果物、食べよう! 食べよう! [健康短信]
果物は肥満、高血糖、動脈硬化を改善する
果物は「体にいい」といわれるものの、ちまたでは「甘いから太る」「血糖値を上げる」というイメージもあります。
ところが最新の研究で、むしろ果物を食べたほうが肥満や高血糖を改善するということがわかってきました。
果物についての間違った認識を改め、積極的に食生活に取り入れてみませんか?
果物にまつわる「誤解」
日本は、世界的に見ても果物の消費量が少ない国です。
とくに20~40代の若い世代、働き盛りの世代は、果物をあまり食べない傾向にあります。
なぜ食べないのか。
それは、果物に対して「血糖値を上げる」「太る」「中性脂肪を増やす」というイメージがあることも大きいようです。
ダイエットに関心のある若者、メタボリックシンドロームや動脈硬化など生活習慣病が気になる世代は、果物を敬遠しがちになります。
しかし、果物を食べると「血糖値が急上昇する」「太る」「中性脂肪が増える」というのは、全くの誤解です。
<誤解1> 果物は血糖値を上げる?
食後血糖値を上昇させる作用を数値にしたものをGI(グリセミック・インデックス)値といいます。
GI値は100に近いほど血糖値が上がりやすい食品といえます。
穀類、イモ類などの食品はGI値が高い傾向にあり、たとえばフランスパンは95。
それに比べ、果物はGI値が低いものがほとんどで、イチゴは40、リンゴは38、グレープフルーツは25です。
穀類やイモ類に多く含まれるデンプンは、食後すみやかにブドウ糖に分解されて血液中に送られるため、血糖値が上がりやすくなります。
一方で、果物に含まれる果糖のGI値は低く、血液中の血糖値を急に上げないだけでなく、果物に豊富に含まれている水溶性食物繊維は、糖質の消化や吸収のスピードを緩やかにする効果があります。
糖尿病学会の作成した『糖尿病食事療法のための食品交換表』では、果物は「1日80kcal程度とること」が推奨されています。
血糖値をコントロールするうえでも、果物をバランスよくとることは重要なのです。
<誤解2> 果物は甘いから太る?
果物と野菜を区別する基準はさまざまですが、国際連合食糧農業機関(FAO)などの世界的な機関ではイチゴ、スイカなどは「果物」としています。
一般的にも「果物は甘くておいしい、甘いものはカロリーが高く、太りやすい」と思われがちです。
そのため、「果物は体に悪く、野菜は体にいい」、そのように考える人は少なくありません。
しかし、甘みの強さとカロリーは、必ずしも比例するわけではありません。
また、「野菜は果物よりカロリーが低い」と考える人もいます。
しかしたとえば、ゴボウは100g当たり65kcalで、リンゴの57kcal、キウイフルーツの53kcalなどよりもややカロリーが高くなります。
さらに、野菜は調理してから食べることが多いため、口に入るときのカロリーは高くなりがちです。
果物は調理せず食べることが多いので、カロリーを低く抑えることができます。
こうしてみると、果物はむしろダイエットの助けになるといえます。
一般的なスナック菓子やケーキ類などと比べると、1回分の果物のカロリーは3分の1以下です。
そのうえ果物は食物繊維が豊富なため、少量で満腹感を得やすくなります。
間食に甘味が欲しくなったときに、菓子を果物に置き換えるだけで、一日の摂取カロリーを抑えられるでしょう。
実際に欧米では、肥満体型の人は標準体型の人より果物の摂取量が少ないという研究もあり、日本でも同じような結果になると考えられています。
<誤解3> 果物は中性脂肪が増える?
