海外旅行中の医療 [医学・医療短信]
海外旅行中の病院 どう探す?どう使う?
大型連休が始まる。
海外旅行をされる人も多いでしょう。
海外で病気になったり、けがをしたりしたら、どのように病院にかかったらいいでしょうか。
濱田篤郎・東京医科大学教授(渡航者医療センター所長)のお話をご紹介します。
「武器よさらば」とミラノの病院
海外の病院が舞台になる小説に、アーネスト・ヘミングウェーの「武器よさらば」があります。
時は第一次大戦の最中、場所はイタリアのミラノ。
主人公のアメリカ人兵士が戦場で足に大けがをし、ミラノの病院に担ぎ込まれます。そこで旧知のイギリス人看護婦と再会し、二人は恋に落ちます。
異国での入院生活にもかかわらず、主人公は夢のような日々を過ごすのです。
この小説にでてくる病院は、ヘミングウェー自身が第一次大戦中にけがをして運ばれたミラノの病院がモチーフになっています。
アメリカ赤十字社がイタリアに滞在するアメリカ人兵士のために開設した病院で、院内では英語が通用し、自国スタイルそのままの入院生活が送れたのです。
不満第1位は言葉の問題
こんな病院があれば海外でも安心して受診できますが、実際は現地の人がかかる病院や診療所を利用するのが一般的です。
では、海外の医療施設を受診する際にどんな問題点があるのでしょうか。
私たちは、海外の医療施設にかかったことのある人を対象に、「何が不満だったか」を調査したことがあります。
第1位には「言葉が通じない」という点が挙げられました。
日本でも医師に自分の症状を伝え、説明を聞くにはかなりの神経を使いますが、これが外国語であれば、なおさらです。
もし、滞在する街に日本人や日本語の話せる医師がいれば、そこを受診するのもいいでしょう。
また、最近は日本人の多く滞在する街に、日本語の通訳が常駐する医療施設が増えています。
こうした情報は、外務省ホームページの「世界の医療事情」や「海外邦人医療基金<リンク:http://www.jomf.or.jp/>」のホームページなどに掲載されています。
ボディーランゲージの効用
日本語が通じる医療施設がない場合は、英語を話す医師を探すことをお勧めします。
英語であれば、片言でも会話のできる人は多いと思います。
「星の王子様」の著者、サン・テグジュペリは、第二次大戦中、母国フランスからアメリカに亡命していました。
この期間、彼は原因不明の発熱を起こし、現地の病院を何度も受診していたのですが、彼は英語をほとんど話せませんでした。
このため、診察を受ける時は必ず通訳者を同伴していました。
それがかなわない時は、身ぶり手ぶりを交えて、片言の英語で医師と会話をしたそうです。
このボディーランゲージを使う方法は日本からの渡航者にもお勧めしています。
高額な医療費への対策
不満第2位は医療費の問題
日本の医療費もかなり高いのですが、国内では健康保険があるので、実際にかかった費用の3割分だけを支払います。
しかし、海外で医療施設にかかると、そのままの金額を請求されるため、高いと感じるのです。
また、欧米の病院で手術を受けると、驚くほど高い料金を請求されることもあります。
たとえば、アメリカのニューヨークで虫垂炎の手術を受けると、医者によっては200万円近い料金を請求してくることもあるのです。
こうした医療費の問題を解決するためには医療保険を利用します。
海外旅行の場合は旅行保険に加入するのが一般的な方法です。
ただし、旅行保険は既に国内で治療している病気の医療費を支払ってくれないことが多いので、その場合は日本の健康保険を利用します。
日本の健康保険も、海外でかかった医療費のうち、日本で医療を受けた時と同等の金額を還付してくれます。
医療レベルは大丈夫か
もう一つ、医療レベルの問題への不満。
これは、発展途上国で医療施設を利用した人からよく聞かれました。
海外でも発展途上国となると、受診前から「医療レベルは大丈夫か?」という不安があります。
そんな気持ちのまま受診し、担当医の対応が悪かったり、院内の医療機器が古かったりすると、「この病院のレベルは低いのではないか?」と感じてしまうようです。
海外の病院で医療レベルを判断する基準として、アメリカの非営利団体「Joint Commission International」が実施している病院認定があります。
日本でも最近はいくつかの病院がこの認定を取得しています。
