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認知症と胆泥の関係 [医学・医療短信]

認知症患者で胆泥が生じる原因は?

 米国において、認知症に罹患している施設入所高齢者の約8割が摂食嚥下障害を呈し、1年半の観察期間中に約半数の入所者が発熱を来し、死亡しているとの報告があるが、死因の詳細は不明である。

一方、臨床現場における高度認知症の患者では、胆囊に胆汁が滞留して生じる胆泥(たんでい)が高頻度に認められる。

胆泥=濃厚な胆汁の貯留(胆泥症)。肝臓で生成される消化液(胆汁)中の成分が変化し胆泥→胆砂→胆石と成長。

加齢や長期絶食による胆囊運動の低下を胆泥形成促進因子とする報告はあるが、認知症高齢者における研究はまだない。

杏林大学高齢医学(主任教授:神﨑恒一氏、研究責任者:海老原孝枝氏) の宮本孝英氏らは、こうした背景を踏まえ、進行した認知症の高齢者における胆泥形成促進因子を検討し、第60回日本老年医学会(6月14~16日)で報告した。

胆泥を有する患者はほぼ絶食状態

 宮本氏らは2016年7月~17年8月に杏林大学病院高齢診療科に入院したアルツハイマー病(AD)または血管性認知症(VaD)に罹患した75歳以上の高齢者122例を対象に

①胆泥の有無および胆囊の体積の調査(腹部超音波検査)

②認知症診断〔Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM)-V、Functional Assessment Staging(FAST)、画像検査など〕

③高齢者総合機能評価〔Barthel Index、障害高齢者の日常生活自立度(JABC)〕④摂食状態調査―を行った。

結果、約4分の1に胆泥の存在が確認され、男性に多く認められた(P<0.05)。

胆囊の体積は胆泥あり群で有意に大きく、抗コリン薬の使用は胆泥あり群で有意に少なかった(P<0.05)。

胆泥の有無別の摂食状態は、胆泥なし群の中央値が、栄養補助食品を用いた経口摂取可能レベルであったのに対し、胆泥あり群の中央値はほぼ絶食状態だった。

認知症の病期と経口摂取レベルとの関連においては、中等度までの認知症群では経口摂取可能例が多い一方、高度認知症群では絶食状態例が多かった。

認知症病期と摂食能には負の相関が認められた(P<0.05)。

また、胆泥の存在が認められることを目的変数としたロジスティック解析においては、絶食状態が有意な胆泥形成促進因子であった(P<0.05)。

認知症進行による経口摂取能力低下で胆汁がうっ滞

以上の結果より、経口摂取不能状態が認知症高齢者における胆泥形成の危険因子である可能性が示唆された。

これについて、宮本氏は「食物が十二指腸に入ると、コレシストキニンの作用により胆囊が収縮して胆汁が排出されるが、経口摂取不能状態では胆囊が収縮せず、胆汁がうっ滞することで胆泥が形成される」と考察。

抗コリン薬内服者では胆泥を認める割合が少なかったことについては、

「総胆管が十二指腸に開口するファーター乳頭の開閉を調整するオッディ括約筋が、抗コリン薬による迷走神経刺激の不活化で弛緩し、胆汁が十二指腸に排出されるためとみられる」と述べた。

その上で「認知症高齢者において、認知症病期の進行とともに経口摂取能力の低下が認められ、絶食状態は胆泥形成を促進すると考えられる」と結論した。(今手麻衣)

「Medical Tribune」2018年07月12日配信
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