調整しても、多変量(年齢、人種、BMI、身体活動量、エネルギー摂取量、喫煙状況、ビタミン剤内服の有無、アスピリン使用の有無、家族歴、既往歴、エネルギー摂取量、閉経状況、飲酒、野菜摂取、肉摂取)で調整しても同様であった。

 こうしたナッツ摂取量と心血管疾患との負の相関は、一つひとつの心血管イベントについて検討した場合、心筋梗塞に対しては認められたが、脳卒中に対しては認められなかった。

 ナッツの種類による相違を検討したところ、心筋梗塞に対してはいずれのナッツも発症リスクの減少につながっており、脳卒中に対しては特にクルミが(3コホートの合計ではピーナツも)発症リスクの減少につながっていた。

 今回の結果を別な言葉で表現すると、「ナッツを28㌘食べるごとに心血管疾患が全体として6%ずつ減少し、心筋梗塞としては13%ずつ減少する」ということになるらしい。

 私の考察:早速今日の夜食にナッツを食べよう
 
 今回のデータ解析結果からは、なんとナッツを1サービング(28㌘)摂取するごとに13%もの心筋梗塞リスクの減少が得られるという。

 もちろん、これはあくまでも観察研究から得られた解析結果にすぎない。

 栄養学では、観察研究のデータと介入試験のデータに乖離が生じることがあり、観察研究のデータだけをうのみにして因果関係を推し量ることはできない。

 しかし、PREDIMED試験で既に介入試験の結果と一致しているだけに、因果関係はあるのではなかろうか。

 1サービングで13%もの心筋梗塞リスクの減少が得られるというのは大げさな気もするが、負の関連があるのは間違いように思う。

 この論文に対してJ Am Coll Caridol誌は、PREDIMED試験のメンバーでもある、スペイン・バルセロナの肥満栄養病態生理研究所のEmilio Ros氏にeditorial commentを委ね、

「ナッツを食べよ!されば生きながらえん!!(Eat Nuts, Live Longer)」という題名の論文を掲載している。

 Ros氏も既存のデータとの一致から、ナッツ摂取による心血管疾患保護への因果関係が強く示唆されるとし、αリノレン酸(植物性ω3多価不飽和脂肪酸。特にクルミに多いとされる)が特に良い効果をもたらし、故にクルミは脳卒中に対しても保護的に働くのではないかとしている。

 また、クルミと同様、ピーナツも脳卒中を含めて保護的であることにも注目しつつ、ピーナツバターではそうした作用がないことから、「おそらく、塩分や糖質が添加されるためにナッツのメリットが消失してしまっているのであろう」としている。

 Ros氏の結論は、"ナッツは天然の健康カプセルと見なせるかもしれない"である。

 1週間に1㍑のオリーブ油の摂取は難しい私ではあるが、1日に28㌘のナッツなら可能だ。

 早速今日の夜食にナッツを食べようと思う。
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がん患者10年生存率 [健康短信]

がん患者10年生存率55%...最高は「前立腺」92%、最低は「膵臓」で5%

 
 全国がんセンター協議会(通称「全がん協」)は、2月28日、がん患者の部位別10年生存率を公表した

 「全がん協」)は、わが国における中核的ながん専門医療施設ががんの予防、診断および治療等の向上に資することを目指して1973年に設立された。

 現在では全国のがん専門医療機関32施設が加盟するネットワークとして活動している。

 全がん協の目的の第一に「がん予防、診断および治療等の向上に必要な諸問題の調査および研究」が掲げられており、加盟施設における予後調査を基にした生存率の公表はその重要な活動として位置づけられている。

