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赤ちゃんのうつぶせ寝の危険度 [「健康常識ウソ・ホント」再録]

健康常識ウソ・ホント(42)  

うつぶせ寝の転変。

育児書の名著中の名著といわれる松田道雄著『私は赤ちゃん』のなかに、うつぶせ寝に触れた箇所がある。

赤ちゃんの「私」が、うつぶせに寝ていると、ママやパパはそのたびに仰向けにしてしまう。

「私はうつむいてねるほうがらくなんだ。大地にしっかりとつかまっていたいんだ。

やわらかいフトンに胸を押し当てているほうが、気持ちがいいんだ」。

同書の初版発行は1960年。うつぶせ寝はそのころのはやりでもあった。

その風習は、進駐軍の夫人たちが持ち込んだものだった。

しかし、ベッドとちがって軟らかい布団に寝かせたための窒息死が相次ぎ、「近ごろ流行、うつぶせ寝の危険度」といった記事が週刊誌をにぎわしたりして、いつの間にか消えた。

再びはやり始めたのは1980年代だった。

1988年の「小児保健セミナー」(日本小児保健協会主催)で、うつぶせ寝を採用している産婦人科医や小児科医が、うつぶせ寝の臨床報告をしている。

「吐乳が予防できる」「ミルクをよく飲み、よく眠る」「運動神経機能の発達がよく、首のすわり、ハイハイが早い」「頭の変形予防によい」「うつぶせ寝になるときにとるカエル足は、先天股脱の予防によい」など、プラス面が多いというものであった。

そして、当時、最も強くママたちの心をとらえたのは、うつぶせ寝で育てると「絶壁頭にならない」という美容家、大関早苗さんの推奨だった。

大関さんは、孫が生まれたロンドンの病院を訪ねて、うつぶせ寝を知り、西洋人の彫りの深い顔立ち、ヒップアップした体形の原点はここにあるのではないか、と考えた。

「うつぶせ寝で育てた赤ちゃんに絶壁頭はない」と新聞・雑誌に書き、テレビ・ラジオで話した。

東京オペグループ(主な会員は産婦人科の開業医)を主宰する杉山四郎・杉山産婦人科院長は、欧米の産院を何度も視察し、うつぶせ寝の採用に踏み切り、それに追随する産院がふえた。

東京オペグループのセミナーの講師として大関さんを招いたこともあった。

杉山医師は、うつぶせ寝のさい厳守しなければならない、次のようなルールを母親たちに指導した。
①寝具は軟らかい布団をやめて、硬いベッドかマットレスを用いる。

②シーツはしわが寄らないように張る。

③赤ちゃんの衣類は袖口がフイットした半袖が理想。

④寝ている1㍍以内にはガーゼ、そのほかのものを置かない。

⑤母子相互関係を密にする。

ところが、1992年、米小児科学会が、突然死した乳児にはうつぶせ寝が多く、乳幼児突然死症候群(SIDS=シッズ)の発生率は、乳児を仰向けに寝かせることで有意に減少し得るという声明を発表した。

日本でも1997年、厚生省(現・厚生労働省)の研究班が、うつぶせ寝にすると、仰向け寝よりもSIDSの発症リスクが約3倍も高いことがわかったと発表。

同省は、うつぶせ寝とたばこ(両親の喫煙もSIDS発生の大きな危険因子)をやめる啓発キャンペーンを展開した。

結果、年間600例にも達した発症数が年々減少、2011年には148例になった。

「うつぶせ寝がSIDSを引き起こすものではありませんが、医学上の理由でうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせるようにしましょう。

また、なるべく赤ちゃんを一人にしないことや、寝かせ方に対する配慮をすることは、窒息や誤飲、けがなどの事故を未然に防ぐことになります」(同省HP)

成人のうつぶせ寝を勧める「腹臥位療法推進研究会」の名誉会長、日野原重明先生もこう話している。

「赤ちゃんがうつぶせ寝で窒息死するのは、一つは布団や枕に問題があるんです。顔が枕や布団に埋まらなければ窒息する心配はない。

布団はかためのものにして、うつぶせになったとき顔が埋まらないよう気をつける。

そうすれば、うつぶせ寝のほうが呼吸が楽で心臓にも負担が少ないし、うつぶせ寝で育てると、頭の形がよくなるともいわれています」(雑誌『壮快』2004年11月号「名医に聞く うつぶせ寝の効用」)。
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