健康雑談(14)昼寝・居眠り・脳活 [健康雑談]
昼寝のすすめ
老いぬれば何は扨措(さてお)き昼寝かな (福岡市)奥西邦夫
数年前の夏、新聞の俳句欄で見つけた句だ。
ああ、いいなぁ! と感じ入り、すぐさまノートに書き留めた。
飄々たる人柄の察せられる俳諧味もさることながら、かねがね「趣味は昼寝。特技は後ろ歩き」と言いふらしてきた者としては、まさに我が意を得た思いだった。
昼寝は絶好の健康法。このことを否定する専門家はいない。
先年、世界睡眠医学会の一分科会のテーマに「昼寝は是か非か」が取り上げられたが、討論が成立しなかった。
全員が昼寝賛成、反対意見なしだったからだそうだ。
年をとれば、だれでも「眠り下手」になる。
足が弱くなったり、忘れっぽくなったりするのと同じことだ。
寝つきが悪く、眠りが浅く、夜中に目が覚め、朝早く目が覚める。
これを補うには上手な昼寝がぜひ必要。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠設計」は、「眠気が生じる午後2時~3時、短い昼寝によるリフレッシュ」を勧めて、「夜眠れない高齢者が、昼寝と夕方の散歩で改善した例が多い」と解説している。
「活動的で、趣味などに意欲的に取り組んでいる高齢者ほど昼寝をしている」といわれ、昼寝をしている高齢者は、していない高齢者に比べると、認知症の発症率が5分の1ほどに抑えられていることが、厚労省調査でわかっている。
昼寝がなぜ、認知症を防ぐのに役立つのか。
「高齢者は、よく眠ったつもりでも睡眠の質が悪く、そのため大脳の認知機能に影響を及ぼし、認知症の発症リスクが高まる。昼寝はそうしたリスクを低下させる」と説明されている。
ただし、1時間以上も眠るのは逆効果。
体が本格的な睡眠態勢になって目覚めたあと頭がボーッとしてスッキリしない。夜の眠りにも差し支える。
認知症の発症リスクもかえって高くなるといわれている。
過ぎたるは及ばざるがごとしというわけだ。
むろん昼寝がいいのは高齢者だけではない。
昼寝をすることによって、交通事故などの発生率が低下、作業効率や判断力が向上する─このことは、多くの実験や産業医学的調査で確認されている。
睡眠科学に詳しい広島大学総合科学部の堀忠雄教授は、
「昼寝にはまず血圧を下げるという効果があります。夜間の睡眠時ほどは下がりませんが、昼寝をすると確実に血圧が低下し、リラクゼーション効果が生まれます。脳梗塞などの危険も低くなります」と話している。
堀教授らによる昼寝の効果を確かめた実験では、午後2時から約20分の仮眠をとった学生は、計算能力や音の聞き分けなどのテストの成績が、午前中よりもアップした。
仮眠をとらなかった学生の成績は変わらなかったという。
高校生を対象に昼寝の効果を調べた研究もある。
内村直尚・久留米大学医学部教授(精神神経科)らは、久留米市の名門校、県立明善高校で昼休みに15分間の「昼寝タイム」を設定、約1カ月半試行した。
結果、仮睡をとった生徒のほうが「授業に集中でき、期末試験の成績が向上した。勉強にやる気が起こった」と報告している。
同じような昼寝タイムを職場に導入すれば、午後の仕事の能率アップに役立つだろう。
昼寝は絶好の脳活法なのだ。
昼寝がムリなら居眠りでもけっこう。
頭を使って働く人間にとって、居眠りは脳細胞をよみがえらせる即効療法である。
よく知られているように人間は左脳を使って読み、書き、計算などの論理的思考をし、右脳で感覚的、創造的な思考をする。
居眠りをすると、右脳のひらめきが出やすくなるといわれている。
居眠りのあとは、頭も体もリフレッシュされて、いいアイデアがわいたり、やる気が出たりする─のではないか。
ちなみに、昼寝からスッキリ目覚めるコツは、寝る前にコーヒーかお茶を飲むこと。
そうすると、カフェインが吸収されて効いてくる時間(約30分後)に、タイミングよく目覚めて、眠気が残らない。
目覚めたら冷たい水で顔を洗い、柔軟体操をして体をほぐせば心身ともにシャキッとする。
昼寝上手は元気の達人。昼寝達人になろう。
結びの一句。
山に金太郎 野に金次郎 予は昼寝 三橋敏雄
注・俳人三橋敏雄が晩年を送った小田原市は、金太郎の足柄山を間近な空に仰ぐ、二宮金次郎の生地である。
故城山三郎氏がこの句を大いに賞賛していた。