 加盟施設において2007年までにがんと診断された症例を収集し、2004年-2007年に診断された約14万件の5年生存率を部位別・施設別に集計した。

 また、1999年-2002年の診断症例約3万5千件について初めて10年生存率を算出した。

 この集計をもとに約30のがん種について病期、性別、年齢、初回治療の組み合わせで生存率を算出する生存率解析システムKapWeb(カップウェブ)のデータを更新した。

 診断時のみでなく、治療開始から一定期間を経過した患者について、その時点からの生存率(がんサバイバー生存率)を算出し、がん患者の部位別10年生存率を公表した。

 2001年~04年の4年間にがんと診断された約5万7000人の10年後の生存率は55・5%で、前回よりも1・3ポイント上昇した。

 がんが初期に見つかった人ほど生存率は高く、早期発見の大切さが改めて浮き彫りになった。

 がん以外の死亡の影響は補正した。

 算出は3回目で、今回から精度が高い集計方法に変更。

 その方法だと、00年からの4年間の患者を対象にした前回調査は54・2%だった。

 その後の治療の進歩で、今のがん患者はさらに生存率が上がっている可能性が高いという。

 生存率が最も高いのは前立腺がんの92・4%で、最も低いのは膵臓(すいぞう)がんの5%だった。

 進行度別の生存率は、胃がん、大腸がん、子宮体がんは1期は約9割だが、4期だと1割を下回った。
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耳が遠い高齢者への対応 [ひとこと養生記]

耳が遠い高齢者にどう接するか-加齢性難聴への対応

「耳が遠い高齢者」の多くは加齢性難聴(老人性難聴)。

その聴こえにくさの特徴と、周囲の正しい対応の仕方について、木村琢磨・北里大学医学部准教授が以下のように解説している。


「加齢性難聴」とは、「耳が遠い高齢者」の多くは加齢性難聴(老人性難聴)で、程度の差こそあれ年を重ねるにつれて多くの高齢者に生ずるといえます。

その"聞こえにくさ"の特徴には、

① 高い音が聞こえにくい(特に「さ行」「は行」「か行」などの子音)

② 音は聞こえても内容が聞き取りにくい(語音明瞭度の低下)

③ 会話以外の音があると音が響いて聞き取りにくい(補充現象)などがあります。

具体的な徴候として「何回も聞き返す」「聞き間違い」「見当違いの返答」などが生じます。

本人は自覚していないことも多いため、やみくもに「耳が遠い」と指摘すれば本人が認めないばかりか、関係性が悪化することがあり、注意が必要です。

そのため医師には、耳が遠い高齢者へ適切に接することはもちろん、家族へ対応法を助言できることが求められています。

加齢性難聴が高齢者に及ぼす影響

耳が遠い高齢者の中には、会話の内容が聞こえていないにもかかわらず「相槌をうつ」など"聞こえる振り"をしている方がいます。

それは「聞き返すことが恥ずかしい」「聞き返すと相手を煩わせたり嫌がられたりするのではないか」といった思惑がはたらくためでしょう。

会話の内容が十分に聞こえない生活が続けば、コミュニケーションに支障が生じてなんらかのトラブルが生ずることも懸念されます。

相手の声が聞こえないためしゃべり続けて"空気を読めない"状態となり、悪影響を及ぼすこともありうるでしょう。

"引っ込み思案"となることもあります。

耳が遠い高齢者が"的外れな"ことを言ったり、難聴に伴う小さなトラブルが日常生活で積み重なった結果、本人がしゃべらなくなったり、周囲が必要以上には話しかけなくなったりするかもしれません。

