耳に虫! さあ、どうする? [医学・医療短信]
夏に増加 耳に虫が入ったら救急外来へ!
志賀隆 / 国際医療福祉大学准教授/同大学三田病院救急部長
家庭での対処はやめた方がいい理由
夏の爽やかな夕方、自転車を運転していたら急に耳が聞こえなくなった。
痛みもある。そしてなにやら動いている気がする--。
こんな経験はありますか?
暖かい季節になると、一定の確率で起こります。
そんな時、どのように対処したら良いのでしょうか。
虫が入ったぐらい、自分で対処できると思われるかもしれませんが、結論からいうと救急医の意見は「耳鼻科や救急外来など医療機関を受診してほしい」です。
理由としては、家庭で試すことによって
1)虫がさらに奥に進んでしまう
2)1)の結果、虫が取れにくくなる
3)虫が鼓膜にダメージを与えることがある
という恐れがあるためです。
病院に来る前にできることはあるか?
そうはいっても、山登り中やキャンプなどですぐに病院に行ける状況ではない場合にどうするか、というご質問もあるのではないかと思います。
そのような時に自分でできる対処法をまず、解説しましょう。
A)つまんで出す
もし外耳道(耳の穴)から虫の一部が見えてつまめるようであれば、ピンセットなどの器具で注意深くつまんで引っ張り出すことも一つの選択肢です。
ただ、この際に痛みが強かったり出血したりするようであれば、無理をしない方がよいでしょう。
B)光をあてる
虫は光の方向に向かう習性があるため、この方法を試してみる価値はあるかもしれません。
一方で、大抵の場合は頭から外耳道に入り込んでしまっています。
このような状態では、虫は前に進むことがほとんどで、光をあてても方向転換して外に出てくることはあまり期待できません。
C)油
教科書によっては、ミネラルオイルなどの油を外耳道に入れることで虫を油漬けにして窒息させ、動きを止めるという方法を記載しているものもあります。
とはいえ、この方法で虫を除去できる可能性が高いかというと、残念ながら必ずしもそうではありません。
ということで、最終的には病院の受診をお勧めします。
病院ではどうやって対応するのか?
では、次に病院にいらっしゃった際にはどのような方法があるのかを以下に解説します。
診断:まずはどのように医師が診断をするかについてです。
大抵の場合は前述のように、
◯突然耳に何かがつまった
◯突然耳が聞こえなくなった
◯耳に何かが入った気がする
◯異物感があり動いている
◯痛みがある
などの症状やエピソードがある場合に外耳道に虫が入ったことを疑います。
地域によって異なりますが、ガ、ゴキブリ、コオロギなどさまざまな種類のものが入り込むことがあります。
診察では、耳鏡という外耳道や鼓膜を観察するための特殊な診察器具を使って、患者さんの協力を得ながら注意深く外耳道や鼓膜を観察していきます。
出血がないか? 鼓膜は破れていないか? 虫はどのような種類で方向はどちらを向いているか?などを観察します。
処置:どのように虫を取り出すのでしょうか。
△局所麻酔薬
局所麻酔薬のうちリドカインという名称のものにはゼリー状の製品があり、よく虫の除去の際に使います。
この薬を使うことで患者さんの外耳道の痛みを取ることでき、かつ虫の動きが止まります。
ただし、鼓膜が破れているとリドカインが鼓膜より内側に入ってしまい、めまいの原因になります。
そのため、耳鏡での所見で鼓膜の損傷を疑う場合や出血がある場合には注意が必要です。
△洗い出す
虫の動きが止まり、患者さんの痛みも局所麻酔薬で治まってから行います。
点滴の際に使われる留置針というプラスチックの軟らかい針を使います。
その際に使用するのはぬるま湯です。冷たい水を使ってしまうとめまいが起きてしまうことがあるからです。
針の深さを調節しつつ何度か洗浄することが必要で、患者さんに説明をして協力を得ながら進めていきます。
△つまんで出す・吸引する
上述の局所麻酔薬+ぬるま湯での洗い出しがうまくいかなった際に行います。
先ほどご紹介した耳鏡を用いて直接虫をみながら小さな把持鉗子(かんし)という器具を使ってつまんで虫を出します。外耳道は狭いスペースなので、スパッととれないこともあります。
他の方法としては医療用の吸引器を用いて吸引する方法もあります。吸引用のカテーテルを虫にあてがい吸引しながら取り出します。その後鉗子でつまんで取り出します。
無事、虫がとれても、外耳道の損傷や感染を考えて点耳薬を処方し、翌日耳鼻科医の診察を受けるようにお勧めしています。
いかがでしょうか?