老いぬれば何は扨措(さてお)き昼寝かな (福岡市)奥西邦夫
数年前の夏、新聞の俳句欄で見つけた句だ。
ああ、いいなぁ! と感じ入り、すぐさまノートに書き留めた。
飄々たる人柄の察せられる俳諧味もさることながら、かねがね「趣味は昼寝。特技は後ろ歩き」と言いふらしてきた者としては、まさに我が意を得た思いだった。
昼寝は絶好の健康法。このことを否定する専門家はいない。
先年、世界睡眠医学会の一分科会のテーマに「昼寝は是か非か」が取り上げられたが、討論が成立しなかった。
全員が昼寝賛成、反対意見なしだったからだそうだ。
年をとれば、だれでも「眠り下手」になる。
足が弱くなったり、忘れっぽくなったりするのと同じことだ。
寝つきが悪く、眠りが浅く、夜中に目が覚め、朝早く目が覚める。
これを補うには上手な昼寝がぜひ必要。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠設計」は、「眠気が生じる午後2時~3時、短い昼寝によるリフレッシュ」を勧めて、「夜眠れない高齢者が、昼寝と夕方の散歩で改善した例が多い」と解説している。
「活動的で、趣味などに意欲的に取り組んでいる高齢者ほど昼寝をしている」といわれ、昼寝をしている高齢者は、していない高齢者に比べると、認知症の発症率が5分の1ほどに抑えられていることが、厚労省調査でわかっている。
昼寝がなぜ、認知症を防ぐのに役立つのか。
「高齢者は、よく眠ったつもりでも睡眠の質が悪く、そのため大脳の認知機能に影響を及ぼし、認知症の発症リスクが高まる。昼寝はそうしたリスクを低下させる」と説明されている。
ただし、1時間以上も眠るのは逆効果。
体が本格的な睡眠態勢になって目覚めたあと頭がボーッとしてスッキリしない。夜の眠りにも差し支える。
認知症の発症リスクもかえって高くなるといわれている。
過ぎたるは及ばざるがごとしというわけだ。
むろん昼寝がいいのは高齢者だけではない。
昼寝をすることによって、交通事故などの発生率が低下、作業効率や判断力が向上する─このことは、多くの実験や産業医学的調査で確認されている。
睡眠科学に詳しい広島大学総合科学部の堀忠雄教授は、
「昼寝にはまず血圧を下げるという効果があります。夜間の睡眠時ほどは下がりませんが、昼寝をすると確実に血圧が低下し、リラクゼーション効果が生まれます。脳梗塞などの危険も低くなります」と話している。
堀教授らによる昼寝の効果を確かめた実験では、午後2時から約20分の仮眠をとった学生は、計算能力や音の聞き分けなどのテストの成績が、午前中よりもアップした。
仮眠をとらなかった学生の成績は変わらなかったという。
高校生を対象に昼寝の効果を調べた研究もある。
内村直尚・久留米大学医学部教授(精神神経科)らは、久留米市の名門校、県立明善高校で昼休みに15分間の「昼寝タイム」を設定、約1カ月半試行した。
結果、仮睡をとった生徒のほうが「授業に集中でき、期末試験の成績が向上した。勉強にやる気が起こった」と報告している。
同じような昼寝タイムを職場に導入すれば、午後の仕事の能率アップに役立つだろう。
昼寝は絶好の脳活法なのだ。
昼寝がムリなら居眠りでもけっこう。
頭を使って働く人間にとって、居眠りは脳細胞をよみがえらせる即効療法である。
よく知られているように人間は左脳を使って読み、書き、計算などの論理的思考をし、右脳で感覚的、創造的な思考をする。
居眠りをすると、右脳のひらめきが出やすくなるといわれている。
居眠りのあとは、頭も体もリフレッシュされて、いいアイデアがわいたり、やる気が出たりする─のではないか。
ちなみに、昼寝からスッキリ目覚めるコツは、寝る前にコーヒーかお茶を飲むこと。
そうすると、カフェインが吸収されて効いてくる時間(約30分後)に、タイミングよく目覚めて、眠気が残らない。
目覚めたら冷たい水で顔を洗い、柔軟体操をして体をほぐせば心身ともにシャキッとする。
昼寝上手は元気の達人。昼寝達人になろう。
結びの一句。
山に金太郎 野に金次郎 予は昼寝 三橋敏雄
注・俳人三橋敏雄が晩年を送った小田原市は、金太郎の足柄山を間近な空に仰ぐ、二宮金次郎の生地である。
故城山三郎氏がこの句を大いに賞賛していた。
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