海外でこの認定を取得している医療施設であれば、医療レベルやサービス面では一定のレベルに達していると考えていいでしょう。
また、先に紹介した外務省ホームページの「世界の医療事情」に紹介された医療施設も、大使館の医務官が医療レベルなどを調査しています。
医療施設の探し方
それでは具体的に、どのように滞在先の医療施設を探したらいいのでしょうか。
海外旅行などで短期間、海外に滞在する場合にお勧めの方法は、海外旅行保険のアシスタンスサービスの利用です。
保険に加入していることが条件になりますが、まず、保険会社のコールセンターに電話を入れます。これは通常、料金無料で、日本語を話すオペレーターが対応してくれます。
滞在地や病状などを伝えると、滞在地近辺にある保険会社の提携病院などが紹介されます。
こうした病院は一定の医療レベルがありますし、保険会社と提携していれば、医療費の支払いも安心です。
また、日本語を話すスタッフが働いている病院が多く、言葉の面でも不自由なくかかれるでしょう。
長期滞在するときは
仕事や留学で長期間滞在する場合は、滞在先でホームドクターを見つけ、日ごろの健康管理を受けておくことをお勧めします。
ホームドクターとは、内科、外科、小児科など全ての診療に対応してくれる医師のことで、海外にはかなりの数がいます。
こうした医師に日ごろからかかっておけば、急病になった時も迅速に対応してくれます。
滞在する町にどんなドクターがいるかは、先にご紹介した外務省や海外邦人医療基金のホームページをご参照ください。
日本式の医療施設も増加中
ヘミングウェーの利用したミラノの病院は、戦争中、アメリカ人兵士を専門に診療するために開設されました。
その後もアメリカは、自国民のための医療施設を世界各地に設置しています。
アメリカ人以外の診察もしますが、基本は自国民保護が目的です。
最近は、中国や東南アジアに、日本からの渡航者を対象とした医療施設が次々に設置されています。
そこには日本語を話すスタッフがおり、日本式の医療を提供してくれます。
こうした医療施設が増えていけば日本の渡航者も安心ですが、現地の人がかかる医療施設の受診方法も、ぜひ、覚えておいてください。
大型連休が始まる。
海外旅行をされる人も多いでしょう。
海外で病気になったり、けがをしたりしたら、どのように病院にかかったらいいでしょうか。
濱田篤郎・東京医科大学教授(渡航者医療センター所長)のお話をご紹介します。
「武器よさらば」とミラノの病院
海外の病院が舞台になる小説に、アーネスト・ヘミングウェーの「武器よさらば」があります。
時は第一次大戦の最中、場所はイタリアのミラノ。
主人公のアメリカ人兵士が戦場で足に大けがをし、ミラノの病院に担ぎ込まれます。そこで旧知のイギリス人看護婦と再会し、二人は恋に落ちます。
異国での入院生活にもかかわらず、主人公は夢のような日々を過ごすのです。
この小説にでてくる病院は、ヘミングウェー自身が第一次大戦中にけがをして運ばれたミラノの病院がモチーフになっています。
アメリカ赤十字社がイタリアに滞在するアメリカ人兵士のために開設した病院で、院内では英語が通用し、自国スタイルそのままの入院生活が送れたのです。
不満第1位は言葉の問題
こんな病院があれば海外でも安心して受診できますが、実際は現地の人がかかる病院や診療所を利用するのが一般的です。
では、海外の医療施設を受診する際にどんな問題点があるのでしょうか。
私たちは、海外の医療施設にかかったことのある人を対象に、「何が不満だったか」を調査したことがあります。
第1位には「言葉が通じない」という点が挙げられました。
日本でも医師に自分の症状を伝え、説明を聞くにはかなりの神経を使いますが、これが外国語であれば、なおさらです。
もし、滞在する街に日本人や日本語の話せる医師がいれば、そこを受診するのもいいでしょう。
また、最近は日本人の多く滞在する街に、日本語の通訳が常駐する医療施設が増えています。
こうした情報は、外務省ホームページの「世界の医療事情」や「海外邦人医療基金<リンク:http://www.jomf.or.jp/>」のホームページなどに掲載されています。
ボディーランゲージの効用
日本語が通じる医療施設がない場合は、英語を話す医師を探すことをお勧めします。
英語であれば、片言でも会話のできる人は多いと思います。
