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ロンドンの麦のおかゆ [エッセイ]

 日本最初の国語辞典「言海」についてはなにも言及しなかった(と思う)漱石が、英語辞典にふれた一文がある。

英国留学中、正岡子規主宰の「ホトトギス」に寄稿した「倫敦(ろんどん)消息」の一節だ。

『─略─例の如く「オートミール」を第一に食ふ。是は蘇格土蘭(すこっとらんど)人の常食だ。尤(もっと)もあつちでは塩を入れて食ふ。我々は砂糖を入れて食ふ。麦の御粥(おかゆ)みた様なもので我輩は大好きだ。「ジョンソン」の字引には、「オートミール」……蘇国にては人が食ひ英国にては馬が食ふものなりとある。然し今の英国人としては朝食に之を用いるのは別段例外でもない様だ。英人が馬に近くなつたんだらう』

 十八世紀中葉に出版されたこの英国最初の英語辞典を、サミュエル・ジョンソンは、貧困と持病(結核性るいれき)に苦しみながら、八年の歳月をかけて独力で完成した。

ジョンソンの伝記を読んだ作家、故中村真一郎は、「人はいかなる過酷な条件のもとでも、仕事をする者は、する」と言っている。
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