そのような際には、耳が遠い高齢者に疎外感・孤独感、ある種のイライラが生じたり、「被害的」「閉じこもり気味」になり、認知症の進行につながる可能性も秘めています。

なお、耳が遠い高齢者は、見当違いの言動が多くなるため認知症と間違えやすいので、長谷川式などの認知症スケールの判定の際には難聴を考慮します。

五つの配慮で意思が伝わりやすくなる

耳が遠い高齢者とのコミュニケーションは、その対応次第で改善します。

第一に、難聴の方に話す準備として、雑音を少なくするための「静かな環境」、口の形や表情が見やすいように「暗過ぎない環境」「マスクをしない」などに配慮します。

そして、話始める際には、声かけや合図をします。

ふいに話しかけられるよりも、聞こうと準備するため聞こえやすいと考えられます。

そもそも急に背後から話しかけると、高齢者は足音などから気配を感じにくいため、びっくりしてしまう可能性もあり避けるべきでしょう。

第二に、難聴の程度を確認し、声の大きさ、声のトーン、話すペース、話しかける距離に留意します。

「大して難聴がない高齢者へ、耳元で大きな声で叫ぶこと」は慎むべきです。

かくいう筆者も"耳"が痛いところです。

話す距離が近過ぎたり、声が大き過ぎたりすると母音が強調され、かえって聞きにくいとされています。

加齢性難聴は高い音が聞きにくいため、低いトーンの声が理想です。

具体的な話し方として、耳元ではなく数十cm程度離れた距離から、まず普通の声の大きさで、ややゆっくりめのペースで、ハキハキと話します。

そして、耳が遠い高齢者の反応、「聞こえているか」「理解しているか」を確認しつつ、徐々に声を大きくしていきます。

なお、耳垢除去で聴力の大幅な改善が望める高齢者がいることを認識しておきます。

第三に、話始める際に「[新月]?[新月]?のお話ですが・・・」などとトピックを明示します。

たとえ難聴があっても、なんの話題か理解していれば、幾らか聞こえにくい箇所があっても"勘"が働きやすくなり、理解度が増すと考えられます。

もしも話題が次々に変われば理解しにくくなるので、話題はなるべく絞り込みます。

第四に、話すスピードはゆっくりとしたペースとし、間を置いて区切りながら話すようにします。

そして、話す内容は、なるべく簡潔な文にし、適宜、文節ごとに短く区切って話します。

丁寧な言い方よりも、普通の言い回しの方が分かりやすいと考えられます(たとえば、「ご飯召し上がりましたか?」よりも「ご飯食べました?」)。

そして、理解しているか否か問いかけたり、「今、[新月]?[新月]?のお話をしていますよ」などとトピックを確認しながら話し、相手が聞き返すタイミングも図ることが理想でしょう。

もしも聞こえにくい場合には、より聞きやすそうな他の言葉に変えて話を続けます。

第五に、非言語的な側面を重視します。

一般的にいわれている「患者の方を向き正面から話す」「相手の目を時々見ながら話す」「なるべく目線の高さを合わせる」の他、視力が保たれている方には、身振りや筆談も併用します。

筆談は、紙に書くことも有用ですが、最近では電子カルテの画面に大きなフォントで書くことも有用でしょう。

もちろん、耳が遠い高齢者本人や介護者が不便を感じている場合は補聴器の適応も念頭に置きます。

介護者のみが不便に感じていて、本人が難聴で生活に不便を感じていなければ、高価な補聴器を購入しても使用は困難な可能性があり、補聴器の導入はあくまで本人の意志を重視すべきでしょう。

第五に、非言語的な側面を重視します。

一般的にいわれている「患者の方を向き正面から話す」「相手の目を時々見ながら話す」「なるべく目線の高さを合わせる」の他、視力が保たれている方には、身振りや筆談も併用します。

参考文献: 佐野 智子ら、難聴高齢者とのコミュニケーション-ICF モテ?ルの視点から.城西国際大学紀要2015;23(3)

木村琢磨・北里大学医学部准教授(総合診療医学・地域総合医療学 北里大学東病院 在宅・緩和支援センター長)。
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難聴乗り越え医師の道へ [雑感小文]