果物に含まれている果糖は、長年、中性脂肪を増やすといわれてきました。
血中の中性脂肪が濃い状態が続くと、動脈硬化が進行し、脳卒中や心不全を引き起こす危険があります。
しかし、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版』では、むしろ適量の果物を食べることで動脈硬化のリスクを減らせる可能性があるとしています。
ガイドラインによると、果物の摂取量が多いほど、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが下がり、とくにリンゴ、ナシ、かんきつ類を食べたときにその傾向が強いとのこと。
また、グレープフルーツ、キウイフルーツ、ベリー類を食べている人は、LDLコレステロールや血中の中性脂肪が減少したという研究も紹介されています。
さらに、一日に1.5~2個のリンゴを3週間食べ続けると、血中の中性脂肪が下がった、または正常範囲の中間値に近づいた、という調査もあります。
食事全体のバランスが大事
野菜などもそうですが、体にいいからといって果物ばかり食べ過ぎると、かえって健康を損ねます。
大事なのは、さまざまな食品からバランスよく食べることです。
厚生労働省と農林水産省が提案している「食事バランスガイド」では、一日に食べる食品を主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5グループに分け、それぞれを食べる量の目安を示しています。
これによると、果物は一日に200gとることが推奨されています。リンゴなら1個、ミカンなら2個、イチゴなら15~20粒、グレープフルーツなら1個の量です。
外食が多く、果物を食べる機会があまりない人は、コンビニやスーパーマーケットで売られているカットフルーツでもよいでしょう。
果物ジュースだと食物繊維などの効果が期待できなくなるので、できるだけ生で、固形の果物を食べましょう。
「果物は高い」も誤解?
果物がいくら健康にいいからといって、毎日食べるのは結構出費になる……、そのように思った人もいるかもしれません。
総務省が行った2012~14年の「家計調査」によると、100g当たりの小売価格の平均は、野菜が37.8円、果物は42.1円です。
確かに果物のほうが高いですが、差は5円弱。家計の大きな負担になるほどではありません。
また、旬のものを選べば、価格が抑えられることもあります。
果物が体にいいことは、もはや世界の常識
ここまでみてきたとおり、果物を食べると「血糖値をコントロールできる」「ダイエットできる」「中性脂肪が減る可能性がある」など、体にとってはむしろいいことずくめです。
2004年に世界保健機構(WHO)が採択した『食事、運動、健康に関する世界戦略』では、慢性疾患を予防するための栄養摂取の目標として、果物の摂取を増やすことを勧告しています。
果物が体にいいことは、すでに世界の常識となっているのです。
あなたも、今日から食生活に果物を積極的に取り入れてみませんか?
「みんなの健康ライブラリー」2018年5月掲載より(C)保健同人社
果物は「体にいい」といわれるものの、ちまたでは「甘いから太る」「血糖値を上げる」というイメージもあります。
ところが最新の研究で、むしろ果物を食べたほうが肥満や高血糖を改善するということがわかってきました。
果物についての間違った認識を改め、積極的に食生活に取り入れてみませんか?
果物にまつわる「誤解」
日本は、世界的に見ても果物の消費量が少ない国です。
とくに20~40代の若い世代、働き盛りの世代は、果物をあまり食べない傾向にあります。
なぜ食べないのか。
それは、果物に対して「血糖値を上げる」「太る」「中性脂肪を増やす」というイメージがあることも大きいようです。
ダイエットに関心のある若者、メタボリックシンドロームや動脈硬化など生活習慣病が気になる世代は、果物を敬遠しがちになります。
しかし、果物を食べると「血糖値が急上昇する」「太る」「中性脂肪が増える」というのは、全くの誤解です。
<誤解1> 果物は血糖値を上げる?
食後血糖値を上昇させる作用を数値にしたものをGI(グリセミック・インデックス)値といいます。
GI値は100に近いほど血糖値が上がりやすい食品といえます。
穀類、イモ類などの食品はGI値が高い傾向にあり、たとえばフランスパンは95。
それに比べ、果物はGI値が低いものがほとんどで、イチゴは40、リンゴは38、グレープフルーツは25です。
穀類やイモ類に多く含まれるデンプンは、食後すみやかにブドウ糖に分解されて血液中に送られるため、血糖値が上がりやすくなります。
一方で、果物に含まれる果糖のGI値は低く、血液中の血糖値を急に上げないだけでなく、果物に豊富に含まれている水溶性食物繊維は、糖質の消化や吸収のスピードを緩やかにする効果があります。
糖尿病学会の作成した『糖尿病食事療法のための食品交換表』では、果物は「1日80kcal程度とること」が推奨されています。
血糖値をコントロールするうえでも、果物をバランスよくとることは重要なのです。
<誤解2> 果物は甘いから太る?
