脳は豆腐 [医学・医療短信]
長生きのコツを聞かれて、「転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け」と答えたのは、91歳の天寿を全うした岸信介元首相だった。
老人の風邪は肺炎に進展しやすい。
転ぶと、骨折しやすく、太ももの付け根を折って寝たきりになったり、頭を打って大ごとになる例が少なくない。
脳は、豆腐のように軟らかい組織で、周りを脳脊髄液で囲まれ、頭蓋骨の中に浮かんでいる。
豆腐の入ったボウルをゴツンとぶつけると、豆腐がゴシャゴシャと動くように、頭を打つと、その衝撃で脳が1秒の10分の1とか100分の1といった速さで振動する。
頭蓋骨の中で脳が強くゆさぶられ、片方に寄る。
脳の機能が一時的に障害されて短時間、意識を失ったり、判断力が鈍ったり、記憶喪失を起こしたりする。
「脳振盪(しんとう)」と呼ばれる状態だ。
たいていすぐに回復して、大したことにはならないのだが、とっさの防御反応が鈍くなった人は、頭をまともに打って、脳の中に血液がたまる「硬膜下血腫」ができることがある。
硬膜下血腫
転んで頭を打っても、コブなどはできない。
頭の外側には何の変化も認められない。
だが脳の表面が傷つき、出血して、脳の表面と脳を覆っている硬膜の間に血液がたまり、血腫ができることがある。
硬膜下血腫という。
出血量の多い「急性硬膜下血腫」の場合、数時間内に意識を失うなどの異常が生じる。
しかし、チョロッと出血したぐらいでは症状はほとんど出ないと、脳神経外科の専門家、平川公義・東京医科歯科大学名誉教授。
「症状が出たとしても、手足の力がなんとなく弱いとか、歩くときにちょっとふらつくとか、せいぜいそんなものです」
──そして1日か2日で元に戻る。出血が吸収されてしまうからだ。
「しかし、2、3日たってもどうも頭が痛い、へんな感じがあるというようなら病院に行ってください。
何もなければそのまま何もしないで、むしろ1カ月か1カ月半たってなんだかおかしいと感じたら、CTで検査してもらい、確定診断を受けたほうがよいでしょう」
──そのとき脳では「慢性硬膜下血腫」が発生している。
脳の硬膜の内側に血の塊ができる「慢性硬膜下血腫」は、高齢者に多くみられる脳障害で、頭を打ってから1カ月、ときには2、3カ月たってから徐々に症状が現れてくる。
「頭重や頭痛も訴えますが、足がふらつき、体の片側に軽いまひが生じることもあります。
なんとなく周囲の状況がよくわからない感じで、ボーッとして反応が悪くなります。
高齢者の慢性硬膜下血腫はよく見逃されたり、誤診されて老年性痴呆と間違われることがあります。
ぼけてしまったということでほうっておかれると、治る認知症を見逃すことになります」
「また、例えば、正常圧水頭症といって、脳の中の脳脊髄液の循環が悪くなって、脳に水がたまってくる病気でも、ふらついたり、言葉がもつれたり、意識が悪くなったり、失禁したりします。
お年寄りの頭の具合がだんだんおかしくなってきたら、頭の中で何が起こっているか、詳しく調べて、原因を突き止めなければいけません」
以上、平川公義・東京医科歯科大名誉教授のアドバイス。
老人の風邪は肺炎に進展しやすい。
転ぶと、骨折しやすく、太ももの付け根を折って寝たきりになったり、頭を打って大ごとになる例が少なくない。
脳は、豆腐のように軟らかい組織で、周りを脳脊髄液で囲まれ、頭蓋骨の中に浮かんでいる。
豆腐の入ったボウルをゴツンとぶつけると、豆腐がゴシャゴシャと動くように、頭を打つと、その衝撃で脳が1秒の10分の1とか100分の1といった速さで振動する。
頭蓋骨の中で脳が強くゆさぶられ、片方に寄る。
脳の機能が一時的に障害されて短時間、意識を失ったり、判断力が鈍ったり、記憶喪失を起こしたりする。
「脳振盪(しんとう)」と呼ばれる状態だ。
たいていすぐに回復して、大したことにはならないのだが、とっさの防御反応が鈍くなった人は、頭をまともに打って、脳の中に血液がたまる「硬膜下血腫」ができることがある。
硬膜下血腫
転んで頭を打っても、コブなどはできない。
頭の外側には何の変化も認められない。
だが脳の表面が傷つき、出血して、脳の表面と脳を覆っている硬膜の間に血液がたまり、血腫ができることがある。
硬膜下血腫という。
出血量の多い「急性硬膜下血腫」の場合、数時間内に意識を失うなどの異常が生じる。
しかし、チョロッと出血したぐらいでは症状はほとんど出ないと、脳神経外科の専門家、平川公義・東京医科歯科大学名誉教授。
「症状が出たとしても、手足の力がなんとなく弱いとか、歩くときにちょっとふらつくとか、せいぜいそんなものです」
──そして1日か2日で元に戻る。出血が吸収されてしまうからだ。
「しかし、2、3日たってもどうも頭が痛い、へんな感じがあるというようなら病院に行ってください。
何もなければそのまま何もしないで、むしろ1カ月か1カ月半たってなんだかおかしいと感じたら、CTで検査してもらい、確定診断を受けたほうがよいでしょう」
──そのとき脳では「慢性硬膜下血腫」が発生している。
脳の硬膜の内側に血の塊ができる「慢性硬膜下血腫」は、高齢者に多くみられる脳障害で、頭を打ってから1カ月、ときには2、3カ月たってから徐々に症状が現れてくる。
「頭重や頭痛も訴えますが、足がふらつき、体の片側に軽いまひが生じることもあります。
なんとなく周囲の状況がよくわからない感じで、ボーッとして反応が悪くなります。
高齢者の慢性硬膜下血腫はよく見逃されたり、誤診されて老年性痴呆と間違われることがあります。
ぼけてしまったということでほうっておかれると、治る認知症を見逃すことになります」
「また、例えば、正常圧水頭症といって、脳の中の脳脊髄液の循環が悪くなって、脳に水がたまってくる病気でも、ふらついたり、言葉がもつれたり、意識が悪くなったり、失禁したりします。
お年寄りの頭の具合がだんだんおかしくなってきたら、頭の中で何が起こっているか、詳しく調べて、原因を突き止めなければいけません」
以上、平川公義・東京医科歯科大名誉教授のアドバイス。
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