昨日、耳の日。

ネットに転載された地方新聞の記事を読み、同じ中途失聴者としての共感と感銘を得た。

下はその全文━。

「悩んだからこそ、支援したい」難聴乗り越え医師の道へ 長崎大医学部4年・目代さん 長崎大医学部4年・目代さん
 
成長してから聴覚を失ってなお、医師を目指している男性がいる。

長崎大医学部4年生の目代(もくだい)佑太朗さん(31)=長崎市旭町=は中途失聴者だ。

人工内耳の手術を受けて「人生が変わった」「難聴で悩んだからこそ同じように障害のある人を医療でサポートしたい」と実習に励んでいる。

3日は「耳の日」。

目代さんはさいたま市生まれ。

健康に育ったが、高校2年のとき突然異変を感じた。

「あれ、鼻が詰まったかな」。

風邪をこじらせたような感じで急に右耳が聞こえなくなった。

右側から話し掛けられても気付かない。

診断は突発性難聴だった。

右耳はほとんど聞こえなかったが、医療職に就きたいと勉学に集中。

2006年、長崎大歯学部に入学した。

ところが5年生になった10年春ごろから、左耳も徐々に聞こえづらくなった。

意を決して両耳に補聴器を着けたが「キーン」と耳鳴りがして会話が困難に。

11年冬、左耳の蝸牛(かぎゅう)に電極を接触させて聴覚を補助する「人工内耳」の埋め込み手術を決断した。

今後のことを考えると強い不安はあった。

しかし人工内耳の聞こえ方に慣れると友人の声がスムーズに耳に届く。

「これも医療のおかげ」。

元の通りではないが心が喜びに震えた。

そして「やっぱり医師になりたい」と夢が芽生えてきた。

歯学部を卒業後、2年間猛勉強して同大医学部へ進学。

4年生になり、大学病院での実習が今年1月から始まった。

精神科、心臓血管外科などほとんどの科を1年で回る。

「いろんな科で相性を見極めたい」と充実した日々を送っている。

実のところは、現実の厳しさも知った。

「患者の話を聞くことが重要な診療医は難しいのでは」と言われたり、手術室で意思疎通に時間がかかったり。

「聞こえづらい」のは外から見えにくい。落ち込む日もあるが「医師として働くことで、少しだけ社会が変わるかもしれない」と自分を奮い立たせている。

難聴になって、疎外感を感じる経験もした。

話の中で誰か笑っても訳が分からず、聞き直しても聞き取れない。

すると周りは「大したことないから」と教えてくれなくなる-。

目代さんは「障害で幸せになれないと考えるのは悲しい。

聞こえづらくても、患者さんといいコミュニケーションが取れる医師になりたい」と希望に燃える。
<長崎新聞  3/3(土)朝刊>

すぐれた頭脳と強い心で努力しつづける青年医師の誕生に拍手を送りたい。
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耳を守る食生活 [健康]

きょう3月3日は「耳の日」。

私事ですが、小生、10年来の重度難聴。

ほとんど全聾同然の耳の持ち主であります。

当時、「目でなくてよかったな」といわれたり、「耳が遠くなると長生きするそうだよ」と慰められたりした。

目と耳とどちらがより重要か。

これは一概にはいえない。

視力には、感覚・知覚・認知のすべてが反映され、人間は外部情報のほとんどを目から収集しており、その割合は約80%にもなるといわれる。

一方、聴力の欠如は人間関係をいちじるしく希薄にする。

人の肉声(話)を聞くことができないことが、どれほど寂しいものか、なった者でなければわからないだろう。

「目が見えないことは、人と物を切り離す。耳が聴こえないことは、人と人を切り離す」と、カントがいっているそうだ。

なるほど、目、耳、どちらを選ぶ? という問いを突き詰めると、

物か? 人か? の二者択一、

人それぞれの価値観を問うことに通じることになるようだ。

つまり一概にはいえないってわけ。

─と、書いて、いま、目を閉じて全盲の状態をつくってみて、これが死ぬまでつづくのかと想像したら、怖くなった。

聾のほうがまだしも救いがあるな、と思い、わが精神性の低さを自覚したしだい。

さて、ところで、「耳が遠くなると長生き」、これ、ホントか? ウソか?