果物と野菜を区別する基準はさまざまですが、国際連合食糧農業機関(FAO)などの世界的な機関ではイチゴ、スイカなどは「果物」としています。
一般的にも「果物は甘くておいしい、甘いものはカロリーが高く、太りやすい」と思われがちです。
そのため、「果物は体に悪く、野菜は体にいい」、そのように考える人は少なくありません。
しかし、甘みの強さとカロリーは、必ずしも比例するわけではありません。
また、「野菜は果物よりカロリーが低い」と考える人もいます。
しかしたとえば、ゴボウは100g当たり65kcalで、リンゴの57kcal、キウイフルーツの53kcalなどよりもややカロリーが高くなります。
さらに、野菜は調理してから食べることが多いため、口に入るときのカロリーは高くなりがちです。
果物は調理せず食べることが多いので、カロリーを低く抑えることができます。
こうしてみると、果物はむしろダイエットの助けになるといえます。
一般的なスナック菓子やケーキ類などと比べると、1回分の果物のカロリーは3分の1以下です。
そのうえ果物は食物繊維が豊富なため、少量で満腹感を得やすくなります。
間食に甘味が欲しくなったときに、菓子を果物に置き換えるだけで、一日の摂取カロリーを抑えられるでしょう。
実際に欧米では、肥満体型の人は標準体型の人より果物の摂取量が少ないという研究もあり、日本でも同じような結果になると考えられています。
<誤解3> 果物は中性脂肪が増える?
果物に含まれている果糖は、長年、中性脂肪を増やすといわれてきました。
血中の中性脂肪が濃い状態が続くと、動脈硬化が進行し、脳卒中や心不全を引き起こす危険があります。
しかし、『動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017年版』では、むしろ適量の果物を食べることで動脈硬化のリスクを減らせる可能性があるとしています。
ガイドラインによると、果物の摂取量が多いほど、冠動脈疾患や脳卒中のリスクが下がり、とくにリンゴ、ナシ、かんきつ類を食べたときにその傾向が強いとのこと。
また、グレープフルーツ、キウイフルーツ、ベリー類を食べている人は、LDLコレステロールや血中の中性脂肪が減少したという研究も紹介されています。
さらに、一日に1.5~2個のリンゴを3週間食べ続けると、血中の中性脂肪が下がった、または正常範囲の中間値に近づいた、という調査もあります。
食事全体のバランスが大事
野菜などもそうですが、体にいいからといって果物ばかり食べ過ぎると、かえって健康を損ねます。
大事なのは、さまざまな食品からバランスよく食べることです。
厚生労働省と農林水産省が提案している「食事バランスガイド」では、一日に食べる食品を主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物の5グループに分け、それぞれを食べる量の目安を示しています。
これによると、果物は一日に200gとることが推奨されています。リンゴなら1個、ミカンなら2個、イチゴなら15~20粒、グレープフルーツなら1個の量です。
外食が多く、果物を食べる機会があまりない人は、コンビニやスーパーマーケットで売られているカットフルーツでもよいでしょう。
果物ジュースだと食物繊維などの効果が期待できなくなるので、できるだけ生で、固形の果物を食べましょう。
「果物は高い」も誤解?
果物がいくら健康にいいからといって、毎日食べるのは結構出費になる……、そのように思った人もいるかもしれません。
総務省が行った2012~14年の「家計調査」によると、100g当たりの小売価格の平均は、野菜が37.8円、果物は42.1円です。
確かに果物のほうが高いですが、差は5円弱。家計の大きな負担になるほどではありません。
また、旬のものを選べば、価格が抑えられることもあります。
果物が体にいいことは、もはや世界の常識
ここまでみてきたとおり、果物を食べると「血糖値をコントロールできる」「ダイエットできる」「中性脂肪が減る可能性がある」など、体にとってはむしろいいことずくめです。
2004年に世界保健機構(WHO)が採択した『食事、運動、健康に関する世界戦略』では、慢性疾患を予防するための栄養摂取の目標として、果物の摂取を増やすことを勧告しています。
果物が体にいいことは、すでに世界の常識となっているのです。
あなたも、今日から食生活に果物を積極的に取り入れてみませんか?
「みんなの健康ライブラリー」2018年5月掲載より(C)保健同人社
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