外耳道に虫が入った時には自宅でできることもありますが、不快な時間を短くする上でも医療機関を受診することをお勧めします。
対応可能な耳鼻科の受診が理想ですが、夜間や休日でも「ER型」とウェブサイトに紹介されていれば、救急外来であっても虫を除去できる可能性が高いです。
<「毎日新聞 医療プレミアよる
志賀隆 / 国際医療福祉大学准教授/同大学三田病院救急部長
家庭での対処はやめた方がいい理由
夏の爽やかな夕方、自転車を運転していたら急に耳が聞こえなくなった。
痛みもある。そしてなにやら動いている気がする--。
こんな経験はありますか?
暖かい季節になると、一定の確率で起こります。
そんな時、どのように対処したら良いのでしょうか。
虫が入ったぐらい、自分で対処できると思われるかもしれませんが、結論からいうと救急医の意見は「耳鼻科や救急外来など医療機関を受診してほしい」です。
理由としては、家庭で試すことによって
1)虫がさらに奥に進んでしまう
2)1)の結果、虫が取れにくくなる
3)虫が鼓膜にダメージを与えることがある
という恐れがあるためです。
病院に来る前にできることはあるか?
そうはいっても、山登り中やキャンプなどですぐに病院に行ける状況ではない場合にどうするか、というご質問もあるのではないかと思います。
そのような時に自分でできる対処法をまず、解説しましょう。
A)つまんで出す
もし外耳道(耳の穴)から虫の一部が見えてつまめるようであれば、ピンセットなどの器具で注意深くつまんで引っ張り出すことも一つの選択肢です。
ただ、この際に痛みが強かったり出血したりするようであれば、無理をしない方がよいでしょう。
B)光をあてる
虫は光の方向に向かう習性があるため、この方法を試してみる価値はあるかもしれません。
一方で、大抵の場合は頭から外耳道に入り込んでしまっています。
このような状態では、虫は前に進むことがほとんどで、光をあてても方向転換して外に出てくることはあまり期待できません。
C)油
教科書によっては、ミネラルオイルなどの油を外耳道に入れることで虫を油漬けにして窒息させ、動きを止めるという方法を記載しているものもあります。
とはいえ、この方法で虫を除去できる可能性が高いかというと、残念ながら必ずしもそうではありません。
ということで、最終的には病院の受診をお勧めします。
病院ではどうやって対応するのか?
では、次に病院にいらっしゃった際にはどのような方法があるのかを以下に解説します。
診断:まずはどのように医師が診断をするかについてです。
大抵の場合は前述のように、
◯突然耳に何かがつまった
◯突然耳が聞こえなくなった
◯耳に何かが入った気がする
◯異物感があり動いている
◯痛みがある
などの症状やエピソードがある場合に外耳道に虫が入ったことを疑います。
地域によって異なりますが、ガ、ゴキブリ、コオロギなどさまざまな種類のものが入り込むことがあります。
診察では、耳鏡という外耳道や鼓膜を観察するための特殊な診察器具を使って、患者さんの協力を得ながら注意深く外耳道や鼓膜を観察していきます。
出血がないか? 鼓膜は破れていないか? 虫はどのような種類で方向はどちらを向いているか?などを観察します。
処置:どのように虫を取り出すのでしょうか。
△局所麻酔薬
局所麻酔薬のうちリドカインという名称のものにはゼリー状の製品があり、よく虫の除去の際に使います。
この薬を使うことで患者さんの外耳道の痛みを取ることでき、かつ虫の動きが止まります。
ただし、鼓膜が破れているとリドカインが鼓膜より内側に入ってしまい、めまいの原因になります。
そのため、耳鏡での所見で鼓膜の損傷を疑う場合や出血がある場合には注意が必要です。
△洗い出す
虫の動きが止まり、患者さんの痛みも局所麻酔薬で治まってから行います。
点滴の際に使われる留置針というプラスチックの軟らかい針を使います。
その際に使用するのはぬるま湯です。冷たい水を使ってしまうとめまいが起きてしまうことがあるからです。
針の深さを調節しつつ何度か洗浄することが必要で、患者さんに説明をして協力を得ながら進めていきます。
△つまんで出す・吸引する
上述の局所麻酔薬+ぬるま湯での洗い出しがうまくいかなった際に行います。
先ほどご紹介した耳鏡を用いて直接虫をみながら小さな把持鉗子(かんし)という器具を使ってつまんで虫を出します。外耳道は狭いスペースなので、スパッととれないこともあります。
他の方法としては医療用の吸引器を用いて吸引する方法もあります。吸引用のカテーテルを虫にあてがい吸引しながら取り出します。その後鉗子でつまんで取り出します。
無事、虫がとれても、外耳道の損傷や感染を考えて点耳薬を処方し、翌日耳鼻科医の診察を受けるようにお勧めしています。
いかがでしょうか?
外耳道に虫が入った時には自宅でできることもありますが、不快な時間を短くする上でも医療機関を受診することをお勧めします。
対応可能な耳鼻科の受診が理想ですが、夜間や休日でも「ER型」とウェブサイトに紹介されていれば、救急外来であっても虫を除去できる可能性が高いです。
<「毎日新聞 医療プレミアよる
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