まるっきりウソ、ナンセンスな俗説である。

難聴は「伝音難聴」と「感音難聴」に大別される。

前者は、外耳から中耳までの音を伝える働きが障害された場合に起こる。

後者は、内耳から大脳までの音を感じる神経系が壊れる。

内耳は、耳の奥にある体の中で最も硬い骨に囲まれている。

そこの蝸牛(かぎゅう)と呼ばれるカタツムリのような形の器官に、有毛細胞という毛の生えた細胞がびっしり並んでいる。

この細胞の壁に収縮たんぱく(プレスチン)という物質があり、音の振動が伝わると、伸び縮みしてその刺激を脳へ伝える。

蝸牛の中にひしめき合うように生えている有毛細胞は、生まれたときから減り始めて、けっして再生しない。

だから年をとるにつれてだんだん耳が遠くなるのは(個人差はあるが)、だれも避けられない。

いわゆる老人性難聴である。

昔、「人生50年」といわれた短命時代には、老人性難聴が起こるまで長生きする人はごく少なかった。

結果、長生きした人はみんな耳が遠かった。

その原因と結果が逆立ちして、「耳が遠くなると長生きする」という俗説が生まれ、信じられるようになったわけだろう。

いまや「人生80年」どころか「90年」、「100年」の時代になりかけている。

加齢性難聴はだれもが避けられない。

その進行を抑えるにはどうしたらよいか。

小川郁・慶応大教授(耳鼻咽喉科)らは、10年以上前から「イヤー・フード」の実験的研究を続けていて、抗酸化物質が難聴の進行を抑えることを実証した。

抗酸化物質を多く含む食品といえば、

バナナ、アボカド、プルーン、アーモンド、キウイフルーツ、リンゴ、ミカン、キャベツ、タマネギ、カボチャ、ニンジン、トマト、ブロッコリー、ニンニク、納豆、豆腐、豆乳、そば、卵の黄身、ワカメ、ココナッツオイル、赤ワイン...きりがない。

小川先生は、プレスセミナーでこう話していられる。

「治せない難聴は、いかに予防するかが大切です。

いま注目の抗加齢医学では、たとえば脳を守るための、「ブレイン(脳)フード」として、ビタミンEとかウコン、カテキン、青い魚に含まれるDHAなどの効果がわかっています。

耳についてはどうか。

われわれも10年以上前から、「イヤー(耳)フード」の実験的研究を続けていますが、一つはカロリー制限、もう一つは抗酸化物質が、難聴の進行を抑えることがわかっています。

たとえば、Sir2という長寿遺伝子はカロリーを抑えるとスイッチがオンになります。

抗酸化物質では赤ワインのポリフェノールがSir2遺伝子を活性化するという論文が2003年に発表されて、赤ワインブームが起こりました。

が、赤ワインをどれくらい飲めばSir2遺伝子をオンできるかといえば、1日5本ということで、それじゃ寿命が伸びる前に肝硬変で死んでしまう(笑)。

そこで赤ワインの、そのレスベラトロールという物質をサプリメントにすればいいだろうと、いまそれの開発が進んでいるようです」。

レスベラトロールとそのサプリメントについては、別のブログ「健康1日1話」の「長寿サプリ」にすこし詳しく記しました。

ご参照ください。
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ケトン食に抗がん作用? [ひとこと養生記]

糖尿病治療食として糖質制限食が広がりつつある

その極端な形であるケトン産生食(ケトン食)に対する関心が世界的に高まっている。

摂取エネルギーの60~90%を脂肪で摂る糖質制限食。

糖・炭水化物の摂取を極端に減らすことにより、体内でエネルギー源として通常使われている糖が枯渇し、代わりに脂肪が分解されてケトン体(体内の脂肪が分解されてできる産物)が生じ、これをエネルギー源として利用する。

ケトン食の治療効果は、難治性てんかんに対してはすでに確立されている。

がんに対しても有効性があるのではないかと、研究が盛んに行われている。

以下は、糖尿病の専門医、山田 悟・北里研究所病院糖尿病センター長が、医学専門紙「Medical Tribune」の最新号へ寄稿した論文の要約。

研究のポイント1:臨床研究での有効性判定は当面不可能か

がん患者に対するケトン食の臨床試験についてシステマチックレビューを実施したのは、韓国・ソウルの崇義女子大のグループである。

研究グループは、PubMed, MEDLINE, Springer Linkといったデータベースに対して、ケトン食、ケトン、がん、腫瘍、腫瘍学といった用語を掛け合わせ、言語制限をかけずに1985年以降の年代限定をつけて検索を行った。

ランダム化比較試験(RCT)、コホート研究を採用し、症例報告や動物実験は除外することとした。

当初、468件の論文がヒットしたが、上記の基準に照らし合わせ、最終的に選択されたのは10件の論文であった。

これらの論文の中に明確なRCTはなく、ほとんどが少人数のcase seriesになっている。

また多くの研究で、既に他の治療法による加療が困難になった末期がん患者が対象とされており、有効性について判定することは不可能だという印象を持たざるをえない。

わが国でもステージIVの進行した大腸がん、乳がんの患者を対象に、前後比較で糖質制限食の有効性を検証しようとする多摩南部地域病院における臨床試験がUMIN-CTRに登録されているが、有効性を検証することは難しいのではなかろうか。

このシステマチックレビューでは、clinicalTrials.gov(米国におけるUMINに当たるもの)に登録されて実施中の臨床試験が13件掲載されているが、当面結論は出なさそうに思われる。