「星の王子様」の著者、サン・テグジュペリは、第二次大戦中、母国フランスからアメリカに亡命していました。
この期間、彼は原因不明の発熱を起こし、現地の病院を何度も受診していたのですが、彼は英語をほとんど話せませんでした。
このため、診察を受ける時は必ず通訳者を同伴していました。
それがかなわない時は、身ぶり手ぶりを交えて、片言の英語で医師と会話をしたそうです。
このボディーランゲージを使う方法は日本からの渡航者にもお勧めしています。
高額な医療費への対策
不満第2位は医療費の問題
日本の医療費もかなり高いのですが、国内では健康保険があるので、実際にかかった費用の3割分だけを支払います。
しかし、海外で医療施設にかかると、そのままの金額を請求されるため、高いと感じるのです。
また、欧米の病院で手術を受けると、驚くほど高い料金を請求されることもあります。
たとえば、アメリカのニューヨークで虫垂炎の手術を受けると、医者によっては200万円近い料金を請求してくることもあるのです。
こうした医療費の問題を解決するためには医療保険を利用します。
海外旅行の場合は旅行保険に加入するのが一般的な方法です。
ただし、旅行保険は既に国内で治療している病気の医療費を支払ってくれないことが多いので、その場合は日本の健康保険を利用します。
日本の健康保険も、海外でかかった医療費のうち、日本で医療を受けた時と同等の金額を還付してくれます。
医療レベルは大丈夫か
もう一つ、医療レベルの問題への不満。
これは、発展途上国で医療施設を利用した人からよく聞かれました。
海外でも発展途上国となると、受診前から「医療レベルは大丈夫か?」という不安があります。
そんな気持ちのまま受診し、担当医の対応が悪かったり、院内の医療機器が古かったりすると、「この病院のレベルは低いのではないか?」と感じてしまうようです。
海外の病院で医療レベルを判断する基準として、アメリカの非営利団体「Joint Commission International」が実施している病院認定があります。
日本でも最近はいくつかの病院がこの認定を取得しています。
海外でこの認定を取得している医療施設であれば、医療レベルやサービス面では一定のレベルに達していると考えていいでしょう。
また、先に紹介した外務省ホームページの「世界の医療事情」に紹介された医療施設も、大使館の医務官が医療レベルなどを調査しています。
医療施設の探し方
それでは具体的に、どのように滞在先の医療施設を探したらいいのでしょうか。
海外旅行などで短期間、海外に滞在する場合にお勧めの方法は、海外旅行保険のアシスタンスサービスの利用です。
保険に加入していることが条件になりますが、まず、保険会社のコールセンターに電話を入れます。これは通常、料金無料で、日本語を話すオペレーターが対応してくれます。
滞在地や病状などを伝えると、滞在地近辺にある保険会社の提携病院などが紹介されます。
こうした病院は一定の医療レベルがありますし、保険会社と提携していれば、医療費の支払いも安心です。
また、日本語を話すスタッフが働いている病院が多く、言葉の面でも不自由なくかかれるでしょう。
長期滞在するときは
仕事や留学で長期間滞在する場合は、滞在先でホームドクターを見つけ、日ごろの健康管理を受けておくことをお勧めします。
ホームドクターとは、内科、外科、小児科など全ての診療に対応してくれる医師のことで、海外にはかなりの数がいます。
こうした医師に日ごろからかかっておけば、急病になった時も迅速に対応してくれます。
滞在する町にどんなドクターがいるかは、先にご紹介した外務省や海外邦人医療基金のホームページをご参照ください。
日本式の医療施設も増加中
ヘミングウェーの利用したミラノの病院は、戦争中、アメリカ人兵士を専門に診療するために開設されました。
その後もアメリカは、自国民のための医療施設を世界各地に設置しています。
アメリカ人以外の診察もしますが、基本は自国民保護が目的です。
最近は、中国や東南アジアに、日本からの渡航者を対象とした医療施設が次々に設置されています。
そこには日本語を話すスタッフがおり、日本式の医療を提供してくれます。
こうした医療施設が増えていけば日本の渡航者も安心ですが、現地の人がかかる医療施設の受診方法も、ぜひ、覚えておいてください。
コメント 0