研究のポイント2:基礎研究ではケトン体に対する反応はがん種により異なる

さて、実際の臨床におけるケトン食のがんに対する効果が不確定な中、中国の研究グループががん種によってケトンに対する反応が異なることを示す基礎的なデータを発表した(J Lipid Res2018年2月5日オンライン版)。

研究グループは、33種のがんのモデル細胞を用いて、ケトン体をエネルギー源にするための酵素のmRNAの発現を検討した。

その結果、がん種によって酵素発現に差異があり、最も発現が少なかったのが膵がんのモデル細胞の1つであるPANC-1であり、最も発現が多かったのが子宮頸がんのモデル細胞Helaであった。

そこで研究グループは、培養液のブドウ糖濃度を54mg/dLとやや低めにしておいた中で、0, 5, 10mMでケトン体であるβヒドロキシ酪酸を添加する培養実験をPANC-1とHelaで行った。

その結果、ブドウ糖濃度100mg/dLで通常通りに培養した場合に比較し、PANC-1では細胞増殖が抑制されていたのに対し、Helaでは抑制がβヒドロキシ酪酸濃度依存性に細胞増殖が向上していた。

また、マウスにPANC-1細胞あるいはHela細胞を移植し、その後のマウスの飼育において通常食あるいはケトン食を食べさせたところ、PANC-1を移植されたマウスはケトン食で寿命が延長されたが、Helaを移植されたマウスはケトン食で寿命が短縮してしまった。

こうしたことから、研究グループはケトン体を利用できないがん種に対してのみケトン食の効果を期待できるであろうと結論している。

私の考察:ケトン体利用酵素発現の有無は確認すべき

がん細胞はミトコンドリアでのTCA回路を用いず、細胞質での解糖系からエネルギーを生み出していることをWarburgが報告して以来、極端に糖質を制限して腫瘍のエネルギー源を断つことで抗腫瘍効果が期待できるとされてきた。

しかし、韓国のグループのシステマチックレビューを見ると、臨床現場におけるケトン食の意義は未確立である。

一方、今回の中国のグループのデータは、腫瘍細胞でもケトン体→アセチルCoAという反応さえ生じれば、アセチルCoA→TCA回路というミトコンドリアでの反応を起こせることを示している。

ケトン体→アセチルCoAという反応を起こせるかどうかがケトン体に対するがん細胞ごとの反応性の相違を生むので、がん種によってはケトン食ががんを進行させる可能性すら存在することになる。

実際、がんは必ずしもミトコンドリアを使えないのではなく、増殖の過程で血管新生を起こせるまで低酸素環境下にさらされることが多く、そうした環境に適応しているだけという仮説もあるようである。

今後、臨床研究においてケトン食を取り扱う際には、少なくともがん種がケトン体利用酵素(BDH、OXCT)を発現しているかどうかを確認する必要があるように思われる。

ケトン食のがんに対する有効性:1926年、Warburgは腫瘍細胞が通常の酸素濃度下でもミトコンドリアでのTCA回路を利用せず、細胞質での解糖系でエネルギーを確保していること(Warburg効果と呼ぶ)を報告した。

腫瘍細胞にはミトコンドリアの利用障害があるのではないかと考えられ、健常細胞には脂質やケトン体といったミトコンドリアでエネルギーを得られる栄養素を与え、がん細胞には糖質を届けないようにすればがん治療になるとの仮説が生じ、ケトン食のがんに対する有効性に期待が持たれている。
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春三月、やっと来た! [日記・雑感]


尾の切れし凧のごとくに二月終ふ  有賀充惠

三月の声のかかりし明るさよ    富安風生

今日何も彼もなにもかも春らしく  稲畑汀子

待てば来る三月も又幸せも     川口咲子


金のびょうぶに うつる灯を

かすかにゆする 春の風

春のやよいの このよき日

なによりうれしい ひな祭り

(サトウハチロー「うれしいひな祭り」)


春暁やよいしよと妻の掛声も      藤田湘子

春の雲人に行方を聴くごとし      飯田龍太

球春や青春いつも雲ひとつ       塩見恵介


おうい くもよ 

ゆうゆうと 

どこまで ゆくんだ 

(山村暮鳥「雲」)
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